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地獄転生 〜業火の拳で取り戻す失われた記憶と贖いの冒険譚〜  作者: さくさくメロン
第一部 記憶の断片
6/20

6話


火亜流(かある) 本作主人公


赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い

身体中は古傷だらけ ムッキムキ


恵理(えり) 本作ヒロイン


黒髪 ゆるふわな感じ タレ目 めちゃ美人 落ち着いた声

スタイル良し 白いシスター的な感じの服 身体にフィットしてる


亮佐(あきすけ)


金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい


わたる


黒髪のサラサラヘアー 小さい 10歳くらい 声小さい






 火亜流(かある) 恵理(えり) 亮佐(あきすけ) の3人は教会へと戻る


「せんせー! 何処に行ってたのー! 」「おかえりなさい! 」


 子供達が出迎えをする


「みんなただいまっごめんね、ちょっと出掛けてたのっ」


 恵理が子供達を撫でながらこちらを向き言う


「それじゃ私達も昼食にしましょうか」

「飯か……ん、俺も食っていいのかよそれ? 」

「当たり前ですよっみんなで食べましょうっ」


 こっちに来てから何も食していなかった火亜流は空腹状態だった


「ふんっ貴様……しっかり手を洗えよ」


 食堂に着いて子供達と共に席に着く


 恵理が食堂の入り口から1番遠い暖炉のすぐ前の皆を見渡せる席に着席し祈りの姿勢をとる


 「天におられる私達の父よ……皆が聖とされますように……みくにが来ますように……私達の日ごとの糧を今日もお与え下さい……私達の罪をお許し下さい……私達も人を許します……私達を誘惑に陥らせることなく悪からお救い下さい」


 恵理が何やら祈りのようなものを唱えている


 子供達も続くように同じような姿勢で何かを唱える


 亮佐だけが目を閉じたまま何をするでもなく頷いている


「お前はやらねぇのかよ」


 亮佐が自慢げに言う


「ふんっ……俺にとっての神は恵理先生以外にありえない……俺は女神である恵理先生に365日24時間常に感謝と祈りを捧げている……これ以上食事如きに何を祈れと言うのか……」


