19話
火亜流 本作主人公
赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い
身体中は古傷だらけ ムッキムキ
恵理 本作ヒロイン
黒髪 ゆるふわな感じ タレ目 めちゃ美人 落ち着いた声
スタイル良し 白いシスター的な感じの服 身体にフィットしてる
亮佐
金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい
獅子丸
頭の右側刈り上げ 顔面の右側に牙を鬣たてがみで囲んだ印の刺青 革ジャン
義宗
白髪 眼鏡 白シャツ 柔らかい雰囲気
凛季
赤髪 ツインテール 赤肌 1本角の鬼の少女 蘭季の妹
蘭季
青髪 ボブ 青肌 1本角の鬼の少女 凛季の姉
しばらくして火亜流に助け出された人々達が感謝を述べた後部屋を去る
一部始終を見ていた獅子丸が感激の涙を流す
「ううっ……兄貴……流石ですッ! これが仁義……! これこそ真の男の道……クウウウウッッ! 痺れます!! 一生ついて行きます! 」
「うるせぇな……そんなんじゃねぇよ……」
コンコンッ
「あん? 」
部屋をノックする音、入ってきたのは義宗を抱えた亮佐だった
「亮佐、それに眼鏡のおっさんか……なんの用だよ……つかあんた動いて平気なのかよ? 」
義宗が亮佐に抱えられたまま包帯を巻いた腹を押さえながら苦笑いをする
「はは……まだ安静にしていなきゃいけないらしいんだけど……どうしても早急に話をしておきたくてね……」
……話?
亮佐が義宗をベッドまで運び義宗を座らせる
「すまないね亮佐くん……」
「いえ、それで話とは? 」
亮佐もどうやら話の内容は知らないようだ
義宗が深刻そうな表情で話す
「あぁ……今回の閑慈乃町の悲劇……豪鎧さんに昨夜鳩を飛ばしたんだが……今朝急ぎの返事が返ってきてね……沙羅紀さん含め数名の応援の者が町の復興に協力してくれるそうなんだ」
……町の復興……か
恵理は不安そうに義宗に尋ねる
「それはいい知らせですねっ町の復興に力を貸してくださる方が他の町に居てくださるのはとても心強いですっ」
だが義宗はそれに顔を曇らせる
「あぁ……町の復興活動は人員の手配でかなり助かっている、だが今回の件での怪我人や負傷者の多さに医療従事者の人員の方が人手不足なんだ」
「そんな……たしかにこの廃屋にいる皆さんの怪我を介抱しながら復興活動となると」
義宗が一同を見つめ話を続ける
「そこで"死鏡町"にいると言われる"天使様"の力を頼ろうと考えている」
聞き慣れない言葉に火亜流は疑問を口にする
「天使だァ…? 」
義宗が頷く
「あぁ……噂ではこの世界で数少ない"他者の傷を癒す罪能"を持っていると言われている……天使様の力を借りることが出来れば……絶望的な町の復興に大きな一歩を進めることが出来る」
……天使……他者の傷を治す罪能……
……たしかにそいつが本当なら……
「なるほどなァ……」
「そこで申し訳ないがまた君たちの力を貸してくれないか! 今僕達は町の復興と怪我人の手当てで手一杯だ……明日には沙羅紀さんや霊楽町からの応援が到着するが……急ぎ死鏡町へ行き天使様を連れてきて欲しい! 」
……死鏡町……
……町の力に……
……怪我人を助ける……
「おう、いいぜ」
義宗の表情に明るさが戻る
「本当かい! ……すまない火亜流くん…! 」
獅子丸が腕を組み得意気な様子で一歩前に出る
「兄貴が行くなら当然この俺様も一緒だぜ! 」
「獅子丸くん……助かるよっ! 」
火亜流と獅子丸を見つめる亮佐
……ふんっ…ようやくこのバカ共が居なくなり俺と恵理先生の平和な日々が訪れるわけか……
……短いようで長い間だったが…このアホ面の単細胞バカ共のおかげで助かった命もあると考えると……まぁ……
……ほんの少し……1ミクロン程の名残惜しさは残るがな……
「あ……あのっ……その……! 」
恵理が義宗と火亜流に声を上げる
それを見る亮佐
……ん? 恵理先生……やはり恵理先生はお優しいからな……
……このような野蛮な猿共への労いと別れの挨拶もしっかり怠らずにしようとは……さすが恵理先生っ
恵理が言う
「わ……私も火亜流さんにご一緒して死鏡町へ行きたいですっ」
……うんうん……さすが恵理先生……
……この野蛮人とご一緒……ん……? ごいっ……ご一緒!?
ガタッ!!
