閑話《ガリレオニュース『鷺ノ宮ひより」声優インタビュー&ミニグラビア【声優辞典】》
閑話です。本天沼さんが主人公に見せたWEBインタビューの全文です。
《ガリレオニュース『鷺ノ宮ひより」声優インタビュー&ミニグラビア【声優辞典】》
編集部が注目する声優に、声優を目指したきっかけや仕事に向き合う気持ち、そしてプライベートなことまでじっくり伺い、撮り下ろしのミニグラビアを交えて紹介する人気企画「声優辞典」。
第239回目となる今回は、『反省文の天才』の時松未百合役、『よんこいち』の秋山真生役、『機動姫がウザすぎる!』の宮坂みんく役、『意図せずお兄ちゃん属性を得てしまったので過保護な勇者になります!』のソフィー役などを演じる鷺ノ宮ひよりさんです。
――インタビューよろしくお願いします!
鷺ノ宮:よろしくお願いします! お友達とか現場でよく会う声優さんがたくさん出ていて、私も出たいなと思いつつ、「もうとっくに新人じゃないし、無理だろうな……」と思っていたので呼んでいただけて嬉しいです(笑)
――(笑) 鷺ノ宮さんはもともと子役出身なんだそうですね。
鷺ノ宮:そうなんです。今から12年ほど前、6歳のときに児童劇団に入って、CMに出たり、ドラマにちょこっと出させていただいたりしていました。純粋に子役として活動したのは2年くらいですね。その劇団で「声の仕事をしたほうがいい」と言ってくださった方がいたり、色々縁があって今の事務所に移って、そこからは声優メインで活動させていただいてます。
――芸能活動は自分からやりたいと思って始めたんですか?
鷺ノ宮:そこはどちらかというと母ですね。もともと私は控えめな性格で、人前に出るのもあまり得意じゃなかったんです。幼稚園のお遊戯会でも『木』とか『交通標識』とか『その他大勢』とか、声優業界的に言うところの『モブ』をやってるような子で(笑)
でも、一方で映画のメイキングを観るのがすごく好きな子供だったんですよ。それを見た両親が「児童劇団に入ってみない?」って言ってきて……という流れでした。
――そこで演じる喜びに目覚めたと。
鷺ノ宮:じつはそういう感じでもないんです。むしろ、初めて舞台に立ったときに「あ、これなんか違う……」って感じて。私はもともと根の性格が裏方志向なところがあって、表現欲とか承認欲求のようなものがほとんどないんです。だから、エチュード(編集部注:即興劇のこと)で「今、あなたが感じていることを、そのまま表現して」と言われて、「お腹空いたって思ってるんだけど、それでいいのかな?」みたいなテンションで。まあそれまで『木』や『交通標識』をやっていた子供なので、いきなりの人間役に戸惑ったのもあると思いますけど(笑)
――そんな鷺ノ宮さんが、声優にシフトするきっかけってあったんでしょうか?
鷺ノ宮:ひとつは、やっぱり人前に出るのが得意じゃなかったことですね(笑) 舞台とかドラマとかって、基本的にカメラに写るじゃないですか。今でこそ平気になりましたけど、子供の頃はなかなか慣れなくて。人に見られていることを感じると、緊張しちゃうんです。
もうひとつは、今のマネージャーとの出会いです。彼女はマネージャーになった経緯が少し変わってて、もともと声優なんです。しかも、事務所に入った時期も私と同じで、いわゆる「同期」ってやつで。年も離れてて性格も全然違うので、最初は特別仲が良かったワケでもなかったんですけど、彼女が裏方に転身することになり、一緒に頑張っていくことになりました。もともと、自分のために頑張るより、誰かのために頑張りたいって人間なんですよね私。今ではなんでも話せる仲で、私が一番信頼している人です。
――最初から声優志望ではなかったんですね。
鷺ノ宮:もちろん最初から自分なりには必死にやっていたんですけど、はっきり意識が変わったのは12歳の時ですね。その頃、すごくショックなことがあったんです。でも、お仕事を休むことはできないし、毎日しんどくて……。
そんなとき、アニメを観たり、ライトノベルを読んで救われたんです。それで、「ああ、自分ってこんなに素晴らしい仕事をしていたんだな」って思って。アニメに救われて声優を目指したって方は多いと思うんですけど、私は順序が少し違ったんですよね。
――たしかに珍しいパターンかもしれません。
鷺ノ宮:ある意味、子役あるあるかなとも思うんですけどね。
もちろん、声優業への意識が変わった要因として、プロフェッショナルな先輩方と一緒にお仕事をするようになって影響されたのもあります。「ひとつの物にこんなにたくさんの人が真剣に向き合うって、とても格好いいことだな」と思うようになって。シリアスなアニメはもちろんのこと、馬鹿馬鹿しいギャグ作品でも真剣に意見を言い合って、少しでもいい物を作ろうとする姿が、子供心に惹かれていましたね。
――16歳なのに色々考えられてるんですね。
鷺ノ宮:いえいえ、実際はポンコツで、周りからは天然って言われるんです。とくに言い間違えすることが多くて、『根も葉もない噂』って言おうとして『目も歯もない噂』って言ったり。よくツッコまれてます(笑)
――どういう流れでその言い間違いをしたのか気になりますね(笑) さて、話題を変えまして……声優のお仕事を始めたときってどういうジャンルが多かったんでしょう?
