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地獄転生 〜業火の拳で取り戻す失われた記憶と贖いの冒険譚〜  作者: さくさくメロン
第一部 記憶の断片
14/20

14話


火亜流かある 本作主人公


赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い

身体中は古傷だらけ ムッキムキ


亮佐あきすけ


金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい


蘭季らんき


青髪 ボブ 青肌 1本角の鬼の少女 凛季の姉


豪鎧ごうがい


白髪 オールバック 紫肌 2本角 髭いっぱい 霊楽町の長


沙羅紀さらき


白髪 結んでる 紫肌 1本角 豪鎧の娘 男勝り


獅子丸ししまる


頭の右側刈り上げ 顔面の右側に牙を鬣たてがみで囲んだ印の刺青 革ジャン


幽忌ゆうき


黒と白の斑になった柔らかい髪 可愛い系








 ※豪鎧の屋敷で話す亮佐と獅子丸※



「おいライオン、あの野蛮人はまだ帰って来てないのか? 」

「そうなんスよね〜って誰がライオンッスか! 」


 怪我はない亮佐だったが豪鎧によって医者に診てもらうよう勧められた亮佐が屋敷の階段を降りながら玄関前で胡座をかき鎮座している獅子丸に声を掛ける


「貴様以外にいないだろう、それにしても何処をほっつき歩いているのやらアイツは……」


 歯と歯を強く噛み締めながら反論を押し殺す獅子丸


 ……グギギギ……こいつ兄貴の馴染みの奴なんだよな……


 ……しかも兄貴が刺激するなとわざわざ忠告する程の男……


 ……ギギギ……堪えろ俺! ……今は堪えて兄貴を待つんだ!



 ※場面変わって火亜流と幽忌、沙羅紀※



獄道術(ごくどうじゅつ)……迅獄(じんごく)!」


 ビュンッッ!


 火亜流が僅かに前傾姿勢に身体を傾けたかに思われたその瞬間、神速の如き加速で幽忌との間合いを一気に詰める


「わお! すごっ消え…」


 シュンッ! ボワッ……


 火亜流の指が凶器と化し幽忌の胸を貫く……が


 獄道術 刺獄(しごく) が幽忌の胸をすり抜け幽忌の身体から黒い煙がその風圧により風に舞う


「おバカさ~んっ! ンヒィッ」


 幽忌の蹴りが左側から火亜流を襲う


「獄道術……陽炎(かげろう)


 フォンッッ


 幽忌の蹴りを陽炎で躱し1歩後退する火亜流


「てめぇ……強えな」


 火亜流がニヤリと笑う


 幽忌もそれに対して無邪気な子供のように返す


「アッハッ! お兄さんもすごいよォ! 獄党会を潰した時のあなたの動き、見てて興奮しちゃったなあ〜」


 ダッ


 幽忌が火亜流との距離を一気に縮める


 火亜流の目の前まで来て顔を突き付け囁く幽忌


「僕……ずっとあなたを殺したかった……イヒッ……その目……一体何人の命を奪って来たんですかァ? 」

「……! 」


 シュンッ


 刺獄を幽忌の目に突き立てるが幽忌の顔半分が火亜流の指が触れる瞬間、黒煙と化しすり抜ける


 そして同時に幽忌の拳が火亜流の顔面を捉える


 ドガッ


「がっ……やるなァ、こっちに来てから殴られたのは初めてだぜ」

「アハハハハハ楽しいィィッッ楽しいねェェ! 」


 邪悪な笑みと共に黒煙を撒き散らしながら幽忌は止まらない


暗波(くれなみ)流……雨貫(あまぬき)

 

 ……っ!


 幽忌から漂う黒煙が波のようにうねり腕が煙となり消える


 次の瞬間、黒煙と化した幽忌の右腕が伸び火亜流の顔面に幽忌の指が刺さる……が間一髪それを避ける


「っぶねぇ……」


 幽忌が恍惚とした笑みで驚く


「わ〜すごい、すごいよォ~! 今の避けちゃうのォ? アハッ」


 火亜流の額に汗が滲む


「てめぇ……今の技は……」


 幽忌はうっとりとしながら自身の身体を指でなぞり目を細め天を仰ぎながら語る


「僕の家はね……江戸時代からずっと死刑執行の役目を生業としてきた家系なんだ……これはその開祖、初代の祖先が編み出したとされる素手による殺人術さ……名は暗波流(くれなみりゅう)


「暗波流……へっ……やるじゃねぇか……」


 ……今の突き……喰らえば致命傷は間違いねぇ……


 ……俺の刺獄と似たような技……いやそれだけじゃねぇ……


 ……直前奴の腕が煙となって攻撃の軌道がまるで読めなかった


 ……目の前に現れた指先を見て感覚だけで運良く躱せたが……


 ……こいつ……強ぇ……!


