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地獄転生 〜業火の拳で取り戻す失われた記憶と贖いの冒険譚〜  作者: さくさくメロン
第一部 記憶の断片
8/20

8話


火亜流(かある) 本作主人公


赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い

身体中は古傷だらけ ムッキムキ


恵理(えり) 本作ヒロイン


黒髪 ゆるふわな感じ タレ目 めちゃ美人 落ち着いた声

スタイル良し 白いシスター的な感じの服 身体にフィットしてる


亮佐(あきすけ)


金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい


わたる


黒髪のサラサラヘアー 小さい 10歳くらい 声小さい







「あ゛あ゛あ゛……わ゛た゛る゛……わ゛た゛る゛う゛う゛」


 両腕を亡くし地に伏す異形の怪物がわたるを見つめる


「え……え……そんな……お、お母さん……」

「おいおいマジかよ、こいつがお前の? 」

「そ、そんな……嘘だ……何で……」


「わ゛た゛る゛」


「ち、違う……ぼ、ボクのお母さんはこんな化け物じゃない! 」


「亮佐、亡者ってのは人間がなるんだよなァ? 」


 火亜流の質問に亮佐が答える


「あぁ、案内された時に聞かなかったか? この地獄の代表的な "死" の概念……消滅と亡者化」


 亮佐が怪物を見つめて言う


「消滅は殺されたりする肉体の消滅……亡者化ってのは言わば精神の消滅……魂の死だ……」


 ……精神の……魂の……死……


「理性を無くすんだよなァ……? でもこいつ……わたるの名前を呼んだぜ」

「俺にも分からない……どうなってるんだ」


「お、お母さん……そんな……」


 腰が抜けて動けなくなっていた男が這いながらこちらに近付き驚いた様子で口を開く


「お、お前は……わたる? なのか……」

「と…父さん……くっ……」


 男を見つめ肩を震わせるわたる


「わたる、良かった……ようやく見つけた……」

「え? え……?」


 男はわたるにゆっくりと歩み寄り涙を流す


「うぅ……ず、ずっと探していたんだっ……すまなかった……! お、俺はお前たちに……母さんやわたるに……俺は毎日酒に溺れてあんな酷いことを……うううう……」


 予想外の男の言葉にわたるが動揺する


「な、何を……ぼ、ボク達は……」


 男は涙を流しながらわたるの前に膝を着く


「 すまない……! 俺はあの世界で、お前達を幸せにするんだ……立派な家を建てるんだって、ずっと仕事を頑張って……それでリストラされてから俺は毎日家で酒に溺れて、ううう……あんな酷いことを」


「う……そ、そんな……今更」


 わたるは男を見つめその言葉を聞く


「幸せにすると母さんに誓いを立てたのに……立派に育てると産まれたばかりのお前に約束したのに……ううう……俺はっ……」


 わたるは男を見つめて地面にへたり込む…


 ……そんな事……


「う、嘘だ……し、信じない……母さんを殴って……ボクを蹴って……! い、いつも」


「許してくれなんて言える資格は、ううう……俺にはない……俺は自分で自分を許せない……うううあああ……俺はなんて事を」


「や、やめてよ! 何で今更っ! 」


 わたるが声を大にして叫ぶ


「何で! どうして! 今更そんなこと言うんだよっ! なら何で……死ぬ前にそうやって思い出して……う゛っ……くれなかったんだよっ!! 何で向こうに居た時に……母さんを大事にしてくれなかったんだよおお! 」


 ……わたる……


 泣きながら叫ぶわたるを火亜流が見つめる


「ボクはずっと……優しかった頃の父さんを待ってたのに……う゛う゛う゛……母さんも……母さんもお゛お゛……う゛あ゛あ゛ん゛」


『わたる、お父さんはね今はちょっと弱ってしまっただけなの……本当は優しい人だったのよ、いつも私達のために頑張ってる優しい人、わたるは母さんが守るからだから待っててあげよう……』


 わたるの脳裏に過った母の言葉


「なのにお、お前がこ、殺した! 母さんはずっとお前を待ってたのに! ううう……」


「俺はずっと後悔して……お前たちに……あれだけの事をして……この地獄でどうやって償えばいいか分からず……ずっと」


 火亜流と亮佐はこの状況で動けずにいた


 わたるの父の流す涙……わたるの流す涙……


 そして怪物となった異形の怪物の流す涙……


「あ゛あ゛あ゛あ゛わ゛た゛る゛る゛う゛う゛……」

「うっ……お、お母さん……ボクっ……」

「そんな……これが母さんなのか、俺のせいで……うう……」


「わ゛た゛る゛……あ゛な゛た゛…」


 怪物の身体が少しずつ崩れて消えていく……


「あ゛な゛た゛……」

「あぁ母さん俺はっ! 愛していたお前に毎日あんな酷いことを、俺はっ!」


「ぁ゛……な゛た……お゛か……え゛り゛な゛さ い゛……」


「あぁああああ」


「こ゛こ゛め……ん…ね゛……わ゛た……る」

「嫌だ……嫌だよお……お母さん……」


 怪物はまるで穏やかな人間のような瞳で火亜流を見つめる


「あ゛りか゛……とう」


 ……今のは俺に言ったのか……?


