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Episode:1 終末世界の始まり

もう一度圭くんの肩を揺すってみるが、びくともしない。

まるで深い眠りに沈んでいるような、まるで死んでいるような__...

返事どころか、寝息すら聞こえない気がした。


「…どうなってるの」


状況を理解しようと、思考が口から漏れる。

言葉にしたからといって整理できる状況では無かった。


音を立てないようにゆっくりと立ち上がり、もう一度スマホを見る。さっき見たときと同じ、バッテリー残量はゼロのまま。再起動もできない。電源ボタンを押しつづけても、黒い画面は何も返さなかった。



奥歯を噛み締めそうになった時、スマホを持つ手に違和感を覚えた。スマホをひっくり返してみると、ケースに小さな付箋が貼られている。



[起きたら倉庫の2階に来て  マホ]


綺麗に整いつつ女の子らしさの残った文字。


「マホ…?」


声に出した瞬間、心拍数が上がるのを感じた。私と圭くんの共通の友達、昨日もSNSで連絡を取り合っていた、あのマホ?


もしかしたらマホもここにいて、先に起きてこのメッセージを残してくれたのかもしれない。

念の為に圭くんのポケットを触りスマホを見ると、そこにも同じ付箋が貼られていた。


…きっとそうだ。


マホがいる。そう思うと安心感からか、身体中に血液が流れて暖かくなった気がした。


急いで立ち上がり体育館を見回す。後方に重そうなドアの倉庫が見えた。きっとあそこだ。


気がつくと足はそこに向かって小走りで進んでいた。

一瞬ドアの前で立ち止まる。横を向けば人1人通れるくらいの隙間が空いていて、正面にならないように少し横から回ってそっと中を覗く。


誰もいない、危なそうなモノも無いことを確認してゆっくりとドアを通り中へ入る。


バスケットボールが詰め込まれた大きなカゴ、跳び箱、掃除用のモップ。使い古された体育館の匂いが鼻をくすぐる。どこにでもありそうな普通の体育館倉庫だった。



その右奥に木製の階段があった。2階へ続いているようだ。


これのことだ…。息を潜めて一段ずつ慎重に登る。階段が軋まないか心配したが、思ったより頑丈で、むしろ心臓音が大きく響く。


2階のドアの前につくと、中から人の話声がした。


「…マホ?」


耳を澄ます。確かにマホの声だ。


それだけじゃない…あとひとつ、ふたつ…__どこかで聞いたことのありそうな声が混ざっている。


扉にはさっきと同じ小さな付箋が貼られていた。

マホの文字で、こう書かれている――


〈マホの苗字の回数分ノックしてから入って〉


思わず息をのみ、私は手を止めた。

回数って……マホは苗字が3文字だから普通のノックと一緒じゃん…。ちょっと冷静にツッコミを入れながら、扉に手を添える。

マホの苗字の回数――3回。


コン、コン、コン――


小さな振動が掌を伝い、背筋がぞくりとする。ノックの音が静かな倉庫に響いて緊張感が走る。


音が聞こえたのか、中から聞こえていた会話が一瞬止まる。


胸の鼓動がさらに大きく響く。


奥から近づいてくる足音が聞こえて、1段階段を下がる。

そのとき――扉が、ほんのわずかに揺れた。


息をひそめ、全身の感覚を研ぎ澄ます。


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