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Smile 3

オフ2日目。いつもと同じ様に朝7時前に前を覚ます。大きく伸びをしてリラックス。

規則正しくなり始めた目覚まし時計を止める。ここまではいつもと変わらない。

今日の朝は……折角加湿器を入れて部屋も程良く暖かいから、あて名書きの続きを仕様と思って階下にいるはずの両親から新しい葉書を貰う事にする。

「おはよう」

「ああ、今日はのんびりなのか?」

「うん、今日もだよ。ついでに明日も休みだよ」

「おっ、お前。閉店ガラガラか?」

「……なぜそこで芸人のネタを。だから、例の時代劇の収録が延期になっただけ」

「あれ?終わったんじゃないのか?」

「ロケは終わったけど、僕だけなら半日でも終わるけど、相手がいるからそうはいかないでしょう?」

「そうだな。それじゃあ今日はどうするんだ?」

僕は、ほうじ茶を淹れて一口飲んだ。寝起きですぐに食事を取れる程、朝が強いわけじゃない。

「あて名書きの葉書まだないの?」

「あるけど。もう終わったのか?」

「もちろん。今残っている?」

「ここじゃなくて事務所にならあるが」

父さんは驚いて僕を見ていた。今までの僕は結構ギリギリに書いていたからだ。

「だったら貰えるだけ貰ってもいい?仕事が不規則だしさ」

僕は本音を打ち明けた。

「いいよ。それじゃあ今から取ってこよう」

父さんは書きあがった年賀状を受け取って事務所に向かっていった。



「大丈夫なの?雅?」

「何が?」

「この時期に3日もオフだなんて」

「平気だよ。他のメンバーはこんな調子だよ。僕は歴史ドラマが決まった分忙しいんだ。それと、コンビニスイーツの企画も一緒にやっているから皆より少し忙しいんだよ」

「そうなの。チョコレートケーキがヒットして一気に忙しくなったから皆もそうなのかと思っていたわ」

「それなりに忙しいと思うよ。2時間ドラマのオファーや、新春の連ドラとかね」

「そう。大学の方は手続き終わったから」

「ありがとう」

母さんから、僕は封筒を受け取る。大学の諸手続きが終わった事を示す書類が入っていた。近くの大学の国文科に通う事は決まっているが、僕が進学したのは2部……定時制の方だ。

ずるいかもしれないが、社会人入試制度と使わせてもらった。ある程度学校には通わないといけないだろうけど事務所が認めてくれたので最短の期間で卒業したいと思っている。

「無茶しないでよ」

「分かっているよ。心配してくれてありがとう」

僕は、母さんに感謝を述べた。

「今日の予定は?」

「もう暫くしたら、宛て名書きしてからカノンでモーニング食べようかな」

「いいの?雅のご飯あるわよ。」

「いいんだって。何となく行きたいだけだから。その後にお隣に行く」

「そう、お昼は?」

「適当にどうにかするよ」

僕は席を立って自室に戻ることにした。



あの後、宛て名書きをして昨日の喫茶店……カノンに行ってモーニング食べていた。

カノンのモーニングのフレンチトーストが食べたくなったんだ。

最近、グルメ番組の収録でパンケーキを食べていたらここのフレンチトーストが食べたくなって……今に至るということだ。

「雅。久しぶりの長いオフ?」

「そうなるのかな。その分のしわ寄せが怖いけど。ねえ、このフレンチトースト持ち帰りで作ってくれない?」

「まあ、人気アイドルさんのお気に入りですからいいけど」

奥さんがそう言ってからかう。

「え、今。雅来ているのかよ。だったら俺もそっちで食べるから」

店の奥から五月蠅い声がして、僕の幼馴染の光が出て来る。

「よ。光、久しぶり」

「まあな。お前、高校卒業できるのか?」

「卒業するし、大学受かったよ」

「はあ?なんだそれ?」

光はきょとんとしている。そうだろうな。久しぶりの再会でそんな話だから。

「どこに?」

「近所の国文科。社会人入試使ったから」

「あぁ。そういう事か。お前仕事しているものな。俺も彼女とCMみたいなことしたい」

「光。彼女いるんだ。そう言う事は、ある程度責任が取れるまで自重したらどう?」

光は両親がいようが、いなかろうがいつもこんな調子だ。それが彼らしいと言えばそこまでなのだけど。僕が同じような事をしたら……考えるだけでもぞっとする。

「光?学校間に合うの?僕、今日はオフだけど」

「ちょっと、それを言ってくれよ。HRは遅刻でも1時間目に間に合うからいいや。相変わらずお前は忙しそうだな。年明けの歴史ドラマだっけ?」

「まあね。今収録しているよ。僕はもうすぐ撮影が終わるけどね」

僕は最後の一口になったフレンチトーストを口に入れた。

「ふうん、無茶するなよ。また暇になったら遊ぼうぜ」

光はそう言うと慌てて店の外に出て行った。だったらもっと早く起きればいいのに。

「いいのよ。あの子も大学は決まっているけど、単位の方がね……」

光がいなくなって叔母さんが漏らした。いろいろありますね。分かりますよ。

一人になった店内で、僕はのんびりと過ごしてから隣の家に行くことにした。



「おはようございます。雅です」

「入って頂戴。リビングで待っていて」

僕は言われた通りにリビングに向かう。リビングに向かうと先生がダイニングで朝食を食べていた。

「成程。ちょっと早かったですか?」

「そんなことないけど。今日は何を持ってきたの?」

「フレンチトーストとプリンです。おやつにどうです?」

「雅……女子力高すぎ。夏海に少しでも分けてやってよ」

「女の子は、ちゃんと女の子になりますよ。気になりますか?」

「もちろん。変な馬の骨に攫われないように監視しないと」

先生はそう言うと、ノンフレームの眼鏡をクイッと押し上げた。

その仕草が僕は地味に怖いのだ。

「僕は馬の骨以下ってことですか」

「違うわ。雅程身元がしっかりしている子はいないわよね」

「僕地味ですから……ね。」

「仕事している時の、あのキラキラはなんなのよ」

「それはお仕事だからです。夏海ちゃんは?」

「今下りて来るんじゃない?ほら、階段を下りて来る」

やがて、夏海ちゃんが僕達の元にやってくる。

今日はチャコールグレーのワンピースを身につけている。

若い子ならひざ丈だと思うのだが、彼女はマキシ丈を着ている。


「おはようございます」

はにかみ笑いの彼女が可愛いと素直に思い、心が跳ねるのを自覚する。

「おはよう。その笑顔を僕達以外の人に見せれるように頑張ろうね」

僕はそう言うと、彼女の勉強を見る為にリビングに移動した。


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