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地獄転生 〜業火の拳で取り戻す失われた記憶と贖いの冒険譚〜  作者: さくさくメロン
第一部 記憶の断片
16/20

16話

火亜流かある 本作主人公


赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い

身体中は古傷だらけ ムッキムキ


恵理えり 本作ヒロイン


黒髪 ゆるふわな感じ タレ目 めちゃ美人 落ち着いた声

スタイル良し 白いシスター的な感じの服 身体にフィットしてる


亮佐あきすけ


金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい


獅子丸ししまる


頭の右側刈り上げ 顔面の右側に牙を鬣たてがみで囲んだ印の刺青 革ジャン


義宗よしむね


白髪 眼鏡 白シャツ 柔らかい雰囲気


凛季りんき


赤髪 ツインテール 赤肌 1本角の鬼の少女 蘭季の妹


蘭季らんき


青髪 ボブ 青肌 1本角の鬼の少女 凛季の姉











 ※火亜流 亮佐 蘭季が旅立ち2日目の昼※


 恵理の元に凛季と義宗が尋ねてくる


「お〜い聖女様〜! 配給施設から新しい服たくさん持って来たぞ〜! 」


 元気よく凛季が教会の扉を叩く


 扉が開き恵理が優しい笑顔と共に出迎える


「凛季ちゃんっいつもありがとうっ義宗さんいらっしゃいっ」


 義宗が恵理に軽く会釈をしながら挨拶をする


「やぁ恵理くん今日も子供達は変わらず元気かい? 」


 恵理は庭の方へ顔を向け答える


「はい、それはもうみんな毎日元気たくさんでっ……最初は誰とも話そうとしなかったわたるくんも最近はみんなと庭を駆け回っているんですよっ」


 うふふっと嬉しそうに微笑む恵理


「それはとても良いことだね……"彼"の影響だったりするのかな」


 恵理が優しい顔で遠くを見つめる


「えぇ……もしかしたらそうなのかもしれません……みんな無事で居るでしょうか……」


 凛季が腰に手を当てて元気よく笑う


「だいじょーぶだいじょーぶ! 蘭季もついてるし〜! 」

「うふふっ それは頼もしいわね」


「"摩隠(まがくれ)さん"から霊楽町に亡者が出たと聞いた時は本当に心配で心配で夜も眠れなかったよ……ハハ……彼らに任せ切りにしてしまった事……申し訳ない」


 恵理は義宗に自身の抱えた不満を覆い隠すようにわざと自信満々に言う


「彼らなら……火亜流さんと亮佐くんなら……きっと大丈夫ですっ蘭季ちゃんも着いていますし、私達は無事を祈りましょうっ」

「そうだね……」


 凛季が教会の中へ荷物を運びに行く


 そこへ現れる1人のふくよかな男


「オッホッホ……これはこれは聖女様ごきげんよう……」

「あっ……摩隠さんお久しぶりですっ」


 "摩隠(まがくれ)" ふくよかな体型と怪しく光る丸眼鏡、ジャラジャラと腕や首に高級そうな装飾品を身に着けている


 義宗が摩隠を見て疑問に思う


「摩隠さんどうも……それにしてもまだ出発されていなかったのですね今朝に摩隠さんは"死鏡町(しかがみちょう)"へ出立されると聞いたのでてっきりもう出たのかと……ははは」


「オッホッホ……いやねぇ……どうしても出る前にやらねばならない仕事が残っていましてね……? 」


 それを聞いて物腰低そうに義宗が言う


「おやおやそうでしたか、僕に手伝える事でしたら言って下さい……ははは」


 摩隠は不敵にニヤリと笑う


「えぇ……それはもう手伝って貰いますよ……あなたにしか……出来ないお仕事なんですからねぇ……」


 チャキッ


 摩隠が懐から取り出した銃を義宗に向ける


「……!? ……摩隠さん!? 」

「…! 」


 義宗、恵理、両名が驚きに身を後退させる


「オッホッホ……さようなら……義宗さん」


 バンッッッ!