「よく分からねぇがキモいなお前」

「な……なんだと貴様ァ!? 恵理先生がキモいだとォ!? 」

「いやお前がな、お前がキモいなって」

「こ、こいつ……言わせておけば……許さんっ!! 貴様を(なます)にして神のもとに送り届けてやるゥ!! 」


 恵理がその様子を見て声を上げる


「こらっ! 亮佐くん何を騒いでいるの? 祈りは済んだの? 静かにしていなきゃダメですよっ」


 恵理の言葉に血走った眼の亮佐がスっ……と落ち着きを取り戻し笑顔で恵理に返す


「はい! もちろん祈りは済みました! 俺は静かにするのは得意ですから任せてください! 」


 ……騒がしい奴だな……


「「「「「 頂きます! 」」」」」


 久々の食事は質素な物ではあったが手は止まらなかった


 ……腹が満たされていく感覚……久しぶりだぜ……


 食事が終わるとまた祈りを皆が唱え子供達は庭へと駆けていく


 恵理は庭へ走っていく子供達を目で見送ると俺の方へ来る


「火亜流さん……あの、聞きたいことがあるのですが大丈夫ですか? 」

「なんだよ、難しい事は俺には分からねぇぞ」

「いえ……火亜流さんは何故、川で倒れていたのかな……と」

「川……あぁ……」


 そうだ、あの刀を持ったバケモンに俺はいきなり襲われてぶった斬られたんだったなァ……


「俺も分かんねぇよ……黒いバケモンにぶった斬られて気づいたらここだった」

「黒い化け物……に斬られた……? 」

「ふんっ……それなら貴様はとっくに消滅してるはずだろう、どうせ酔っ払って川に入ってそのまま寝て変な夢でも見たんだろう」


 ……あれが夢? あの殺意の塊を何度もぶつけられる感覚……


 ……あの唸り声……あの緊張感……あれが夢? ……


「さァな、大体俺はこの間訳の分からねぇ門をくぐってここに突き落とされたばっかで地獄……とかいうもんがまだよく分かってねぇんだ」


 恵理と亮佐が互いに顔を見合わせ神妙な顔でまた俺に目を向ける


「えっと……じゃあ火亜流さんはつい最近1度目の人生を終えて、この町にいきなり落とされた、という事ですか? 」

「いや、最初に見た景色は木と川しかねぇ場所だったが」

「木と川ですか……この辺りではなく離れた場所に落とされてそこから流れ着いた、と」

「まぁそんな感じだろうなァ」


 恵理は火亜流を見つめて聞く


「火亜流さんは御自身の"罪能"についてはご存知なのですか? 」

「またそれか……そのざいのーってやつはなんなんだ」


 亮佐が気だるそうに言う


「はぁ……それは俺もこいつに聞いたんですが罪能が何か、すら分かってない様子でした……一体どんな未熟な鬼に案内されたんだかっ」


 恵理が自身の胸に手を当てる


「そうなのね、私も自分の罪能が何かまだ分かってはいないけれど知ってるのは罪に応じた魂を綺麗にするための特別な力、っていうこと……」

「罪に応じた特別な力? 」


 亮佐が火亜流を嘲笑うように言う


「ふんっ……罪能ってのはそれぞれが持つ超能力みたいなもんだっ、まぁ俺の罪能は貴様のような信用出来ない奴に教えてやるつもりはないがな」


 ……こいつは自分の罪能を知っていて使えるのか……


 ……この女は俺と同じく自分の罪能が何なのか知らない……

 

「チッ……行き止まりかよ、結局この地獄で俺は何をすりゃいいんだ」


 恵理が俺に穏やかに諭す


「行くところないならここに居ていいんですよ? 君の目指す優しい人になるって道……私は素敵だと思うなっ」


 ……優しい人になる道……か


「恵理先生! 本気ですかっ? こんな野蛮人を……」

「亮佐くん、行くところがなくて困ってる人を見捨てるなんて先生できないわ……私達はみんな助け合って行かなきゃいけないの……それに」


「それに? 」


 ……私は彼から目を離してはいけない気がする……


 ……彼を信用してないから……? 彼が危ないから……?


