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守り手

 青白い炎は瞬く間に消えうせた。

 さっきまでいた筈の大蛇の姿も、跡形もない。


「どうして……真白!」


 一瞬茫然としたものの、十座はすぐに真白に駆け寄った。真白は、血まみれの左腕を抱きかかえるようにして地面に突っ伏していたのだ。

 食いしばった唇から苦しげな呻き声が洩れる。顔色が尋常でなく悪い。毒の血を浴びたのだ。


「なんで真白が……」


 この毒を浴びるのは自分だったはずだ。十座は愕然と立ちすくんだ。


「…うるさい。…私は…大丈…黙って……なよ」

「大丈夫じゃない!なんでお前がこんなこと」

「だ、から、守る……って言った…よ」

「守るだと!お前、なに馬鹿な事言って――」

「馬鹿な事…じゃない、よ。それより…顔は?」


 無事なのかと問うその一言に、とうとう十座が切れた。


「馬鹿野郎!いい加減にしろ、真白!こんな時に男の顔の心配するやつがどこに居る!」

「ここ、に居る、じゃない。もう、十座…うる、さい…ぎゃーぎゃー、騒がないで、よ……私はなんとも、ない、ん、だから」

「それがなんともないって顔か!って、真白、お前その足!」


 十座の顔が更なる驚愕に歪んだ。

 真白の右足首には、折れた蛇の牙が二本、無残にも突き刺さっていたのだ。


「噛まれたのか、妖に!」

「大丈、夫、だって。もう、毒は、消した、から。それに、こういうのには…慣れてる…し」

「慣れてるって…馬鹿か!そういう問題じゃないだろ!」

「大声、出さないで!別の妖を、呼び込む気なの。私なら、大丈夫、だから。本当に、慣れてるんだよ。それと、牙は…抜かないで」


 抜けば止められていた血が噴き出す。血の匂いに誘われて妖や獣が集まってくる。

 覚えておいてと言う顔は、すでに苦痛を覆い隠して平然として見えた。

 十座の視線を真っ向から受け止めて、真白はゆっくりと立ち上がった。蒼白な顔で、まだ左腕は押さえたままだったが、漆黒の瞳から生気は失われていない。


「お前……本当に大丈夫なのか」

「うん、もう平気。心配かけて、ごめん。でも、ホント大丈夫だから」


 そう言ってふわりと笑う。

 この傷で平気なわけがないのだ。それでも、その穏やかな顔に十座はホッと肩の力を抜いた。


「なにぼけっとしてるの、十座。今のうちにとっとと食料を確保してきてよ。あ、それと慌てて顔に怪我しないでよ」


 憮然とする十座の腕に空の袋を押し付けて、真白は鮮やかに微笑んでみせた。


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