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賢者の館.9


 少女は焦っていた。何故なら3人が部屋から出ようとしたところで安心してしまい、気が緩んだところで肩が隣のチェストに当たってしまたのだ。


「「⁉︎」」

「誰だ?誰かいるのか?」


 エリオットはいつもより低い声を出して、部屋の中を睨みつける。

 物音は部屋を出ようとした3人の足を止めてしまう。

 3人はゆっくりと物音のした方へと近づいていく。そんな気配を察知して少女は目を固く瞑るーーーー。



 ついに少女のいるベッドの後ろまで3人が到着した。だがしかしーーー



「いねぇな。」



 そこには誰もいなかった。


「気のせいだったのかな?」

「いや、そんなはずは...。確かにここから物音がした筈なのに。」


「「「、、、。」」」


 確かに物音がした。しかし、そこには誰もいない。3人に不穏な空気が流れる。


「き、きっと何か物が落ちたりしたんじゃない?」


 レイラがそんな空気を無くそうと明るく振る舞う。

 そんな中少女は不思議な体験をしていた。少女は3人が話している間にゆっくりと目を開けていた。

 話してるうちに少年がこちらを見る。確かに目があった。しかし、目が合っているはずなのに向こうは少女の後ろを見ているかのようだ。

 3人は確かに少女の目の前にいるが、誰1人として少女のことが見えていない。彼女は確かにそこに存在する筈なのに、3人には彼女の存在が全く見えていない様子であった。




「オ食事ノ準備ガ整イマシタヨ。」



 どこからともなく精霊の声が部屋に響く。

 精霊はいつの間にか部屋に入ってきたかと思うと3人にそう告げる。


「あ、ありがとう。」


 3人は一斉に精霊の方へと目を向ける。しかし精霊は3人の横を通り過ぎた。かと思うと少女の前で止まる。


「「「?」」」


 3人はそんな様子の精霊を不思議そうに見つめる。


 

「コンナ所ニイラシャッタノデスネ。サァ、オ食事ノ時間デスヨ。」


 精霊は少女を見つめて、少女に話しかける。


「精霊さん…。」


 少女は返事をするために気がつけば声を発していた。

 すると魔法が解けたかのようにアル、エリオット、レイラの3人の前に先ほどまではいなかった筈の少女が目の前に現れる。


「キャァァ!!!!!」

「ウワァァァ!!!」


 びっくりしたレイラとエリオットは大きな叫び声を上げ後ろへと下がる。


「い、いつからそこに...。もしかして幽霊かよ…。」

「え、え、お、おば… け?」


 エリオットは身体を震わせながら少女に向けて指を指す。

 エリオットの発言を聞いて、レイラは咄嗟にエリオットの腕へと抱きつく。そんな中、アルだけが少女を驚いた様子でじっと見つめる。


「君は...。」


 アルはゆっくりと一直線に少女へと近づく。


「お、おい、アル!気をつけろ。やばい幽霊かもしれねぇ。」

「そ、そうよ!アル、危ないわよ!」


 2人が心配そうに話しかけるが、アルは気にする様子もなく惹かれた様に少女へと更に近づき手を伸ばす。


「ッ」


 少女はびっくりさせたように身体が跳ねたかと思うと怯えたように身体を縮こませて顔をうずくませた。


「...。」


 そんな様子にアルは伸ばしていた手を止める。

 レイラはそんな少女の姿を後ろから見ていた。そして少女の怯えるような様子に自身の友を止めなければならないと、一瞬そう頭に過った。


「ア、アル。」


 レイラがアルを止めようと言葉を発したその時、アルは少女の前に膝をついた。

 アルは何故だか分からないがこの少女が自分の大切な宝物のようだと感じた。

 

「驚かしてすまない。僕の名前はアルバート。アルって呼ばれている。君の名前を教えてくれないか?」


 少女は一瞬肩を震わせたが、優しく穏やかな声に顔を恐る恐る持ち上げた。

 目の前には青空のような青い瞳の少年が少女と目線が会うようにしゃがみ込み優しそうな表情で少女を見ていた。


「...。」


 少女とアルバートはしばらく見つあう。しかし、少女からはなかなか言葉が発せられず少女は目線を下へと下げる。

 先ほどは幽霊だと後ろで怖がっていたエリオットはそんな様子に一歩前出て少女へと近づこうとする。


「おいお前、何無視してんだーー」

「エリオット。」

「ッ...。」


 アルバートの優しい口調だが有無を言わさない声色にエリオットは口をつむぐ。

 アルバートは変わらない表情で少女を見つめる。

 少女は少し迷ったあとアルバートへ目を向け、おずおずと口を開ける。


「いおり」


 少女は小さい声で自身の名前を告げる。

 しかしアルバートにはきちんと聞こえたようで、アルバートはニコッと笑った。


「イオリ初めまして。僕のことはアルって呼んでくれ。」

 

 そういうとアルバートはイオリへと手を差し伸べる。

 少女はその姿がふと誰かと重なったような気がした。


「、、、。」


 少女は差し出された手を見つめる。そして、ゆっくりと自身の手を差し出された手に伸ばしたのであったーーーーー。




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