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2-5-2 金の少女、朝を迎える



「……ん」


 温かい何か幸せなものに包まれているのを感じて、ソーラヴルは目を覚ました。

 カーテンの向こうは夜。だが夜闇が薄くなっているのが分かる――薄明の頃。

 

 辺りを見回したソーラは、そこが自室ではなくて父リオンの部屋であることに気が付いた。大好きな父に抱き着いて夢を見ていたのだ、とても温かい、幸せな夢を。


「自分の部屋で寝なさいって、何時も言われてるんだけどな」


 昨夜は遅くまで酒場で騒いでいた。

 その後は自分の部屋で寝たはずなのだが目を覚ますのはいつもリオンの横だ。寝ている間にいつの間にか、無意識で移動しているのだ。リオンも気が付くことなくシーツに潜り込むのはいつものことだった。


 まだ眠りの中にあるリオンを起こさないように、ソーラはベッドを降りた。リオンを挟んで反対側、シーツに半ば潜り込んでいる銀色の頭を見つけた。父のベッドに潜り込むのは何も自分だけではない。

 見ればベッドの陰から白い尻尾。セレネルーアの使い魔である、白狼ハティだ。

 ソーラ自身が卵から育てた黒隼のホルスも、椅子の背もたれに止まっている。 


「これじゃ寝室別けた意味ないよね。だからみんなで一緒に寝ようって言ってるのにパパったら……じゃあ、行こうかホルス」


 大きく伸びをしてホルスに手を差し伸べると、ソーラは音を立てないように部屋の外へ。そして扉を開いて庭へと出る。


  

  †



 まだ、朝日は遠い地平の向こうにある。

 それでも東の空が明るくなり、夜が西へと退いていく。どんなに夜更かしをしていても、ソーラはいつもこれくらいの時間に目を覚ますのが常だった。


 念入りに準備体操をして、強張った体を解していく。

 そして続いて何もない空間に向かっての型稽古。父リオンはかつて多くの魔獣や魔物たちとの戦いの最中、徒手空拳となることもあった。その時の経験から編み出された動きが、ソーラの基本となっている。

 特に闘気や魔力を込めることなく、しかし鋭い拳を、蹴りを繰り出して動作の一つ一つを確認していく。


 一通りの動作を確認し終わった頃には、すっかり東の空が白んでいた。

 それを見てソーラヴルは膝を折って屈伸を始めた。


「……ふっ!」


 軽い呼気と共に跳躍。屋根へと手を掛けると、ひょいと身体を持ち上げて音もなく着地する。見る者が見ればその身軽さ、そして音を殆ど立てなかったことに驚くことだろう。

 翼を広げたホルスが、待ってましたとばかりにその肩に止まった。

 そしてソーラヴルとホルスは、今まさに昇ろうとする朝日を真っ直ぐに見つめる。


 燃えるような明け色の輝き――

 

 背中の偽装を解いて、ソーラヴルは真っ白な翼を広げる。

 服を透き通るその翼は、太陽が昇るほどに色を変えていく。

 儚さすら覚える透明感のある白から、朱の朝日の色、そしてソーラヴルの髪と同じ金の色が混じる。


 眩しそうにもせず、ソーラとホルスは昇る朝日を見ていた。

 彼女の翼に光が満ちて、朝日が大地から離れて完全に空に浮き始めると、ソーラは翼を大きくはためかせる。その翼の色は、輝く黄金ではなく真っ白な色に戻っていた。

 その翼を再び背中から消すと、ソーラはホルスに話しかける。


「さ、パパに美味しい朝ご飯を作らなくちゃね!」


 ピィ、と鳴くホルスの頬を指先で掻くと、ソーラは登った時と同じく音もなく屋根の上から飛び降りた。


今回短くて申し訳ない。

明日更新分2-6より、第二章のメインストーリーが動き出します。


次回ウソ予告「2-6 急襲! 手乗り子豚軍団!!」

ソーラヴル「かっっっっっわいいいいいい!!!」

手乗り子豚「ぷぎぃ」

セレネルーア「丸焼きに良いサイズ」

手乗り子豚「ぷぎぃ!?」

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