 地面に手を付き未だ首の痛みが引かない沙羅紀が2人の睨み合いを見守り続ける


 ……な……なんという攻防だ……あれが本当に幽忌なのか!?


 ……あの罪能…あの表情…あの技…どれも私の知るものとは違う


 ……私は…私は一体幽忌の何を見てきたんだ……!


 火亜流が幽忌を睨む


「てめぇが警備隊の中で1番強ぇってのは分かってた……その泥水みてぇな歪んだ殺気……最初に会った時のアレはやっぱり間違ってなかったんだな」


 沙羅紀が火亜流の発言に驚いたように反応する


「なんだと……幽忌の殺気……? 」


「あぁ……あのジジイの屋敷でお前らと最初に会った時……お前らから感じた敵意、最初は余所者の俺を良く思ってねぇからだと思ったが……」


 沙羅紀はあの時の場面を思い返す


 ……そういえば火亜流はあの時……


『チッっ……気に入らねぇ……"てめぇら"さっきからよォ』

『あん? 先に喧嘩売ってきたのは"コイツら"だぜ』


 ……あれはそういう意味だったのか……


 幽忌が笑う


「アハッ一目惚れって奴だよっ……初めて見た時から君の鋭い目と感じる闘気に興奮が止まらなくてさ……ンフッンフフ……」


 火亜流がにじり寄り間合いを測る


「気持ち悪ぃ野郎だぜ……」


 ビュンッ  ボワッ……


 !?


 火亜流が迅獄により幽忌へ一気に距離を詰めるが同時に前へと加速した幽忌の身体をすり抜ける


 ……チッ! 後ろを取られた!


 即座に身体を回転させ裏拳を叩き込むが


 ヒュンッ ……フワァッ


 またも幽忌の顔が黒煙となり火亜流の拳がすり抜ける


「ンヒィッ……暗波流……大蛇鎌(おろちがま)


 ヒュウンッ


 大蛇の如くうねりながら幽忌の足が火亜流の頬を掠める


 ……ぐっ…!


 その軌道は常に不規則であり滑らかに流麗な曲線を描きながら火亜流を刈り取ろうと蛇のような足が襲い来る


 ヒュウンッ ヒュオンッ ヒシュンッ ヒュウウンッッ


 躱す 躱す 手で捌く 躱す


 突如、幽忌のうねる足が黒煙となり消える


 ……! ……まただ攻撃が見えねぇ!


 そして消える前に目で捕らえていた位置からさらに高い位置に足が突然現れそのまま火亜流に命中する!


 ビシッッ!


 が……すんでのところで肘を曲げた火亜流の右腕の防御に防がれる


 幽忌は止まらず上へ跳ねる


「暗波流……断罪輪(だんざいりん)


 宙を舞い前方に回転しつま先が火亜流の脳天へと振り下ろされる


「獄道術……迅獄(じんごく)


