月華祭当日
月華祭の夜、満月が煌々と輝き、星々が夜空を飾る。
城内の広間は月の光を模した幻想的な装飾が施され、貴族たちはきらびやかな衣装に身を包み、舞踏会の開幕を待ちわびていた。
その扉が開かれた瞬間、人々の視線は一斉に入り口へと注がれた。
ルーナティアとエドアルド――
月草色のドレスを身に纏ったルーナティアは、まるで夜空に降り立った女神のようだった。
小さな宝石が散りばめられたレースが揺れるたびに輝きを放ち、彼女の神秘的な美しさを際立たせる。
そして、そんな彼女の腕をしっかりと組むエドアルドは、白金色の礼服に蜂蜜色の刺繍を施した衣装を纏い、まるで月を愛し慈しむ皇子そのものだった。
あまりの美しさに、会場の貴族たちは息を飲んだ。
「……美しすぎる」
囁く声さえも、二人の前ではかき消されるほど静まり返る。
誰もが息を詰め、ただ彼らを見つめることしかできなかった。
そして、舞踏会が始まる。
皇子であるエドアルドが最初に踊るのは当然のこと。
そのパートナーは、彼の婚約者であるルーナティア。
エドアルドがそっとルーナティアの手を取り、微笑む。
「行こう、ルーナ」
「ええ、エド」
二人が踊り始めると、再び会場は静まり返った。
エドアルドの腕の中でルーナティアが優雅に舞う。
その動きはまるで夜の月光が波打つ湖の上を滑るようで、見ている者たちはその美しさに酔いしれた。
彼がルーナティアの腰を抱えて軽やかに回るたび、ドレスの宝石が煌めき、まるで星屑が舞うかのような光景が広がる。感嘆の声が幾度も上がる中、二人は二度、三度と踊り続けた。
やがて疲れた二人は会場の端に寄り、休息をとることにした。
「少し飲み物を取ってくる。ここで待っていて」
エドアルドはそう言い残し、ルーナティアの手をそっと撫でてから席を立った。
その瞬間を待っていたかのように、近づいてくる影があった。
「やぁ、ルーナティア嬢」
耳障りな声と共に現れたのは、かつてルーナティアを執拗に口説いていた隣国の公爵令息だった。
彼は未だにルーナティアへの執着を捨てておらず、機会を窺っていたのだ。
「どうだい? 今夜は僕と庭園へ行かないか?」
その言葉に、ルーナティアは静かに瞳を伏せる。
「……申し訳ありませんが、そのような誘いを受ける理由はございませんわ」
だが、令息は諦めなかった。
「そんなつれないことを言わずに。君ほどの美しい女性なら、もっとふさわしい相手がいるはずだ」
―例えば僕のような
といわんばかりの血走った目をギラつかせる。
「……ふさわしい相手なら、もうすぐで来ますわ」
毅然とした態度でそう告げるルーナティア。
だが、それに苛立った令息は、ついに強引にルーナティアの腕を掴んだ。
「エドアルドがいない間なら、少しくらい僕と話してくれてもいいじゃないか」
「……離して、くださいませ」
その瞬間、場の空気が一変した。
「何をしている?」
冷たい声が響き渡り、次の瞬間、令息の足元が氷に覆われた。
令息は驚愕の表情を浮かべたまま、動けなくなる。
「ルーナに触れたこと、後悔するんだな」
エドアルドがゆっくりと歩み寄り、その冷たい眼差しを向ける。
会場中の視線が集まり、令息は完全に針の筵だ。
「皇子の婚約者に手を出すとは……無礼にも程があるな」
やがて、衛兵が駆けつけ、令息は拘束され、連行されていった。
エドアルドは震えるルーナティアをそっと抱き寄せた。
「……怖かったな。もう大丈夫だ」
「エド……」
彼の温もりに包まれながら、ルーナティアは安心したように身を委ねる。
「ここでは落ち着けないな……ルーナ、俺の部屋へ行こう」
そう言うが早いか、エドアルドはルーナティアを抱き上げ、馬車に乗り込み皇宮へと向かった。
エドアルドの部屋に着くと、彼はそっとルーナティアをベッドに降ろし、優しく抱きしめた。
「……ルーナ、お前が他の男に触れられるなんて、俺は絶対に許せない」
その声は震えていた。怒りではなく、愛ゆえの歪んだ感情が滲んでいた。
「エド……私は、あなた以外に触れられるつもりなんて、ありませんわ」
ルーナティアはそっと微笑み、彼の頬を撫でる。
彼の瞳が深く揺れ動いた。そして、ゆっくりと顔を近づける。
唇が重なる。
いつもよりも長く、深く。
エドアルドがはっとして身を引こうとしたその瞬間、ルーナティアの方から再び唇を重ねた。
「……ルーナ」
彼女の甘い誘いに、エドアルドの理性が決壊した。
夜が深まり、二人の心はより強く結びついていった――
夜のシーンの文章作成能力が高い人って凄いです。
尊敬します。
じいちゃんが昔押し入れに隠してた官能小説よんどきゃ良かった(そういうことじゃない)




