13話
火亜流 本作主人公
赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い
身体中は古傷だらけ ムッキムキ
亮佐
金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい
蘭季
青髪 ボブ 青肌 1本角の鬼の少女 凛季の姉
豪鎧
白髪 オールバック 紫肌 2本角 髭いっぱい 霊楽町の長
沙羅紀
白髪 結んでる 紫肌 1本角 豪鎧の娘 男勝り
獅子丸
頭の右側刈り上げ 顔面の右側に牙を鬣たてがみで囲んだ印の刺青 革ジャン
ドシャッ
肉塊となった男が落下する
亮佐、蘭季とローブの男との激闘に終止符が打たれた
空中で爆破したダイナマイトの威力を全身で受けた男の身は全身が焼け爛れて顔半分は溶けており眼球がどろりと地面に落ち剥き出しの筋繊維と骨からは煙が立ち込めている
「フシュー……フシュー……あ……がが……あ」
もはや消滅を待つだけの肉体で全身が焼ける激痛をその身に一身に浴びている男
そこへ到着する闇夜を駆ける漆黒の獅子の怪物
ズサァァァッッ……!
「兄貴、花火の下に着きました! 」
「おう悪ぃな……ん……亮佐、青いの、無事かよ? 」
「ふんっ……今終わったところだ」
「この焼肉みたいな奴が通り魔か? お、匂いも焼肉だな」
「火亜流さ〜ん〜遅いです〜! 亮佐さんがやっつけてくれました! って…うわっ! グロッ! グロ注意じゃないですかこれ! 」
「兄貴……こいつが……例の」
「………」
無言の火亜流に亮佐が詰め寄り問う
「貴様、こいつに見覚えがあったりしないか? 」
「あ? 焼肉の知り合いなんざ俺には居ねぇよ……顔もドロドロでよく分からねぇな」
火亜流は肉塊の男に近づき煙を上げ異臭を放つ顔に顔を近づける
「フシュー……フシュー……がが……あっ……あっ」
「兄貴……俺にこいつのトドメを貰えませんか……」
人間の姿に戻った獅子丸が真剣な顔付きで火亜流と亮佐に寄る
「俺じゃなく亮佐に聞けよ、仕留めたのはお前だろ? 」
「ふんっ……好きにしろ」
獅子丸が肉塊に近づく
「お前に殺された仲間の仇、今取らせてもらうぜ……クズ野郎」
「フシュー……が……? 」
……ん? こいつ……
「待てよ獅子丸」
「兄貴……? 」
「亮佐、こいつの罪能ってやつはなんだったんだよ? 」
「見る限りはあのジャンプ力か? 30メートルは飛んだように見えたが……それがどうした? 」
「その罪能でこいつはどうやって鉄格子を開けずに囚人を殺して地下牢から消えたんだよ? 」
「それは……」
蘭季が考え込むように顎を指で支えて言う
「たしかに変ですよね~……私一応牢屋見てきたんですけど地下に石で作られた施設で入り口出口は共に1つ……天井や上の地面に穴なんか無かったですし〜」
「だがこいつは夜道で女性を襲っていたぞ……女を切り裂くのが好きだと自白もした、」
「ならそれをやったのはこいつで間違いないんだろうな」
「お……おいまさか……」
火亜流、亮佐、獅子丸、蘭季、一同沈黙する
蘭季が呟くように言う
「あの……まさか……夜道で女性が襲われた通り魔の件と牢屋の殺人の件は……別件……とか……? 」
「……」
そこへ霊楽町の警備隊達が沙羅紀を先頭に駆けつける
「お前達! 無事か!? 」
「あぁ、こいつが通り魔らしいぜ」
火亜流が肉塊を差す
「な……先程の爆発といい一体何があったんだ! 」
警備隊の隊員が肉塊となった男を運び出す作業を尻目に蘭季が沙羅紀に事情を説明する
女性が襲われていた事
亮佐、蘭季、両名が駆けつけ通り魔と戦闘になった事
蘭季は通り魔の発言について"一部"を伏せありのままを報告する
「そうか……亮佐が仕留めたのか」
「あぁ生かして捕らえられる程生ぬるい相手ではなかったし、そのクズには悪いとは思わん」
「ふむ……だがこれで一件落着だな、すぐにでも父上に報告を」
「待ちな沙羅紀」
「火亜流? なんだ、私に何か用か? 」
「お前に聞きたいことがある」
……?