 ……何で俺に……感謝なんて……


「嫌だァ! お母さん! やっと会えたのにぃ! こんなのやだよおお」

「わ゛た……る……元気で……」


 怪物は最後の言葉と共に身体が崩れ去り消滅する


「ううう……うわああああん……お゛か゛あ゛さ゛あ゛あ゛ん゛」


「そんな……俺は結局お前を……うう」


 泣き崩れた2人を見つめる火亜流と亮佐


「で? こいつをどうするよわたる? 」

「なっ……お前な……」


 涙を流すわたるに火亜流が確認をとるが亮佐はその様子を見て火亜流を止める


「お前な、この状況だぞ……本気で聞いてるのか」

「当たり前だ、わたる……お前が俺にした望み今叶えるか? 」


「ううう……ぼ、ボクの望み……」

「そうだこのクズ野郎を殺るんだろ? 今さらビビったか? 」


「……っ! わたる……お前が俺を……」


 火亜流の発言に驚いた様子でわたるを見るわたるの父親


「何驚いてやがるんだてめぇ、当然だろ? てめぇはこのガキとあの怪物になった女を殺したんだ」


「俺は……っ」


「地獄に来てずっと償い方が分からねぇって言ってたなァ……良かったじゃねぇかてめぇの償い方が見つかったぜ」


 わたるの父親は火亜流の言葉に頷く


「ああ……それが道理かもしれない……俺はお前達に償っても償い切れない程の事をした……わたる……俺はお前に……」


 火亜流が亮佐に言う


「亮佐、さっきのナイフわたるに渡してやってくれよ」

「なっ……お前な……本気で言ってるのか」

「本気だぜ、決めるのはわたるだがな」


「ぼ、ボクが……」


「それともアレか? てめぇもあの女みてぇに人殺しはダメだって説教始めるか? 」


「ふんっ……俺は……」


 亮佐がわたるを見る


 ……わたるが……父親を殺す


 ……この男がやった事を考えれば当然の報いなのかもしれない……だがそうなれば恵理先生は悲しむ………


 ……だがこれは……決めるのは……


「わたる受け取れ」

「え……亮佐兄さん……」


「あの野蛮人に言われたからじゃないぞ、わたる……お前の人生の選択はお前が決めるんだ」

「ボクの選択……」


 わたるはマチェットナイフを重たそうに持ちながらゆっくり父親の方へ向かう


「わたる……俺は父親失格のクズだ……一思いに……」


「だ、黙れェ……! 」

「わたる……」


「お母さんはずっと……父さんを待ってた……お母さんは……うっ……父さんに『おかえり』って、うううっ……言った……」


 わたるはマチェットナイフを地面に落とす


「ボクは……父さんを……許せない……でも……お母さんは……父さんを許した……だからっ……もう……」


「わ、わたる」


 わたるは手からナイフを離し父親に告げる


「この町から……ボクの前から……居なくなって……! そして償って償って償い続けて……! 転生して……そしたら今度は絶対に家族を大切にして……! ボクや母さんに出来なかった事を次は絶対に……ちゃんとして! 」


 わたるの父親は涙を流し地に伏す


「ぐっ……ううううう……す゛ま゛な゛い゛……すまないわたる……ううう……」


 火亜流がわたるに近づく


「それでいいのか? わたる」

「う、うん……グズッ……もう……これで……」

「そうか、なら帰るか……1人で立てるか? 」

「うんっ……立てる、立てるよ」


 わたるは立ち上がり、父親を振り返らず歩く


「あの野蛮人………わたるを1人で立ち上がらせるためにわざとわたるとあの父親に発破をかけたのか……? まさかな」


 ……それにしても……あいつ実質1人で亡者を倒したわけだよな


 ……鬼でもない人間のあいつが……


 ……何者なんだ…?



