賢者の館.5
「腹減ったな〜。」
エリオットが欠伸をしながらお腹をさする。
地図の捜索は続いていたがなかなか見つからずにいた。
「エリオット。あなたさっきまで居眠りして全然動いていなかったのに一丁前にお腹は空くのね。」
「地図が見つからねぇからってイライラするなよレイラ。はぁ、これだから女ってのは。」
「ちょっと!それどういう意味よ!!」
なかなか地図が見つからない中、レイラは焦りを覚えていた。しかしそんな時でさえもエリオットは真面目に探す様子もない。そんな様子にレイラはエリオットにイラつきをぶつける。
エリオットはエリオットでレイラの苛立ちを感じていないのかわざとなのかは不明だが、レイラを煽るように言葉を返す。
それに対して更にレイラが怒ってしまい、ピリピリとした空気になってしまった。
「そんなんじゃ将来はシワだらけのババァだな。」
「何ですって!」
「まぁまぁ2人とも落ち着いて。」
喧嘩をする2人を落ち着かせるようにアルが2人の間へと入り込み言葉をかける。
「で、でも。アル、早く見つけないと...。」
「レイラ。焦る気持ちは分かるけれど今焦ってしまったら見つかる物も見つからないよ。」
アルはレイラを落ち着かせるように優しく声をかける。
「それにエリオットの言う通りお腹が空いてきた頃だ。ずっと探していたし休憩にしよう。」
「それも、そうね。」
確かにここにきてから大分と時間が経っている。更に最後にとった食事はもう随分と前であった。
''グー''
レイラがそう自覚すると本人の意思とは無関係に腹の虫がなってしまった。
レイラは恥ずかしそうに顔を赤らめてお腹に手をやる。
「よし!!じゃあ一旦休憩して食事にでもしよう。」
「よっしゃ!」
エリオットはアルの言葉に喜び、勢いよく起き上がるとガッツポーズをした。
「エリオット、君も休憩したら次からはきちんと探してくれ。僕たちが急がなければならないのは事実なんだから。」
「りょーかい。わかってるよ。」
「あ...。でもアル、エリオット。私たち食べるもの何も持ってないわよ。」
「「あ」」
3人はここに来る前は街の食事処で食事をとっていたため食料をなど持ってきてはいなかった。そのことを今の今まで3人はすっかり忘れていた。
「「、、、。」」
「しまった...。」
今3人は絶望に瀕していた。そして何故少しでも食べれるものを持ってきていないのかと自身を責めていた。
食べる物がない。余計その事実が3人をより空腹へと導いでいくのであった。
「オ食事デスカ?」
「ウワァッッッ!?」
お腹を空かせ、絶望していた3人のもとにタイミングを見計らったかのように精霊が突如として現れる。
目の前に急に現れた精霊に驚き、エリオットは堪らず声を出してしまい後ずさる。
「今カラ丁度作リマスノデオ客人様達ノ分モ一緒ニ作マショウ。モウ少々オ待チ下サイ。」
精霊はそういうとキッチンへと飛び去ってしまった。
「なっなんだよ。急に目の前に現れんなよ。...びっくりした。」
「有難いけれど良いのかなぁ?何だか申し訳ないな。」
「でも、私たち誰も料理なんか出来ないわよ。ここはお言葉に甘えるしかないわ。」
この屋敷の周りは森で囲まれており、近くに食堂やレストランなんてものはあるはずも無く。したがって3人はここは精霊の言葉に甘えるしかないのである。
「...てか、あいつ。飯食うの?」
エリオットの小さな呟きは誰にも気づかれぬまま部屋の中に散ってしまった。