100.狙撃手、家の素材を集める
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「あっ、あの・・・はじめまして。フローラです」
「ケンタロだ。よろしく頼む」
気の弱そうな子が、俺を見上げながらぺこりとお辞儀をする。
背が低くて目がくりっとして、小動物のような印象を受ける。
そう、あの初心者いびりを受けていた子だ。
庇護欲を掻き立てるような感じなので、思わず頭を撫でたくなるがぐっと堪える。
親しくもないのにいきなり頭に触れられて喜ぶ女の子なんていないからな。
俺はマナーを弁えるおっさんなのだ。
「あれ、センパイ。知り合いじゃなかったんですか?」
「えっ、どこかでお会いしたことありましたっけ・・・? すみません・・・!」
「ああいや、初対面のようなものだ。気にしなくていい」
ぺこぺこするフローラに軽く手を振る。
向こうは俺のことをほぼ知らないし、会話を交わしたこともない。
これが初対面ということで何も支障はない。
「フローラさん、木工スキルがんばって上げてるんです。ね?」
「は、はい。まだまだ低いんですけど・・・」
「だが建築ができる程度ではあるんだろう?」
「えっと・・・はい」
恐縮するように肩を縮めるフローラ。
まあベテランのリコッチが紹介する以上、人選に問題はないはずだ。
「フローラさん、早速だけどセンパイに家の間取りを見せてあげて!」
「はっ、はい・・・!」
フローラは手元を操作すると、恐る恐るといった感じで俺に大きなパネルを見せてくれた。
そこには家の外観と間取りが描かれている。
「すごいな・・・。木工スキルは全くわからないが、ここまで図面を引けるものなのか」
「い、いえ・・・決められたパーツがあって、それを縦横回転させたり大きさを変えながら配置していくんです・・・」
「そうなのか。いやだが、それでもすごいぞ。現実の間取りに引けを取らない」
「パーツの数がすごくたくさんあるので・・・」
「何を言っている。フローラのセンスがいいんだ」
「そうだよ! フローラさんの腕だよこれ」
「あ・・・ありがとうございます・・・!」
俺とリコッチがべた褒めすると、フローラは頬を染めて俯いた。
もちろんお世辞ではない。
1階には玄関から大きなリビングがあり、リコッチの要望通り料理スキルを使うためのキッチンもある。
他にも部屋があったり大きなバスルームがあったり、そして裏手にはベランダというのかデッキというのか、ともかく湖に面したスペースまである。
2階には大きなベッドルーム。
そして当たり前だがトイレはない。排泄システムなんてものは存在しないからな。
「・・・なあリコッチ、バスルームがあるが風呂なんて入れるのか?」
「入れますよー。仮想世界なんで現実で身体がキレイになるわけじゃないですけど、気持ちよさは味わえます」
「凄まじいな」
驚くべき技術の進歩だ。
俺が生きているうちにフルダイブ型VRゲームを可能にする技術が開発された幸運に感謝せねばなるまい。
「・・・ど、どうでしょうか?」
フローラがちらちらと俺を見上げてくる。
あまり自信がなさそうだが、素晴らしい出来だと思う。
リコッチも気に入っているようだ。
「完璧だ。この通りに作ってほしい」
「あ・・・わ、わかりました!」
ぱあっと笑顔になるフローラ。
何となくわかっていたが、この子は自己肯定感が低いらしい。
何かにつけて褒めてあげたほうがよさそうだ。
「ところで、すぐに建てられるわけじゃないだろう? どの素材がどれくらい必要か教えてくれないか?」
「えっと・・・」
フローラがまたパネルを提示してくれる。
木材が非常にたくさん必要らしい。まあ当然か。
「リコッチ。この大量の木材はどうやって集めたらいい?」
「そうですねえ。フローラさんには普通に伐採スキルで集めてもらって、私はお金を稼いで街の露店で購入ですねー。センパイは・・・」
リコッチが言葉を濁す。
俺は軽く頷く。
俺が生産職をPKして木材を集めるであろうことは、フローラの前では言わないほうがいいだろう。
彼女とてこのゲームを続けている以上、PKというシステムが存在していることを許容しているわけだが、とはいえわざわざ不快な気分にさせる必要はない。
ちなみにリコッチは、ダンチョーたちと同じく俺のプレイスタイルに口を出すことはない。
他者のプレイスタイルを尊重してくれるのだ。
俺がPKしている場面に出くわせば、容赦なくPKKしてくるけどな。
そういうわけで、俺たちはそれぞれ木材集めに奔走することにした。