「亡者〜! どこだ〜! この凛季様が相手だ〜! ……あれ? 」

「ちょっと待ちなさいよ〜凛季〜! 1人で突っ込まないの! 」

「な〜蘭季〜! 亡者がどこにもいね〜! 」

「よく探しなさいよ! 」

「ん〜……おっあそこにいるのは聖女様んとこの! 」

「あら本当、聖女様の番犬さんがいるね」


「お〜い! 番犬! 」


 亮佐の元に凛季、蘭季が来て周りを眺めながら質問する


「な〜番犬〜! この辺に亡者出たって聞いたんだけどさ! どこにも見つかんないんだよね〜 」


「誰が番犬だ……亡者なら火亜流が始末したぞ」

「え? 亡者しんだの? 」


「あぁ…ついさっきな」

「かある……って誰だ? 」


「最近川で見つかって教会に住むようになった悪魔みたいな面の野蛮人だ」

「あ〜〜例の流れ着いた若者! へ〜かあるって言うのか! 」


 ん……?


 凛季、蘭季が顔を見合せ頭の上に?を浮かべる


「なぁちょっと待てよ番犬……そのかあるって人間が1人で倒したのか? 」

「あぁ…俺も見てたからな」

「うっそ〜〜〜!? 亡者を!? 人間が1人で!? 」

「しかもあいつ……俺が来るまで素手でほとんど無傷じゃなかったか……? 」


 凛季、蘭季がポカーンとしてる


「いや、いやいやナイナイ……それはさすがに……」

「だよな……直接見た俺も同じ感想だ……なんなんだあいつは」


「マシンガン持った軍人でも亡者とタイマンなんて基本負けるんだよ〜〜素手って〜〜! さすがに盛りすぎ〜〜! 」


「そう……だよな……なあお前たちは格闘技とかは分かるか? 」


「ん〜〜あたしら基本棍棒振り回すだけだからあんまそっち系詳しくないけど〜〜」


「獄道術……って格闘技とかって聞いた事あるか? 」


「ごくどう……? なんだそりゃ? 怖い人らの事? 」

「いや、知らないならいい……」


「んじゃ〜番犬! あたしら義宗に報告しなきゃいけないからさ! ここで起きたこと……詳しく教えてくれよ! 」


「見ていた俺にもいくつか分からない点があったがまぁいいか」


「時間とらせて悪いな〜」



 ※教会に戻った火亜流とわたる※



「火亜流さんは…本当に強いんですね……」


 わたるは教会の前で立ち止まり火亜流に告げる


「そうかァ? 俺からすりゃあの亡者が弱かったんだがなっと悪ぃな……別にお前の母親を悪く言うつもりはねぇよ 」


 わたるは火亜流を見上げる


「いえ……大丈夫です……ぼ、ボクも強くなりたい……」

「なりゃいいんじゃねぇか? 」

「どうやったら……火亜流さんみたいに、なれますか……」


 わたるの質問にぶっきらぼうに返す火亜流


「知らねぇよ……俺は自分の名前以外、自分の事が分からねぇからな」

「え…それって…」

「記憶喪失ってやつらしいな」

「そ、そうだったんですか……」

「それよりいいのかよお前の母親を殺した俺を殺さなくてよォ」

「え……ぼ、ボクが火亜流さんを……? 」

「あぁ……殺らねぇのか? 」


 火亜流の質問にわたるは悲しそうに俯く


「そんな……1度亡者になったらもう助かりません」

「かもしれねぇけどよありゃ間違いなくお前の母親だったぜ」


「っ! で、でも……お母さんは火亜流さんに感謝してました……亡者になってしまったお母さんを救ってくれて、あ、ありがとうございます……」


 わたるの言葉に火亜流は目を細めその表情に影がかかる


「バカヤロウ……お前が俺に礼なんて言うんじゃねぇよ」


 ……俺が救った……? 俺はただ襲って来た怪物を倒しただけだ


 バタンッ! 教会の扉が勢い良く開き中から恵理が現れる


「良かった……2人共無事で、本当に良かった……」

「せ、先生……ごめんなさい……ボク……」


「わたるくん……何があったかはきちんと聞くわ……でも今は君が無事に戻って来てくれた事が嬉しいの……あら、そういえば亮佐くんは? 」


「あいつなら後から来るんじゃねぇか? 」


「みんな無事なのね……良かった……町に亡者が出たって聞いて…私心配で心配で……」


 恵理は今にも泣きそうな表情だ


 ……また説教が始まると面倒だな……


「じゃぁ俺は部屋に戻るぜ」

「あっ……待って下さい火亜流さん、何があったかお話を」

「そいつはわたるか帰ってきた亮佐にでも聞いてくれじゃあな」


「あっもう……わたるくん大丈夫だった? 危ない目には合ったりしてない? 」

「う、うん……火亜流さんが守ってくれた、火亜流さんが助けてくれたから」

「そうなの? 」


 わたるは恵理に起きたことを告げる


 父親の事 母親の事 亡者との顛末 火亜流の事



 ※火亜流の部屋※



 ……さすがに疲れたな……


 ……またあの野郎の声に助けられたな……


「獄道術……か 」


 ……一体俺は……誰なんだろうな……



 




 貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます


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