沙羅紀は事態の収拾を後にし火亜流の疑問を優先して耳を傾ける
それに対し浮かないよう様子の亮佐
……奴の発言……
『"前の人生で殺された恨み"』
『知らねぇのかあのガキが "あの場所で育った獣" ってよ~』
……所詮は狂人の戯言……だが……
……火亜流……貴様は一体……
浮かない様子の亮佐を気にかける蘭季
「亮佐さん……あの男が言っていた事やはり気になりますか? 」
「ふんっ……奴の事など……」
「火亜流さんはたしかに粗暴で短気な所はありますが私は悪い人ではないと思いますっ」
「……」
亮佐は火亜流を見つめる
……貴様が何者であろうと俺は俺のすべき事を成すだけだ……
火亜流と沙羅紀は話に区切りが着いたようで火亜流が場を去ろうとする
「お、おい何故そんな事が今気になるんだ? 」
「別に……ちょっと聞いてみたかっただけだ……気にすんな」
「兄貴! 屋敷まで送りますよ!」
「要らねぇよ1人で帰る、ついてくるんじゃねぇぞ」
火亜流が1人で現場を去っていく
置き去りにされた一同は火亜流の様子がおかしい事に気付く
「火亜流さんどうしたんですかね? 何か変じゃなかったです? 沙羅紀さ〜ん、何を話してたんです? 」
沙羅紀も首を傾げながら言う
「いや私にもよく分からないのだが……警備隊の中で1番強いのは誰だ……と」
「警備隊……? 」
「野蛮人の考えなど俺に分かるはずもない、俺達も帰ろう」
「あっ待ってくださいよ〜亮佐さ〜ん」
通り魔との戦闘が終わった亮佐、蘭季、そして獅子丸が屋敷へと帰ってくる
「あれ、兄貴まだ帰ってないんですかね? 」
「おい……何故貴様が当たり前のようにここに居るんだ」
「兄貴から男を学ぶまで俺は離れないと決めたんだ! 兄貴〜どこですか〜! 」
獅子丸が屋敷の中へ火亜流を探しに走っていく
「やれやれ……騒がしいのが増えたな……」
「あはは〜……私は豪鎧さんに報告して来ますね~」
それぞれが離れ、一日が終わり朝を迎える
日が登り朝日が窓際に差し掛かる
豪鎧、沙羅紀、蘭季が会合する
「ウム話は分かった……たしかに別件である可能性を排除し切れない以上はこの件はまだ警戒と調査が必要なようじゃな」
真剣な表情の豪鎧に沙羅紀が報告する
「父上……再度私達も調査してみましたが地下牢に犯人の痕跡はありませんでした」
「ウムぅ……またもや行き止まりか、して……通り魔の方は? 」
「今朝……消滅したと報告を受けました」
「そうか、あれはいずれ亡者となる事は明白だ致し方あるまい」
「なんだかすいません……情報を聞き出す唯一の手がかりを」
申し訳なさそうにする蘭季に豪鎧が笑顔で声をかける
「いやお主が気にする事はないぞ、亮佐の活躍がなければ今宵もまた被害者が出ていたかもしれん! 火亜流といい亮佐といいこの町の平和に一役買ってくれた彼ら豪傑に感謝はあれど不服はない」
「そう言って頂けるとありがたいですっ」
沙羅紀はその発言に顔を曇らせる
……たしかにそうだ……火亜流、亮佐が来てからというもの尽く町の汚れが晴れていくようだ……
……警備隊隊長である私は何をしている……
……町の平和を守らねば……父上に認められなければ……
……そう必死に今まで走り続けてきたが……
……その実……
……この町の問題を片付けているのは外から来た余所者……
『その役目ってのをてめぇが何一つ果たせてねぇからあのジジイは俺みてぇな余所者を頼るしか無かったんだろ』
……ぐっ……
火亜流の言葉を思い返し拳を強く握る沙羅紀
奴の言う通り……なのか……私は……
「沙羅紀さん? どうかされましたか? 」
「あぁ……いや、なんでもない」
……このままではいけない……
豪鎧は沙羅紀を無言で見つめている
「とにかく夜の見回りと調査を続行するしかないですね〜獄党会の方々も協力してくれますし、ここまで来たら私達も最後まで付き合いますから!」
「ウムッそうだな! 助かるぞ蘭季! 」
「では父上っ……私は今一度昨晩の現場周辺を見てまいります!」
「沙羅紀よ」
「はいなんでしょう? 」
「……1人で無茶をするでないぞ」
「はい……父上」
沙羅紀が部屋を出る
「なんだか思い詰めてる様でしたが沙羅紀さん大丈夫ですかね? 」
「……」
無言の豪鎧
……豪鎧と沙羅紀にかつての思い出がよみがえる……
※それは沙羅紀が隊長となった日※
鬼として生まれた彼女は警備隊の中でも抜きに出た身体能力とその真っ直ぐな性格で頭角を現していた
ガキンッ!