鷺ノ宮:外画の吹き替えですね。アニメより外画のほうが子役を受け入れる環境が整っているので、そういう理由だったんだと思います。なのでじつは最初の数年間はアニメにはあまり出ていないんですよ。アニメは1クール近く毎週決まった時間に収録があるんですけど、外画って基本1日で収録しちゃうんで、そこまで学校休まなくて済むという理由もあると思います。なので、声優をしているってことは小学校の人にあまり知られてなかったんですよね。自分から言う性格でもないですし。
――そして、その後はアニメ作品にも精力的に出演。3年前に放送され、代表作となったアニメ『反省文の天才』について聞かせてください。
鷺ノ宮:今でも色んな意味で想い出深い作品です。とても天才的な頭脳を持ちながらも家庭に恵まれなくて施設で育ち、オトナを信用できずに先生に反抗ばかりしている高校生の男の子と、ベストセラー小説を出したけどその後書けなくなって、ワケあって高校の用務員をしている元小説家のおじさんのお話です。
――その男の子は素行不良でよく反省文を書かされるんだけど、毎回とってもいい反省文を書くんですよね。
鷺ノ宮:はい。それで、その反省文を読んで先生は「こいつは本当に反省したんだな」と思うんだけど、翌日には別の悪さをしている、っていう(笑) 今振り返ってみても、本当に独創的な設定ですよね。清水監督のセンスが発揮された作品だったと思います。
――この作品で鷺ノ宮さんは「時松未百合」を演じられました。本当に人気なキャラでしたよね。
鷺ノ宮:主人公と親しい関係になる同じ高校の女の子で、登場は第2話から。真面目な女の子で、最初は素行不良な主人公と反目しあっているんですけど、じつは家が貧しく、高校生でありながらバイトをいくつも掛け持ちしていたり、苦労している子だと知って、距離が近づく。それぞれ抱えたものがあって、回が進むにつれてだんだん結びついていくんですけど、単純に甘々した雰囲気になるワケじゃなく、シリアスなシーンも入ってるのが役者として面白かったです。
――面白かったというのは?
鷺ノ宮:未百合って色んな要素を持ち合わせた、複雑な性格の子なので、演じるのが難しかったんです。想像してもなかなか彼女の心境にまで達することができないというか……でも、一方で、難しい役柄を演じるのって楽しいんですよ。うまく演じられたときは、その分達成感があるんですね。だからこそ、未百合は役者冥利に尽きる役柄でしたね。
こういう言い方が正しいのかわかりませんけど、自分のなかで「やっと声優になれた」という感覚があったんです。それまでにも色んな作品に出させていただいて、全部自分なりに全力を出してきたのは間違いないんですけど、不思議とそういう感覚がありました。もしかしたら、声優ってなるものじゃなくて、役がならせてくれるものなのかもしれませんね。
――もともと、オーディションは別の役柄で受けていたそうですね。
鷺ノ宮:そうなんです。現場で急遽、「やってみない?」って監督に言われて、演じることになりました。でも、じつは未百合に限らず、他の役のセリフも読み込んでいたんです。『反省文の天才』はオーディションから特殊で、第1話の台本をオーディション前に渡されていたんです。だからこそ、結構しっかりと考えて臨めたというか。
――役が決まったときはどんな気持ちでしたか?
