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鬼人少年は退屈しない  作者: 自然彩
1/1

妖古物の箱に入るまでに………

連載に時間はかかりますが、頑張りますので読んでいただけると幸いです。

「精夜!精夜!!目を開けろ!死ぬな!!」


声が聞こえる。そこで泣きそうな声で俺の名前を叫んでいるのは誰だ?聞き覚えのない声だ…。………おい、落ち着けよ…大丈夫だから……。


ピーピピピピピピ!


精「んん〜。五月蝿い…。もう少し寝かせろ。」


少年はそう言いながらも目覚まし時計を止め、今の時刻を確認する。時刻はもう既に8時をまわっていた。

本来であれば家を出ている時間帯だ。


精「!!やっば!お前ら何で起こしてくれなかったんだよ。」


妖「何度も起こそうとしたよー。でも全然起きないんだもん。」


妖「精夜が寝坊するのも珍しかったからつい。にしても本当に珍しいね。初めてなんじゃない?」


妖「「ほんとほんとー」」


精「うるせえ!朝から騒ぐな。お前らのことは親父と母さんにも内緒にしていることは分かってるだろ。見つかったらお前らは祓われるし、俺は追放だ。何度でも言うぞ、絶対にバレるなよ?」


妖「分かってるよー。」


不安だ……ものすごく不安だ。


俺は白神精夜。妖怪祓いの名家、白神家当主の息子。

まあ、俺自身はあまり自覚がないんだけど。


今俺の部屋に居るのは妖怪。

本当なら祓わなければならない存在。それが俺の仕事、そして役目。


だったんだが………


約1年前、俺は鬼人になった。なったと言っても普段はほとんど人間と変わりはない。姿はなる前と何一つ変わっていないし、霊力も元のまま。


だがそれはあくまで普段での話であり、ほとんどということはほんの少しの変化はある。


部屋にいる妖怪は、妖怪にのみ感じることが出来る微かな俺の妖気に集まって来た。なんだかんだ1年一緒に居ると仲良くなったのだ。


因みに、妖怪達の妖気がバレていないのは俺の霊力による力が働いているからだ。


俺が鬼人になったこと、妖怪を家に住まわせていることは、俺の4人の友人以外誰も知らない。勿論親もだ。


精「じゃ、学校行ってくる。」


妖「「行ってらっしゃーーい。」」


精夜は走って階段を降りて行き、玄関で靴を履く。


精母「精夜、朝ご飯は?遅刻しそうでもしっかり食べて行かないともたないわよ。」


精「いやいい。購買でなんか買って食べるから。じぁあ。」


精母「そう?行ってらっしゃい。」


そこから学校まで猛ダッシュ。

精夜は駆け込みでギリギリ間に合った。

自席に着き、1度落ち着く。


精「何とか間に合ったー。」


ホームルームが始まり、授業が始まり、色々あって放課後になった。


良「精夜、この後どっか行こうぜ。」


精「良真、お前そればっかだな。まあ、別にいいけど……。秀と悠斗も行くのか?」


風上良真、木野秀、七瀬悠斗。俺の同級生であり、妖怪祓いの同士だ。風上家、木野家、七瀬家もそれなりの名家で代々霊力が強いとされる。

俺の秘密を知っている友人4人の内の3人だ。


秀「僕は行くよ、暇だし。悠斗はどうするの?」


悠「なら俺も行くわ。別に予定とかも入ってないしなー。」


全員参加を確認した良真は、行く場について話した。


良「んじゃ決まりー。最近新しくできた"妖古物の箱"っていう店、知っているか?」


精「知らないけど…。妖古物……?」


妖古物……んん〜、どっかで聞いたことがある単語だ。どこだったっけかなー?

………………!あ、親父が言っていたやつか。


(ーーー精夜、妖古物を知っているか?

ーーー妖古物?

ーーーああ。その名通り妖つきの古い物のことだ。その家に災いを振り撒く物もあれば、逆に幸福をもたらしてくれる物もある。私達はそれも見極めねばならない。よく覚えておけよ。)


精「あ、俺やっぱり知ってる。前親父が言っていた。」


悠「え、俺知らねー。」


精夜がボソリと呟いた後に悠斗が反応した。すると秀も知っていたらしく、簡単に説明し始めた。


秀「妖怪つきの古物だよ。持っているだけで不幸を招く物もあるし、幸福を招く物もあるんだって。」


悠「へー、って危なくねーか?」


悠斗は今から行こうとしている店が、その妖古物を売っている裏社会の店だと悟った。悠斗以外は妖古物がどういう物なのか知っていたらしく、精夜を含む3人は"今更?"と悠斗に突っ込むのだった。


