9話
火亜流 本作主人公
赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い
身体中は古傷だらけ ムッキムキ
恵理 本作ヒロイン
黒髪 ゆるふわな感じ タレ目 めちゃ美人 落ち着いた声
スタイル良し 白いシスター的な感じの服 身体にフィットしてる
亮佐
金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい
わたる
黒髪のサラサラヘアー 小さい 10歳くらい 声小さい
義宗
白髪 眼鏡 白シャツ 柔らかい雰囲気
凛季
赤髪 ツインテール 赤肌 1本角の鬼の少女 蘭季の妹
蘭季
青髪 ボブ 青肌 1本角の鬼の少女 凛季の姉
※火亜流の部屋※
コンコンッ 誰かが扉を叩く
……誰だ……?
「ごめんなさい、おやすみでしたか? 」
恵理が伏し目がちに申し訳なさそうに部屋に入ってくる
……説教でもしに来たか……
「悪ぃがまたあんたの説教を聞く気はねぇよ」
そっけなく返す火亜流に恵理が言う
「あっいえ……そうではなくて……わたるくんの事、守ってくれてありがとうございます」
……守った? ……俺は……
「別に守ってねぇよ」
「全部聞きました、火亜流さんはお強いんですね……」
「そうでもねぇだろ……俺は……」
「火亜流さん……? 」
「ん……何でもねぇ、亮佐の奴は帰って来たのかよ? 」
「はいっ先程帰って来ましたよ、それで……火亜流さんに町長の義宗さんが後で何かお話があるとかで……」
……よしむね? ……ちょうちょう……?
「ちょうちょう? なんだそりゃ」
「この町で1番偉い人ですねとっても優しい方ですっ」
「優しい……か…… 」
ドタバタと騒がしい足音と共に子供達が部屋に来る
「せんせー! よしむねおじいちゃん来たー! 」
「もう着いたんですねっみんな呼びに来てくれてありがとうっ……では火亜流さん、ちょっとよろしいですか? 」
「あぁ」
恵理と共に部屋を出て礼拝堂に向かう
そこには眼鏡を掛けた白髪の冴えない男と、赤肌 青肌の鬼の少女2人、そして亮佐が居た
眼鏡の男がこちらを向く
「やぁ初めまして君が火亜流くんだね? 」
「あんたがちょうちょうとかって奴か、俺になんの用だよ」
義宗が火亜流に自己紹介をする
「あはは……僕は義宗、町長をさせてもらっている者だよ町に現れた亡者を君が倒したと聞いてどうしても話を聞きたくてね」
義宗の両脇にいる頭から1本の角を生やした少女2人がこちらを興味深そうに観察している
「なぁ〜見ろよ蘭季〜義宗程じゃないけど結構良い男だぜ! 」
「ん〜そうね〜〜義宗に比べたらまだまだだけどたしかに悪くないわね〜……」
2人の鬼の少女が値踏みするように火亜流について話している
「話だァ? そんなもん亮佐にでも適当に聞けよ 」
義宗が申し訳なさそうに火亜流に返す
「事の詳細については大体のところは聞かせてもらったんだけど……やっぱりどうしても君と直接話したくてね……時間を取らせてすまないね」
……こいつが町長ねぇ……見たところ全然強そうでもねぇが
「んなら手短に頼むぜ」
「まずはお礼が言いたくてね、君のおかげで町の被害は最小限に留める事が出来た、君はとても強いんだね……」
火亜流は不機嫌そうに呟く
「チッ……あんたもそれかよ……」
恵理が不安そうに火亜流を覗く
「火亜流さん? 」
「強くねぇよ……"1人"……助けられなかった訳だしなァ」
その火亜流の呟きに義宗、凛季、蘭季の3名は疑問を浮かべる
「犠牲者は1人も居なかったと聞いているけど……」
「……」
無言の火亜流を見つめる恵理
……火亜流さん……その1人とはもしかして……
「なんにせよ君が居てくれなければ亡者は町の中まで来て住民達にも被害が及んでいた本当にありがとう……」
「たまたま流れでそうなっただけだ」
義宗は深刻そうに話を続ける
「ここ最近は亡者の活発化の影響でこの町だけでなく隣町や周辺諸国にも被害は多数及んでいると聞く……君のような若者がこの町に居てくれて心強いよ」
