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9月17日:終末と告白?

ピピピと目覚まし時計が時を知らせる音を鳴らす。目覚まし時計を止め、凪野茜はしまったと思った。いつもの癖で目覚ましをかけたが、バイトは休み、講義もなく全休だ。二度寝をしようとも思ったが、妙に目が覚めてしまったので仕方なく身体を起こす。あくびをしながら顔を洗った後、テレビの前にある座椅子に腰掛けテレビを付けた。付けたテレビでは朝の料理番組が放送されていたが、茜は見ていなかった。普段からテレビは付けるものの、BGMと化していた。スマートフォンをいじり、何となく近くにあったクッションを膝の上に置いた。

「まだ7時40分か…」

呟いた後、茜は立ち上がりキッチンへ向かう。バイト先のパン屋で買った6枚切りのパンを開け2枚をトースターに乗せる。付け合わせにとウインナーをボイルし隣のコンロでお湯を沸かす。3年も自炊をすると手慣れてくるなと考えていた。トースターから焼き上がったパンを取り出しバターを乗せた。熱で溶けたバターの香りがキッチンに広がる。残った1枚はイチゴのジャムを塗り、ボイルしたウインナーはトーストと同じ皿のすみにのせた。

「あとは。」

そう言うと、シンプルな白いカップにインスタントスープの素を入れお湯を注ぎ溶かす。コーンスープだった。それらをテーブルに運び座椅子に腰掛た。

「いただきます。」

朝食を食べようとバターを塗ったトースターを口に運んだ。その時、テレビから速報を知らせる音が流れる。同じタイミングでスマートフォンからも速報を知らせる音が鳴った。テレビの画面が料理番組から切り替わり、報道番組のアナウンサーが出てきた。画面の向こうでは人が慌ただしく動いているようだった。放送準備が終わっていないのか全体的に聞き取りにくかった。しかし、初めは聞き取りにくかった音も徐々に聞き取れるようになった。だが、その内容は全く頭に入って来ない。

「巨大な……が地球に接近して…る模様です。この隕石は……地球にぶつかる………地球は滅ん……ま…い……す。繰り返します…」

訳の分からない内容がテレビから流れており、現実味は全くなかった。ハッと我に返るとスマートフォンが震えている。画面を見ると同じ大学の友人、栞からの着信だった。

「もしもし栞。」

状況とは裏腹に茜の口調はいつも通りだった。

「あ、茜テレビ見た、あ、あ、あの話し本当に本当に本当かな?」

一方、友人の栞はとても焦ったように答えた。茜は少し考えて口を開いた。

「どうだろう…分からないけど。」

ふと画面を見るとテレビの画面は花畑の写真を写していた。しばらくお待ち下さいと表示されている。 

「あれ?栞?」

耳元のスマートフォンは混線してるのか通話が切れていた。茜は「12時に大学で。学食のスペースに居るから。」と栞にメッセージを残しスマートフォンで今の状況を調べ始めた。案外読み込みは早かった。テレビは、しばらくお待ち下さいから変わらなかったので消した。ネットの掲示板を見つけ閲覧する。

「まぁ、喜ぶ人も居るよね。」

掲示板では終末キター!、地球終了のお知らせ、ついに終わるんや、などと書いてある。その中から地球が終わる理由まとめとリンクがあり中を見た。しばらくそのサイトを見た後に一息ついた。時間は9時半を過ぎていた。

「あっ…」

テーブルには冷えきった朝食があった。完全に忘れていた。仕方がないのでコーンスープだけレンジで温め、他はそのまま食べた。冷えた朝食を食べ終え、食器を片づけ、歯を磨いた。その頃には10時に差し掛かっていた。

「軽く準備しちゃおうかな」

茜は衣服を脱ぎ着替え始めた。長袖にジーパンというラフなスタイルに9月に入りうっすら寒くなってきたので、少し長めの薄いカーディガンを羽織る。その後また座椅子に腰掛け出かける時間までスマートフォンを弄っていた。11時半になり茜は小さめのバッグを持ち家に鍵を閉め大学へと向かった。大学までは徒歩で30分もかからない。

「あんまり普段と変わらないな。」

誰というわけでもなく呟いた。大学までの道のりはアパートを出て直ぐにあるコンビニ、最寄りのスーパー程度のものしかなかったがいつも通りだった。もっと暴動や強盗のような世紀末を想像していたが実際はそうでもなかった。大学までは特別に何があるという訳でもなく大学に到着した。フリースペースへ向かおうとしたが声を掛けられた。

