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9 誕生日パーティー2

テオドールにエスコートされ、会場の前に着いた。

初めてのパーティーだという訳でもないというのに何故か初めてかのように緊張してしまう。


誰かに恨まれないように意識しているからなのだろうか、人前に出るのが少し怖いと思ってしまう。

しかし、今日は招待客しか来ないため、顔見知りも多いだろう。

きっと大丈夫なはずよと自分を鼓舞しながら深呼吸をした。

だからと言って油断してはいけないため、今日は謙虚に過ごすことを意識しようと決意し、テオドールのエスコートで入場した。





入場すると会場には想像よりも多くの招待客がいた。

招待客たちの視線はすべて私たちに集まっている。


当たり前なのだけれど、凄く視線を感じる。

前に踏み出す足の動きも、手や目の動きも、そして呼吸さえもすべて見られているように感じ、普段通りに動いているはずだが違和感がある。


テオドールが隣に居てくれることだけが救いねと心の中で呟いた私は、言葉にしたことで隣に居る存在を強く感じたのか少し緊張が和らいできた。

周りを見る余裕ができた私は会場を見渡した。

会場内の招待客の中には知らない人も見かけ、きっと両親の招待した方だろうと考えながら歩く。


招待客たちを見ていると私はあることに気づいた。

どうやら令嬢たちの視線はテオドールに向いているようだ。

令嬢たちは頬を赤く染めて見惚れるような視線をテオドールに送っている。

テオドールは確かに美少年なので令嬢たちが見惚れてしまうのも無理はないだろう。


令嬢たちの視線が自分に向いていないというのを自覚したからなのか、ヴィオレッタはもうほとんど緊張していなかった。






両親がいる場所まで着くとテオドールは両親に礼をして、自分の両親のところへ戻っていった。

テオドールが戻ったのを確認したお父様は会場にいる招待客に向けて挨拶をし、パーティーが始まった。


招待客たちは、パーティーが始まると次々とお祝いの挨拶を述べるために私たちの元にやって来る。

頂いたお祝いの挨拶に微笑みながら感謝を伝えると、一瞬目を見開いて驚くような反応をする者や微笑みを返してくれる者など様々な反応をする人がいた。

招待客は家ごとに挨拶に来るため、想定していたよりも挨拶をする回数は少なかったが、毎度数分間の会話をするため疲れが溜まっていく。



やっと挨拶が終わると、お父様から友人たちと過ごしてくるように勧められたため、招待した友人を探し始めた。

会場を見渡し、友人たちを探していると壁際で話している友人たちを見つけた。


友人たちが話しているところに近づくと私が来たことに気づいたようで、こちらに視線を向けた。


「皆さん、楽しんでいるかしら」


私は笑みをつくり、彼女たちに話しかけた。


「ヴィオレッタ様!はい、とても素敵な誕生日パーティーで、楽しませていただいておりますわ。」


一緒にいた他の友人たちも同意するように笑顔を見せた。

その反応をみて私は安心したことを示すように「それは良かったわ」と笑みを返した。





その後、友人たちは私への賛美を並べ始めた。


「本日もヴィオレッタ様のドレスは素敵ですわ」

「今年も侯爵夫人がお選びになさったのですか?」


毎年、お母様に選んでもらったことを皆に自慢していたため、今年も選んでもらったのだろうと考えた彼女たちは羨ましいといった言葉を準備して問いかけてくる。

しかし、今年は私自身が選んでいるためきっと彼女たちは困るだろうと可笑しく感じながら返事をする。


「いいえ、今年は自分で選びましたの。装飾品などはお母様に選んでもらったのですけれど」


予想外であったであろう私の言葉に、彼女たちは私が予想した通り一瞬反応に困った様子を見せた。

しかし、流石貴族令嬢方といったところかすぐに「流石ですわ」と口にした。


その後も同様の会話が続き、飽きてきていた頃、ふと壁の花となっている1人の令嬢に目が行った。


(どうして、お1人でいらっしゃるのかしら)


招待された子息や令嬢達は皆、両親と一緒に来ているため、きっとご両親が他の方とお話されているのだろう。


「あなた御1人ですの?」


1人では寂しそうだと思った私は気づいたらその令嬢に声をかけていた。


「あ・・・そ、そうです。ヴィオレッタ様」


急に話しかけられた令嬢は驚きを隠せない様子でこちらを見ている。

このまま彼女の方から何か話すということは望めなさそうねと思った私は話のきっかけになればと思い、彼女のドレスについて触れた。


「貴方のドレス落ち着いていてとても素敵ね」


安心させるように笑顔を浮かべて言葉を発した、はずなのだが何故か少し怯えるような表情をされる。


(・・・え?怯えられているのかしら?)


思わぬ反応が返ってきたため、混乱していると「ほんとですわね」とくすくすと笑いながら同意する声が聞こえる。

目の前の令嬢はその声を聞き、さらに傷ついた顔をして俯いた。


(あれ?私何か間違えたかしら・・・

もしかして、今の言葉が婉曲な嫌味に聞こえたとか?

まずいわ、そんなつもりではなかったのに・・!)


とりあえず誤解を解かなければと思った私は、そっと彼女との距離を詰めた。

そして、何を言われるのだろうと不安で染まる彼女の目を見て、落ち着かせるように優しく話す。


「貴方、美しい茶色の髪をされているのだから、もっと色味の入ったドレスの方がお似合いになると思いますわよ。それに、端麗なお顔立ちをされているのだから、フリルなどよりレースの方か魅力を引き立ててくれると思いますわ。」


「え・・?」


令嬢は眼が落ちてしまうのではないかというほど目を見開き固まっている。

周りにいる友人たちもまさかそのような意図で言っていたと思っていなかったようで呆然としている。

そんな彼女たちに畳みかけるかのように「ねぇ、そう思いませんこと?」と微笑みかける。


ヴィオレッタの笑顔に言わされるかたちで彼女たちは口々に同意を示す言葉を発した。

友人たちは失態を挽回するかのように私のドレスへの造詣の深さを称えたり、他の令嬢を気にかける優しさを尊敬するような言葉を口にしたりし始めた。

そんな彼女達に逆にここまで来ると凄いわねと心の中で感心しながら笑顔を向けた。


そんなヴィオレッタを目を輝かせて見つめている少女がいることに彼女は全く気づいていなかった。






その後もしばらく友人たちと話していると、突然会場に流れていた音楽が止まる。


え?音楽が止まってしまったわ!


何かあったのかしらと思い、周囲を見ると招待客たちも何事だろうかとそれぞれに周囲を見渡している。


混乱した会場に何故かコツコツと中央に向かう足音が響いた。


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