楽園 2
「ふう、ナツミちゃん。初恋の収録はこれで終わり。ピアノもあの音源のまま使うからね」
「いいんですか?」
「うん。この組み合わせが凄くイメージに合っているから」
「暫く休憩しようか?」
それから僕らはスタッフさんの元に移動してこれから先の事を話しあう。
その後に、夏海ちゃんのピアノの収録をして、今日の収録は終了した。
明日はさっきのピアノ曲……ドリカムのあなたに会いたくての収録だ。
これからは、週に二日のタイミングで収録をしていくスケジュールに入ると言う。
「ナツミちゃんは学校があるから、そっちを優先でいいわよ。ふうの仕事はそろそろこっちがメインになるのかしら?」
「そうですね。1月から来年度の番組の打ち合わせとかありますので」
「高山さん、今の通りなので、今のうちにCMとかを纏めて収録してしまいましょう」
「そうですね。学校が冬休みの時に纏めて収録っていうのはどうでしょうか?」
「ふうはどうなの?年末にCM収録は平気?」
「仕事納めで終了ならいいですよ。先方の学校にも迷惑がかかるでしょう」
僕は纏めて持っていた、CMの企画案を高山さんに手渡す。
「最初のコンテの続きってことかな?」
「そうなりますね。少しずつ近づくように意識してみました……けど」
僕が答えると高山さんがパラパラと中をチェックしている。高山さんの目が子供の様にキラキラしている様な気がする。
「太田さん……コレ……いいですか?」
今度は太田さんに僕が書いた絵コンテを見せた。
「ふうくん、アイドルしながらうちでお仕事する?CMの企画作ったりしたくない?」
いきなりの提案にちょっと驚く。確かに今回の企画でアイデアを出して作って行くのは凄く難しいけれどもその分楽しくて、能動的に仕事をしている自分というのを自覚はしている。だからと言ってお仕事を継続するのはちょっと違うだろう。
「う~ん、里美さん。それってどうなんですか?」
「出来なくはないけど……社長に相談ね。確実に」
「ふうくんの事務所の誰かが出るCMなら大丈夫でしょう?」
確かに僕じゃない誰かでも同じ事務所ならプロデュースって形式にはなる。それだと僕にも相手にもプラスに働く。
「まずはマカロンですよね?その打ち合わせで雑談程度にアイデアが出て、それが企画になるって可能性もあるので互いの業務に差し支えないことを条件というのはどうでしょう?」
「ありがとう。そうしてくれると凄く嬉しいよ」
「それと、今回のCMの契約書だけども……少し変更させて貰うから。詳しい事は社長さんから聞いておいてね」
「大丈夫。ふうくんとナツミちゃんを保護することも含めたのもあるし、今回企画参加でかなりアイデアを僕らも貰っているからね。だから嫌だって言わないで欲しいんだ」
何が言いたいのか何となく分かった……企画参加って事でギャラが上乗せされるのだろう。
別にそんな事をしてくれなくても仕事しますって言えるのに、大人の事情ってのもあるのだろうから僕は頷くだけに留める。
「ありがとう。では、後日新しい契約書をお届にあがるのでそちらに伺って契約って形にしてもいいですか?」
「そうですね。日程の調整を早急に行いましょう。でも何があったんですか?」
「今回の件が僕らの上司の上に報告しまして……僕らが出したCM企画とふう君が考えて出してくれた企画と最終的に進めている企画を提出して決まった事です。逆に僕らは怒られてしまいました」
「それって、僕が皆さんの足を引っ張っているって事では?」
そんなつもりではなかったのに、話がどんどん大きくなっていく気がして仕方がない。
「大丈夫だよ。ふうくんだけなんだよ。こうやって企画を説明してアイデアをだしてくれたのは。初恋ショコラの時も、CM撮影の時に結構アイデアを出してくれたって報告をうけているよ」
そういえば、そんな事もあった様な……僕はぼんやりと思い出す。収録の前に貰った台本だと、もっと共演のモデルさんに密着するって設定だった。けれども茶室でその状態はいかがなものかと思って、近寄るって痺れた足を解すって方向性に変えて貰ったんだ。
結果的のその距離感が好感的に取られたって話は後日聞いたことだ。
CM撮影を、週末に行う事を確認して、僕らの今日の作業は終了となった。