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第23話 二人って…実はそういう関係だったの?


 夏央は決心を固め、行動に移す。

 その行為に迷いなどない。

 視界に存在するパソコンを目の前に、自身の指でエンターキーを押す。画面上、事前に向けられていたカーソルのところがクリックされる。


 夏央は内心、怖かった。

 後戻りできない恐怖心に今、押し潰されそうになっていたからだ。


 0の数字でエラーになった。

 だから、それ以外の、1から9までの数字、1字を含めて入力し、クリックしたのである。

 押してしまった以上、後は結果を祈るだけ。


 一瞬、現実から視線を逸らすために、瞼を閉じてしまった。

 あれ……でも、さっきのように、エラー音が聞こえないな……。


 もしやと思う。

 この流れは、正解?

 3の数字であっていたのだろうか?


 心臓の鼓動が高まり、胸の内が痛くなる。相当な緊張感と向き合いつつ、瞼を見開いた。

 視界の光景。

 その中に、パソコンの液晶に映った情報が夏央の瞳に入る。


「……」


 やはり、音はしなかった。

 よくよく見てみると、画面上が真っ暗になっている。


 先ほどの入力画面から一度暗転し、そして、ゆっくりと何かが表示され始めていたのだ。


「ということは、せ、正解?」


 まだ、ハッキリとした画面に移行しておらず、不安さを抱えたまま、現状を見守るのだった。


「……でも、これって、今まで見たことのないページが……」


 画面上に、新しい雰囲気を持つサイトが表示される。

 “変態の生態系”についての表向きの内容から、“変態に対する研究論”へと内容が変わっていたのだ。


「……研究論?」


 論文のような内容。

 画面上を下にスクロールしても、長蛇に及ぶ文章がびっしりと書き込まれているのだ。


 文字だらけの構成により、一瞬バグだと感じてしまう。

 そう思ってしまうほどの衝撃さ。

 夏央は一旦、深呼吸をし、現状と向き合う。


「というか、何が書かれてるんだ?」


 一応、最初の方から読んでみることにした。

 真の変態は、おっぱいではなく、下着でもなく、マ〇コのシマリ具合に関心を持つものだという内容。


 そのシマリ具合と変態の繋がりについて研究するのが、この組織の本当の目的だと書き綴られていた。

 論文かと思ったのだが、よくよく目を通してみると、実はそうではなかったりする。

 組織の方向性に関するものだ。


 だがしかし、なぜ、マ〇コのシマリ具合に着目したのだろうか?

 もしや、南由と関係性があるのだろうか?

 そこはまだ未確定であり、ハッキリとした問いを得られるわけではなさそうだ。


 この長ったらしい文章を最後まで読めば、マ〇コのシマリ具合と、南由との関係性がわかりそうな気がした。

 けど、南由が拉致されているかもしれないという恐怖心から、冷静にすべてを読み進めようとは思えなかったのだ。


 簡単に内容を把握したいんだけど……。

 夏央は視点を変え、思考する。


 闇サイトを探れたとしても、仮にパスワードを入力できたとしても、最終的に本当のページにたどり着いたとしても、すぐに解読できない仕様になっているのかもしれない。


 本当に面倒だ。

 この面倒臭さは、どこかで見覚えがあった。


 誰だっただろうか?

