4話
火亜流 本作主人公
赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い
身体中は古傷だらけ ムッキムキ
恵理 本作ヒロイン
黒髪 ゆるふわな感じ タレ目 めちゃ美人 落ち着いた声
スタイル良し 白いシスター的な感じの服 身体にフィットしてる
亮佐
金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい
町を歩く亮佐と恵理
「恵理先生、頭痛はもう大丈夫なんですか? 」
「えぇ……大丈夫よいつも付き合ってもらっちゃってごめんね亮佐くん」
恵理に元気よく返す亮佐
「なんのなんの! この街は平和とはいえ、いつ亡者や不逞の輩が襲ってくるとも分かりません! 護衛なしに恵理先生を1人にするなんてありえません! 」
「ふふ、頼もしいなっ……いつもありがとうね」
亮佐は顔を赤らめ声高に叫ぶ
「い、いやー! 感謝なんていいんですよ! 荷物持ちも護衛も! 俺が好きで勝手にやってる事ですから! はははー! 」
2人は市場を抜け食料分配所のある配給施設へ向かう
配給施設では食料や衣類、生活必需品の分配をそれぞれ行う配給所が設置されていた
閑慈乃町の町長である "義宗" が建てたそれは住民達の心強い支えとなっていた
主に義宗と義宗が仲のいい鬼で管理、運営が行われている
恵理と亮佐は食料分配所に到着し町長に挨拶をする
「義宗さんこんにちは〜 今日も食料の方を頂きに参りました」
恵理に続き亮佐も義宗に会釈をする
「チワッスー」
「やぁ恵理くんに亮佐くん、聞いたよ川に倒れていた若者が運び込まれたんだってね、その後は大丈夫かい? 」
義宗 地獄に来て既に50年
閑慈乃町に住み初めてからはもう30年以上にもなる彼の見た目は物腰低く眼鏡をかけた白いワイシャツを着た50代半ばの白髪の男性
その声には落ち着きがあり町に住む住民達からは人徳者として頼りにされている
「えぇ……今朝目覚めたようで大きな怪我もなくて安心しました……」
亮佐が不服そうに呟く
「ふんっ……あんな野蛮な奴を教会に置いておくなんて俺は反対ですがねっ……」
苦笑いをする義宗
「ははは……そうなのかい? 時間が出来たら僕もその彼に挨拶しに行くとするよ」
恵理は義宗に頭を下げて言う
「義宗さんいつもありがとうございます……私達の教会をいつも気にして下さって食料や生活必需品もいつもこんなに……」
義宗はそんな恵理に優しく返す
「いいんだよ恵理くん気にしなくて僕達は互いに助け合って行かなくてはいけないからね……それに感謝するのは僕の方さ」
恵理はキョトンとして聞き返す
「義宗さんが私に? 」
「ああ……恵理くんが子供達の面倒を見てくれるおかげで僕も助かっているんだ……町の活気は子供達の笑顔と健やかさ無しには成立しないからね」
亮佐は自信満々に恵理に胸を張る
「ふんっ! その通り! 恵理先生はまさしくこの町の女神! この俺が保証します! 」
「もう亮佐くんったら……いくらなんでも大袈裟だよ」
「ははは……いやいや町の人達も恵理くんを聖女様と慕っているしね……君はこちらの事など気にしなくていいんだ」
義宗は優しく恵理に微笑む
「お〜い義宗〜こっち手伝え〜! 」
義宗は突然呼ばれた声に顔を向けるとそこには1本角の赤肌の幼い女の子の鬼がいた
「ははは……"凛季"が忙しそうだ……僕はもう行くとするよ、ではね2人共」
「はい、ではまたよろしくお願いします義宗さん 」
恵理と亮佐は義宗に会釈をし配給所を去る
「亮佐くん……そんなに大荷物1人で持って大丈夫? ……」
荷物を大量に抱えた亮佐に心配そうに声をかける恵理
「ん゛ん゛は、はははっ! 楽勝ですね! う゛っ……いやあ全然楽勝ですよ! 何ですかねこれ全然重さ感じませんよ! ははは! 」
額に大量の汗を掻きながら笑顔で恵理に強がる亮佐
「あんまり無理したらダメよっ……辛くなったら言ってねっ」
「俺の事はご心配なくっ! さぁ帰りましょう! はぁっはぁっ……」
※場面変わって教会※
子供達に手を引かれ部屋から連れ出された火亜流
「おめぇら一体どこに連れてく気だァ? 」
「こっちこっちー! 」
階段を降りるとそこには木の椅子と長机がある部屋に着く
「ここでね〜みんなでご飯食べるの〜! 」
「あっちはトイレだよ〜! 」
どうやらこの教会の案内をしてくれているようだ
「次はこっち〜〜! 」 「こっちこっち〜! 」
「あっおい、あんま押すんじゃねぇっ」
手を引かれ、腕を捕まれ、背中からも押される、
……小せぇガキってのは苦手だぜ……
「ここが教室! 先生がいろいろ教えてくれるの! 」
ボロボロの木の椅子と机が何個か置いてあり正面には白い文字が書かれた緑色の板が貼られている
……教室……
……なんだ……懐かしい……?
