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第3話 おっぱいと、マ●コのシマリを追い求める変態紳士


 何かがおかしい。

 おかしいというよりも、普段からおかしいのだが……。

 今日は特におかしいのかもしれない。


「お兄さん……? あの人……」

「ああ、やっぱり、変だな」


 兄である夏央は、妹の南由の前に立ち、守る姿勢を見せた。


 夜七時頃。南由がスイーツを食べたいということで、一緒にコンビニへと向かい。今、自宅に帰宅している途中だった。

 スイーツを購入するくらい、夏央一人でもできる。が、妹を一人、自宅において外に出るのも不安だった。

 だから、二人で夜道を歩いているわけだが……。


 今まさに、夜道の電灯に照らされた環境下で、五メートル離れた先に佇む、怪しい黒いコートの男性と対面した。

 二人の瞳に映る、その三十代くらいの男性は、一見普通に見える。他人を見た目で判断するのは、良くないと世間的には言われているが……今のご時世、人は九割型、見た目だと思う。


 見た目というのは、顔つきとか、服装とか、不自然な言動とかで、そう決めつけているわけではない。

 どちらかといえば、そういう変質者オーラを感じるのである。


 意味不明と思われるかもしれないが、夏央には、そのオーラがなんとなくわかるのだ。

 夏央は、変質者との闘いに備え、唾を呑む。

 敵となる者へと、力強い目力で対峙するのだ。


「おいおい、君は、どうして、そんな怖い顔をするんだい? 僕は、ただ、君たちに道を聞いただけなんだけどなぁ」


 その黒いコートの男性はため息交じりの声を出す。


 先ほど街中までの道を問われたのは事実。

 けど、オーラを見れば、わかるのだ。

 絶対に、その道を聞いた行為自体に裏があるのだと。


 夏央は右の拳を軽く、そして、強く握り直す。


「はああ……、この頃、冷たい世の中になってしまったものだねぇ。声をかけただけなのに、不審者扱いとは悲しいよ」


 その男性は、なぜか、ご時世の冷たさについて語り始めたのである。

 そんなこと、どうだっていい。それよりも、早くどっかに行ってほしいと、夏央は思うのだった。


 この環境から早く脱したい。

 できる限り、大きな事件に発展させたくないのだ。

 今は一刻も早くに自宅へ帰り、妹の南由にスイーツを食べてもらうこと。

 夜遅くに甘いものばかり食べると、妹が太りかねないからだ。


 ここで足止めなんてされたくない。

 夏央は、黒いコートの男性と対峙する中、そんなことばかり考え込んでいた。


「お兄さん……普通に道案内してもいいと思うの……その方が穏便に……」


 背後から南由の声が聞こえる。その声は震えているのだ。


 夜の時間帯、不自然な男性から話しかけられている。

 恐れない方がおかしい。


「ほう、その後ろの女の子は実に親切な子ですね」


 男性は誉めるように口元をニヤつかせていた。


「僕はね、できれば、その親切な子から、道案内をしてもらいたいのですが?」

「それは無理だ」


 夏央は拒絶した。


「なんでです? 君は親切じゃない。だから、僕はそっちの子に話しかけてるんですが? そちらの子は、お名前は?」

「そんなことを聞いてどうする?」

「道案内してもらう時に必要だと思いまして」

「必要ないだろ」


 夏央は強く抗議した。


「はああ……もう面倒ですねぇ」


 男性の雰囲気が変貌した。

 先ほどまでの温厚な性格が一変し、本性を現したかのように、口調が強くなったのだ。


「あのさ、お前には、興味ないって言ってんだよッ」


 男性はゆっくりと二人へと近づいてくるなり、夏央の背後にいる南由へと手を伸ばしてくるのだ。


「やめろッ」

「お前には興味はない。どっかに行け」

「うわあッ」


 夏央は道の端へと押し倒されてしまったのだ。


「イテテテ……」


