微熱
僕だって男だ。
好きな人は抱きたい。普通の事だと思ってた。
ましてや相手は先輩で、僕より背が高い。どう考えても僕が下で、綾小路先輩が上だ。
正直、昨日までの僕はそうだと思って疑わなかった。しかし……。
「僕は、貴博を愛したいんだ」
なんて、まっすぐ見られたら駄目だ。何も言えなくなってしまう。
それでもやはり抵抗はあった。葛藤もあった。嫌だと拒んだ事もあった。
でも、
「好きだよ」
そう言って、綾小路先輩が手を握る。僕の手は震えていた。
ここでうだうだ言ってる方が男らしくないんじゃないか。
彼が何を思って僕を抱きたいなんて言ってるかはわからない。
でも、それが彼の気持ちなら、受け入れてやりたいと思った。
「僕も」
僕の出来る、精一杯の笑顔を向けて手を握り返す。
先程まで冷たかった僕の手に体温が戻った。
気付けば彼が着ているドクロのシャツに顔が密着し、通常体温から急上昇。
今度は熱でもあるんじゃないかってぐらい熱い。
「分かりやすい奴だな」
「あなただからわかるんですよ、きっと」
「……そうか」
重なった掌から微熱が広がって、彼の顔まで熱くなっていた。