聞いたことのない響きのはずだが何故か懐かしさを感じる
「次は庭いこー! 」「外にあるのー! 」
「分かった……分かったから押すな! おいっ…」
子供達の勢いに押されそのまま流れるように外へ連れ出される
先程の教室の窓から見えるすぐ側の外が庭となっていて子供達は日中は日向の下で駆け回って遊んでいる
……以外と広さはあるんだな……
「ねぇ、お兄ちゃんは名前なんてゆうの? 」
火亜流はぶっきらぼうに答える
「俺は火亜流だ」
「かーる兄ちゃん? よろしくね! かーる兄ちゃん! 」
「かーるじゃねぇ! か あ る だ! 」
「かーる兄ちゃん! かーる兄ちゃん遊ぼー! 」
「ったく……聞けよ……遊ばねぇし」
「え〜なんで〜? 走ったら気持ちいいよ〜! 」
「面倒くせぇな……何で俺がおめぇらの面倒なんか見なきゃいけねぇんだよ」
そこに遠くから響く恵理の声
「みんなただいま〜いい子にしてたかな〜? あら…… 」
恵理と亮佐が帰宅した
……正直助かったぜ……
「はぁっ……はぁっ……ゼェ……はぁ……ゼェ……」
亮佐は汗でびしょ濡れになっている
「あらみんな外に居たのね〜遅くなってごめんね早速朝の授業始めよっか」
「うん! かーる兄ちゃんをオレたちが案内してやってたんだー! 」
「わたしたちが案内してあげたのー! 」
「おい……だからかーるじゃねぇっ か あ る 火亜流だ! 」
恵理の動きが停止する
耳に入った赤髪の青年の名前…
「え……火亜流?……っ……火亜流……その名前……」
ズキンッ
再び頭が鳴る恵理
……その名前……やっぱり何処かで……私は……
「んっ……」
「せんせ〜? 」「先生どうしたの〜? 」
「あっ……ううん! なんでもないよっ……火亜流さん、か……珍しい名前だねっ」
「ん?あぁ……そうなのか? 」
「火亜流さんは……えっと……」
恵理が何やら思い詰めた表情で火亜流を見つめる
「せんせ〜! 授業は〜? 」「先生いこー! 」
「え……あっ……そうねっ、みんな昨日ごめんね先生心配かけちゃったね……もう大丈夫だから授業始めよっか! 」
……何だ? 俺に何か言いかけたみたいだが……
「それじゃぁ……火亜流さん……また後でねっ 」
「おう」
恵理と子供共が教室に入って行く
……やっぱり俺の事をあの女は何か知ってやがるのか?
恵理の後ろ姿……子供達と笑い合いながら歩くその後ろ姿
………!?