 昼下がりの教会に1つの銃声が響き渡る


 庭の木に止まっていたカラスが羽ばたく


 義宗の下腹部左脇が放たれた銃弾により負傷し出血する


「ぐはっ……摩隠さん……! どうして……」


 摩隠がニヤリと笑みを浮かべながらゆっくり義宗に近付く


「いや〜少し計画は違いましたがまあ問題はないでしょう……あなたに霊楽町で亡者が出たと伝えあなたが放った伝書鳩を撃ち殺すことでね……オッホッホ……」


 義宗が痛みに苦しみながら摩隠に問う


「そんな……なぜそんな事を……」


「あなたを確実に始末する為ですよ……私の計画ではいつもあなたのそばに居る邪魔な鬼のガキ2人共が霊楽町へ出向きあなたが1人になると踏んでいたのですが……」


「ぐっ……そんな……」


 ザッ……!


 出血箇所を押さえながら苦しむ義宗の前に恵理が両手を広げて立ち塞がる


「や、やめてください……摩隠さん! こんな事……! 」


 摩隠は丸眼鏡を光らせ不敵な笑みと共に恵理に告げる


「あなたの始末は後です……オッホッホ……そこを退きなさい……まずは義宗さんから確実に……」


 バタンッッッ!


「2人共! 伏せて! 」


 棍棒を両手に持ち勢い良く凛季が飛び出し摩隠に飛びかかる


「喰らえええ! 」


 大きく振りかぶり摩隠めがけて棍棒を振り下ろす


 ガキンッッ!


 が……突然現れた"それ"に凛季の攻撃は弾かれる


「……っ!? なに……こいつ!? 」


 現れたのは首から上が存在しない包帯まみれの怪物


 "亡者"だった


 焼け爛れたような酷く焦げ臭い匂いを放ちながら首の上から炎が巻き上がり風になびいて揺らめいている


 全身包帯まみれの二足歩行の怪物


「オッホッホ……あなた1人ならこれが相手で十分でしょう……やりなさい」


 摩隠の合図と共に亡者は首を凛季に向ける


 首から上に巻き上がる炎がさらに大きくなり凛季に向かって放出される


「……! 」

「凛季ちゃんっ! 危ないっ! 」


 凛季は走り炎を躱す……が亡者の吐く火炎放射はさらに凛季を追いかけ追撃をする


「聖女様! こいつはアタシが引きつける! 義宗を連れて逃げて! 」


 摩隠は凛季に向けて発砲する


「させませんよ」


 バンッッ!


「ぐがっ……! 」


 凛季の肩に銃弾が命中し凛季が倒れる


「聖女様……義宗……逃げてっ……」


 倒れた凛季に向けて炎を噴射する亡者


「アアアアアアッ!!」


 全身を焼かれ悲鳴を上げる凛季


「ひどい……こんな事……うっ……義宗さんっ! はやくこちらに…! 」


 恵理が涙を飲み込み義宗を立たせようとする


 が、それを拒む義宗


「ハァッ……ダメだ……恵理くん……僕の事はいい……君は子供達を連れて逃げるんだ……そして町のみんなも……」

「そんな……出来ません! 義宗さんを置いていくなんて! 」


 義宗は腹を押さえながら呟く


「ハァッ……はは……僕もね……ハァッ……凛季を置いていくなんて出来ないんだ……さぁ早く……行くんだ……」

「義宗さん……そんな……」


「や、やめろおお! 」


 その時突然教会から1人の少年が現れ木の棒を持って亡者に突撃する


「……! ……ダメ! ……わたるくん! 来ちゃダメよ! 」


 現れたのは"わたる"だった


「こ、こいつ……! 鬼のお姉ちゃんから……は、離れろお! 」


 亡者が火炎放射を止めわたるに向く


 恵理が必死に叫ぶ


「ダメ! お願い逃げてわたるくん! 」


 わたるは足がすくみ、全身をガタガタと震わせる


「い、嫌だ! ボクも戦うんだ……! 火亜流さんみたいに! 」


 わたるは亡者となった母親から一歩も引かずに戦った火亜流の姿を思い出す


「ボクは……逃げない……! もう隠れない! 父さんが怖くて震えて隠れる事しか出来なかったあの頃のボクは……死んだんだっ! 」

「わたるくん……ダメ……」


「今度こそ……守って見せるんだ……恵理先生をぼ、ボクが……! 火亜流さんに任されたから……! 」


 出立の日、火亜流とわたるの別れの挨拶


『留守はお前に任せたぜ、わたる』


「ぼ、ボクは……任されたんだ……! 」


 足を震わせながら涙を堪えながら迫り寄る亡者に背を向けないわたる


 そこへ唸りと共に屈強な男達が救援に現れる


「わたるうううう逃げろおおお」

「と、父さん!? 」


 わたるの父とそして交通整備の仕事をしている男達が武器を手に亡者に向かい突撃する


「うおおおおぉ! 」


 ブォンッ!