 ……彼が記憶喪失だから……? ……どれとも違う気がする……


 ……何故かは分からない……でも彼を1人にしてはいけない……


 ……そう私の中の何かが告げる……


「私もやっぱり自分の記憶を取り戻したいのっ」

「恵理先生……分かりましたっそこまで言うのなら……」

「ありがとうっ亮佐くんっ」


 ……とりあえず俺はここにしばらく居ていいみたいだな……


「話は終わりか? なら俺は行くぜ」

「おい貴様、どこに行くつもりだ」

「さァな……ただなんかずっと身体を動かしたくて仕方ねぇんだ」


 自分でも何故か分からないが身体を動かしたくて仕方がない


 ……獄道術……陽炎……あれをもう一度身体で思い出したい、いやあれだけじゃない……


 俺はおそらくそれ以外にも……


 食堂を後にしてどこかへ歩く火亜流の後ろ姿から目を離さない恵理……


「あ、待って火亜流さんっ……」


 火亜流は庭に向かうと以前に陽炎を思い出すように歩き回った木の下に1人の少年がぽつんと座り込んでいるのを見つける


 少年はこちらに気付くと顔を背け身体を小さくする


 遠くの方では子供達が遊んでいてそのうち1人の少女がこちらに大きく手を振り呼びかける


「お〜い! わたるくんもおいでよ〜! そんなとこにいないでさ〜! 」


 ……このガキがわたるって言うのかたしかそいつが俺を……


『見つけたのは"わたるくん"だよ』


 …こいつが俺を……


 少女の呼びかけに答えることなく木の影で小さく座り込み下を向いているわたる


 ……なんだこのガキ……他の連中と違ってやけに静かだな……


 火亜流は少年に近付き見下ろしながら声をかける


「よォ……お前が俺を見つけたんだってなァ」

「あっ……ぼ、ボクは別に……」

「あん? おい声小せぇよ、なんだ? 」


 火亜流とわたるの姿を後方から見守るように見つめる恵理


 そして後ろから恵理に着いてきた亮佐


「恵理先生! あっ……アイツ今度はわたるに絡むつもりか! 」


 火亜流とわたるに駆け寄ろうとする亮佐の腕を恵理が掴む


「待って! 亮佐くん! 少しだけ様子を見てみたいの……」

「恵理先生……分かりました! でも危ないと思ったらすぐ俺が行きますから! 」

「うんっ……」


 "わたる" この教会に来てから誰とも打ち解けることなくいつも1人でいる心を閉ざした少年


 わたるの正面に立ち、見下ろす火亜流


「お前もうちっとハッキリ喋れよ」


「ぼ、ボクはっ……橋を歩いてて、それで……人にそれを伝えた……だけだからっ…」


 少年は声を震わせながらビクついた様子で火亜流の目を見ず呟くように話す


「お……お兄さんは……なんで……あ、あんなとこに……」

「そいつが俺もよく分かんねぇんだよなァ、とにかく助かったぜ」

「……ぼ、ボクが助けた……訳じゃないから……」

「そうかよ、んでも結果お前のお陰で俺はここのベッドで目ぇ覚まして久々の飯にありつけた訳だからなァ」


「…………」 ……黙り込むわたる


「よォ……ガキ、お前みたいなのに借り作りっぱなしなんざ気持ち悪ぃからよ何か1つ頼みがありゃ俺が聞いてやるよ」

「……ぇ……っ」


 自身を助けてくれたという少年に望みを聞く火亜流


「なんかねぇのか? 」

「何でも……い、いいの? 」

「おうっ俺に出来ることで良けりゃァな」


 少年は初めて顔を上げ火亜流の目を見る


「お、お兄さんは……つ、強いの……? 」


 火亜流は自身の強さについては分からないままだった


「あん? どうだろうなァ……あのバケモンからは逃げるしか出来なかったしなァよく分からねぇよ」

「ぼ、ボクのっ……ボクのっ」


 火亜流は少年を見下ろしたまま顔を近づけその望みを聞く


「ボクの……父親を……殺してよ」


 恵理、亮佐の表情が強ばる


 ……え……わたるくん……今なんて……


 火亜流はわたるに聞き返す


「あ、あん? ちちおやァ? 」


 後ろから聞いていた恵理と亮佐が驚いた表情になり近付く


「あっ……えっと2人共……」


 火亜流が振り返り不機嫌そうに返す


「なんだお前ら着いてきたのかよ、悪ぃが今このガキと話してんだ、どっか行ってくれ 」


 恵理が火亜流の言葉に強く反論する


「……! で、出来ませんっ……そんな……殺すだなんて、わたるくん? どういう事か先生に教えて? ね? 」


「……」


 わたるはまた下を向いたまま口を閉ざす


 後ろから火亜流の肩を掴み亮佐が凄む


「おい貴様、わたるに何か良くないことを吹き込んだんじゃないだろうな? 」


 火亜流がそれを手で払い吐き捨てるように言う


「知らねぇよ俺はこのガキに借りを返そうと望みを聞いただけだ」


 恵理がわたるに目線を合わせるように体勢を落として聞く


「ねぇ、わたるくんっさっき言ってたのはどういう事なのか先生に教えてくれないかな……? その……わたるくんのお父さんを……どうしてそんなこと……」


「………ぼ、ボクは……ボクは……」



 恵理から視線を逸らし火亜流を見るわたる


 ……こいつの望み……


「わたる、よく分からねぇがその"チチオヤ"ってのを殺りゃいんだよなァ? そいつの場所は分かんのか? 」

「……! ……お兄さん……い、いいの? 」

「あぁ、いいぜ殺ってやるよ」


 恵理が焦ったように前に出る


「なっ……ちょっと待ってください! いけませんそんなことっ」


 恵理が動揺しながらも俺に迫る


「火亜流さん、ダメですっ! 人を殺すだなんて……そんなことは許されませんっ」


 火亜流は表情を崩さず恵理に返す


「何でだ? 俺はこのガキのお陰で命拾いしたんだぜ、そのガキに借りを返すために頼みを聞くだけだ」


 淡々と続ける火亜流に恵理は心を痛める


「何でって……そんなこと……! そんなこともあなたは分からないんですか!? 」


 ……何を慌ててるんだこの女は……


「あぁ分からねぇなァ、あんたは俺にこのガキの望みを叶えねーで借りを作ったままでいろってのか? さっきあんた言ってたよなァ? 俺達は助け合って行かなきゃいけねぇだとかなんとか」


