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会いたくて 1

無事に発売当日になりました。

無事に君想いマカロンの発売日がやって来た。今日はそのプロモーションも兼ねてコンビニ会社の本社ビルの中にある店舗で一日店員体験をする事になっている。通常は、社員さんの研修の場と聞いているのだけど、今日は教育担当のベテランの社員さんが僕と一緒に仕事をするそうだ。その中には太田さんと澤田さんもいる。そのせいか思った割に緊張はしていない。

「そうだ。27日から二日間で次のCMのロケになるから。今度は二人だけ纏めて収録して、ふうくんとエキストラの撮影だけ年明けに纏める事にしたから」

「分かりました。そこは編集さんにお任せですよ」

「こないだの続きのコンテだけど今回は少しこっちで直したけど大筋はあのままだから」

「最初は2週間で1話の予定だったけど、やっぱり月に1本で変える事に変わったから、後2本で1stは終了って事でいい?」

「あっ、分かりました。そのうちにコンテあげますね」

「本当にふうくんは仕事が早いね。僕達は凄く助かるけどね」

そういうと、太田さんは僕の頭をくしゃくしゃといつもの様に撫でてくれる。僕は一人っ子だから、ちょっと年上の人達にはいつもこんな事ばかりされてしまう。

「ふうくんが子供だからやっている訳じゃないよ。俺なりにふうくんを甘やかしているつもり。ふうくんは甘える事が苦手そう。どうしてわかるか不思議そうだね。俺……長男だからさ、高山には怒られてばかりだけどさ」

「太田さんの怒られるは……お仕事の事じゃないですよね?だから諦めて下さい」

「なんだ?ふうくんはあいつの仲間だな。ってことは、今日からお仕置きに変えてあげよう」

そう言って今度は僕を擽ってくる。やっている事は楽屋での俺達と変わらない。

「あっ、やっと緊張が取れた。いい顔してくれるかと思ったらまた厄介な奴がきた。ふうくん聞き流してくれればいいよ。あんなジジイ」

「なんか言ったか?おおたぁ?」

「何も言っていません。高橋常務。今日はずいぶんお早いんですね。やはり年を召されると朝がお強くなるのですか?」

「何を言う。俺はまだ夜だって」

「ごほん、常務。いつもの様に振舞わないで下さい。今日は無垢な少年がいるんですよ。常務に怪我されたくないから、ふうくんとの面会はなかった事にしても……」

「それは困る。ごほん。発売初日のプロモーション御苦労様です。かなり企画に意見を出してくれたそうでありがとう。ホームページにはそういった情報を得た方からの問い合わせでサーバーがダウンするかと思った位でね……で、どの位参加したのかな?」

この常務さん、出来る人だろうが……相当灰汁の強い人だ。どう対処していいか判断できないから太田さんに頼ってしまおう。

「太田さん……僕には守秘義務があるのでお願いしてもいいですか?」

「守秘義務……そうだね。まだ、公開していない情報の方が多いから、そうですね……全体の8割程の大まかなアイデアを貰っていますよ。キャラクターは彼です。彼の感性をCMに活かしたいと思った結果が今回の事前プロモートでの結果ですよ。これ以上は俺も守秘義務を行使します」

常務さんって事は役員さんだよな。そんな人相手でもきっぱりと言い切る太田さんはやっぱり仕事の出来る人だ。オフモードの太田さんはちょっと子供っぽいけど。

「分かった。じゃあ、その制服姿の写真を撮って貰えないかい?」

「写真撮影は、こちらに署名して下さい」

写真に対して、今回は受け付ける事にしているが、無断に転送・掲載をしてはならないと書かれている誓約書にサインをする事になっている。そこには個人ブログ・SNSのアカウントまで書かされることになっていて、後日それを頼りに担当部署がチェックしてくれるという。

「これは相当チェックが入るな。あの件がきっかけか?」

「ええ。無駄な漏えいは許しません。これは取材されるマスコミ各社も同様ですよ」

確かにお披露目会開始1時間前なのに、マスコミの人達は誓約書にサインをしている。ちゃんと書かれた方の出席が条件だとか。マスコミには、今回の経緯は後で説明しますと書かれているので、今のところ不満は出ていない様だ。

「おはよう。ふうくん。発売初日の感想は?」

僕達の元にやって来たのは広告代理店の伊藤さんだ。本来だったら伊藤さん達がやるべき仕事を結果的に僕がやってしまった事になる。

「今回のシリーズって、僕のプロデュースが前面に出ていますけどそれでいいんですか?」

「いいも何も。他のタレントさんでもあるけどね、ふうくんまで徹底していないことがほどんど。今回のCMで本格的に企画からやりたいってタレントさんが出た場合のテストケースになるから僕らも痛手はないんだよ。今回の方針変更は聞いたかい?」

「はい。後2本の絵コンテを出すんですよね」

「そう。今回の話はだいたい時間にすると2カ月位の出来事だろう?」

確かにイメージとしては年間通したものではない。

「だからね、今回は一気に作ってしまって、残りの期間でセカンドシーズンをゆっくりと撮ろうってことになったの」

「大丈夫なんですか?」

「うん。思った割に予算総額が余ってね。CMソングはふう君の事務所でレコーディングになったからその分のコストが削減されたし、シナリオライターもCMのみだからね」

「ふうん、僕……とんでもない事やらかしちゃいましたか?」

「そうじゃなくて、ふうくんにそういう才能があったって事。ふうくんの事は知っているからアイドル止めてうちに入社しないって言えないけどね」

本気で言っている気がしなくもないけど、大手の広告代理店は有名大学じゃないと入社は困難じゃないのかな?

そんな事を話している間に、全体の打ち合わせの時間になったので、僕もメモを片手に打ち合わせに参加した。


打ち合わせをした後、僕はバックヤードで最低限のマナー研修をして貰うことになった。

「いらっしゃいませ。お預かりいたします」

「130円になります。200円お預かりします」

「お釣りは70円になります。お待たせいたしました。またご利用下さい。ありがとうございます」

「まあ、丁寧に言わなくてはって意識しないで、お客様が不愉快にならない対応を心掛けて下さい。レジの使い方を簡単に教えますね。」

今度は簡単にレジの操作方法を教えて貰う。コンビニ独自のポイントカードに、電子マネーにクレジットカード……支払いも現金以外にあるからその切り替えだけはしっかりとメモに書き留めた。

最後に教えて貰ったのは、よく売れる煙草の銘柄とそれがどこにあるかということ。

まだ法律的には吸えないから分からないは、いくらなんでも問題だと思うからね。

それと、店内で調理するホットスナックもあるけれども、今回は覚えなくていいと言われた。その代わりにストッカーに無くなった時の出来上がり時間を教えて貰ったので、その時間待てるか聞くようにと言われた。

一応の説明は受けたけれども、思った割に覚えることはたくさんある。午前と午後2時間ずつのお仕事体験は無事に終わるのかどうか不安になった。



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