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目ぇ閉じなくていいんだよな!?

§



……

……

……

え?

は? 

あ? 

……

……

ほおおお?

へええええええっ??


ギャーーーーーーーーーーーッ!!!!!

ニャーーーーーーーーーーーッ!!!!!


なに言ってんだ! 

なに言ってんだ!!

なに言ってんだーーー!!!


違うだろ!

フッてやるんだろ!

ぶった斬ってやるんだろ!


ていうか今の生涯一の全力の可愛い声でしょ!?

渾身の会心の一撃でしょ!?

こんな奴にもったいない!

こんなとこで出してんじゃねーよ!


モヒカン!

なにか言え!

恥ずかしすぎて頭が沸騰して顔の皮膚が溶ける!

おいこら! 溶け落ちないように両手で頬に触るとか、可愛らしいことしてんじゃねーよアタシ!


「……マジ?」


とか聞いてんじゃねーぞ! モヒカン!

確認か!

確認しちゃってるんですか!


「……マジ」


とか三割増しの可愛い声で答えてんじゃねーってーの! アタシ!

そんなに可愛く見られたいのかっつー話じゃんよ!!

キィーーーッ!!

マジでチョー恥ずかしい!


「わり……もっかい言ってくれるか?」


アホか!!

バカ野郎が!!

恥ずかしくて言えるか!!


「バカ……ふざけんな」


普通、告白の返事聞き直したりする?


アタシは経験ないから分からんけど、ないだろ、普通。

うん、ないない。

ないわー。

ないっすわーモヒカンパイセン。


「頼む」


くっ……っそが!!

声も表情も視線も真っ直ぐすぎるって!

これじゃ逃げられんだろーが!


ああクソ。

また目ぇ逸らしちまったし。


……ったく……ホント……クッソ……もう……

ああ、分かったよ……



「だから! あ、あ、アタシもす……好きって! 言ったの! ちゃんと聞いとけ! バカ!」



あああっ!

もうっ!!

噛んだっ!!

しかも罵倒するとか!


にも拘わらず、アタシのその言い直しでモヒカンが震えた。


深呼吸みたいのしてるけどガクガクしてる。

人の指先がこんな震えてるの初めて見た。


「マジか……ちょっ……悪い……く……(ハア……)」


モヒカンはそう言って左手を翳してアタシを制し、右手で胸を押さえ、さらにアタシに向けた左手で顔を覆った後、思い切り息を吸って、苦しそうにすごく深い溜息を吐いた。


……どうやら心臓が痛んでたのはアタシだけじゃなかったようだ。


震えてんのか?

泣いてんのか?

ホントに苦しいのか?

心配しちまうだろーが。


おいモヒカン……


「おい、モ」


「おおおおおおーーーーーっしゃぁっ!!」


「ヒィッ」


びっくりした!

どうしたモヒカン!

それは日本シリーズでサヨナラヒットを放った野球選手か、後半アディショナルタイムで劇的ゴールしたサッカー選手もびっくりのガッツポーズだぞ!