良「どうする?辞めるか?」


良真が確認する。


悠「いや、折角だし行ってみようぜ。まあ、親にバレたらキレられっけど……。」


正直精夜はあまり行く気にはなれなかった。行くと言ったのも場所を聞く前だったので、少し油断したと後になって後悔した。同時に精夜は、良真のそういうところは抜け目がないと感心した。


精夜達4人は予定通り帰りに"妖古物の箱"という店に向かった。


精「本当に大丈夫なのか?良真。行くと言っておいて悪いが、なるべく早く帰りたい。家にいるアイツらが何かしでかしそうで怖い。」


良「あー、まだ家にいたんだあの小妖怪共。………多分大丈夫だろ。アイツら意外と隠れるの上手いと思うぞ?ほら、お前の霊力で隠していなくても見つかってねーみたいだし。」


精「いや、ちゃんと漏れないように気封じの結界張ってるし。」


良「なら大丈夫だろ。アイツらもちゃんと分かってるって。」


良真は苦笑いでそう言った。"分かってくれればいいけど"と言うと同時に目的地に着いた。


悠「うわ、古!ここか?良真。」


良「ああ。」


"いや、これは店と言うより廃墟じゃないのか?"と誰もがそう思った瞬間であった。


秀「なんか気味が悪いね。」


秀の言葉に皆が頷く。

その外見は酷いとしか言いようがなかった。蜘蛛の巣がそこら中に張り巡らされており、建物そのものは腐敗しているように見える。


まるで何百年も忘れ去られて、今じゃ使われていない山奥の廃墟のようだ。


精夜がそう思っていると、突然建物の扉が開いた。それもゆっくり、誘っているかのように……。


人がいる気配は全くなかった。普通の一般人ならここで気絶するか、逃げ出すかの2パターンなのだが、生憎この4人は家柄状慣れていた。


妖類は見えるし、話せるし、触ることもできる。おまけに祓う技術もそれなりにもっている上、鬼人になった精夜と毎日のように一緒にいるのだ。4人は驚きはしたが、さほど大きいリアクションは見せなかった。


