写真
「こっち向いて」
カシャリと音がし、俺は眉根を寄せる。
次の授業まで、あと5分あった。
「何それ?」
指差して彼女が持っているものを見る。
カメラらしいのだが、どうも見たことのないものだった。
デジカメでもないしと不思議がっていると、彼女がカメラを前に出し、胸を張って言う。
「これね、使い捨てカメラなの。新しいモデルが出たから買ってみたんだ」
「使い捨てカメラ? 何だ、それ?」
俺は腕を組み、険しい顔をすると、彼女がまたパシャリと撮ってくる。
「あのね、充電とか気にしなくていいし、白黒加工にできるの。便利なカメラなんだよ」
「…へえ。珍しいものなんだな」
「親に聞けば懐かしがるかもしれない」
「そうか。…で、俺を撮ってどうするの?」
「どうって、その、好きな人を撮っておきたいものなのよ。女心としては。お守りにもなるし」
「そういうものか?」
「そういうものだと思って」
もう1枚、パシャリと撮ると、彼女はカメラをおろす。
「現像したら、欲しい?」
「くれるのか? お金は?」
「いいわよ。そんなに高いものじゃないし」
そう言って、彼女が離れようとしたので、俺は慌てて止める。
「ちょっと待った!!」
「え、何?」
「俺にも1枚、撮らせて。頼む」
新しい商品に興味があった。
彼女は迷わず、俺にカメラを差し出してくる。
「撮る時はここを押すの。分かった?」
「分かった」
うなずくと、彼女をカメラ越しに見つめる。
彼女は戸惑ったようだが、笑顔を作ってくれる。
俺の女神様だと思いながら、ボタンを押す。
パシャリ。
小気味いい音が響く。
まるで鳥の鳴き声に似ている。
「これで撮れたのか?」
「うん。大丈夫。…あ、先生が来た」
彼女は慌てて自分の席に戻る。
次の授業は社会で、俺の得意な科目だった。
先生は鹿みたいな顔をしており、教壇に立つ。
写真、楽しみだな。
そう思い、席から立つのだった。




