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プロローグ


※ポリプロピレンとは:作者の頭の中から消えない魔法のワードである。


彼女は知っている。

魔法使いとは、強く美しい人達のことであると。


彼女は知っている。

魔法を使えない者が、この世界で前を向いて歩けないことを。


彼女は知っている。

一族との繋がりは、いつしか首輪のように重く立つこともままならなくなったことを。


彼女は知っている。

自分が、落ちこぼれだということを――……。





目を瞑りたくなるくらい透き通った青空の下で、新入生を歓迎するように桜の花びらがひらひらと舞っている。

賑わう生徒達を横目に桜の木の下で佇んでいた少女――桜庭 彩は小さな掌を広げて、

舞い落ちる花びらをそっと受け止めた。


「散ってしまう花なんて嫌い。散る姿だけが綺麗な桜はもっと嫌い。まるで私の行く末を見ているようで」


嫌いだというのに桜の散る様子を見つめる彩の顔はどこか嬉しそうだ。


「でも、あなたは私と違うみたいだね……。特別な散ることの桜の花」


あれだけ地面に落ちていたはずの花びらは、いつのまにか跡形もなく消えていて

普通ならば散った分だけ減るはずの桜の木も最初見たときと変わらない姿のままだった。

どうやら学院の中では様々な魔法が使われているようで、この桜の木にも散ることのない魔法がかけられているのだろう。



医療方面でも魔法が主流になった頃から、一般家庭と魔法家系には埋められない格差が生まれた。

そして次第に化学は廃れ、魔法使いになる為の学校が増えていった。

中央魔法女学院、通称魔女院と呼ばれるこの学校は数多くある魔法学校の中でもとりわけ古く大きな学校だ。

中央魔法男子校と並んだ大規模な学院であり、その名のとおり女生徒のみが通っている。


魔女院には一般科と特進科があり一般生徒を受け入れている数少ない学校だが、

必然的に特進科へと進むことが決まっている生まれながらの素質を持っている魔法家系の生徒との間には

当然格差が生まれてしまった。



「そのネクタイ、もしかして一般科の新入生?」


突然かけられた声に驚くでもなく、彩は声のしたほうを振り返った。

すると、そこには自分の同じ桜色のリボンをつけた少女が微笑んでいた。


「そうだけど……君は?」


「伊藤 桜、私も新入生なの。よかったあ、知り合いがいなくて不安だったんだよね」


そう言って無邪気に笑う桜を見つめ、彩は心の中で呟いた。


きっと彼女はこの桜の木と同じ、特別で散らない桜の花なんだと。


「ねえ、あなたの名前は?」


「私は桜庭 彩。……あなたと同じ桜だよ」


「へえ、これもなにかの偶然だし仲良くしようね、彩」


「ああ、よろしくね。桜」




彩は小さく嘘をついた。

願わくは、散らない桜になりたいのだから……。




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