 夏央は右腕から倒れてしまった。ちょっとばかし、痛みがある。けど、少し時間が経てば問題はないと思い、南由を守るために再び立ち上がるのだ。


「やめて」

「いいだろ、こっちに来いッ」

「きゃあああッ」


 南由の悲鳴が響く。

 黒いコートの男性から、強引にも腕を引っ張られているのだ。

 道案内とか、もはや、関係なくなってきている。


「それにしても、間近で見ると、やっぽ、デカいな。君のおっぱいは、どれくらい? 確実にGカップは超えてそうだけど」

「やめてください」


 南由は必至に抵抗している。

 強引に腕を離そうとするが、男性の握力が強いらしく、なかなか、距離をとれずにいた。


 ヤバい……このままでは。

 夏央は妹を助けるために、不審者と南由の間に割り込むようにして、二人を引きはがす。


「うわッ、な、何を⁉」


 黒いコート男性は動揺し、よろけていた。


 南由の方は尻もちをついてしまう。

 だが、逃げるのならば、今しかない。

 不審者が鈍っている間に、走るしかないのだ。


「行くぞ、南由」

「う、うん」


 夏央は妹を強引に立たせようとするが、実に重い。多分、体重ではなく、おっぱいの方が大きい故、引っ張り持ち上げるのが難しいのだ。


 少し時間がかかったことで、態勢を整え直した不審者男性から話しかけられてしまう。


「お前、逃げるのか?」


 男性からの問いかけに、夏央は立ち上がった妹の手を握ったまま、少しだけ背後を見やる。


「逃げるとか、じゃないから。あなたが妹に危害を加える人じゃなかったら、普通に会話しますよ。けど、明らかにおかしいというか……」


 初対面の人をディスるのには、少々心が痛むが、現に南由が危害を加えられたのである。仮に、普通の人だったとしても許せないと思う。


「おかしいと……ほう、そうか……確かに私はおかしいのかもしれない……」


 その黒いコートの男性は、チー牛のように小声で独り言を呟いている。


「だったら、隠す必要性なんてないな」


 その時だった。

 黒いコートの中が、今明かされるのだ。


「な、なッ⁉」

「きゃあああああ」


 夏央と南由は、その男性の姿に悲鳴を上げる。


 その男性はやはり、おかしかった。

 おかしいというか、変態というべきか。

 黒いコートの中は、全裸だったのだ。

 衣服など身に纏うことのない、露出狂なのである。


 この頃、露出狂みたいな人が、夜遅くに帰宅する女子高生や、二十代くらいの女性に、卑猥な部分を見せるという事件が多発していると聞いたことがあった。

 多分、その犯人は、今まさに二人の視界に映る、その男性で間違いないと思う。


「これでどうだい? 僕は正真正銘の変態だ」


 その男性は隠すことなく、変態だと堂々と公言したのだ。


「そ、そうですか……」

「……」


 夏央は引き気味。

 南由に限っては、頬を赤く染め、背を向けていた。


「僕は、お前のことが嫌いだ。僕から、その子を引きはがしたんだからな。あともう少しで、この僕の手で、おっぱいを――」


 おっぱいのことについて語り始める。


「……そもそも、なんで、俺の妹を狙うんだよ」

「ふッ、それはだな。闇サイトで有名なんだ。その子のおっぱいがデカく、そして、マ●コのシマリが最高だと。だから、僕は手に入れたい。変態としてね」


 その露出狂の男性からは恥じらいというものは感じられなかった。

 本当に変態だと思う。


「だが、君は、そのマ●コのシマリがいい妹の兄らしいじゃないか。だから、お前を特別に許してやる」

「許されなくてもいいけど……」


 夏央はあきれた口調で返答した。


「許してほしいなら。僕と同じく、変態仲間にならないか?」

「……」


 どっかで聞いたことのあるセリフだと思った。

 だが、夏央の返答内容はすでに決まっている。


 夏央は南由を守るように優しく妹の手を握り直し、そして――


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