 わたるの父がハンマーを亡者に振り下ろす


「か゛あ゛っ゛!! 」


 亡者は右腕でそれを防ぐがダメージを負ったように叫ぶ


「父さん……どうして……」


 わたるの父がわたるの前に立ち息を切らしながら言う


「ハァ……すまないわたる……残りの仕事を全て片付けてから貯めた金を教会に全て寄付してこの町を去るつもりだった……だが時々お前の様子を見に来てはこんな俺に何が出来るかをずっと探していた……ハァ……ハァ……」


「ううっ……父さんっ……! 」


 わたるの父がわたるに向かい誇らしげに告げる


「強く、勇敢に育ったな……わたる……俺とは大違いだ……父さんはお前が誇らしい……お前はこの命に変えても俺が守るっ! 」


 町の屈強な男達も声を上げる


「この町を守るんだ! お前達ぃ! 聖女様と町長を守れ! 」

「あの時怖くて若い兄ちゃんに任せて逃げた事をずっと後悔していた! 」

「この町の子供達が暮らす居場所を守るんだ! 」

「お、俺も戦うぞお! 」「俺も逃げない! 」「俺だって! 」


 町の男達が武器を手に亡者を囲む


 恵理はそんな状況を見ながら義宗に語りかける


「皆さん……! 義宗さん……! 町のみんなが来てくれました! 早く安全な所へ……! 」

「ゔゔ……恵理くん……り、凛季を……」

「……! 分かりましたっ……」


 恵理は立ち上がり凛季の元へ向かう


「凛季ちゃん! しっかりして! お願い死なないでっ……! 」


 町の男達が亡者と戦うすぐ側で凛季に呼びかける恵理


「お願いっ……お願い神様……凛季ちゃんを助けてっ」


 シュゥゥゥ……


 全身が焼け焦げ煙を上げる凛季の身体


 全身の火傷によりもはや凛季には痛み以外の感覚はなく動くことも呼吸することも困難な状態だった


「そんな……そんな……凛季ちゃんっ……ううっ……私達を守るために……こんなっ……」


 凛季の見るも無残な姿に恵理の目から大粒の涙が零れる


「誰かお願いッ! 傷を治せる罪能を持った方はいませんか! お願いしますッ! ……凛季ちゃんが……! 凛季ちゃんを助けて! 」


「そんな……」

「おい……あれ凛季ちゃんか……」

「凛季ちゃんが……」


 町の男達が焼け爛れた凛季の姿を見て立ち尽くす


「か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! 」


 亡者が雄叫びを上げ首の炎をとてつもない大きさに巻き上げる


 わたるの父がわたるを庇うようにわたるの正面に立ち両手を広げる


「わたるうう!! 逃げろおおお!! 走れええ!! 」


 亡者が首を回転させ当たり一帯を焼き尽くすように炎を吹き上げる


「父さんっ! 」


 間に合わない そう感じた父はわたるを抱きしめ全身でわたるを炎から守る


「ぐああああッ」

「父さん! ダメだ! やめて! 」


 わたるの父が涙を流しながらわたるに囁く


「ぐううっ……こんなの……父さんはへっちゃらだ……わたるや母さんが味わった痛みに比べたら……俺がしてきた愚かな行いに比べたら……こんなもの……ぐっ……なんて事ない……! 」