「やった……やった! やった!! やった!!!」


今度は葉っぱ隊かよ……って、なんで葉っぱ隊を知ってるかって、昔小さい頃にお爺ちゃんが動画で見せてくれてさ。

アタシ、一時期ゲキハマりして、かなり大喜びで何度も見たんだ。

それだけじゃなくてマネまでしててさ。

でっかい葉っぱ探してきて。


ていうかそんなことどうでもいいんだけど、思い出して吹き出しそうになるの我慢するってしんどいよねって話。


「ナバホ! 俺ホント! マジで嬉しい! ホント! チョー嬉しい!」


あー……

そうだね……

なんかこう……


うん。

伝わる。


こんなに喜んでくれてるってのが素直に嬉しいよ。

最近こいつのこんな子供っぽいの見てなかったな。


あらら。

つーことはなんだ、さっきから初めて見るとか、久しぶりに見るとかさ、今頃気づいちゃったけど、逆にアタシはいっつもこいつのこと見てたってことだよね。


あーあ。

そうか。

認めるよ。


アタシはこいつを見てた。


アタシはモヒカンに憧れてたんだと思う。

モヒカンみたいになりたいって。


正しいこと、間違っていることをはっきりと言えるこいつのように。


真っ直ぐに気持ちをぶつけられるこいつのように。


困ってる奴をさりげなく助けるこいつのように。


モヒカンに認められたかった。

モヒカンに負けたくなかった。

モヒカンに失望されたくなかった。

そういう自分でいたかった。


これってたぶん、アタシなりに好きってことだったんだね。


だからこいつに好きって言われて。


うん。

やっぱアタシはすごく嬉しかったんだ。


モヒカンが何人かにコクられたって聞いた時ムカついたのも、認めるのは癪だけどさ、あれ、ヤキモチだったんだ。


コクられて初めて自分の気持ちに気付くとか、そんなありきたりな三文芝居チックな展開、自分に起こるとは思ってなかったけど。


でもホントよく分かる。

だってアタシもチョー嬉しいもん。


「……喜びすぎっしょ」


またまたアタシったら。

照れてんじゃねーよ。

まったく素直じゃないんだから。


「だってよー、小五からだぜ? お前、俺がどんだけ好き好きアピールしても全然気づかんし。いっつも女とばっかりつるんでっから、もうてっきり男に興味がないそっち系かと思ったりよー」


だからお前はアタシを何だと思ってんだ。

性格とか態度にいろいろ問題はあっても花のJKなんだから普通に興味あるに決まってるだろーが。


つーかアピールなんてあったか?

いや、ないだろ。

ないよな?

うん、ないない。


それよりなんだ? そっち系って。


「そっち系?」


「あ? ああ、キマシ塔な」


意味分かんねーって。


「キマシ? なに?」


「知らねーの? キマシタワーって」


なんだそりゃ。


「知らねーな」


「だから百合とかレズとか」


野郎!!

ふざけんな!!


「てめえっ!! ガハッ!!」


痛え!!!


「バッカ、お前ビンタとか……右手怪我してんだろ?」


「……ちょ……今……黙ってろ……」


あと一言でもしゃべったら殺す!


足の小指を箪笥の角にぶつけたりとか、向う脛を椅子にぶつけたりとかして痛みに耐えてる時って、面白がって話しかけてくる相手に殺意を催す時あるよね? 

え? ない? ウソでしょ!?


なかなか痛みが引かない。

鎮まれ……右手に宿る邪龍よ……

つーか冗談抜きでこの痛みは尋常ならざる怪我かもしれない。


というか、ちょっと待て。

こっちがこれほどの怪我をしたのなら、モヒカンやついでに脳筋ゴリラは無事なのだろうか。


「……モヒカン……唇とか……ほっぺ大丈夫?」


ああもう……ほっぺとかよ!

顔でいいだろ顔で!


ホント何なんだろうね、この乙女モードは。

そのモードを自分でなんとなく気に入ってるような気がするからさらに恥ずかしいわ。


「ん? 全然平気。道場じゃもっときついの入れられる時もあっから。でもまあ、今までナバホに喰らったやつん中じゃ最強レベルだったな。それよかなんつーかナバホ」


「ん?」


って、おい。


おい?


おいおい!!


おおおおおおお!!

近い近い近い!!

顔寄せんな!!


まさかキスじゃねーだろーな!

違うよな!?

そんな流れじゃねーだろ!?

色々取っ払っていきなりですか!

六年我慢してきたからってそりゃないでしょ!

アタシ、ファーストキスなんですけど!

いやマジで!?

ウソでしょ!?

逃げたら傷つく!?

嫌がったら気持ち疑う!?


目ぇ閉じなくていいんだよな!?



あ、クソ! 閉じちゃった!!



唇は突き出した方がいいの!?

分かんねーよ!!


……、

……、

……、

……、

……、

……???


唇ピクピクさせながら待ってるのに、なかなか来ない感触に待ちくたびれて目を開けると、斜め下から覗き込み、揶揄うように笑うモヒカン。



「ほっぺとかよ、さっきからなんかやたら可愛いじゃねーか」



キューって感じで顔が赤くなるのが自分で分かった。




「野郎!! ぶぶッ、ぶッッ……ぶッ殺すっ!!!」






読んでくださりありがとうございます。

続きもよろしくお願いします。

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