我らが偉大な大海の主【一頁完結型童話調・T書庫シリーズ】
__幕間
ここに一冊の本がある。タイトルは【我らが偉大な大海の主】。
先程、読んだモノとタイトル的に関係がありそうだ。
それは、私たちにとっては物語であるかも謎らしい。
しかし、コレが残されているという事は彼等は確かに存在していたのは確かだ。
そういう世界らしいからね。ココは。
さて、短いが少しばかり話に付き合って貰おうか。
弟よ。ココの書庫は蔵書がいっぱいで私はとてもわくわくしている。
どうせ少ししたら存在が曖昧になって私たちは消えてしまうらしいからね。
ちょっと位、盗み見たところで罰は当たらないだろう。
それではDr.Tの読み語りの始まり始まり。
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私はたゆたう。広大なこの広い海を。自分が何時生まれたのかも定かではない位の時間をたゆたっていた。
私は目的も無く、存在も無く、潮の流れに身を任せて過ごしていた。
ある時、私に神からの信託が下りた。その時から私の存在価値は決まった。
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鯨よりも何十倍も大きい海洋生物、その姿は半透明で海月の様な色をしている。中は海水で満たされており。消化器官などは見当たらない。
海を生きるモノ達は信託を受けて、その海洋生物を目指す。
海に生きるモノは海洋生物に向かって泳ぎ始めた。そのすべてを飲み込んでいく。
自分から飲まれに行く魚達、その通った後には何も残らない。
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私は急いでいた。私の存在は海の生き物達を保護する事。
空は墜ちた。海に影響が出るまでに出来る限り保護をし、深海へと運ばなければならない。
それが私の存在意義。
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海上には虹が滲む様に降りて来ていた。それは海上を裂き、潮の流れを変え始めた。
海には渦潮が発生し、その全てを飲み込んでいく。
海は荒れ狂い、蒸発し豪雨が海を覆う。その豪雨ですら竜巻となって海上を襲った。
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海の様子が悪くなってきた。
潮の流れが変わろうとも水を割き進んで行く。
ぎりぎりの時間まで命に手を差し伸べていく。
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海中までもが風の刃で切り刻まれて行く。
海は濁り、上層で生き残りは居ない。
大きな海洋生物は刃の余波を受けてもびくともしないがそれでも直撃しない様に進んで行く。
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巨大な身体に見合わぬ速度で水中を進む。外からの衝撃が激しく身体にあたり始める頃。向きを変え沈む様に、海底を目指す。
深く、深く、刃から逃げる様に漆黒の空間を進む。やがて、海底へと辿り着き巨大な体を沈座させる。
巨大な身体の中では知性のある種や手先を持つ魚人族が住まいを作り始めた。
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空からの影響が無い程の深い位置に着底した巨大生物の中は水圧を調整し、中の生き物を守る仕事をしている。
その巨大生物の中には多様な海を住まいとする生物達が住処を作っていた。
空からの影響が無くなるまで生き物達はここに住むことになるのだろう。
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空からの影響が無くなるまで私は仕事を続けるのだろう。
___終幕
前回のは眠りではじまり、今回のは目覚めで始まる……か。海の聖骸の話だと思ったらノアの箱舟的な存在の物語?
ナチュラルに魚人が居るが、そうか前回にも龍が出ていたな。
何か似たような話あったな。島と見間違うほどの亀って話だったか?アレも背中に森が生えてた筈。
空からの刃、風、いや鎌鼬か?しかし、鎌鼬で海面が蒸発するのか?鎌鼬も寒い方の発生率が高い筈、冬の季語だったはずである。
熱……空に残る瞬く虹、瞬く虹とは分からないが残る虹ならオーロラ?オーロラが降りて来て地表や海上を削った。そう言う事だろうか?
ん?弟よ、次はそれか?【我らが偉大な大空の墜】、それでは答え合わせと行こうか。
それは海底に都市を作りました。一か所に落ち着くのは一緒ですが大地は眠り続け、大海はその後も起き続ける。という正反対の内容となりました。生存者の集め方も……ですね。
ノアの箱舟を生きた潜水艦みたいなノリでメイキングしてみました。外は海月、中は海水、そして大きさは大海の如く。そんな生物です。もちろんクトゥルー要素も捏ねました。
さて、今回はここまで、次回は大空の墜です。それでは皆様また次回。