 幽忌の回転する身体の下を前傾姿勢の火亜流の迅獄で加速し前へと避ける


 ズサァッッ……


 幽忌の凄まじい攻撃を全て凌ぐ火亜流


 大蛇鎌を受けた火亜流の右腕は青く変色する


「なるほどなァ……分かったぜ」


 幽忌が地面に着地し火亜流を見据える


「分かった……? 何が〜〜? 」


 火亜流はいつ攻撃が来ても対応出来るよう前傾姿勢の構えを取り両手を前に出しながら口にする


「てめぇの暗波流と罪能の合わせ技……たしかに強ぇよ」

「そりゃそうだよ〜だって僕負けたことないもん〜イヒッ」


 幽忌の悪魔のような邪悪な笑みを他所に火亜流は続ける


「だがてめぇは攻撃が命中する瞬間は煙になれねぇ……」

「………」


 幽忌は黙したまま火亜流を見る


 幽忌の罪能は身体を黒煙と化し実体を持たない身体になれること攻撃の際、煙となりその軌道を読ませないこと、攻撃された際は身体を煙と化し物理攻撃を無効とすること


 攻守一体の最強とも言える罪能


 そして変幻自在の暗波流の技と合わせる事でその技の凶悪性をさらに高みへと昇華させている


 が、火亜流の言う通り攻撃が相手に命中する際は実体を持たなければ相手へのダメージにならないため黒煙化する事は出来なかった


 地獄に来て数日の幽忌は黒煙化と実体を持たせるその切り替えを毎日の様に練習し、ようやく慣れてきた段階である


「だったら何? それが分かったところで僕に傷1つつけられない君に勝ち目なんてないよ……」

「そいつはやってみねぇと分からねぇぜ」


 幽忌が笑みを弱め瞬き1つせず火亜流を目に映す


 ……火亜流……この男……今まで葬ってきた奴らとは何かが違う


 ……強さ……? いやそれだけじゃない……何だ……この感じ……


 ……悪人を殺す瞬間の高揚感とはまた別の……


 ……何かが満たされそうになるこのもどかしい感覚……


「行くぜ幽忌」

「そこまで言うなら見せてみなよ……! この僕にさァ! 」


 火亜流が駆ける


 ……こいつは攻撃が当たる瞬間は必ず実体を持つ……


 ……俺の攻撃を当てるならそこしかねぇ……


 ……何かが……思い出せそうなんだ……


 ……あの一瞬奴の回転蹴りを回避したあの時……


 ……俺は何か技を繰り出さなければと……そうだ……あれを……



   ーーふふーー火亜流ーー目だよーー視線だーー



 ……!



       ーー視線の軸を読むんだーー



 ーー攻撃の当たる瞬間ーー人間は視線の軸をずらせないーー



 ……そうだ……相手の視線……



   ーー全身の筋肉を捻りーー肉体をバネのようにーー

 


        ーーその技の名はーー



        ーー獄道術(ごくどうじゅつ)ーー炎転(えんてん)ーー



 幽忌の身体が黒煙と化し迫る火亜流を迎え撃つ


 邪悪な笑みの幽忌から伸びる手


「暗波流……雨貫ィィッ! 」


 君の攻撃は僕には届かない! 反撃の隙なんて与えない!


 火亜流の視線……その先に映すのは自身を貫こうとする腕ではなく幽忌の視線から伸びた視線の"軸"


 幽忌の指が火亜流に触れるその一瞬の刹那


 火亜流の額と幽忌の指の間僅か0コンマ数ミリで火亜流の身体が幽忌の視界から消える……


 消え……


 ドガァッッッ!


「グハッ……!」


 起きた出来事に幽忌の思考が追いつかない


 自身が放った雨貫


 降り注ぐ雨粒すら捕らえて貫くと言われるその絶対の速度


 その突き技が相手の額に触れる寸前に相手が視界から消え


 そして次の瞬間に具現する視界が混沌とするダメージ


 ……がはっ……一体何が……


 火亜流が放ったのは回し蹴り


 幽忌のこめかみに火亜流の遠心力のついた中足による回し蹴りが炸裂した


 獄道術(ごくどうじゅつ) 炎転(えんてん)


 獄道術におけるカウンター技のひとつ相手の攻撃する瞬間の視線の軸を読み全身の筋肉の捻りによって相手の死角に一瞬で転じる技

 

「がはっ……はぁっ……一体何が……!? 」

 

 幽忌が頭を抑え身体を揺らしながら後退する


「攻撃されたのかっ……はぁっ……この僕が!? 」


 ガシッ


「ぐあっ」


 火亜流の手が幽忌の首を掴む


「よォ……捕まえたぜ」


 ……まずい……!


 ……黒煙化を……!


 幽忌はすぐ様身体を煙にする、が


 喰らったダメージにより視界が歪み脳が揺れ上手く罪能が切り替えられない


 バギィッッッ!!


 火亜流の右ストレートが幽忌の顔面をとらえる


「ゴファッ……! 」


 ……馬鹿な……この僕が……


 ガゴォォンッッ!!


 火亜流の下から突き上げる拳が幽忌の顎を貫く


「グフゥッッ……! 」


 ……あ……ありえない……


 ズゴォォンッッ!!