「なら俺じゃなく、わたるってガキに感謝しな俺をここに引き寄せたのはアイツらしいからな」
「あはは……そうだね、ところで君は恵理くんと同じく記憶喪失だと聞いているけどその後記憶の方は戻ったのかい? 」
「いや、さっぱりだな……」
「そうかそれは大変だね……僕達で何か力になれる事があればいいんだけど」
「あんたみたいな雑魚そうなおっさんに頼るほどじゃねぇよ」
恵理が焦ったように前に出る
「ちょっと火亜流さんっ……そんな言い方……」
亮佐がほくそ笑みながら言う
「恵理先生無駄ですっこいつは野蛮人で目上の人に対する口の利き方も分からないほど頭の出来が壊滅的なんですっ多少は腕が立つようですがこいつのこの野蛮さを更正させるのは不可能でしょうっ」
「好き放題言いやがって亮佐てめぇ……」
亮佐は火亜流に顎を突き出し言う
「ふんっ事実だろう? なんだ貴様そこらの狂犬でもあるまいし」
火亜流もまた亮佐を馬鹿にするように言う
「俺が狂犬ならてめぇはそこの女の番犬じゃねぇか、何が"女神"だよ気持ち悪ぃ」
その発言に亮佐が激昂する
「貴様ァ……言うに事欠いて恵理先生が気持ち悪いだと!? 」
冷静に返す火亜流
「いやてめぇだよ、てめぇのその女に飼い慣らされた番犬みてぇな言動が気持ち悪ぃっつってんだよ」
亮佐は怒りにプルプルと身を震わせながら叫ぶ
「どうやら貴様は俺の逆鱗に触れてしまったようだ……俺だけでは飽き足らずっ! 恵理先生までも侮辱した貴様を俺は許さんッ!! 死で償えッッ!! 」
呆れ顔で呟く火亜流
「マジかよお前、頭ん中だけじゃなく耳もイカレてんのか」
義宗は苦笑いで困ったように亮佐と火亜流を諌める
「ははは……まあまあ落ち着いて……2人は仲が良いんだねぇ」
「「良くねぇよ! ! 」」
2人の睨み合いを呆れた様子で見ている鬼の少女2名
「まぁ〜似た者同士ではあるかもね〜……」
「義宗〜本当にこいつらに頼むの〜? 不安しかね〜……」
「あはは……凛季と蘭季も似たようなものではあるけどね」
恵理が義宗を気にした様子で伺う
「あの、義宗さん……私達に何か頼みがあるのですか? 」
「あぁ実は火亜流くんの強さを見込んで少し頼みたい事があるんだ」
睨み合いを続けていた火亜流と亮佐が義宗に振り返る
「んァ? 俺に頼みだァ? 」
義宗は神妙な顔付きで火亜流を見る
「実はここから20里程離れた隣町の霊楽町の町長と連絡が取れないんだ……いつもは互いの町の近況を2日おきに伝書鳩を飛ばして報告し合っているんだけど」
「れいらくちょう……? 」
義宗が続ける
「霊楽町は最近亡者の被害に合ったみたいでね町の中にまで亡者が侵入して何人かの消滅者を出したそうなんだ……それを聞いてすぐ鳩を飛ばしたんだが今日も返事が返って来なくてね」
考え込み不安そうにしている義宗を心配するように恵理が声を掛ける
「そんな……消滅者だなんて、それはとても心配ですね……"あの町長さん"なら無事でいるとは思いますが……」
火亜流は恵理と義宗を見比べ義宗に問いかける
「おい、それ俺と何か関係あんのか? 」
「無茶を承知で頼みたい……僕はこの町を今離れる事は出来なくてね、誰かに霊楽町まで出向いて様子を見て来て欲しいんだ……それは誰でもいいわけじゃない……もし亡者が隣町で未だに脅威となっているなら彼らに協力して霊楽町の助けになってあげて欲しい! 」
「断る、めんどくせぇよ」
即答する火亜流に物腰低く頼み込む義宗
「え、えっと……そこをなんとか頼めないだろうか……あちらの町長さんの無事を直接確認してくれるだけでもいいんだ」
「それなら俺じゃなくてもいいだろ」
「いやしかし町の外は危険なんだ……亡者と出くわすことだってあるかもしれない」
「あのなァ……」
義宗と火亜流のやりとりを聞いていた亮佐は思考を重ね1つの結論に辿り着いていた
……ふむ……霊楽町がそんなことに……
……あの町長に限って簡単にやられるとは思えないが……
……ん…待てよ……この能無しの野蛮人が霊楽町に行く……?
