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第4話 シマリの良いマ●コを求めるとは、変態の始まり⁉


「もう一度聞くが、僕と共に、変態にならないか?」

「ならない――」


 夏央はハッキリと返答した。

 そこに迷いなどなく、臆することなんてしない。


「ふッ、そうか……ならないか。だが、それはお前にとって、最大の失敗になるだろうな」

「どういう意味だ?」

「お前が仲間にならないのであれば、お前の妹が変態たちに狙われるということだ。僕の仲間になれば、助けてやってもかまわない。だが、その報酬として、お前の妹のおっぱいとマ●コは奪わせてもらうがな」

「だったら、いいや。そこまでして、俺の妹を汚されたくないんで」

「そうか……なら、お前は、もっと苦しめばいいさ。僕ら以外にも、この街には多くの変態がいる。もっと大変になることは目に見えてるんだ。精々頑張るんだな」

「……」


 変態か……。

 そもそも、なぜ、この街には変態が多いのだろうか?

 本当に意味不明だ。


 夏央は心内で、大きなため息をつく。

 ただ、平凡で地味な生活を送りたい。

 たったそれだけのこと。


 単純な目標なのに、なかなか達成できないのである。

 今回の“共に変態にならないか”という問いかけに、素直に応じたとしても別の問題が生じてしまう。


 視界に映る露出狂の変態に従わない方が正解なのかもしれない。

 どちらを選んだとしても苦しいのならば、妹の南由が幸せになれる方を選ぶ。ただそれだけである。


 夏央は背後にいる南由を見、優しく微笑む。

 すると、妹も明るい笑みを返してくれる。が、変態がまだ近くにいることで、その笑顔はぎこちなかった。


「というか、お前には言っておかないといけないことがある」

「言っておくこと?」

「ああ、それは――」


 露出狂の変態が話し始めた頃合い、遠くの方から自転車の音が聞こえる。昨日と同じ、自転車の音であり、遠くの方から薄っすらと光が見え、ゆっくりとそれが近づいてくるのだ。

 多分、警察官が乗っている自転車だと思う。


「しょうがない。奴が来たか……なら、しょうがない。僕はここで立ち去らせてもらうよ」


 露出狂は再び黒いコートで自身の体を隠すと、近くにあった家の塀に上り、サッと姿を消すように、どこかへと立ち去って行ったのだ。


 それって、不法侵入じゃ……。

 そう思っていると、近くの家から、“不審者が自宅の庭にいる”という悲鳴が聞こえてきたのだった。


 本当にヤバい奴なんだと思う。

 そうこうしている間にも、薄っすらとした光が近づいてきて、その自転車に乗っていた人物の姿が明らかになるのだ。


「お兄さん……アレって」


 南由は、露出狂という名の変態が立ち去ったことで、気を緩め、現状を把握しながら夏央に問いかけてくる。


「警察だろうな」


 夏央が言った直後、その者は自転車から降り、二人の元へと近づいてきた。


「また君たちか……」


 夏央が言った通り、その者は警官服を身に纏った男性の警察官であった。


「はい、昨日はありがとうございました」


 夏央が頭を下げると、背後にいた南由も警察官の前に姿を見せ、軽く頭を下げていた。


「いや、いいよ。君たちが無事であれば……」


 警察官も帽子を直しながら、南由の爆乳をチラッと見、興奮した感情を抑えながらも返答していた。


「それで、変態はどこですかね?」


 警察官は、帽子を弄りながら辺りを見渡す。


「あっちの方へ行きましたよ。他人の家の壁を上って」

「そうか。もう少し早めに駆けつけられれば逮捕できたのにな」


 悔しそうな顔を見せ、近くの家の壁へと視線を向けていた。


「お巡りさんはどうしてここに?」


 南由が問う。


「それはだな……」


 人々を守る警察官なのに、妹の爆乳をまじまじと見ている。そして、帽子を触りながら、冷静さを取り戻しつつ、咳払いをした。


「まあ、ここら辺の住民から、不審者がいるとかの通報があってだな。それで、ここまで来たというわけだ。ここら辺は住宅街だし、夜だと声も結構響くからな」


 確かに夜の道で声を出すこと自体、近所迷惑である。


「では……」


 警察官は咳払いをする。


「あちらの方に不審者が行ったということで間違いないね?」

「はい」


 夏央が頷くように言った後、近くの家から住民が出てきて、“こっちの方に変な人がいる”と、大声で叫んでいたのだ。


「今から行きますッ……では、また、後ほど」


 警察官は、自転車を引きながら呼びかけられた家へと向かっていくのだった。


 はああ……と、重い溜息を吐く夏央。

 隣にいる南由も、恐怖心から解放されたようで、体から力が抜けるように、膝から崩れ落ちていたのだ。


「大丈夫か、南由?」

「う、うん……で、でも、怖かったあ……」


 電灯の明かりで照らされた夜道では、暗くてあまりよくわからないが、妹はちょっとばかし、瞳を濡らしているようだ。

 相当怖かったのだろう。


 道で膝をついている南由の頭を、兄である夏央は撫でてあげるのだった。


「お、お兄さん……」


 南由は上目遣いで見つめてくる。

 優しい瞳が輝く。


 ――ッ⁉

 夏央はドキッとしてしまった。


 血の繋がった妹に対して、今まで恋愛感情なんて抱いたことなんてない。

 けど、この頃、可愛らしく思えて、どぎまぎするのだ。

 この感情って……。いや、まさかな……。


 夏央は絶対に、恋愛的な感情ではないと、自身に言い聞かせながら、膝間づいている妹の手を握り直し、その場に立たせてあげるのだった。






「それで、今から家に帰ってからスイーツ食べるのか?」

「うん。食べたいから、さっき、コンビニに行ったじゃん。早く帰って、スイーツを食べないと、気がおかしくなりそう」


 南由は笑みを見せつつ、自宅へと向かい、夏央と夜道を歩いているのだ。


「でも、夜食べると、そんなによくないと思うけど」

「どうして?」

「なんというか。まあ……いや、なんでもないよ。さっきも大変だったもんな。しっかりと食べて、よくなってくれよ」

「うんッ」


 南由は元気よく返事をする。

 そんな妹を前に、夜にスイーツを食べると太りやすくなるとは、どうしても口にできなかった。

 やはり、南由の前では正直には言えない。


 先ほども変態の存在により、妹の心は傷ついているのだ。

 余計なことを話さず、ただ手を優しく握り、近くに寄り添うだけにしておいた。

 それは多分、南由も望んでいることだと思う。


 夏央は妹と共に夜のひと時を感じながら、自宅まで歩き続けるのだった。


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