何処か、ここでは無い何処か、同じ様に子供達と笑い合いながら歩く恵理のその姿……
白いシスターのような格好ではなく白衣を着た恵理が子供達と笑い合いながら歩きこちらに笑いかける
ーー火亜流くんーー
……!? なんだ今の光景は……今のは……あの女……
「おぃぃ貴様ァ」
亮佐が額に血管を浮かべ憤怒の表情で火亜流に迫る
「ん……なんだまたお前か」
息を切らしながら亮佐がゆっくりと迫って行く
「俺は貴様に言ったはずだぞ、部屋で大人しくしていろ、と……」
「知るかよあのガキ共に無理やり連れ出されたんだ」
「はぁっ……はぁっ……貴様、恵理先生と今何を話してた? 」
「おいお前……なんか死にかけてるけど大丈夫か? 」
「黙れェ!! 質問に質問で答えるなァァ! 」
……なんだコイツは……これのどこが優しいんだ……
教室から教会の玄関側に目を向けると何やら大きな荷物が置かれている
「ん? あの荷物か、あれを運んで疲れたのかお前」
「何ィ!? 俺が疲れる訳がないだろう!? 貴様俺を舐めているのかアア!? ……はぁっ……はぁっ」
……何故こいつはこんな情緒不安定なんだ……
「いや疲れてんじゃねぇか」
「だっ黙れェ! 恵理先生のためならこれしき……ぐっ……」
「気ぃ失ってた俺を運んだ義理だけはとりあえず返してやるよそれでチャラでいいな? 」
「義理だと? なんだ貴様……あっおい、その荷物に触るなァ! 」
火亜流は荷物の方に向かいそれを片手で持ち上げる
「ん……たしかにちょっと重てぇな……」
「なっ……貴様……片手で!? 」
「おい亮佐、こいつをどこに運べばいい? 」
……こいつ……俺が配給所から死に物狂いで涙と全身の痛みを我慢しながら運んだあれを片手で……
「いや……あ、ああ……とりあえず食堂の方にだな……」
「食堂……ああさっきのあそこか」
大荷物を片手で肩にかけ教会の中へ入る火亜流
「なんだアイツは……本当に人間か? 」
※場面変わって配給施設※
「お〜い義宗〜! さっき言ってた"流れ着いた若者"ってのはどんな奴なんだよ〜? 」
凛季が義宗に作業しながら話しかける
凛季 赤い肌の幼い少女の姿をした1本角の鬼 地獄の獄卒でこの町付近の亡者を討伐しながら町の住民達と共存している
「凛季〜口より手を動かしなさいよ、いつもあたしばっかりに街のパトロール任せて1人で遊んでるんだからっ」
凛季に苦言を呈するのは青肌の鬼の少女、蘭季
蘭季 青い肌の幼い少女の姿をした1本角の鬼 凛季の姉であり凛季と共に町の住民達を守るため町長の義宗と共に暮らしている
「蘭季だってよくパトロールって言いながら町の酒場で飲んでるじゃん! あたしにばっか亡者の討伐やらせてさー! 」
「何よ! 凛季なんて亡者から逃げてばっかで全然討伐出来てないじゃない! そんなんだから何時まで経っても1本角なのよ! 」
「いや蘭季も角1本じゃん!? 鏡って知ってる!? 見た事アル!? あたしと一緒ですけど!? 」
いつもの光景……不毛な言い争いを始める2人の鬼の少女に苦笑いをする義宗
「ははは……2人共落ち着いて……」
義宗が苦笑いしながら仲裁をする
「ちょっと凛季のせいで義宗が困ってるでしょ! 謝りなさい」
「ナンデ!? 先に仕掛けてきたのは蘭季じゃん! 蘭季が先に謝って!! 」
2人は睨み合いを続け義宗は困り顔で諭す
「ダメだよ2人共……姉妹2人仲良くしなきゃ」
「フン! 義宗に免じて許してあげるわっ! 」
「こっちこそ! あたしが先に大人になって許してあげたんだから! 」
「何よ! 私が先に大人になってアンタを許したの! 」
「逆ですぅー! あたしが許してあげたんですぅー! 」
「はは……凛季、蘭季……とりあえずお茶でも入れて休憩しよう」
「「わー! 義宗の入れるお茶美味しいから好きー! 」」
いつもの賑やかな日常の風景……
2人の鬼の少女は地獄で亡者と戦い続けるうちに傷を負って町の近くで倒れていたところを義宗に拾われた
それからは義宗が転生の権利を手に入れるまで義宗の"平和な街づくり"という夢を支え、恩返しするためにこの町で義宗と暮らすようになった
「ねぇねぇ義宗〜! あれやってあれ〜! 」
「またかい? 仕方ないね、 よいしょっと……」
義宗は椅子から立ち上がり2人の前に立つと深く息を吸う
「じゃあ、行くね」
ボンッ!!! と白い煙が立ち込め義宗を覆う
「やれやれ……ゴホッゴホッ……全くなんでこんな演出があるんだろうね」
その声は義宗のものである事は間違いないが先程までと違いハッキリとしていて若い
中から出てきたのは黒髪の端正な顔立ちの眼鏡を掛けた知的なイケメン
「はい、これでいいかな? 」