精「どうする?入ってみるか?……これってあれだよな…。いや、店の名前からして怪しいってことは分かっていたんだけど…。」


精夜がそう問いかけるが、それと被さるように悠斗が腑に落ちない顔で怒鳴った。


悠「て言うかなんで良真まで驚いてんだよ!来たことあるんじゃないのか?!」


良「いや、来たことがあるなんて言ってないぞ。ただ噂を聞いて行ってみたいと思っただけだ。」


その後良真から詳しい話を聞いてみると、どうやらここは1部では有名な心霊スポットらしい。


夜、この建物の前を通ると小さな笑い声がするという噂や、遊び半分で入った人が病気になったり事故にあったりなど、不可解な出来事が起こったという噂もある。


良「さっき勝手にドアが開いただろ?気にならねーか?」


秀「確かに気になるけど……いいの?勝手にこんな。親にバレたらやばい事になりそう。」


精「で?結局入るのか?良真は入ることに賛成、秀は反対、悠斗はどうだ?」


………………ーーー


結局話し合った結果入ることになった。なんだかんだでもう夜の18時だ。親には先程携帯で"皆で出かけてくるから遅くなる"と言ってある。


悠「結局入ることなんのかよ。で?誰先頭?」


良「いや、先頭とかいいから全員で行かね?明らかに何かいることは間違いないんだし。」


そう。先程勝手に扉が開いたことだ。風ではまずありえない。何かがいることは一目瞭然だった。


秀「分かってて行くんだね。相変わらず好奇心旺盛だね、良。精夜はこれ、どう見る?」


精「なんかいるだろうな。まず間違いなく。気配は色んな所に充満しているから数は分からねーけど。」


鬼人の神経を研ぎ澄ませて中の気配を探ろうとするが、何かの妖力が働いているのか、気配が充満していた。酔いそうな程に。



秀「へー。精夜が言うってことは間違いなさそうだね。でも、充満しているってどういうことだろう。………気をつけておいた方がいいのかもしれないね。」


精「そうだな。」


まずい。やけに嫌な予感がする。良真、悠斗、秀の実力なら大抵の妖怪は大丈夫だろうが………いざとなったら俺がやんねーと。


決意して身構える精夜。


良「んじゃ、入るか。」


4人が横並びになって一斉に敷地へ入る。左から良真、悠斗、秀、精夜の順だ。家の扉の前まで来た4人は先程空いた扉を見つめる。


悠「この家、いつ建てられたものなんだろうな。それに、そもそも前からここにあったのかも怪しいし。不気味としか言いようがねーな。」


良「前から?…………確かにな。こんな腐敗する寸前の家、危険だから取り壊されても可笑しくねーのにな。」


秀「ますます不気味だね。親に一度相談した方がいい気もするけど…。」


精「……………。」


入る直前で4人は足を止めた。段々嫌な予感が強くなってきたのだ。三分ほど沈黙が続いた。その三分の間に色々なことを考えていた。


良:ここは引き返すか…。いや、明日またここにこの家があるとは限らない。恐らく家の中にいる奴は俺達が普通じゃないことを知っている。……引くことが最善か入ることが最善か。


悠:……身の安全を考えればここで引き返す方がいい気がするんだよなー。下手すりゃあ無事で帰れるか分からないぞ。


秀:良真と悠斗はこの状況をどう考えるんだろう、しばらく沈黙が続いているけど……。ん?精夜?なんか……精夜の顔色が悪い?ような……。


三分後、第一声を発したのは秀だった。


秀「精夜、大丈夫?なんか…顔色悪くない?」


その言葉に良真と悠斗も反応して、精夜の方に顔を向ける。


良「おい、大丈夫かよ。どうした?」


精「いや、酔っているだけだ。なんかめちゃくちゃ酔うわ、ここ。」


顔は少し青いが、どうやら大丈夫そうだ。


敷地に入った途端急に気配が強くなったな。いつになってもこれだけは慣れないな。気持ち悪!


良「帰るか?」


精「いや、入ろう。気配は強いけど、敷地に入ってみて分かった。妖力はさほど強くない。逆に弱っていっている気さえもする。」


秀「気配は強いけど妖力は弱っているってことは……霊の類?今までの不吉な噂を踏まえて考えると悪霊だと思うけど………ん?そもそもこの家って妖古物の箱っていう"店"なんだよね。」


「「「あっ………、」」」


そう、ここに来る前のことを思い出してほしい。この家は"妖古物の箱"という"店"なのだ。

妖古物は幸福を招くものもあるとは言ったが、ほとんどのものが不幸しか招かない。そしてここは裏社会の店である。何も知らない一般人が入れば妖古物の力により不幸が訪れる。


秀「僕もこの家の古さに圧倒されて忘れてたんだけど、妖古物は大半が不幸を招くから霊力がない一般人は裸でジャングルの中に突っ込んでいるようなもの。当然妖古物の力に当てられて不幸が訪れる。気配が充満しているのも、妖古物が大量に色んな所に置かれているからなんじゃない?妖古物って、妖怪を封じ込めたもの、宿っているものが多いし。妖力が弱ってきているっていうのは、恐らく妖古物に宿っている妖怪の妖力が精夜の鬼人の妖力におされて負けているから。古いのに取り壊されていないのは、裏社会の店として成り立っているからかな。元々人通りも少ないしね。扉が勝手に開いたのは多分………。」


言いかけたままドアノブに手をかけて扉を開ける。すると………


「ミュー!」


鳴き声がした。見てみるとそこには兎のような狐のようなよく分からない生き物がいた。妖怪だ。


秀「やっぱり。さっき尻尾の方がチラって見えたんだ。この妖怪だと思うよ、扉を開けたの。」


秀の説明に他の3人はポカーンと黙り込んでいた。少し拍子抜けだ。


良「余計な心配して損した。そうだ、そういえばここ、妖古物の店だったな。つーかもっと早く言えよ!」


悠「いや、言い出しっぺの本人が忘れるんじゃねーよ!まあ、俺も途中から忘れてたけど。」


精「地味にビクッた。まあ、気味が悪いのも気持ち悪いのも変わらねーけどな。嫌な予感も恐怖からか?」


まじでやばいと思ったけど少し安心した気分だ。けど、あの予感も気のせいなのか?妖古物は妖怪が宿っているもの。妖怪がその古物から離れることもある。それとも封印が解けた?もし嫌な予感が当たっているのなら………


良「んじゃあ、気分取り直して入るか。結局危険なことに変わりはないが、案内頼むぞ、うさぎつね。」


う「ミュー!」


良真が付けたうさぎつねという名前は置いといて、うさぎつねは耳をピンと立て返事をした。簡単に訳すと"分かった"という意味だ。そうして4人と1匹は妖古物の箱へ入っていった。

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