表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/58

YES-NO 1

自宅に戻った俺は珍しくパソコンを立ち上げている。

片想いの歌や恋の歌を検索して、それを動画サイトでチェックしていた。

CMのイメージがちょっと今時を狙わないよって言われて、参考にということで

今から30年くらい前の少女漫画を渡された。

で、動画サイトから拾って漫画を流し読みしている状態。

某掲示板的に言えば……今ここってヤツな訳だ。

今回のCMでは携帯電話もスマホも使わないって言われた意味が漫画を読んでいると分かる。

この世界って、両親が若いころだよな。後でCMの参考になりそうだから聞いてみようかな。

今のCMの企画はサイクルは2週間毎にチェンジしていく。

遠くから見ているだけの僕と彼女が徐々に近づいていくという設定だ。

彼女役は基本的に決まっていない。校庭で走っていたり、学校から帰ろうとしている所とか、教室の事績で座っている所を見かけるとか……ほんの一瞬なので、中性な容姿の男性を女装させてもいいかなんて案が出ている位だ。

女性を共演させてもいいのだけども、そこからCMの情報が漏れるのも避けたかった。



CMの撮影は、12月に入ったらある程度纏めて収録していく。今月末にはスチール写真の撮影が入っている。

僕が高山さんから貰った宿題は、CM2話目のシチュエーションを考えて来る。

今回に使えなくてもアイデアはちゃんとCMに活かしてくれる事になっているのでそれなりに責任は重大な訳だ。

まず俺は、既に出来上がった1話目のシナリオを見ている。

最初は村下孝蔵の初恋をベースにしたCMになっている。校庭を走っている少女は陸上部で長距離走者のようで、ずっと校庭を多周りで走っている。夕日が真っ赤に一人で走っている彼女を照らしている様子を俺は校舎のベランダから眺めている。

その時に歌詞のフレーズを口ずさんで……暗転してキャッチコピーと商品が画面に出てから君の事……知りたいんだと呟いて終了する。

これの続きな訳だ。彼女は陸上部。俺は多分文化部の何か……美術部とかがいいだろう。

放課後のベランダから校庭の風景を描いていく。そこに走っている彼女を書いていいのだろうか?でも彼女と分かる様に書いてしまうと自分の秘めた気持ちに気付かれてしまうのでは?スケッチブックに書いているのは、彼女と分かってしまう位丁寧に書かれているもので……CM曲は、オフコースのYES‐NOのサビか探偵物語のサビのあたりが頭に浮かぶ。ここは宿題を出したから決めて貰えばいいよな。

そんな感じで、次の話、もう一話と書き進めていく。

気が付いたら、俺の空想では俺の演じる男と彼女はようやく挨拶が出来る距離まで進んでいた。凄くのんびりと展開していく。携帯とかメールとか使ってしまえばあっという間に距離なんて縮まってしまうというのに、じれったい位のんびりと進めるのだというのが高山さんの発想。

それに合わせて俺もシナリオ案を書いているつもりだがこれでいいのだろうか?

資料として渡された漫画を捲って見る。

見ているだけでドキドキして、もっと見ていたいと思う気持ちは分かる。

指が触れたら……パッと離れるではなくて、きゅっと握りしめたい。

男と女の違いなのかなって思いながらも、漫画の二人の接近の仕方には好感度を持てた。

見ているだけで幸せっていうのは、もちろん共感できるけど、もっと密着したい。

同級生が片想いの相手ならば、そう思うだろう。

けれども……俺が好きになってしまった相手は、5歳年下な訳で。

こういう仕事をして何年もキャリアがあればそんなに気にはならなかったかもしれない。

キャリア3年。デビューした時……そんなに売れていた訳でもなかった。

かなり芸人チックな仕事もこなした。汚れ役もやったりした。

去年のCM が当たって、俺達も売れるようになった。

メンバーの恋愛事情はそれなりに把握している。

一番古くから事務所にいる樹は、里美ちゃんをずっと思っていた。CMの練習をきっかけにして付き合い始めて1年過ぎた所だ。

双子は二人揃って募集中でーすってネタにしているけど、忙しくなった途端に二人して振られてしまっている。今は……仕事の方が楽しいって本気で言っている位。

昌喜は、幼馴染の彼女とくっついたり離れたりしている。一番年齢らしいのだろうか?

そうやって考えると……やっぱり問題だよなあ。5歳年下って、俺まだ18歳だしさ。

この仕事を始める同業者なので、接触の仕方も考えないといけない。

スキャンダルにならない方向で傍に行くにはやっぱり方法は一つしかない。

多分社長も俺と同じ方向で動き始めるだろう。俺としては非常に不本意だがここは受け入れるしかないだろう。



俺の実家の門下生として、彼女を引きこむしかないということ。

でも、本当にそれでいいのだろうか?彼女は俺の事をどう思っているのだろう?

近所のアイドルとやっているお兄ちゃん位だろうな。

女の子は年上の男性に憧れるっていうけど、アレって先生とかだもんな。

俺なんて……中途半端な存在なんだろうな。

どうやったら、彼女に意識して貰えるのだろう?やっぱり今のお兄ちゃんのポジションは嫌ではない。けれどもずっとそのままでいたいとは思わない。

やっぱり、俺が今は我慢の子でいるのが一番なんだろうな……そんな事を考えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