OIL鬼、萌えキュキュキュン。
俺は地獄の懲罰官、いわゆる赤鬼だ。最近配属が変わって〝オイル担当〟になっちまった。
オイル担当って何かって? ここ数十年、地獄に来る奴は、オイル絡みの奴らが増えてな、後から後からひっきりなしに地獄送りになってやって来るから、閻魔様がキレてな。OIL、オイル・イミグレーション・ラバトリー、つまり〝油関連の奴らみんなまとめてトイレ暮らし地獄〟なるものを作っちまった。
もう毎日毎日トイレのスッポンで獄人の頭を便器に突っ込む日々。
今日は原油を略奪して密輸していた連中を延々と汚物まみれの便器に沈めてやったよ。
なんだって人間はあんな真っ黒な液体に群がるのかね? 俺にはサッパリわからねえぜ。
「あ〜あ、今日も一日つかれたな〜」
溜息をつきながら肩を回すと、ゴリゴリと岩を擦る様な音がした。そういえば最近血の池温泉にも浸かってないな。今度の連休にでも足をのばしてみるか。
そんな事を考えながら、自宅たる洞窟に着くと、壁の松明に火を灯した。そこに現れたのは、一面ピンクのポスターに囲まれた萌え部屋。
俺は一番奥の神棚に貼り付けた〝二次元アイドル香久夜もえ〟のポスターに向かって、ポン! ポン! と柏手を打つ。
ああ、癒される。この笑顔、柔らかそうな体、仰向けにゴロンと転がると、天井にも〝もえたん〟のポスターがビッシリと俺を迎えてくれた。
俺は心の中で、
『萌えキュン、萌えキュン、萌えキュキュキュン』
という魔法の言葉を唱えると、もえたん抱き枕を抱き込んで眠りについた。
明日もまた激務が待っている。けど、今だけはもえたんの夢でも見て、幸せに眠ろう。
火の消えた室内で、赤鬼は直ぐにイビキをかいて眠り出した。だが彼は知らない、その抱き枕が石油製品である事を……
-----The End-----