 火亜流の上段への回し蹴りが幽忌の頭を弾き飛ばす


「カハッッ……! 」


 ドサッ……


 幽忌の身体が地面に倒れる


 僅かに身体を痙攣させながら小刻みに揺れている


「ふぅ……間違いねぇよ幽忌……お前この地獄で出会った奴の中で1番強かったぜ」


 沙羅紀が立ち上がり火亜流を見つめる


「倒したのか……本当に……お前という男は一体」


 火亜流がそれに気付きまるで何事も無かったかのように沙羅紀に向かう


「沙羅紀、終わったぜ……こいつどうすりゃいい? 」

「そうだな……幽忌の罪能では牢屋に入れても無駄だろうし、どうすべきか……」

「殺るか? 」


 表情1つ変えずに問いを投げる火亜流に得体の知れない不安を感じつつも沙羅紀は焦ったように言う


「ま、待て! それはダメだ……幽忌は許されないことをした……だがこいつもまた町の住民である事に変わりはない……それに幽忌の本性を見抜けなかった私にも責任が……」


「全くお前は……あのなァ……」


 火亜流が言葉を続けようとすると幽忌が立ち上がる


「ハァッ……ハァッ……邪魔しないでよ隊長ォォッ……」


 !?


「なぜ立ち上がれるんだ……あれだけの火亜流の攻撃をマトモに喰らっていながら……」


 驚く沙羅紀に、無言で幽忌を見据える火亜流


「……」

「ァアッ……ハハッッすごいや火亜流ゥ……火亜流ゥゥッッ」


「幽忌! もう勝敗は決した! もうこれ以上はやめてくれ! 」


 制止する沙羅紀の言葉を無視して今にも倒れそうにフラフラとしながらゆっくり火亜流に向かい歩き出す幽忌


「まだ……ハァッ……終わってないよォ……火亜流ゥさぁ続きをやろうッッ! 僕を殺しにおいでよォッッ! さぁ! 」


「……」 無言のままの火亜流


 沙羅紀が幽忌に叫ぶ


「馬鹿者! やめろと言っているだろう! 」


 それに対し笑みを消し瞳孔を開いて獣のように返す幽忌


「うるさいなァ……うるさいんだよアンタはァッッ邪魔するなって言ってるだろう…… いつもいつも口ばかりで1人じゃ何も出来ない哀れなお飾りの隊長がッッ……」


「っ……幽忌……」


「僕と火亜流の愛し合いをッ邪魔するなッ……ハァッ……」


 沙羅紀が幽忌に必死に訴えかける


「幽忌……お前の本性を見抜けなかった私にこんな事を言う資格は無いかもしれない……だが……もうやめてくれ……そして罪を償うんだ……! 」


 胸を抑え苦しそうな表情で幽忌に手を差し伸べるように話す沙羅紀を火亜流は見ていた


 ……こいつはたしかに口うるさいだけの騒がしい女だ……


 ……だがこいつのこの表情……


 ……こんなイカレ野郎相手にその表情その言葉……まるで……


 火亜流の脳裏に浮かぶのは恵理の優しい顔


 何故か恵理と今の沙羅紀が火亜流には重なって見えた


 沙羅紀は幽忌に続ける


「幽忌……頼むっ……お前がどんなになっても私はお前の隊長だ、お前の言う通り私は1人では何も出来ないお飾りの隊長だ……それでも私は……! 私の町と私の町に住む者全てを守りたい」


「黙れェッッ……ンフフッ……アンタは所詮何も守れないよ僕があの囚人共を殺してる時も、獄党会の時も、通り魔の時も、アンタなんか何の力にもなれなかった」


「それは……」


 幽忌はダメージにより顔が崩れたまま声を上げ笑う


「アハハハッッ! そんなアンタが町を守るゥ? 僕や火亜流のような強さも何も持たないアンタみたいなお飾りの役立たずがァ? アハハハッッ! 笑わせないでよォォッ! 」


「幽忌……私はっ……」


 ザッ……


 幽忌の言葉に自身の不甲斐なさと反論出来ない悔しさに下を向く沙羅紀の前に火亜流が立つ


「顔上げろよ沙羅紀、お前は間違ってねぇぜ」

「……火亜流……」


 火亜流が堂々した佇まいで幽忌に告げる


「幽忌おめぇよォ何も分かってねぇぜ」

「ンフフッッ……ハァッ……ハァッ……火亜流ゥ何を……」


「お前や俺みたいなのは結局こうやって相手をぶちのめすか殺すかしか出来ねぇ、それしか出来ないのが俺達だ」

「ハァッ……ハァッ……」


 幽忌が黙る


 沙羅紀も同じく火亜流の言葉に聴き入る


「だがこいつらは違う、てめぇみてぇなイカレ野郎や俺みたいなやつには出来ねぇ難しい事とこいつらは戦ってる……そいつがどんなに難しい事か……俺はついこの間知ったばかりだぜ」