「父さん……ヤダよ……! ボクはもう……誰も失いたくなんかないよぉ! 父さん……! 」


 亡者の炎が町を包む


 民家に燃え移り、炎は広がり、町はパニックへと陥る


 一瞬にして町は業火に包まれた


 恵理が凛季の身体を抱えて走る


「誰かあああ!! 助けてください……!! この子を……ううっ……助けてくださいいいっ……お願い……お願いしますっ!! 」


「あ゛……う゛……」


「凛季ちゃんっ! しっかりして……! 気をしっかり持って! 大丈夫よ……大丈夫だからっ! 」


「義宗……義宗……え゛……う゛」


 全身黒焦げとなった死に体の身体の凛季が義宗の名を呟きながら痛みに身体を痙攣させる


「義宗の……と゛こ゛に……」

「凛季ちゃんっ……分かったわ! 」


 恵理が凛季を抱えて義宗を元へ走る


「義宗さん……ううっ……ごめんなさい……凛季ちゃんが……凛季ちゃんが……うう……グズっ……」


 涙を流し凛季を義宗の側へ置く


 義宗は凛季の状態を見て声を震わしながら手を伸ばす


「あ……あぁ……そんな……凛季……ダメだ! ダメだ凛季ぃ! 」

「よ゛……し゛……む゛……ね゛……」


 義宗は泣きながら凛季を抱き締める


「ダメだ凛季……凛季……」

「よ゛……し……むね………だ……いすき、い……いきて……」


 凛季は原型を留めていない皮膚が剥がれ落ちた顔で義宗に笑顔で別れを告げる


 凛季の身体が薄く……そして儚げな光と共に凛季の身体は崩れ、その光は天に立ち昇っていく


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……凛季ぃぃいい!! ああああああ」


 義宗の泣き声が


 炎に包まれた閑慈乃町に響く


「あああっ……嘘よっ……こんなの嘘よ……凛季ちゃん……凛季ちゃん……嫌アアアッッ……」


 恵理が膝から崩れ落ち消え去った凛季のいた場所を必死に手に掴もうとする……が


 その場所にもう少女の姿は無かった


 義宗……恵理の悲痛な叫びが……炎と煙と共に空へ舞い上がる


 そこへ現れる摩隠


「おやおや目障りな鬼のガキがようやく消えましたかオッホッホ」


 義宗が地面の土を掴み摩隠を睨む


「うううっ……僕はあなたを……許さない……うう」

「安心してくださいすぐにあなたも消滅させてあげますから」


 チャキッ


 義宗に向けられる銃口


 ザッ……!


 その前に再び立ち塞がる恵理


「あなたは……ご自分が何をしたか分かっているのですか! 」


「えぇ……もちろん……これは必要な犠牲なんですよ……ずっと邪魔だったんです……そこの何の力も持たない町長がね、私こそが町を牛耳るに相応しい……ホホッ」


 恵理は鋭い眼差しで摩隠を見る


「福町長の立場であるあなたがこの町に火を放ち、平和に暮らす人達を傷つけて……そんな人間が町長に相応しいはずがありません! 」


「オッホッホ! ですからこの町はもう要らないのですよ!1度全てを灰にし新たな私の王国を作るのです! "あの方" から貰ったこの私の言う事を聞く亡者を使ってね! 」


 ……あの方……?


 ……それは一体……


「聖女様……順序が逆になりましたがあなたから先に消滅させてあげましょう……あの方が何故あなたを始末しろと仰ったかは分かりませんが……これも必要な犠牲なのです……! 」


 ……あの方……私を始末……?


「私が狙いなら私だけを狙いなさい……! 他の人達は関係ありませんっ! すぐにあの亡者を止めてくださいっ! 」


 摩隠は笑いながら吐き捨てる


「オッホッホ!! あなたは本当に愚かですね〜……そんな事をする必要はないんですよ! さぁそこを退くか今すぐ消滅するか選びなさい! 」


 恵理は変わらぬ強い眼差しで摩隠を見据える


「退きません……私は……もう誰も死なせたくありません! 」

「そうですか……ではさようなら」


 チャキッ


 恵理に向けられる銃口


 ……あぁ……私は結局また……守れなかった……


 ……また……?


 ……向けられる銃口……前にもこんな事があったような……



      ーーやっぱ強いなーーあんたはーー



 ……この声は……



      ーー俺はバカだから分かんねぇやーー



 ……君は……



  ーー俺もなりたいんだーーいつかーー先生みたいにーー



 ……どうして君の声が……


「オッホッホ!! さようなら」


 グガアアアアアアアアッ!!!


 ……動物の鳴き声……?


 ……黒い……ライオン……?


 突如目の前に現れた漆黒の獅子の怪物


 その背中から1人の男が地面に降り立つ

 

「獅子丸……あっちのバケモン……任していいか? 」

「はい……兄貴……」


 ……あぁ……君は……その背中は……


 ……私が渡したジャージ……


 ……なんだか……少しだけ背中が……大きくなった……?


 ……来てくれたんだね……火亜流"くん"


 火亜流が振り返りボロボロの恵理と血まみれの義宗を見る


 火亜流は……その光景を視界に映し拳から血が出る程強く握る


 低く……冷酷な声で……光無き眼で……


 目の前の摩隠に問う


「やったのは……てめぇか……てめぇを……殺す」









 貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます


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