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負けないで 3

今回も少し短いです。

僕は先生の言われるままにレッスンルームに入って指慣らしに教本を手にして練習を始めた。

「指が動かないって程じゃないと思うけど」

「先生がそう言ってくれるのなら、そうなのでしょうかね」

気がつくと先生が隣に来ていたので僕は指を止める。

「で、今日のレッスンの目的は?」

先生は僕の要件を聞いてくる。僕は4月からのドラマの話をして、暫くは楽器のレッスンをしないといけなくなったと話した。

「まあ、いいじゃない。楽器が弾けることでオファーが来るのは」

「それでいいのでしょうか?」

「ずっとグループで売っていくわけじゃないでしょ?」

確かにそうなのだ。ビビッドでの活動はメインだけども、ケーキのCM以来、個別の仕事も増えてきている。

「実家関係の仕事は嫌なのでしょ?」

「そうは思っていませんよ。ベースがあるおかげで、和のテイストの企画が多いのは事実ですけど」

「そのキャラの次の展開が、楽器が出来る男子でしょう。今時の男の子はギターとか弾く子はいるけど、トランペットやサックスってなると少ないからいいんじゃない?」

「先生の言う事を聞くと納得もできますね」

「言える事はそれでも優等生キャラってことかしら」

「その言われ方はちょっと嫌ですけど」

僕がそう言って、教本を片づける姿を見て先生はクスクスと笑っている。

そんなに笑う事ないのに。この先生には本当に頭が上がらない。



「そうそう、ちょっと前に雅……あなた女の子拾わなかった?」

「拾うって。犬や猫じゃないのだから。泣いている女の子に接した事はありますけど」

「やっぱり。その子、ここに通っているって言っていなかった?」

「言っていましたよ」

僕がそう答えると先生は、納得した顔をした。

「あの子ね、私の従妹なの。で、学校でちょっとした事件が会った後に会ったのが雅な訳」

「はい、僕何か悪い事しました?」

「してない。むしろ今のあの子は雅の存在が支えになっているの」

「成程。先生は僕の仕事の事を話していませんよね」

「もちろん。事件の後に学校に行っていたんだけども、心が折れる事が起こってね。学校に行くのが嫌ってなってしまってね。今は私が預かっているのよ」

「成程。僕は学校で何があったのかは聞いていませんよ。僕が見たのは、僕がCMしているコンビニのスチールを見て、ケーキもキスも嫌いって言っていた位で」

「雅。あの子が何をされたか……何となく分かったわ」

先生は大きな溜め息をつくと椅子に腰かけた。



「あの子、学校で無理矢理男の子にキスされたんだと思う」

「それって、交際中の相手ですか?」

「多分、違うと思う。彼氏って話はあの子から聞かないから」

僕は頭を抱えたくなった。今時の中学生は自分の欲望だけに忠実なのだろうか。

たった3年前、自分も同じ中学生だったはずだけども、そんな妄想はなかったな。

そう言う意味では自分も若くないのだろうか?そんな事を考えることすらおかしい気もする。

「雅。あの子は夢があって、その為に学校には通ったんだけども、その事が尾びれ背びれを付けて勝手に歩きだしたのかもしれないわ。その事に気がついたあの子は学校に行けなくなった」

「普通の女の子ならそうでしょうね。で、学校側の対応は?」

「学校は、事実確認をして従妹……夏海って言うんだけども夏海が被害者という事で無理に学校に来なさいって指導はしないって夏海の保護者から聞いているけど、先生も含めて男性が怖いって状態なのよ。とりあえず、メンヘルに連れて行って診断書を貰って学校と教育委員会には提出している。後は相手方の態度次第かな」

「それは被害者としてはしてもいいことだけど、夏海ちゃんが学校に戻ろうとしたらそれは悪循環なのではないの?」

「そうなのよ。教育委員会を入れてその事はこれから話し合うらしいんだけどもね。そこで雅にお願いがあるの」

「内容にもよりますよ」

「あの子の相手をしてやって。あの子、ピアノはコンクールで入賞する位の腕はあるから」

先生、それは今の彼女にとってはもろ刃の剣なのでは?そんな事が頭を過るのだった。



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