「茜」

栞が手を振る。駆け足で栞は茜に近づいてきた。

「あ、あのさ…」

早口で焦っているのが見て分かる。

「とりあえず座ろうか。」

茜は栞と一緒にフリースペースに向かい椅子に腰掛けた。来る途中に自販機でペットボトルのお茶を買ってきた。

「地球が終わるって言うわりには講義なんてやってるんだね。」

そう言うと茜はお茶を一口飲んだ。

「た、確かにそうかもね。」

栞の顔は少し硬い表情だった。

「案外さ来る途中いつもと変わらなかった。なんてーの、こう、もっと荒れるもんだと思ってたんだよね。」

茜はペットボトルの蓋を閉めながら言う。

「何で地球は終わっちゃうのかな…」

栞は外を眺めながら言った。

「調べてみたんだけど隕石だって。なんか詳しくはよく分からなかったけどそんな感じらしいよ。」

茜はスマートフォンを取り出した。

「慌てないんだ。」

栞は呟くように言う。目線は自分の手元を見ていた。

「現実味はないよね…あのさお昼食べに行こうどうせ終わるならパーッとしちゃお。」

それは良いねと栞は同意した。その後ファミレスに入り夕方まで2人で食事をとりつつ様々な話をした。明日からどうするか、講義に行くのか行かないのか、本当に地球は終わるのか、そんな話をし2人は帰りに着いた。

「栞は実家に帰るのか…まぁ、そうだよね。どうせ講義に行く意味もないし。私は…」

そんな事を呟き部屋のドアが見えてきた。

「え?」

部屋の前に誰か座っていた。薄暗く分かりにくかったが男性のようだった。しかも寝ていることが分かった。その人影に近づき誰か分かった茜は口を開いた。

「ちょっと、蒼太先輩!」

寝ている男に声を掛けた。蒼太先輩と言われた男は、んぁと声を漏らしながら伸びをしつつ口を開いた。

「んー…あ、いやぁ、インターフォン押したけど出ないし眠いしで寝て待ってたわ。」

蒼太は大きい声ではないが明るいトーンでそう言った。

「会う予定すら立ててないですよね。」

ため息交じりにそう言うと部屋の鍵を開けた。

「とりあえず話しは聞きましょう。」

部屋に入った後に蒼太へ部屋に入るよう促した。

「おじゃまします。」

そう言うと玄関で靴を脱ぎ部屋に上がる。靴はしっかりと揃えられている。

「あ、これ土産な。」

袋を突き出された。中身は大量のスナック菓子やつまみが入っていた。茜の好きなものだけというわけでもなく、適当に選んだ感じがした。

「ありがとうございます。で、何の用事ですか?」

貰ったお菓子をテーブルの横に置き茜は座椅子に座った。蒼太は茜の反対側に座った。茜はクッションを手渡し座布団にと一言言う。蒼太はそのクッションを座布団のかわりにした。

「いやぁ、世界は終わるのかね?」

呑気な口調で問いかけてきた。

「それを聞きに、わざわざ人のアパート前で寝ていたんですか?」

呆れたというように茜は聞き返す。

「それがメインじゃないんだけどね。今話題だし聞いてみたい。」

急に真面目な顔になる。しっかりと茜の方を向き続けた。

「理由ななんでも良いが、世界は終わるらしい。しかも23日の18時だと。そこまで分かっていてどうしようも出来ない確定事項。今まで積み重ねてきたものがその日全て消えるらしい。大学卒業のために講義に出たのに。まぁ、就職決まってないから良いけどさ。」