……それはつまりこのバカが教会から一時的に居なくなる?
……この野蛮な危険人物が恵理先生から離れる……?
……恵理先生の安全が確保される……という事ではないか?
……こ……これだ!!
「フッフッフ……火亜流……やはり貴様はその程度の男か……」
「あ? 亮佐てめぇ何が言いてぇ? 」
「貴様たしか言っていたな」
『いいか見てやがれ! すぐにでも俺は優しさってやつを極めて、てめぇなんざ軽く追い越してやるぜ!』
「恵理先生に出来るような事が自分に出来ない筈がない……と、自分は優しさを極める……と」
「っ!……あぁ……言ったぜ……」
亮佐が不敵な笑みを浮かべ続ける
「フッ……今この義宗さんの話を聞いて思わなかったか? 助けを求め困っている霊楽町の住民を救わねば、頼りにしてきた義宗さんのため動かねば、そう貴様は思わなかったのか? 」
「そ、そいつは……」
「フッフッフ……火亜流……貴様は所詮口だけの男……優しい人間になるなど! やはり貴様程度の人間には無理な話だったようだなアア!? 」
亮佐の言葉に衝撃を受ける火亜流
「ッ……! 」
面食らったような火亜流に亮佐が穏やかに話しかける
「いやいや火亜流……気にする必要はないさ、貴様のような人間には最初からそんなこと期待なんぞしていなかった……やはり俺の見立て通りの半端者だったというだけの事さ……」
火亜流は亮佐を睨みながら口を開く
「言ってくれるじゃねぇか……いいぜやってやるよ! 霊楽町だかなんだか知らねぇがどこへでもこの俺が助けに行ってやるよォ!」
「おいおい無理をするなよ火亜流、面倒なんだろ? どうでもいいんだろ? 自分で言った事を投げ出す軟弱で無様な負け犬のままでもそれが貴様という人間なのだから仕方ない事じゃないか」
火亜流は怒鳴りながら拳を強く握りしめ決意する
「うるせぇ黙りやがれッ! 決めたぜ俺は行く」
恵理が火亜流と亮佐の様子を心配そうに見つめている
「あ、亮佐くん? 火亜流さん? えっと……一体何を……」
「女ァ……見てろよ……俺は絶対てめぇを超えるぜ……! 」
義宗は状況が分からないまま混乱している様子だ
「え、ええっと……行ってくれるのかい? 」
「あぁ俺に任せろ」
義宗は後ろに控える蘭季を見て言う
「念の為に蘭季を同行させようと思うんだ……この子が霊楽町までの案内と有事の際は力になってくれるはずだから……町の守りのため凛季はここに残ってもらうよ」
凛季と蘭季は顔を見合わせ互いに頷いている
「了解! 義宗に従うよ! 」
「うんっ! ここの事は凛季に任せるわ! 義宗と離れるのは寂しいけど私に任せてっ! 」
その様子を眺める亮佐は不敵に笑う
……フッフッフ……単細胞バカめ……!
……まんまと俺の思い通りに動かされたようだな…!
……貴様という野蛮な狂犬は単純で助かる……!