 ……わたる……お前の母親を俺は殺す事しか出来なかった……


 ……守る……助ける……救う……


 ……恵理や沙羅紀の言うそいつは……


 ……"優しい"って奴は……


 ……俺が思っていた以上に簡単に手に入る力じゃ無かった……


「この女が何の力も持ってないだァ? ったりめぇだ……この俺ですら手に入れるのに苦労してるそいつを誰もが最初から持ってる訳がねぇぜ! 」


 沙羅紀の目から涙が零れる


 その沙羅紀を指さし火亜流は堂々と言う


「だがこいつは止まることなくそいつを手に入れようと戦い続けてる……殺すなんて簡単で単純な事しか出来ねぇてめぇみたいな奴よりよっぽど難しいもんと戦ってやがんだ」


 火亜流の言葉に自然と涙が溢れる沙羅紀


 ……火亜流……


「この女は間違ってねぇよ止まらねぇ限り必ずその力は手に入る、いずれ俺も必ずそいつを手に入れる……それをてめぇが笑うんじゃねぇぜ……幽忌」


「ハァッ……ハァ……ハハッ……何を言うかと思えば……くだらないッ! そんな力……そんな強さなんか……! 」


 幽忌が走る


 フラついて倒れかける、が……幽忌も止まらない


 火亜流に向かい一直線に走る


「いいぜ……最後まで付き合ってやるよ」


 火亜流は構える その場から動かない


 火亜流の前で幽忌が跳ねる


「獄道術……刺獄(しごく)

「暗波流……雨貫(あまぬき)


 両名の突きが交差する


 雨貫が火亜流の頬を切り裂く……


 刺獄が黒煙によってすり抜ける……


 グッ……


 火亜流は左拳を握り締める


 狙うは幽忌の着地……着地の瞬間、実体を持ったその身体に拳を叩き込む


 が……幽忌は空気を蹴り上げさらに空中で跳ねる


「暗波流……(はばたき)! 」


 暗波流 (はばたき)


 音速を超える蹴りにより空気を蹴り空中で再度跳ね上がる技

 空気抵抗、空気の摩擦力を凌駕する速度の蹴りを繰り出す


「死ねぇッッ! 断罪輪(だんざいりん)! 」


 再度跳ねた空中から身体を回転させ放つ蹴り技


「そいつは……もう見たぜ……獄道術……炎転(えんてん)


 ……また消え……


 バゴォォンッッッッッ


「獄道術……落獄絶火(らくごくぜっか)! 」


 獄道術 落獄絶火(らくごくぜっか)


 宙を舞い全身を回転させ遠心力によって踝から足の先を相手の顔面に正面からぶつける技


 炎転の回転による遠心力と合わせる事で一撃必殺の不可避の決め技となる


「カッ……ハッ……! 」


 幽忌の意識が一瞬にして消し去られ地面へ落下する


 ドサァッ……


 火亜流の頬に一瞬痛みが走る


 ジッ……


「ってぇッ……何だ? 」


 痛みは一瞬にして消える……それが何か今はまだ火亜流自身分からないままだった


 沙羅紀が幽忌に駆け寄り倒れ込む幽忌の側へしゃがみ込む


「幽忌……」


 火亜流は沙羅紀に言葉をかける


「沙羅紀、お前は間違ってねぇ……でもよ……こいつや俺みてぇな殺し合う事でしか自分を探すことが出来ねぇ奴だって居る」


 沙羅紀が倒れた幽忌の身体を見つめて頷く


「あぁ……分かっている……」

「そうか、そいつはしばらく起きねぇだろう……後は好きにしろ、じゃあな」


 火亜流は普段と変わらない口調、足取りでその場を去ろうとする


 ……っ


「あ……待っ……」


 沙羅紀自身にも理由は分からないが何故か立ち去る火亜流の後ろ姿からは目が離せなかった


 しばらくして沙羅紀は身体を起こす


「父上……あなたの仰る通りだった……私はいつの間にか大事なことを忘れていたんですね……私は……」


 絶体絶命の時に駆けつけてくれた男


 その男からもらった新たな忘れてはならない言葉……


 それらを胸に抱き締め沙羅紀は立ち上がる


「私は……1人ではない」


 






 貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます


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