 火亜流は真っ直ぐに恵理の目を見たまま逸らさず続ける


「俺はこいつに助けられた、次は俺がこのガキの頼みを聞いてやる番だ……あんたには関係ねぇ……引っ込んでな」


 火亜流の気迫に気圧されそうになるが負けじと返す恵理


「……! ダメですっ、それは助け合いとは違いますっ! 人を傷付けてまで行う助け合いなんて助け合いではありませんっ! 」


「チッ……うるせぇな、引っ込んでろっつってんだろ」


 ギロリと恵理を睨む火亜流


「……嫌ですっ……私は……私はわたるくんの先生なんですっ! この子にそんなことをさせる訳にはいきません! 」


 すかさず亮佐が恵理の前に飛び出し俺を睨み付ける


「貴様ァいい加減にしろ、言ったはずだ恵理先生に危害を加えるつもりなら貴様を殺す……と」

「亮佐ぇ……てめぇも邪魔すんのか」


 火亜流と亮佐の睨み合いがしばらく続くと押し黙っていたわたるが口を開く


「ぼ……ボクとボクの母さんは……あいつに……殺されたんだ! 」


 恵理がわたるに振り返り驚いた表情でわたるのそばに寄る


「えっ……わたるくんそんなっ……どうして……あなたのお父さんなのよね? 」


 火亜流と亮佐もわたるの言葉に耳を傾ける


「あいつは……いつも家で怒ってて……母さんを殴ってて……ぼ、ボクも毎日……あいつに蹴られて……母さんはいつもいつもボクを庇って……ぅ゛っ……ぼ、ボクは怖くて……母さんに隠れることしか出来なくて……それで……」


 わたるが語る地獄へ来る前の壮絶な過去……



『このクソガキが! お前なんか生まれて来なければ良かったんだ! 』


 ドガッ


『やめてっ! やめてあなたっ! 』


『うるせぇ! お前もだ! さっさと酒買って来いクズが! 』


 ガンッ


 男が投げた灰皿が母親の頭に直撃する


 母親は倒れて動かなくなる


 ……いつもボクは母さんに守られて……


 ……弱いボクは隠れて震えることしか出来なくて……


 ……母さん……! やだよ……母さん!


『お、おい……何死んだフリなんかしてやがるこのクズ! 』


 男が動かなくなった母親の腹をまた何度も蹴る


『わあああ! やめろおおお! 』


 ……母さんが動かなくなって初めてボクの身体が動いた……


『ぐあっクソガキがああ』


 男を突き飛ばして転倒させる


 ……ボクは台所まで走って包丁を取りに行ったんだ……


 ……そしてあいつに……


『や、やめろおお わたるうう』


 グサッ……


 ……うう……母さん……母さん……ボクを1人にしないで……


 ……やだよ……母さん……ごめん……ごめん……


 ……母さん……ボクを置いていかないでよ……


 ……ボクも……


 手に持っていた包丁を気付くと自身の喉元に突き立てていた


 ……母さん……今度は……ボクが絶対……母さんを守るから……



 少年はそして知る自分が地獄に落ちたことを


 今度こそあいつを消滅させて守るんだ母さんを……




 火亜流と亮佐は黙ったままわたるを見ていた


「うっ……ううっ……ボクが弱かったから……母さんを守れなかったんだ……」


 涙を浮かべるわたるを恵理もまた涙を流しながら抱き締める


「わたるくん……! ごめんなさいっ……先生全然気付いてあげられなくて……辛かったね……怖かったね……もう、もう大丈夫だからね……」


 火亜流はその光景から目が離せなかった……


 ……いつか何処かで……こんな事が……



     ーーたくさんーー苦労したんだねーー



      ーーもうーー大丈夫だからねーー



      ーー君はーー1人じゃないのよーー



 ……またこの女の声……


 泣きながら恵理に縋り付くわたる


 涙を流しわたるを抱き締め優しく囁く恵理


 立ちすくみそれを見る事しか出来ない亮佐と火亜流


 その光景に


 火亜流の胸は何故か締め付けられるような痛みに覆われた






 貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます


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