義宗はとても申し訳なさそうな表情で亮佐に対して言う
「それで……彼と蘭季だけではやはり心配だから……良かったら亮佐くんにもお願いしたいんだ……この通りだ! 」
義宗は亮佐に対して手を合わせ心から願うように頼む
それに対し意表を突かれたように動揺する亮佐
「ん?お、俺もですか? い、いやしかし……俺には恵理先生を守るという崇高な使命が……」
……ま……まずい! 俺は恵理先生から離れる訳には……
「そうだぜ、そんな足でまとい必要ねぇよ」
火亜流の発言に亮佐がピクリと反応する
「なんだと……? 貴様今なんと言った? 」
「足でまといだって言ったんだよ、てめぇはここでその女の番犬やってろ」
「な、なな……何を言うかと思えばき……貴様ァッ! 」
顔を真っ赤にさせ烈火の如く怒りを露わにする亮佐
「いいか! よく聞けこの単細胞バカ! 貴様あの時この俺の助けがなければ亡者に殺られていたんだぞ!? それを忘れたか!? 」
火亜流が亮佐の怒鳴り声に同じく怒鳴り声で返す
「あ!? てめぇなんざ居なくても時間はかかったかもしれねぇが俺1人で十分倒せる相手だったぜ! 」
「いいや! 貴様はあのままなら負けていた! 無様に全身溶かされて見る影もなく跡形もなく貴様は消滅していたに決まってる! 」
「なわけねぇだろ! 余裕だったわボケがァ!てめぇこそ1人であの場であのバケモン相手に戦ってりゃ間違いなく溶かされて死んでただろうがァ! 」
火亜流、亮佐による不毛な言い争いは勢い衰えず加速していく
「貴様ァァアアア! 忘れたとは言わせないぞ!! 『亮佐助かったぜ、お前は命の恩人だ……お前は俺なんかよりずっと強い、最強の先生の騎士だな……』と言っていただろうがァァアアア! 」
「ああん!? そこまで言ってねぇだろうがァ! 脳みそ腐ってんのかてめぇはよォ!? いいから大人しくここでじっとしてその女の番犬やってやがれ! 」
「ふざけるなァア!! 俺も行かせてもらう!! この俺が足でまといなどと見当違いな事を吐かした愚かな貴様に必ず証明してやる!! 俺がいなければ貴様なんぞ何の役にも立たない野蛮で凶暴なだけの狂犬だとなァア!! 」
恵理が慌ただしく2人の間に割って入る
「ちょっと2人共っ1度落ち着いてっ……お客様の前でそんなに声を荒らげたりして……」
火亜流と亮佐の罵声と怒号飛び交う言い争いを傍から聞いていた義宗、凛季、蘭季は呆れた様子で苦笑いをする
「こいつら本当にこんなんで大丈夫か〜……? 」
「義宗〜……本当にこの人たちに頼むの〜? 」
「あ、あはは……いやぁきっと2人はとても仲が良いんだよ……今の状況では彼らしか頼れる人はいないし……」
亮佐は義宗に向かって言う
「義宗さん! 俺も行かせてもらいます! この恩知らずの単細胞バカに俺の力を思い知らせてやります! 」
「ったく、要らねぇって言ってんのによォ……」
義宗が亮佐に笑顔で感謝を述べる
「ありがとう亮佐くん! この教会のことは任せてくれ毎日凛季に様子を見てもらって恵理くんの助けにもなるよう言ってあるから」
凛季が自信満々な様子で答える
「ウンウン! 聖女様のことはあたしにドーンと任せなっ! 」
「分かりました、恵理先生……すいません俺はしばらくここを離れますが何かあっても無茶だけはしないで下さいっ 」
「亮佐くん大丈夫よっ先生の事は気にしないでっ……亮佐くんも気をつけてね」
蘭季がため息混じりに呟く
「私がこの2匹の犬の面倒見なくちゃいけないの? ……先が思いやられるわ」
「では火亜流くん、亮佐くん、準備が出来次第町の配給施設の方まで来て欲しい馬車を用意してある急いで向かえば夕方までには着くはずだ」
聞き馴染みのない単語にキョトンとする火亜流
「ばしゃってなんだ? 」
「貴様、そんなことも知らないのか……やれやれ」
「では僕達は先に行って待っているよ、本当にすまないね突然こんな無茶を」
「気にすんなよおっさん、優しい奴ってのはこういう時に動くもんなんだろ? 」
「あははそうかもしれないね……ではまた後で」
義宗、凛季、蘭季が礼拝堂を出て教会を後にする
「よォ亮佐、お前マジで着いてくんのかよ」
「当然だ、貴様にあそこまで言われて引き下がれるか」
「2人共……本当に気をつけてくださいね2人にもしもの事があったら私……」
「恵理先生……この野蛮人はともかく俺は必ずあなたの元へ無事に帰ってきます! 心配など無用ですよ! 」
食堂に繋がる扉がそっと開きわたるが顔を出す
「あ、あの……か、火亜流さんどこかに行っちゃうんですか」
「わたるくん……えっとね、2人は義宗さんの頼みでちょっとの間隣町へ行くことになったの」
火亜流はわたるの元へ行き腰を落とし目線を合わせる
「よォわたる、ちょっくら行ってくるぜ」
「……ちゃ、ちゃんと帰って来てくれる?」
「ん? おう留守はお前に任せたぜ、わたる」
「う、うん……! 」
火亜流はわたるに軽く挨拶を済ませると立ち上がる
「さてと……準備って言ってもなァま、手ぶらでいいか」
そんな火亜流を恵理が呼び止める
「あっ……火亜流さんちょっといいですか? 」
「なんだよ」
「渡しておきたい物があるんです、こちらに来てください」
亮佐は自室に戻り準備をしに行く
……俺に渡す物……?