「え、恵理先生……? 今なんと……? 俺の聞き間違いですかね? はは……」
恵理が拳を握り力強い眼差しで火亜流を見る
「私……火亜流さんと一緒に死鏡町へ向かいますっ……今回私は誰も助けられなかった……祈るだけじゃなく……私もちゃんと役に立ちたいんですっ! 」
一同が恵理の発言に驚く中で火亜流が淡白に切り返す
「ガキ共はどうすんだよ」
恵理が不安そうな表情を覗かせると先程の来訪者の1人が再び中に入ってくる
「あの……」
絶体絶命の状況を火亜流に助けられた姉妹の姉であった
「すいません……妹をこちらにしばらく預けさせてもらえないか相談しようと思っていたのですが……その……お話が聞こえてしまいまして……」
足に包帯を巻いたままの先程火亜流に礼を尽くした女性が申し訳なさそうに前に出る
「あんた……」
「その……! 妹の事もありますっ……私で良ければ……聖女様不在の間みなさんの面倒を見させて下さい! 」
義宗が女性に心配そうに声をかける
「良いのかい? 君だって怪我が完治したわけではないんだ……その上あの子達の面倒まで……」
女性が決意と共に返す
「そんな事で救われたご恩に報いれるとは思ってません……でも……私も何かお役に立ちたいんです! 」
恵理が女性のそばへ寄り手を握る
「助かりますっ……ありがとうございますっ」
「いえ……お気になさらないでください聖女様……妹の世話で子供の面倒を見るのは慣れてますからっ」
亮佐が焦ったように恵理に向けて言う
「ちょっと待ってくださいっ! 恵理先生本気ですか? こんな野蛮人と一緒なんて……」
火亜流も続く
「そうだぜ……ハッキリ言って何かあった時には足でまといにしかならねぇ俺と獅子丸だけなら力ずくでなんとか出来るが」
恵理が慌てて言う
「だ、だから心配でもあるんですっ……私達は天使様にお願いしに行くんですからっ」
義宗が苦笑いで言う
「ははは……そうだね事情を説明して天使様に協力をお願いしてくれるだけでいいんだ……ただ……」
義宗は言いよどみ不安そうに顔をしかめる
「ただ……なんだよ? 」
「僕は死鏡町には直接出向いた事はなくてね……噂だけ……聞いた事があるんだ……あそこは"女王"が支配する町で逆らう者には女王直属の"裁断軍"の裁きが下る……と」
「女王…? …裁断軍だァ……? 」
助けられた姉妹の姉が口を開く
「そういえば……私も聞いた事があります……あの町では裁断軍が管理する"聖なる処刑場"があるとか……」
「………」
亮佐が恵理の肩を掴み必死な形相で引き止める
「恵理先生! 聞きましたか! これは完全にこいつらのせいで何か厄介事に巻き込まれる伏線に違いありません! 」
「あっ……亮佐くん……でも私じっとしてるなんて出来ないのっ」
「俺は許しませんよ! 絶対に許しません!! 」
恵理が潤んだ瞳の上目遣いで亮佐を見上げる
「亮佐くん……お願いっ」
「ぐっ……うっ……! そんな顔をしても……」
その恵理の表情に一瞬目を背けるが再び恵理の潤んだ瞳の上目遣いをその瞳に映しよろめく亮佐
「ガッ……! ……ハァッッ……! ……ありえない……っ……なんという美しさ……なんという儚さだ……う゛ッッ」
胸を押さえながら苦しみの声を上げる亮佐
その亮佐に冷めた目を向ける火亜流と獅子丸
「兄貴……このバカは何やってるんですか? 」
「さァな……だがよく見とけ獅子丸……これが刺激すると爆発する手のつけられねぇ番犬だ」
「なるほど、勉強になりますっ兄貴っ」
恵理が亮佐に近付く
「お願い……亮佐くん……先生は大丈夫だからっ」
亮佐は恵理の意思を否定出来ず汗を大量に流しながら唇を噛み締める
「うう……ぐぐぐっ……わ、分かりました……ただし! 俺も行きます! そして俺から離れないと約束して下さい! 」
恵理の表情が明るくなり亮佐の手を握りしめる
「ありがとう亮佐くんっ! 」
亮佐の顔が赤く紅潮しその頭上からは煙が上がっている
火亜流が呆れたように呟く
「結局またお前も一緒かよ……はぁ……」
亮佐が火亜流と獅子丸に向き怒気を孕んだ声で言う
「貴様らァ……分かってはいると思うがこの俺の目の黒いうちは指1本たりとも恵理先生には触れさせんぞ……いいか……もし恵理先生に邪な劣情を抱き近付いてみろ……その瞬間貴様らの命は無いものと思えッッ!! 」
火亜流が呆れたように言う
「てめぇが1番危なそうに見えるがな」
義宗がゆっくりと立ち上がりながら言う
「では……火亜流くん亮佐くん獅子丸くん恵理くんの四名にこの件を任せるよ……! 町の復興は君たちにかかっていると言っても過言ではない頼んだよ」
義宗はよろつきながらもフラフラと部屋を出ようとする
それを恵理が抱き抱える
「あ、危ないっ義宗さんもあまり無茶しちゃダメですよ……」
「あははそうだね……ちょっと横にならせてもらうよ、恵理くん達も今日は身支度で忙しいだろう……迷惑をかけるね」
「いえ……そんな」
そんな会話をしながら部屋を後にする恵理と義宗
……出発は明日か……
火亜流も同じく部屋を出ようとするところを亮佐が呼び止める
「どこへ行くんだ貴様」
振り返らず火亜流が答える
「ちょっと身体を動かしたくてな……」
「俺も行きます! 兄貴! 」
火亜流と獅子丸が部屋を去り1人になる亮佐
「死鏡町か……何も起こらなければいいが……」
一抹の不安を抱えた亮佐の呟き
火亜流は廃屋のすぐ側の庭で身体が覚えている限りの獄道術の技を繰り出す
陽炎……!