真面目な顔で不真面目なことを言い始めた。真面目なときは塩顔イケメンといった感じだったのに残念としか言い様がない。茜も蒼太を見ながら返答した。

「良いじゃないですか。苦しくない、一瞬で全てが終わるなんて。私は別に後悔もないです。」

蒼太から視線を外しテーブルを見つめながら続けた。

「1番大事な友達とも会えたし、食事もしてきた。言いたいことはあるけれど後悔を残すようなことはないです。なので世界が終わるのは構いません。それに…」

そこまで言うと茜は話すのを辞めた。

「なるほど分かった。」

蒼太はそう言うと腕を組み話す。

「後悔がないから良いってことか。」

うんうんと頷くようにし、だから世界が終わるのは問題ないのかと問いかけた。茜はそうですと答えた。腕を組みながら蒼太は言う。

「後悔がないようにか。確かに全部消えるのに後悔があったら嫌だもんな。」

蒼太はそこでまた頷くようにし目を閉じている。茜は問いかけた。

「で、他に聞きたいことがあったんじゃないですか。」

座椅子から立ち上がりながら茜は聞いた。そのままキッチンへ向かう。

「何飲みますか。お茶とりんごジュースの2択です。」

コップを手に持ち蒼太に聞いた。

「りんごジュースが良いな。」

分かりましたと言い、飲み物を注いだコップ2つをテーブルに置き、座椅子に座った。

「聞きたいことってか、頼み事かな。」

そう言うとりんごジュースを一口飲んだ。

「頼み事ですか。私に。」

茜の表情が少し曇った。なんですと問いかけ茜も一口りんごジュースを飲んだ。

「明日デートしようぜ。」

一口飲んだりんごジュースが入ったコップを置き、笑顔で言った。

「は?」

茜は言う。飲んでいたりんごジュースを吹き出しそうになった。

「は?じゃなくてそこは、はい!だろ?」

にこやかに言う。

「ぶん殴っても良いですか?いや、シラフですよね?ぶん殴っても意味ないか…とりあえず自己満になるので。」

眉間にしわを寄せ鋭い目つきでにらむ。しかし、蒼太はうろたえることなく口を開く。

「俺のこと嫌いか?」

別に嫌いじゃないです。と茜は答えた。なら良くないかと蒼太は言い続ける。

「どうせヒマだろ明日予定もないし、真面目に講義出るとかやってらんないし。世界は終わるしなー。」

テーブルの上にあるコップを持ちながら言う。

「確かに…デートじゃなくて暇つぶしに遊びに行くなら良いですよ。」

はぁ、とため息を漏らしながら答えた。

「じゃ、茜っちはそのつもり、俺はデートのつもりで行こう。時間は…そうだな、朝の10時に迎えに来るから。」

分かりましたと答えりんごジュースを飲む。ただし、と切り出し茜は言う。

「茜っちは辞めて下さい。ウゼーです。」

分かった分かったと手をヒラヒラさせながら蒼太は答える。

「じゃ、明日な帰るわ。」

分かりました。と茜は答える。りんごジュースの入ったコップは両方とも空になっていた。

ピピピと目覚まし時計が時を知らせる音を鳴らす。目覚まし時計を止め、凪野茜はしまったと思った。いつもの癖で目覚ましをかけたが、バイトは休み、講義もなく全休だ。二度寝をしようとも思ったが、妙に目が覚めてしまったので仕方なく身体を起こす。あくびをしながら顔を洗った後、テレビの前にある座椅子に腰掛けテレビを付けた。付けたテレビでは朝の料理番組が放送されていたが、茜は見ていなかった。普段からテレビは付けるものの、BGMと化していた。スマートフォンをいじり、何となく近くにあったクッションを膝の上に置いた。

「まだ7時40分か…」

呟いた後、茜は立ち上がりキッチンへ向かう。バイト先のパン屋で買った6枚切りのパンを開け2枚をトースターに乗せる。付け合わせにとウインナーをボイルし隣のコンロでお湯を沸かす。3年も自炊をすると手慣れてくるなと考えていた。トースターから焼き上がったパンを取り出しバターを乗せた。熱で溶けたバターの香りがキッチンに広がる。残った1枚はイチゴのジャムを塗り、ボイルしたウインナーはトーストと同じ皿のすみにのせた。

「あとは。」

そう言うと、シンプルな白いカップにインスタントスープの素を入れお湯を注ぎ溶かす。コーンスープだった。それらをテーブルに運び座椅子に腰掛た。

「いただきます。」

朝食を食べようとバターを塗ったトースターを口に運んだ。その時、テレビから速報を知らせる音が流れる。同じタイミングでスマートフォンからも速報を知らせる音が鳴った。テレビの画面が料理番組から切り替わり、報道番組のアナウンサーが出てきた。画面の向こうでは人が慌ただしく動いているようだった。放送準備が終わっていないのか全体的に聞き取りにくかった。しかし、初めは聞き取りにくかった音も徐々に聞き取れるようになった。だが、その内容は全く頭に入って来ない。