恵理の部屋の前まで連れてこられた火亜流は部屋の前で止まる
「ここはお前の部屋か? なんだよ渡す物って」
「少し待っていて下さい……」
そう言って恵理は部屋へ入りガサゴソと何かを探している
しばらくして扉が開き恵理が何やら恥ずかしそうにしている
「え……えっとこれ……」
火亜流が手渡されたのは黒と赤を基調としたジャージだった
「なんだこれ、わざわざ渡す物ってこれかよ」
「えっと……霊楽町の方はここより少し気温が低くてその格好だと肌寒いかなと思いまして」
「そうなのか? ならとりあえず貰っとくぜ」
恵理はモジモジしながら気恥しそうに言う
「それ……昔に配給施設で貰ったのですが私にはサイズが大きくて……それで……今はたまに寝る時に私のパジャマに……」
「ん? 何だって? 」
「あっ! いえ……あはは……なんでもありませんっ 」
火亜流は渡されたジャージに袖を通す
「ん、おうぴったりだな……動きやすいし助かるぜ」
「それは良かったですっ! えっと火亜流さん……その……気をつけて……絶対無事に帰って来てくださいね」
「なんだよお前まで当たり前だ、俺が簡単に殺られるかよ」
恵理は不安そうに火亜流を見つめ手を握る…
「私には祈ることしか出来ません……無事を願う事しか出来ません……火亜流さんにあの時言われた事……火亜流さんの言う通りなんです……私はわたるくんが抱える問題に気付くことも出来ないで……ただ押し付けるようにしてあなた達の進んできた道を否定してしまっていた……私は……」
……参ったな……
「何言おうとしてるか知らねぇが別にお前だって間違ってねぇんじゃねぇか? 」
「えっ……? 」
火亜流は恵理の目を真っ直ぐに見て言う
「お前が見てきたもんと俺らが見てきたもんが違うだけでお前の言う綺麗事だって間違ってはねぇよ、亮佐が言ってたぜ……あんたは他の奴にはない"おもいやり"って優しさがあるってよォ…」
「私は…」
「お前はお前のやり方でそいつを貫けばいい…俺は俺のやり方でやる…そんだけだろ」
恵理は火亜流の言葉を噛み締める
……私は私のやり方を……
……例えそれが綺麗事だとしても……
「……なァ……いつまで握ってんだ……」
「えっ あっ! ご、ごめんなさい……! 」
恵理は照れた様子で勢い良く手を離す
火亜流は解放された自分の手を握り言う
「まだ優しいってのがどんなもんなのか俺にはよく分からねぇ……だが必ず俺もそいつを手に入れる、そして自分が誰なのかを絶対に思い出してやる……そしたらお前も……」
「私も…? 」
「んや……なんでもねぇ、んじゃァもう俺は行くぜ」
立ち去ろうとする火亜流の背中……
行ってしまう……その瞬間、突然得体の知れない不安が恵理を襲う
……待って……行かないで……!!ま……
「待って……!! 火亜流"くん"!! 」
「あ……? 」
「あれ…私……何で……あ、あれ…」
「……なんだよ急に……まだ何かあんのかよ? 」
「えっと……ううんっ……気をつけてねっ火亜流さんっ」
「おう、じゃァな」
火亜流の背中を見つめる恵理
……今のは一体……火亜流さん……
教えて……私は……君は一体……誰なの……?
貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます
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