鷺ノ宮:素直にとても嬉しかったですね。なにより脚本が素晴らしかったですし、「キャストとしてこの作品に関われたら、これはもう一生の財産になるだろうな」っていう確信がオーディションの段階からありました。その後、読者の皆さんもご存じのとおり色々あって、この作品はイベントをほとんどやらずにここまで来てるんですけど、でも皆さんの心のなかに残る作品になっていると思います。今でもファンの方からお手紙をいただくときはその作品名が入っていることがとても多いですし、かけがえのない縁だったんだなって。
――気合いを入れて、台本を読み込んでからオーディションを受けていて良かったですね。
鷺ノ宮:基本的に原作のある作品は読むようにしています。
でも、オーディションで落ちるのはやっぱりショックなので、作品によってはあえて「1巻だけ確認する」ということもあります。だから、本屋さんで「あ、自分絶対これ好きだ」と思った作品があっても、なんとなくアニメ化しそうな気配があったら手が出なくなることもあったり……(笑)
――『反省文の天才』はとくにラストシーンが印象的でした。
鷺ノ宮:いろんな解釈ができるシーンだと思います。未百合を演じていた私としては「たぶんこうじゃないかな……」という考えがあるんですけど、でもそれはあくまで私の見方。人それぞれ感じることが違ったなと思います……結果的に、続きがあったのかもわからないままになってしまいましたけど、その分、多くの人が覚えてくださる要因になった気もします。
――デビュー当時の話を伺います。『よんこいち』では秋山真生役で、初めてレギュラーを獲得されました。
鷺ノ宮:10歳のときに出演した作品で、美術部の仲良し女の子4人が主人公の、いわゆる日常系の作品でした。私はそのなかのひとりである、夏生ちゃんの妹ちゃん役でした。それまでに何作かモブでアフレコ経験はあったのですが、真生は出演シーンが主人公4人の次くらいに多い役だったので、なかなかうまく演じられなくて苦労した記憶があります。引き出しが少ないので、「こう変えてください」って言われても対応できないんですよ。共演した先輩方に助けてもらいながら、毎回ああでもない、こうでもないって試行錯誤していましたね。
――たくさんの作品に出演されている鷺ノ宮さんですが、『機動姫がウザすぎる!』ではキャラソンも人気ですよね。今後、アーティスト活動される予定は?
鷺ノ宮:今のところ予定はないです。ファンの人からそういう声をいただくこともあるんですけど、そこに手を出すと学生生活と両立するのがいよいよ不可能になってしまうので……(笑)
でも、ありがたいことにキャラソンを歌わせていただく機会は多いんですよね。自分としても歌は決して得意だと思ってないし、どちらかと言えば裏方気質が強い性格なんですけど、気づくと「あれ、この一ヶ月、週2ペースでスタジオに入ってない私……?」みたいになってるという(笑)
――これまでにたくさんのキャラを演じている鷺ノ宮さんですが、どのキャラにとくに思い入れがありますか?
鷺ノ宮:演じさせていただいたキャラはみんな愛しているんですが、共通点という意味では、初めて主演させていただいた『ゴッドシスター』の大月麻里々が印象に残っています。幼女がマフィアのボスになるってお話なんですけど、麻里々は外では威厳たっぷりだけど、素の性格は全然違って、自分と同じで内向的な部分のある子。そんな自分を変えたいと思いつつ、壁を作っちゃうところが似てるなと。口数が少ないわけではないけど、自分の気持ちを言葉で表現することがあまりないキャラなので、セリフのトーンや声の感じで感情を表現することを考えて演じていましたね。
――たとえばどんなことを?
鷺ノ宮:彼女は相槌で『ん』ってよく言うんですけど、その一言のなかにも色んな気持ちが入ってると思ったんです。悲しい『ん』もあるし、嬉しい『ん』もあるし、嬉しいのなかにも種類がある、みたいな。私、普段は現場で監督さんの要求に対応できるように、あえて演技を固めすぎないようにしてることが多いんですけど、この作品は家でしっかり予習して行ってましたね。
あとは、セリフはないけどその場にはいる、というシーンでも、『麻里々なら今、何を考えてるんだろう?』って想像して、感情の流れを見失わないように意識して。ありがたいことに作品の人気も出たので、私にとっても大切な役柄になりました。
――プライベートのこともお聞きしたいんですが、今、高校生なんですよね? 高校生活は楽しいですか?