「巨大な……が地球に接近して…る模様です。この隕石は……地球にぶつかる………地球は滅ん……ま…い……す。繰り返します…」

訳の分からない内容がテレビから流れており、現実味は全くなかった。ハッと我に返るとスマートフォンが震えている。画面を見ると同じ大学の友人、栞からの着信だった。

「もしもし栞。」

状況とは裏腹に茜の口調はいつも通りだった。

「あ、茜テレビ見た、あ、あ、あの話し本当に本当に本当かな?」

一方、友人の栞はとても焦ったように答えた。茜は少し考えて口を開いた。

「どうだろう…分からないけど。」

ふと画面を見るとテレビの画面は花畑の写真を写していた。しばらくお待ち下さいと表示されている。 

「あれ?栞?」

耳元のスマートフォンは混線してるのか通話が切れていた。茜は「12時に大学で。学食のスペースに居るから。」と栞にメッセージを残しスマートフォンで今の状況を調べ始めた。案外読み込みは早かった。テレビは、しばらくお待ち下さいから変わらなかったので消した。ネットの掲示板を見つけ閲覧する。

「まぁ、喜ぶ人も居るよね。」

掲示板では終末キター!、地球終了のお知らせ、ついに終わるんや、などと書いてある。その中から地球が終わる理由まとめとリンクがあり中を見た。しばらくそのサイトを見た後に一息ついた。時間は9時半を過ぎていた。

「あっ…」

テーブルには冷えきった朝食があった。完全に忘れていた。仕方がないのでコーンスープだけレンジで温め、他はそのまま食べた。冷えた朝食を食べ終え、食器を片づけ、歯を磨いた。その頃には10時に差し掛かっていた。

「軽く準備しちゃおうかな」

茜は衣服を脱ぎ着替え始めた。長袖にジーパンというラフなスタイルに9月に入りうっすら寒くなってきたので、少し長めの薄いカーディガンを羽織る。その後また座椅子に腰掛け出かける時間までスマートフォンを弄っていた。11時半になり茜は小さめのバッグを持ち家に鍵を閉め大学へと向かった。大学までは徒歩で30分もかからない。

「あんまり普段と変わらないな。」

誰というわけでもなく呟いた。大学までの道のりはアパートを出て直ぐにあるコンビニ、最寄りのスーパー程度のものしかなかったがいつも通りだった。もっと暴動や強盗のような世紀末を想像していたが実際はそうでもなかった。大学までは特別に何があるという訳でもなく大学に到着した。フリースペースへ向かおうとしたが声を掛けられた。

「茜」

栞が手を振る。駆け足で栞は茜に近づいてきた。

「あ、あのさ…」

早口で焦っているのが見て分かる。

「とりあえず座ろうか。」

茜は栞と一緒にフリースペースに向かい椅子に腰掛けた。来る途中に自販機でペットボトルのお茶を買ってきた。

「地球が終わるって言うわりには講義なんてやってるんだね。」

そう言うと茜はお茶を一口飲んだ。

「た、確かにそうかもね。」

栞の顔は少し硬い表情だった。

「案外さ来る途中いつもと変わらなかった。なんてーの、こう、もっと荒れるもんだと思ってたんだよね。」

茜はペットボトルの蓋を閉めながら言う。

「何で地球は終わっちゃうのかな…」

栞は外を眺めながら言った。

「調べてみたんだけど隕石だって。なんか詳しくはよく分からなかったけどそんな感じらしいよ。」

茜はスマートフォンを取り出した。

「慌てないんだ。」

栞は呟くように言う。目線は自分の手元を見ていた。

「現実味はないよね…あのさお昼食べに行こうどうせ終わるならパーッとしちゃお。」

それは良いねと栞は同意した。その後ファミレスに入り夕方まで2人で食事をとりつつ様々な話をした。明日からどうするか、講義に行くのか行かないのか、本当に地球は終わるのか、そんな話をし2人は帰りに着いた。

