賢者の館.11
「そういえばコサージュの当てってなんなんだい?」
4人はリビングへと戻ると、アルバートはレイラに向けて疑問を投げかける。
アルバートの言葉でエリオットとイオリも同時にレイラへと視線を向ける。3人から注目されたレイラは両手を腰に当てて得意そうな表情を見せる。
「ふっふっふ、気になる?」
そんな様子のレイラにエリオットはイラっとした様子で眉を顰める。
「いいから勿体ぶらねぇで、さっさと教えろよ。」
アルバートとイオリも果たしてレイラがどうするのか、今か今かとレイラの言葉を待つ。
イライラした様子のエリオットを知ってか、知らずかレイラはおもむろに腰から自身の杖を取り出す。
「前に図書館で花を出す魔法を見たのよ。多分だけどフェリキスの花を出せると思うの!!」
「本当かい⁉︎すごいじゃないか!」
アルバートが心の底から自信を誉める様子にレイラは親に褒められ幼い子供のように少し照れた様子で杖の先をクルクルと回す。
しかしアルバートとは対照的にエリオットはそんなレイラの姿にうんざりしたような表情を見せる。
「本で見ただけで出せんのかよ?やっぱ無理でしたーなんてことになったら笑えねぇぞ。」
鼻で笑いながら馬鹿にする様子のエリオットにレイラは頭をカチンとさせる。
「で、出来るわよ!失礼ね!
見てなさいよ!!」
レイラはエリオットに向かって大きな声で言い返したかと思うと怒ったように肩を上げながらキッチンの方へと向かっていく。
「おい!どこ行くんだよ。」
「水がないと出せないのよ!」
慌てて3人はレイラの後を追う。
レイラはキッチンにあった小さな器に水を入れるとテーブルの上にそれを置く。
3人は器を覗き込むようにレイラの横に立った。
「本当に大丈夫なんだろうな?」
「うるさいわね。先にあんたの口を塞ぐわよ。」
未だに疑うように話しかけてくるエリオットに苛ついたレイラは普段の声からはかけ離れた低い声を響かせてエリオットを黙らせるかのように鋭い視線で睨みつける。
「ゴホン。」
改めてレイラは咳払いをすると自身の杖を器へと向ける。そしてとても真剣な表情で神経を研ぎ澄ます。部屋は静寂に包まれ、長いような短いような時間が過ぎる。
突如レイラの杖の先から光が溢れ出したかと思うと器の水の中に種が現れる。
種は芽を出したかと思うと急激に成長してし青い小さな花をいくつも咲かせたのだ。
「すごいよレイラ!!」
「あ、ありがとう、アル。
(想像してたより小さくなっちゃったわね。)」
フェリキスの花は本来ならもう少し大きい花なのだがレイラの魔法で出たものは小さく可愛らしいサイズの花であった。
しかし花を見たアルバートは目をかがやかせながらレイラを見つめ褒め称える。アルバートに褒められたレイラは額に少し汗を滲ませながら頬を赤く染める。
「チッ。」
頬を赤くさせたレイラの様子を見ながらエリオットは小さく舌打ちをする。
レイラは赤くなった頬を落ち着かせるとエリオットの方を見て得意満面な笑みを浮かべるのであった。