賢者の館.3
この屋敷には窓もないため外の景色も分からない。また時計もないため、少女は今が何時で外がどうなっているのかも分からない。
外に出れば分かることだが、少女が外に出ることはなかった。何故か少女には外に出たいという気持ちは無く、しかもなんとなくここにいれば安全なのだと不思議な確証があった。
仕方なく少女は今日もぼんやりと1日を過ごしていた。
コンコンコン
ふと屋敷の扉の方からノックする音が聞こえてきた。
この屋敷に来客が来ることは少女が来てから初めてのことだった。
「おい、ここで本当に合ってるんだろうな?」
「大丈夫さ!屋敷から持ってきたこの手記にこことかいてある。」
「本当だろうな?せっかく苦労してここまで来たのに間違ってだなんて洒落になんねぇしよ。しかもなんだよ。鍵開かねえじゃねぇか。」
外から話し声が聞こえたと思うと勢いよくドアノブを開けようとする音が聞こえる。
「ちょっと!人様の家なのに勝手に開けたらダメでしょ!」
「でも、開けねぇと中に入れねぇだろ。しかもここの主人はそもそも既にいねぇだろ。」
「た、確かに...。」
「エリオットの言う通りさ。でも乱暴なのはいただけないね。」
扉の外からは3人の声が聞こえてくる。3人の声はどれも少し高いようだ。
少女は外の世界からの訪問者に慌てた。どうすれば良いのかも分からずにとりあえず少女は寝室へと隠れることに決めて、寝室へと足を向けた。
ガチャガチャガチャ
「ふーむ、開かないね。さて、どうするか...。」
「しゃーね、ぶち破るか?」
「ちょっと!!人の家なのよ!」
屋敷には鍵がかかっており入れない。3人の訪問者がどうやって屋敷に入ろうかと悩んでいたその時
''カチ"
「あ、あいた。」
突如として屋敷の鍵が開いた。
「よくわかんねぇけどラッキー。さっさと中に入ろうぜ。」
「な、なんで?さっきまで閉まってたのに。な、なんか、あやしくない?」
「うーむ。とりあえず中に入ってみよう。」
そういうと屋敷の扉がゆっくりと開かれ、訪問者たちが屋敷へと足を踏み入れた。
「なんか、めっちゃ明るくね?」
「本当ね。明かりもついてるし、中はすごくあったかいわ。」
「誰か人がいたのかな。それはまずい。」
3人の訪問者が歩いてくる音と話し声がが館の中に響き渡る。
「勝手に入ってしまい申し訳ありません。どなたかいらっしゃいますか?」
訪問者の1人が大きな声で屋敷の中にいるであろう人に対して質問を投げかける。
その声は男の声のようで、素直そうなその声は屋敷中に響き渡る。
「オ客人デスカ?」
「キャア!」「オワッッ!!」
3人の目の前に突然精霊が飛び出した。
3人はまだ子供のようで、少年2人と少女が1人のようだ。
少女と少年は驚き後ろへと尻餅をつき、もう1人の真ん中の少年は目を見開いている。
「勝手に館へ上がってしまい申し訳ありません。ここは賢者様の館で間違いないでしょうか。」
真ん中少年、先ほどの素直そうな声の持ち主は驚きつつも精霊にそう質問した。
「ソノ通リデゴザイマス。オ客人様デゴザイマスネ。ドウゾ中ヘ。」
「はい、ありがとうございます!」
精霊はそういうと3人を館の中へ案内した。
真ん中の少年は嬉しそうに精霊の後をついて行く。それを見た少し不良そうな少年と真面目そうな少女の2人も慌てて少年の後を追った。
3人は少女が初めてこの部屋に来た時と同じようにその不思議な屋敷の景色にとても驚いた。
「すっげぇ..。なんだここ。学園でもこんなとこ見たことねぇよ。」
「本当ね...。」
3人は口をポカンと開けながら部屋の中をただ眺めている。
「ゴ要件ハナンデゴザイマスカ?」
3人はハッとし、精霊の方を見つめて口を開いた。
「この賢者様の館に"祈りのカケラ"の場所を示した地図があると思いやってきたのですが、そのような地図はありますか?」
「、、、。」
3人は緊張した面持ちで精霊のことを見つめる。
少し思惑した様子の精霊から言葉が発せられる。
「ハイ、ゴザイマス。」
「ほんとか!」「やったわね!」
真面目そうな少女と不良そうな少年が喜んで2人でハイタッチをする。
「その地図を貸していただきたいのですが、よろしいですか?」
「ハイ。見ツケマシタラ。」
「アル、やったわね!」
「よし!レイラ、エリオット。手分けして探そう!」
「わかったわ!」
「えぇ〜。こんなに物がいっぱいのところを探すのかよ〜。」
素直そうな声の持ち主のアルと真面目そうな少女のレイラと呼ばれる2人はとてもやる気に満ち溢れた様子で部屋の中の捜索に向かう。
しかしその中で少し不良そうな少年エリオットとと呼ばれる不良そうな少年だけがめんどくさそうに後から2人の後を追いかけるのであった。