第6話 おっぱい×マ●コをつけ狙う、闇サイト⁉
パソコンの画面上には如何わしい情報が多岐にわたり、表示されている。
本当にここで、こんなものを見てもいいのか、逆に今頃になってから悩むようになっていた。
学校のパソコンでは色々な情報を集めることができるが、申し訳なさも感じているのだ。だが、これは妹の南由のためである。ある程度の疚しい感情はグッと堪えようと思うのだった。
「こんなもんだけど、どう? 夏央が知りたい情報とかってあった?」
パソコン前の椅子に座っている金髪ロングで、おっぱいサイズ推定Fカップのキアラが、振り向きながら問いかけてくる。
「えっと……ちょっと待って……」
夏央は画面に顔を近づけた。
闇サイトについて調べているのだが、それらしいものは何件かヒットしているのだ。
「……闇サイトと……変態が集う場所……んん……」
夏央は小さく唸り声を出す。
本当に知りたい情報とは少し違っている。
ダメか……やっぱり、学校のパソコンでも難しいか。
夏央はため息を吐き、画面上から距離をとった。
「どうだった? やっぱりダメか?」
「そうだね」
夏央はキアラに対して、ただ頷くだけになった。
さすがに、そう簡単には情報は得られない。
闇サイトの変態が集う場所なんて、一般の人が閲覧できない環境になっているのだろう。
特定のアドレスが必要なのかもしれない。
そのアドレスとか、調べる方法が明確にわかればいいのだが……。
そうこう悩み、夏央が腕組をしていると――
「ねえ、平民?」
「な、なに?」
右隣に佇んでいた銀髪ポニーテイルで、おっぱいサイズ推定Dサイズの藤花から話しかけられるのだ。
「調べたいサイトがあるなら、私のパソコンを貸してもいいわよ」
「え? ……本当に?」
藤花からの優しい問いかけ。
だがしかし、普段から見下した発言の多い彼女が、すんなりとパソコンを貸してくれるかは不明である。
夏央は疑わしい眼差しを、椅子に座っているキアラと共に、藤花に向けるのだった。
「な、なんですか? まさか、私が嘘をついているとでも?」
藤花は慌てた感じに言う。
自称令嬢でかつ、自称高貴な彼女が、慌てるのも珍しい。
「本当にー?」
キアラは煽るように、藤花へ言った。
「本当ですから。ですが」
「ですが?」
キアラが彼女のセリフを復唱する。
「まあ、条件はありますけどね。私も……そこまで酷いことはしないわ。う、嘘でもないですし。貸します。平民が困ってるなら、助けるのも、私の役目ですし」
「ウザッ、それよりさ、夏央ー」
「って、なんですか、話題を変えないでもらえますか」
キアラが別のことをし始めたことで、藤花は彼女に不満そうな態度を見せている。
「はいはい、それで本当に貸してくれんの?」
「それはただというわけには」
「じゃあ、いいや。夏央もいらないでしょ」
「だから、話をそらさないでって言ってますの」
「なんかさー、藤花が言うと、嘘っぽく聞こえるのよねぇ」
高校入学当初から同じクラスだったキアラからしたら信用には値しないようだ。
「わかりました、でしたら私の家に来てください。そこで、お菓子でも何でも上げますから、そこまで誠意を見せれば信用してくれますよね?」
「わかったよ、じゃあ、約束な。夏央もそれでいい?」
「うん、まあ、それでいいかな」
「そういうことで。じゃあさ、今日行ってもいい?」
「今日⁉」
「そうだよ。誠意を見せてくれるんだよね?」
キアラは藤花を注意深い視線を向けていた。
「うう……、わ、分かりました。で、では、今日来てください」
藤花にも用事があるのだと思う。そんな事情がある中、彼女は頷いたのである。
「よし、これで、今日のお菓子代浮いたぜ」
キアラはガッツポーズをすると椅子から立ち上がった。
「夏央もさ。一応自分でも調べてみたら? 私の知識ではここまでしかできなかったし。夏央がやったら、色々と調べられるかもしれないしさ」
「そうだな」
今度は夏央が席に座り、パソコン画面と向き合うのだ。
「えっと……こうやって。この単語でいいかな」
夏央はキーボードを軽く指で叩きながら文字を入力していく。
そして、エンターキーを右手の指で押した。
「ん……こ、これは……」
ふと、夏央の瞳に、怪しい情報が入る。
異様に気になったことで、その情報について注意深く追及してみることにした。
「どうした? なんか、見つかった感じ?」
「あ、ああ。もしかしたら、見つかりそうな……ちょっと待って」
夏央は集中する。
「平民? 見つかりそうなんですか?」
「うっさい、黙ってたら?」
「なに? あなたこそ、うるさいんですけど?」
夏央の後ろの方が騒がしくなってくる。
キアラと藤花は口論しているのだ。
面倒だなあと思いつつ、その間に夏央はネット情報を探っていた。
変態と……痴漢とか……露出狂……。
変態思考の性癖があからさまになった特殊なサイト。
しかも、電車の中で痴漢するための方法が忠実に、そのサイトには書き込まれているのだ。
見出しは、“十年間電車痴漢を続けた俺の黙示録”とだけ記されている。
ヤバいなと思う。
十年間も痴漢を続け、捕まらないのは猛者である。
それと、ふと気になったことがあった。
“黙示録”の最終更新日である。
そのサイトを全体的に確認してみると、一年ほど前から更新が止まっているのだ。
もしかしたら、このサイトの投稿主は捕まったか、それ以外の問題を抱えているのかもしれない。
真相は定かではないが、サイトがある以上、捕まっていない可能性もあるのだ。
そこらへんの真意は不明である。
刹那、パソコン室の扉が開かれる音が響く。
すると、そこには眼鏡をかけた女性教師の姿があったのだ。
「うわ、あの先生かよ」
その女性教師の登場により、言い争っていたキアラと藤花は比較的おとなしくなる。キアラに限っては嫌そうな顔を見せていた。
「君たち? 少し静かにしてもらえますか? 先ほどね、パソコンを利用していた人と廊下で会いまして。うるさいから注意してほしいって言われたんです」
と、女性教師は、眼鏡を弄りながら言う。
眼鏡が似合うほどに、真面目で面倒な教師なのである。
厄介な存在に目をつけられたと思い、夏央もげんなりしてしまう。
「それと、君たちは、ここで何を調べているのですか?」
女性教師は眼鏡を弄りながら近づいてくる。
夏央は慌ててサイトを閉じた。
こんな痴漢のバイブルみたいなサイトが開かれていたら、鬼のように怒られるに違いない。
夏央は検索ページの部分を表示させるのだった。
「……」
女性教師にまじまじと、パソコン画面をのぞき込まれるのだ。
「問題は……なさそうですね」
「はい。俺はそんなに変なモノを調べてないです」
夏央はたじたじになりながらも、小声で返答した。
「平民? さっき、へん――」
「何でもないですからッ」
キアラが、ヤバい発言をしようとした藤花の口元を塞ぐのであった。
「わかったわ。なんでもないのね。では、今後は静かにお願いしますね」
と、眼鏡を弄り、真面目ぶった態度を見せつつ、立ち去っていくのだった。
はああ、とため息をつく夏央。
その後ろで再び口論を始めるキアラと藤花。
学校のパソコン室では、ヒヤヒヤしてばかりで、今後は藤花の家にあるパソコンを借りて作業しようと思うのだった。