鷺ノ宮:はい、高校2年生なのであと1年半ほど高校生です。私、友達を作るのがあまり得意ではないので、ずっとひとりだったんですが、最近何人か話せる人ができたんです。お仕事のことは自分からは話さないことが多いんですけど、その子たちは知ってて、応援してくれてて。
――JKらしい生活を送ってらっしゃるんですか?
鷺ノ宮:いや、そんなことはまったくなく……(笑) 授業を受けに行って、お仕事に行って、家では練習と宿題、テスト勉強。その繰り返しですね。テスト勉強が大変で……でも、最近はノート貸してくれる人ができて、すごく楽になりましたね。あと最近、事務所に入った高寺円ちゃんって子とはごはんに行ったり、勉強会したりしています。後輩なんですけど同い年で、あと家が近所だったんですよ。私、ファンの方から友達が少ないって思われてて、まあそれは事実なんですけど、最近は彼女とよく一緒にいるので「心配しないでいいよ!」って伝えたいですね(笑)
――えっと、話を変えましょう(笑) 今、ちょうど進路を考えられる時期かと思うんですけど今後、大学に進むかお仕事一本でいくかは決めてますか?
鷺ノ宮:ファンの方から聞かれることもあるんですけど……正直、まだ悩み中ですね。うちは姉、私、妹の三姉妹なんですけど、姉が今、大学生で、見てる限り仕事しながら行くのは大変そうだなって思うんですよ。学費もかかりますしね。そう考えると、私より妹が大学に行ったほうがいいんじゃないかって思ったりもします。私より、妹のほうが勉強も好きみたいですし。
――お姉さんと妹さんの話、いつもインタビューで話されてますよね。
鷺ノ宮:そうなんです。あんまりにもあちこちで話すから、最近は自分の近況報告以上にふたりの近況報告をしていますね。姉がゼミのフィールドワーク旅行で行った先でお土産を買ってきてくれただとか、妹が本屋さんに入り浸ってるとか。私、ふたりのことが大好きなんです。友達が少ないから自然と家族の話になるってのもあるんですけど(笑)
――なるほど、シスコンなんですね。
鷺ノ宮:いえ、シスコンではないです。むしろそんな記号的な言葉でまとめられたくないと言いますか……私の言ってることわかります?
――圧がスゴい……話を変えまして、休日はどんなふうに過ごしていますか?
鷺ノ宮:イベントがない日はゆっくり休んだり、マンガ・ラノベを読んだり、映画を観たり、勉強をしたり。あと、最近はじめて占いに行ったんですけど、想像以上に面白くてハマっちゃって。1週間で3回も行ってしまったんです……。
――1週間で3回は多いですね。
鷺ノ宮:占い師のおばあちゃんにも「前代未聞だよ!」と言われました(笑) 手相って日々の過ごし方で変わるらしいんですけど、さすがに1週間では変わるわけがないと。でも、「金払うなら来ていいけどね。手相見なくて済むから楽でいいわ』ってその方は言ってくれていて。占い師だけど、占わないでお金をもらえるに超したことはないそうです(笑) このお仕事は運の要素も強いので、もしかするとその影響もあるかもしれません。今までも、偶然が重なって環境が変化してきたりしていたので。
――これから声優として挑戦していきたいことを教えてください。
鷺ノ宮:演じられる役柄の幅を広げていきたいですね。むしろ、それができないと食べていけないと思ってます。それと、『鷺ノ宮ひよりが演じてたってわからなかった!』と言われるようになりたいです。もちろん、私が出ていると知っていて観てくれる人がいるのは嬉しいことなんですけど、もともと裏方思考なところがあるので、『キャラがキャラとして生きている、存在しているように見える』というのに憧れます。アニメファン、声優ファンの人に支持されたいのはもちろんのこと、私のことを全然知らない人の心を掴みたい。
――お芝居を極めて、将来はどんな声優さんになりたい?
鷺ノ宮:役者のお仕事が本当に大好きなので、一生続けていきたい。それが一番ですね。ずっと現場で求められる声優でいることはとても難しいことだと思いますし、それには今よりもっともっと演じられる役の幅を広げていかないといけないと思っています。主人公やヒロイン役を演じさせていただけるのはとても嬉しいことですけど、年を重ねないと出てこない味もあると思うので、俳優として成長していくのが楽しみですし、手を抜かないでがんばらないとって思います。
――ありがとうございました!
次回の「声優辞典」をお楽しみに!
今日は区切りの関係で1話更新になります。まあでも文字数的には変わらないし……。