呼吸と筋肉の緩急をつけた特殊な足運びによる揺らめく移動法
迅獄……!
筋肉の脱力と硬直による爆発的な加速を利用した移動技
刺獄……!
練磨された指を鋭い刃物のように凶器と変える技
炎転……こいつは相手がいねぇと使えねぇか……そして
落獄絶火……!
宙を舞い全身を回転させ遠心力によって踝から足の先を相手の顔面に正面からぶつける技
……ふぅ……とりあえず今思い出せる技はこんなもんか
……獄道術……か俺はいつこれを覚えたんだ
……誰に教わったんだ……
瞬間 頭に走る痛み
ビキビキッッ
「ぐッ……」
ーー火亜流ーーふふふーー
ーー君はーー私のーー最高傑作だーー
……!?
甘く……とろけるような……甘い男の声……
そして男の銀色の瞳……
……誰だ……てめぇは誰だ!?
「グアッ……」
「兄貴……!? 」
獅子丸が火亜流に駆け寄る
「兄貴大丈夫すか! 」
獅子丸の手を無造作に払う
「ァ……あぁ問題ねぇちょっと頭が鳴るだけだ……くそ……」
火亜流が頭を押さえながらフラフラとどこへ歩き出す
「兄貴……」
ザッ……
それを物陰から見ていた1人の少年
「あ……あの! 」
それは"わたる"だった
「ん?……お前はたしか……あん時化け物の近くにいたガキか」
わたるは獅子丸を怯えるように見上げる
「あ、あの……ありがとう……助けてくれて……」
「よせよせ! 俺は兄貴に言われてアレの相手をしただけだ! 」
「兄貴……? 火亜流さんの事ですか……? 」
わたるの目から怯えが消える
「おうよッ……俺様の兄貴はただ1人ッ! 火炎組組長! 火亜流の兄貴以外にいねーぜ! 」
わたるが興味津々な様子で獅子丸を見上げる
「火炎組……あの、火炎組って……」
「ンガァ? 」
わたるが勇気を振り絞る様に声を張る
「ぼ、ボクも入れますか! 火亜流さんの"火炎組"に! 」
獅子丸がポカーンと牙を覗かせながら口を開ける
「は? ……お前何言って……」
わたるは拳を握る
「ぼ、ボクも……火亜流さんみたいに……獅子丸さんみたいに……強くなりたい! 亡者から大切な人を守れるような強い男に! 」
……強い男……か……
獅子丸は小さな身体の少年の力強い眼差しを真剣な表情で見る
……こんな小せぇガキが……
……いや……このガキの目……修羅場は潜ってるみてぇだな
「ンガッ! アッハッハッハッッ! いいぜガキンチョ! 兄貴のようなデカい男になりてぇってんならお前も今日から"火炎組"だ! 」
わたるが喜びに満ちた表情で確認する
「本当に……? いいの? 」
「おうよ! 男に二言はねぇッ! 火炎組若頭の俺様が認めるぜ! 」
「若頭……はい! えっと……獅子丸の兄貴! ……さん ……」
「"さん"はいらねーぜ! ガキンチョ! 俺達は同じ男の背中を追い掛ける"兄弟"だッ! 」
わたるの瞳が輝きに揺れる
"兄弟"……獅子丸のその言葉に胸が熱くなる
「兄弟……ボクに……」
……家族……
……父さん……母さん……
「うっ……あ……ありがとう……ございます……グスン……」
突然泣き出したわたるに獅子丸が酷く動揺する
「オッ!? なんだなんだッ……お、おい……なんか悪い事言っちまったか!? 」
わたるが涙を拭きながら首を振る
「うっ……違うんです……ボク……1人になっちゃって……ううっ……ボクが弱いから……グスン……父さんも……母さんも……守れなくて……うう……それで……そんなボクに……兄弟って」
頭を掻きながら困り顔でわたるを見下ろす
腰を落としわたるに目線を合わせ獅子丸は優しくわたるの頭の上に手を乗せる
「んならまずは泣き止んで前向かなきゃなガキンチョ……泣いてるだけじゃあ強くはなれねーぜッ」
「う……うん……グスン…」
「んじゃァ……弟分のお前の最初の仕事だ! 俺様達は死鏡町ってとこに行ってくるッここの守りは火炎組のお前に任せたぜッ」
「うん……! ボク……ここを守るよ……! 絶対に無事に帰って来てね……! "獅子丸兄さん"!」
「ったりめぇだ! またな! ガキンチョ! 」
獅子丸がわたるに手を振り火亜流を追い掛ける
「兄弟……家族……絶対に……守るんだ……! 」
わたるは涙を拭い前を向く
いつか追いつきたい2人の男の背中
わたるは前を向き、その背中を目に焼き付ける
貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます
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