「栞は実家に帰るのか…まぁ、そうだよね。どうせ講義に行く意味もないし。私は…」

そんな事を呟き部屋のドアが見えてきた。

「え?」

部屋の前に誰か座っていた。薄暗く分かりにくかったが男性のようだった。しかも寝ていることが分かった。その人影に近づき誰か分かった茜は口を開いた。

「ちょっと、蒼太先輩!」

寝ている男に声を掛けた。蒼太先輩と言われた男は、んぁと声を漏らしながら伸びをしつつ口を開いた。

「んー…あ、いやぁ、インターフォン押したけど出ないし眠いしで寝て待ってたわ。」

蒼太は大きい声ではないが明るいトーンでそう言った。

「会う予定すら立ててないですよね。」

ため息交じりにそう言うと部屋の鍵を開けた。

「とりあえず話しは聞きましょう。」

部屋に入った後に蒼太へ部屋に入るよう促した。

「おじゃまします。」

そう言うと玄関で靴を脱ぎ部屋に上がる。靴はしっかりと揃えられている。

「あ、これ土産な。」

袋を突き出された。中身は大量のスナック菓子やつまみが入っていた。茜の好きなものだけというわけでもなく、適当に選んだ感じがした。

「ありがとうございます。で、何の用事ですか?」

貰ったお菓子をテーブルの横に置き茜は座椅子に座った。蒼太は茜の反対側に座った。茜はクッションを手渡し座布団にと一言言う。蒼太はそのクッションを座布団のかわりにした。

「いやぁ、世界は終わるのかね?」

呑気な口調で問いかけてきた。

「それを聞きに、わざわざ人のアパート前で寝ていたんですか?」

呆れたというように茜は聞き返す。

「それがメインじゃないんだけどね。今話題だし聞いてみたい。」

急に真面目な顔になる。しっかりと茜の方を向き続けた。

「理由ななんでも良いが、世界は終わるらしい。しかも23日の18時だと。そこまで分かっていてどうしようも出来ない確定事項。今まで積み重ねてきたものがその日全て消えるらしい。大学卒業のために講義に出たのに。まぁ、就職決まってないから良いけどさ。」

真面目な顔で不真面目なことを言い始めた。真面目なときは塩顔イケメンといった感じだったのに残念としか言い様がない。茜も蒼太を見ながら返答した。

「良いじゃないですか。苦しくない、一瞬で全てが終わるなんて。私は別に後悔もないです。」

蒼太から視線を外しテーブルを見つめながら続けた。

「1番大事な友達とも会えたし、食事もしてきた。言いたいことはあるけれど後悔を残すようなことはないです。なので世界が終わるのは構いません。それに…」

そこまで言うと茜は話すのを辞めた。

「なるほど分かった。」

蒼太はそう言うと腕を組み話す。

「後悔がないから良いってことか。」

うんうんと頷くようにし、だから世界が終わるのは問題ないのかと問いかけた。茜はそうですと答えた。腕を組みながら蒼太は言う。

「後悔がないようにか。確かに全部消えるのに後悔があったら嫌だもんな。」

蒼太はそこでまた頷くようにし目を閉じている。茜は問いかけた。

「で、他に聞きたいことがあったんじゃないですか。」

座椅子から立ち上がりながら茜は聞いた。そのままキッチンへ向かう。

「何飲みますか。お茶とりんごジュースの2択です。」

コップを手に持ち蒼太に聞いた。

「りんごジュースが良いな。」

分かりましたと言い、飲み物を注いだコップ2つをテーブルに置き、座椅子に座った。

「聞きたいことってか、頼み事かな。」

そう言うとりんごジュースを一口飲んだ。

「頼み事ですか。私に。」

茜の表情が少し曇った。なんですと問いかけ茜も一口りんごジュースを飲んだ。

「明日デートしようぜ。」

一口飲んだりんごジュースが入ったコップを置き、笑顔で言った。

「は?」

茜は言う。飲んでいたりんごジュースを吹き出しそうになった。

「は?じゃなくてそこは、はい!だろ?」

にこやかに言う。

「ぶん殴っても良いですか?いや、シラフですよね?ぶん殴っても意味ないか…とりあえず自己満になるので。」

眉間にしわを寄せ鋭い目つきでにらむ。しかし、蒼太はうろたえることなく口を開く。

「俺のこと嫌いか?」

別に嫌いじゃないです。と茜は答えた。なら良くないかと蒼太は言い続ける。

「どうせヒマだろ明日予定もないし、真面目に講義出るとかやってらんないし。世界は終わるしなー。」

テーブルの上にあるコップを持ちながら言う。

「確かに…デートじゃなくて暇つぶしに遊びに行くなら良いですよ。」

はぁ、とため息を漏らしながら答えた。

「じゃ、茜っちはそのつもり、俺はデートのつもりで行こう。時間は…そうだな、朝の10時に迎えに来るから。」

分かりましたと答えりんごジュースを飲む。ただし、と切り出し茜は言う。

「茜っちは辞めて下さい。ウゼーです。」

分かった分かったと手をヒラヒラさせながら蒼太は答える。

「じゃ、明日な帰るわ。」

分かりました。と茜は答える。りんごジュースの入ったコップは両方とも空になっていた。

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