 意外にも慣れ親しんだところに居そうな気がする。

 思い出せそうで、そうそう思い出せない葛藤を今、夏央は抱えていたのだ。

 脳内が一瞬、バグってしまうほど、少々混乱してしまう。


 夏央は、文章だらけのページを最後まで下にスクロールしてみる。

 けど、最後の最後まで回りくどい文章だらけで、それ以上、大きな情報を見つけることはできなかった。


「どうしたら、いいんだよ……」


 夏央は頭を抱え込んでしまう。


「あれ……」


 ふと思う。

 今、気づいたことがあった。

 そもそも、悩む必要性がないのだと――


 夏央が利用しているパソコンはそこらへんにあるタイプではない。

 藤花の家にある軍事用のシステムが内蔵されたものだ。

 この長ったらしい文章について、このパソコンで検索をかけてみれば、何かがわかるかもしれない。


 なんせ、ダークウェブにも繋がるほどの悍ましい性能を持つ。

 できないことはないだろう。

 サイトのURLを用いて、検索をかけた。

 すると――


「結構、出てくるんだけど……」


 恐ろしいほどに、検索をかけた後のページに、多岐に渡る情報が表示されたのだ。


「こ、これは……いけるか?」


 夏央は一つ一つ確認していく。


「……」


 夏央は無言で作業を続けた。

 南由がいる場所と関係する情報さえ、今は入手できればいい。

 そんな強い想いを抱いたまま、可能な限り調べ尽くす。


「……あれ? この会社名ってどこかで……」


 夏央は気になったページを見つけた。

 そのページにとある会社名が表記されていたのである。


 日月薬品――


「ん?」


 夏央は首を傾げた。

 自分と同じ苗字の社名に少々戸惑う。


 珍しいな……同じって……。

 たまたま同じなのか。

 それとも――


 それは定かではない。

 けど、日月薬品についてもう少し調べた方がいいだろう。

 夏央はひたすら、藤花のパソコンで可能な限り調べ続ける。






 ガチャ――……。


 遠くの方から音が響く。

 だがしかし、夏央は調べることに集中していて気付く様子はなかった。


「ねえ、夏央って、この部屋にいるんでしょ?」

「そうだけど。ちょっと、勝手に開けないでくれない?」

「いいじゃない。減るものじゃないでしょ」

「減るの。だから――」


 藤花が強気な口調で告げるものの、すでに遅い。

 理香は勝手に軍事用の機器が設置された部屋の扉を開いていたのである。

 藤花が隠し通すことなんて、もう出来そうもなかった。


「へえ、凄いね。こうなってるんだ」

「だから、勝手に――」


 藤花は頭を抱え、重いため息を吐いていた。


「だって、私、さっきからずっとリビングで待ってたんだよ。戻ってこない方が悪いから」

「だからって、勝手すぎよ」

「いいから」

「ここ、私の家なんだけど。勝手に許可を下ろさないでくれない?」


 藤花はそう言うが、理香は迷うことなく機器が設置された部屋へと足を踏み込み。そのまま奥の方へと向かっていく。


 藤花と理香。

 似たような性質をした感じの彼女らだが、やはり、打ち解けたとしても、クラス委員長の理香の方が立場的に上らしい。

 家柄的には、藤花の方が確実に上なのだが、意外にも彼女は押し負けてしまうタイプのようだ。


「ねえ、夏央? いる?」


 声を出しながら、部屋の奥へと勝手に進んでいく始末。


「ちょっと、待ちなさいって」

「いいじゃん、私にも見させてよ」

「だから……きゃあ――」


 藤花は床にあったケーブルに足を引っかけてしまい、転びそうになる。

 そのまま藤花は、前かがみに倒れこんでしまう。

 そして、前の方を歩いていた理香に覆いかぶさるように、藤花は倒れた。


 ドン――……。


「もう、なに?」

「理香の方が勝手だからでしょ、もう……」

「ご、ごめん……でも、初めて見るものばっかりで、ちょっと調子に乗っていたかも」


 理香は尻餅をつくように床に倒れこみ。藤花は彼女を押し倒す構図になっていた。


 二人の女の子の顔の距離感は近い。

 そんな中――


「なんか、何かが倒れる音がしたんだけど」


 夏央の声が聞こえた。


「……二人ともなんで、そこに。というか、学校では仲が悪かったのに、意外とそういう関係だったの?」


 二人は、夏央からひかれてしまった。


「「ち、違う――そうじゃないからッ」」


 口調がかぶる。

 二人は、今の態勢のまま、気まずく顔を背けるのだった。


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