誓い
最終話です
冬の澄んだ空気が学園を包み込み、白銀の光が舞い落ちる中、卒業式は厳かに執り行われていた。貴族の子女たちが集うこの学び舎で、多くの時を共にした者たちが未来へと歩みを進める日——。その中心には、堂々たる姿で壇上に立つエドアルドがいた。
「卒業生を代表し、これまでの学びと未来への決意をここに述べます」
その端正な顔立ちに宿るのは、少年から青年へと成長した強い意志。そして、彼の言葉一つひとつが場に響き渡るたび、多くの者が聞き惚れていた。ルーナティアもまた、その姿を見つめながら、ふと入学式の頃の彼を思い出す。まだ幼さが残る表情で、しかし誇り高く己の道を歩むと誓った彼。今やその誓いは現実のものとなり、彼は未来の皇帝としての風格を纏っている。
挨拶を終えたエドアルドがルーナティアの隣に戻る。その瞬間、ルーナティアの胸が微かに高鳴る。思い出すのは、あの雪山での夜。肌を寄せ合い、互いの温もりを分かち合ったあの時間。知らず知らずのうちに頬が紅潮し、ルーナティアは視線を落とす。そんな彼女の変化に気づいたエドアルドは、口元に微笑を浮かべながら優しく見守っていた。
そして、卒業式は終わり、舞踏会を兼ねた卒業パーティーへと移る。華やかな音楽が響き、煌めくシャンデリアの下で、貴族たちが優雅に踊る。ルーナティアもエドアルドと共に何度か踊ったが、彼の手の温もりを感じるたび、心が甘く蕩けるようだった。
やがて、宴の熱が少しずつ落ち着き始めたころ——。
エドアルドがすっと立ち上がり、ゆっくりと壇上へと向かった。人々の視線が彼に集まる中、彼は堂々とした姿勢で、静かに息を吸い込む。
「本日、皆と共に学び舎を旅立てることを誇りに思う。だが、今ここで、もう一つの大切なことを伝えたい」
その言葉に、会場が静まり返る。ルーナティアは、彼の凛とした横顔を見つめながら、胸の奥に湧き上がる期待と不安を感じていた。
「私は卒業後——隣にいる彼女と結婚する」
次の瞬間、会場が驚きと歓声に包まれた。貴族たちは感嘆の声を上げ、拍手が巻き起こる。しかし、エドアルドの視線はただ一人、ルーナティアに向けられていた。
「ルーナティア」
彼は静かに手を上げると、その指先に魔力を宿らせた。瞬く間に氷が形をなし、そこに純白の花が生まれる。氷で創られた月下美人——満月の夜にのみ咲く、幻の花。
「初めて君を見たあの日——庭園で月明かりに照らされていた君の姿に、私は心を奪われた。それ以来、ずっと君を愛している」
エドアルドはルーナティアの前へと歩み寄り、その透き通るような氷の花をそっと差し出した。
「どうか僕と結婚してくれ」
氷で生み出された月下美人は、エドアルドという月に求められ、咲き誇っていた。
ルーナティアの瞳に涙が滲む。これは夢ではない。目の前にいる彼が、自分のすべてを受け入れ、共に生きることを誓ってくれている——。
彼女は微笑み、そっと頷いた。
「……喜んで」
歓声が再び巻き起こる中、エドアルドは愛しげにルーナティアの手を取り、氷の花を彼女の胸元へとそっと添えた。
その後、彼らは仲睦まじく寄り添いながら新たな未来へと歩み始めた。
この代の皇帝夫妻は、誰もが羨むほどの深い愛で結ばれ、幾人もの愛しい子どもたちに恵まれたという。そして——。
あの日、エドアルドが生み出した月下美人は、彼が命を終えるその瞬間まで、ルーナティアの胸元で輝き続けた。
まるで、永遠の愛の証のように——。
なんとか書ききりました!!
今後は番外編(誕生日、クリスマスなどの行事)を更新したりします。
もしもできれば、私が歳を重ねるごとに、二人にも一緒に歳をとってもらいたいです、、笑笑笑
ここまで見てくださった皆さんに感謝の気持ちを送ります。
ありがとうございました。
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