第14話 実妹とセックスした次の朝…
朝を迎えた。
けど、すっきりしない。
現実味がなく、ベッドから起きた直後から怠かった。
夜中に変態が現れたことで、一時的に警察沙汰になって、自宅内が騒がしかったのだ。
あまり眠れていない。
そういった事情もある。
けど、それ以外にももう一つ。
今、隣で南由が寝ているのだ。
普段はそれぞれの部屋のベッドで休むのだが。今回ばかりは、事件があったところで休ませるわけにはいかず、一緒に就寝したのである。
慣れない環境だと落ち着かない。
寝ている時も、妹の体の良い匂いが漂い、緊張のあまり、ぐっすり眠れなかった。
「……」
ベッドで上体を起こした夏央は、隣で瞼を閉じ、枕を抱きしめながら寝ている妹を見やった。
年齢を重ねていくごとに、妹の寝顔を見る機会が少なくなったものの、久しぶりに見ると、不思議なほどに魅力的。
ただ、妹は寝ているだけなのに、妙に意識してしまうのだ。
どうして、血の繋がった妹に興味を抱いてしまうのだろうか?
夏央は自分の存在が不安になってきた。
やっぱり、好きなのか?
夏央は、妹の寝顔を見、自身の感情の核心に迫る勢いだった。
けど、素直に受け入れることができず、グッと感情を押し殺す。
「……」
だがしかし、触ってみたいと思ってしまった。
昨日の夜。
妹の南由と性行為をしたのだ。
コ●ドームをつけずに及んでしまったのは事実。
それは覆せない。
「……」
大丈夫なのかと思う。
そもそも、妹の中に出してしまったということは、確実に後の処理がある可能性だってある。
けど、シてしまった記憶は取り消せない。
しょうがないと思いつつも、妹のシマリの良さを思い出してしまうのだ。
「……ッ⁉」
恥ずかしさと背徳感に襲われる。
「余計なことは考えない方がいいよな……」
ふと、夏央は口から言葉を零す。
「……んん……」
右隣で寝ていた南由の声が僅かに聞こえる。
左手で瞼を擦り、妹は上体を起こした。
「んん――、おはよう、お兄さん……」
まだ眠いようで、声が小さかった。
「おはよう……」
気まずかった。
朝になって、妹と改めて顔合わせしたことで頬を赤く染めてしまう。
南由との行為を振り返ると俯きがちになる。
「どうしたの?」
「何でもないよ」
「……本当に? なんか、辛そうだったよ?」
「そ、それは何というか、昨日のことだよ」
誤魔化すことにした。
妹と行為に及んだことではなく。昨日、南由の部屋に現れた変態について悩んでるフリをして見せたのだ。
「あの変態ですよね……私の大事なものを奪おうとしてましたし。絶対に許せないです。でも、警察の人が捕まえてくれたのでいいですけど……ずっと、刑務所に入っていてほしいです」
普段はそこまで怒らない南由が怒りを露わにしているのだ。
よっぽどのことである。
けど、女の子であれば、下着泥棒に対して、嫌悪感を抱くのが普通だろう。
「そういや、今何時だっけ?」
「んッ、そ、そうですね。えっと……七時くらいですね」
南由はベッド近くに置かれた小型の目覚まし時計を手にし、確認していた。
「七時?」
「はい」
「じゃあ、ギリギリ間に合うか?」
「はい……」
「いや、だとしてもちょっとは急がないと」
「え?」
「……」
南由はまだ寝ぼけているところがあるようだ。
「行くから、ほら立って」
「は、はい……」
ベッドから立ち上がった夏央はベッドの上にいる南由の手と繋ぎ、立たせてあげるのだった。
「では、こんな感じでよろしいですかね?」
「ああ、問題ないと思うよ」
「……」
「どうした?」
「んんッ……な、なんでもないです……」
玄関先にいる南由の様子がおかしい。
先ほど朝食をとり、支度を済ませ、夏央は靴を履いていた。
南由は何か考え込んでいるようで、話したい何かがありそうなのに、口を締め切っているのだ。
「そうか。じゃあ、学校に行こうか」
「うん……」
南由はただ、頷くだけ。妹は胸のところで拳を軽く握った後、靴を履き、夏央と一緒に自宅を後にするのだった。
「ねえ、今日って、通常授業だよな?」
「そうですけど。どうして、そんなことを聞くんですか?」
「いや、なんか。この頃、変態が多いからさ。一緒に帰ろうと思って。それに、この前さ、いきなり、授業スケジュールが変わった日があっただろ?」
「そ、そうですね……」
「ん?」
夏央は首を傾げた。
何か考え込んでいる妹。
やはり、玄関にいる時から、どことなく妹の様子がおかしい気がする。
「なんか、悩み事か?」
「そ、そうではないです……」
南由は激しく拒絶するかのような反応の仕方。
いつも、比較的おとなしい感じの妹の態度が違うことに、夏央は気になってしょうがなかった。
もしかすると、性行為に及んでしまったことが原因なのだろうか?
中に出してしまったのだ。
病院とかに……と一瞬、思ったが、そう簡単に相談できる勇気もなかった。
どうしようかと悩む、夏央。
余計に通学路を歩いている二人は、各々の理由で無言になってしまう。
「……」
「……」
今が一番気まずいかもしれない。
互いの想いをイマイチ共有できない時が一番、心苦しかった。
そんな空気感を一新するかのように、背後から、とある乗用車がやってくる。
それは黒塗りの感じであり、高級感があった。
二人の近くで、その乗用車が止まるなり、窓が開いたのだ。二人も立ち止まる。
「ねえ、平民? 二人で登校?」
その窓から顔を出したのは四野宮藤花だった。
「そうだけど……って、藤花かよ。いつも車なのか?」
「そうよ。別にいいじゃない。歩くと時間かかるでしょ?」
「そうだけどさ……」
夏央は、左側に立ち止まっている南由を横目で見やった。
「今歩いていたら、時間ギリギリになりそうだけど。乗っていかない? その方が遅刻しないでしょ?」
「確かに……そうだな」
夏央は制服のポケットからスマホを取り出し、画面を確認する。
結構、時間が経ってたんだな。
ここは素直に頼った方がいいのかもしれない。
今からだと、走らないと遅刻は確定だ。
走って無駄に体力を消費するくらいならと思い、再び南由と向き合うように見、反応を伺う。
「乗るか?」
「……はい」
夏央の問いに、南由は頷き、結果として二人は、藤花の車に乗って登校することになった。
「平民? そういえば、昨日は騒がしくなかった? 街中のどこかで事件があったとか、私、耳にしたんだけど?」
「え、まあ、確かに、騒がしかったな……」
まさか、その事件が、夏央の家で生じていたとは予測がつかないだろう。
「まあ、色々と私の方でも調査しないといけないですし」
「調査?」
「え、あ、な、なんでもないですからね。平民には関係ないですし」
「そうか」
「……」
左側の席に座っている藤花は焦りを見せつつ、気まずげに車の窓から外を見ている。が、左側に座っている南由は無言のまま。
夏央は、気に掛けるように妹を横目でチラッと見、再び藤花に話しかけるのだった。