2人の鬼の少女は義宗に駆け寄り抱きつく
「キャー!!! 義宗カッコよすぎいいい!! 好きいいー!! 」
2人は興奮収まらずはしゃいだ様子で義宗に身を擦る
「義宗の"罪能"ほんっとに素敵っ! 若い時の姿になれるなんて最初はクソ弱いじゃんって思ってたけどやっぱり顔良すぎいいい! 」
これが義宗の持つ"罪能" 一時的に若返った姿になれる
若返っていられる時間はその日の体調による
若かりし頃の義宗はハイパーイケメンであった……
「ははは……2人共そんなにくっつかないでくれよ……」
「や〜! 蘭季は早く離れて! 義宗が困ってる! 」
「うるさい! 凛季こそ早く離れなさい! 義宗が苦しそう! 」
「あはは〜……」
困り顔で笑う義宗……
「これはこれは……お邪魔でしたかな? 義宗さん」
そこに現れたふくよかな体型の紳士服を着た丸眼鏡の男
「おや"摩隠"さんお久しぶりです」
「オッホッホ義宗さんは随分とおモテになるのですなあ」
「あぁ……いえいえこれは……こら2人共、少し離れてくれよ……お客さんの前だ」
「ちぇーっ」「ぶーっ」
2人は不満気な表情を浮かべながら義宗から離れる
"摩隠" ふくよかな体型と怪しく光る丸眼鏡、ジャラジャラと腕や首に高級そうな装飾品を身に着けている
彼は閑慈乃町の副町長であり"平和な街づくり"という義宗の夢に大きく貢献してくれているこの町に欠かせない人材だ
普段は隣町に出向き貿易の手配や住民の働き口を確保したりが主な彼の仕事となっている
ボンッ!!!と白い煙が立ち込め義宗の姿が元に戻る
「おやおや私の知る義宗さんに戻りましたね〜やはりそちらのお姿の方が違和感なくお話出来ますよオッホッホ」
「ははは……これはお恥ずかしいところを見せてしまいましたね」
「それで義宗さん、私は今しがた隣町の"霊楽町"から戻って来たところなのですが…」
摩隠が深刻そうな顔で口を開く
「それはお疲れ様です……あの何かあったのですか? 」
「それがですね……最近の亡者の増え具合と行動の活発さと来たらもはや異常事態とも言える有様でして」
「亡者……まさか霊楽町が被害に合われたのですか? 」
摩隠は続ける
「ええ……残念ながら、数名の腕に自信がある若者達が罪能を駆使してなんとか町の中までの侵入は防いだ様なのですが何人かの消滅者を出してしまったそうで……」
……消滅者……なんて事だ……
「そんな……霊楽町といえばここからは20里程の距離、人の足でも丸1日歩けばここまで辿り着けます……亡者がもしこの閑慈乃町まで押し寄せて来たら……」
「大変な事になりますな、ましてや我々は既に危機的状況にあります……各町、各国は今活発化している亡者対策で遠路への物流運搬や貿易にかなりの支障が出てしまっている状態です」
……そんな……物流や貿易が止まればこの町は……
「ひとまずは分かりました摩隠さん! 危険な帰路をご無事で何よりです……外がそれ程危ない今、我々は守りをまず強化せねばなりません」
「ですなぁ……腕に覚えのある者を集め義勇兵を募り亡者がいつ襲ってきても対応出来るよう交代で見張り、戦闘準備できるよう私の方で対策チームを作りましょう」
「義勇兵……この閑慈乃町の住民達を誰一人、僕は危険な目には合わせたくは……でも……」
義宗の背中をバシンッと叩く凛季
「義宗! この町を守りたいのはあたしも同じだよ! 」
隣の蘭季も負けじと義宗の手を取り強く握り言う
「義宗! 私達も戦わせて! そして同じ気持ちで戦う決意のある人達をしっかり頼って! それが町長たる義宗の仕事よ! 」
「凛季……蘭季……うんっ……ありがとう2人共っ 」
……そうだ、僕の目指す平和な街づくり……そのために人を傷つける亡者達とは戦わなくちゃいけないんだ……そしてそれは僕1人では不可能なことなんだ……みんなと力を合わせないと……!
「摩隠さん! 僕の方でも義勇兵に志願してくれる方を当たってみますっ! 」
「オッホッホ……頼もしいですなあ……分かりましたそれでは私はこれで」
摩隠は被っていたハットをクイっと上に向け会釈をすると配給所を去っていく
……最近になって数を増やし活発に活動し出した亡者……
……今の僕に出来ることは……この危機をみんなに伝えそしてみんなを頼ることしか出来ない……情けない町長だ……それでもっ
足を止めては……いけない!
2人の鬼の少女を連れ覚悟を決め足を動かす町長の義宗
貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます
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