「ま、参りましたっ……」
「はぁっ……はぁっ……次だ! 」
木刀による戦闘制圧訓練、沙羅紀に1対1で勝てる者はこの頃になると1人も居なくなっていた
「ガハハッ! やっておるな皆の衆! 」
「豪鎧様っ! お疲れ様ですっ!」
「お疲れ様ですっ!」「お疲れ様です! 」
地面にへたり込む警備隊の隊員が立ち上がり町長である豪鎧に挨拶をする
「良い良いっ休んでおれ、用があるのは沙羅紀じゃ」
「私に? 如何されましたか父上」
「ウム……聞いておるぞ沙羅紀よ……日々の鍛錬と業務をこなしながらさらに陰ながら努力を重ね今では警備隊一の強者となり誰もお主に勝てるものは居ないとな」
「いえそんな……私はまだまだです父上が築いたこの町を……私の誇りに賭けて守り続けるためには私はまだまだ強くならねばなりません! 」
「その意気や良し! 沙羅紀……お前にこれより警備隊隊長の任を任せる! 」
「父上!? わ、私がですか? 」
「ウム! 」
「しかし私はまだまだ父上のこの町を……」
「それは違うぞ沙羅紀……ワシのではない皆の……そしてお前が守り続ける"お前の町"だ」
「私が守る……私の町……」
「だが忘れるな沙羅紀、人は1人では生きてはいけない、鬼とてそれは同じ事だ……我らは共に助け合い守り合い切磋琢磨していかねばならん……」
「はい父上! 」
「お前は1人ではない、いつかお前が本当に困った時……誰かが必ずやお前の助けとなってくれる……人を助けそして周りの仲間を頼れ、いいか忘れるな……お前は1人ではないのだ」
「分かりました父上……! 必ずやこの私が……私達警備隊がこの町を守ってみせます! 」
※場面は現在へ戻る※
「私が必ず……! 」
沙羅紀は昼間の賑やかな町の巡回警備を行いながら昨夜の戦闘があった場所に着く
「あっ……隊長お疲れ様です」
そこに居たのは牢番の"ゆうき"だった
「ゆうきか……こんなところで何をしているんだ? 」
「あはは~囚人が居ないと牢番の僕は仕事がなく暇ですから、それでここで昨夜通り魔が現れたと聞いて……」
しゃがんだ体勢を起こしながら屈託のない笑顔でゆうきがそう言いながら立ち上がる
「そうか、相変わらず真面目で仕事熱心だなゆうきは」
「いえいえ〜………ところで隊長も現場に居たんですよね? 」
「ああ、私が駆けつけた時には既に事が終わった後だったが」
ゆうきは表情を変えず笑顔のまま沙羅紀に質問する
「通り魔……どんな奴でした? 」
「それがな……顔が判別もつかない程酷く損傷していてハッキリとは確認出来なかったんだ」
「へぇ〜……そうなんですか~……殺ったのはあの赤い髪の彼ですか? 」
「火亜流か? いや昨夜通り魔を倒したのは亮佐だ」
「なんだ〜そっか〜」
「ゆうき……どうかしたのか? 」
「いや〜参ったな〜先越されちゃったか〜」
「ゆうき……? 」
「隊長、赤髪の彼とその金髪はまだ屋敷ですよね? 今日も一緒に皆さん見回りするなら僕もご一緒させてください! 暇なので! 」
ゆうきがニコリと無邪気に微笑む
「それは助かるな……ん? 」
ゆうきが現場を去ろうとする
沙羅紀はゆうきの肩を掴む
ガッ
「待て……ゆうき……確認したい事がある」
「はい? なんですか? 」
「今日の夜も皆で見回り……と言ったか? 何故そう思った? 」
沙羅紀の表情が強ばっていく生まれた疑心を抱きゆうきを見据える
「ん〜あれ〜……しない感じなんですか? 僕ったら早とちりしちゃったなあ〜」
「ゆうき……お前や他の警備隊にはまだ知らせていないはずなんだ……"この事件がまだ解決していない" という事はな……」
「………」
ゆうきが黙ったまま下を向く
「ゆうき、お前からすれば通り魔が捕まった…とだけ知らされ晴れて事件解決………火亜流や亮佐は役目を終了し町から居なくなる…今日の見回りは通常通りの警備隊数名の交代……そうじゃないのか? 」
「あはは〜……」
「答えろっ! 」
通り魔が現れた東門付近の裏道
ここは昼間でも人通りはほとんどなく静かな場所
少し歩けば賑やかな街並みの市場へと出るこの裏道で喧嘩騒ぎがあった際は市場にごった返す人々の声により掻き消され発見がかなり遅れたという……
「もういっか〜そろそろ警備隊ごっこも飽きてきたとこだし」
「ゆうき! まさか……まさかお前が」
「隊長〜〜僕隊長には感謝してるんですよ〜地獄に来てまだ間もない右も左も分からないこんな僕を警備隊で雇い入れてくれてっ」
ゆうきが余裕綽々たる態度で沙羅紀に振り返りニコリと笑顔を向ける
「改めまして "幽忌" ですっ悪人の血を見るのが好きで好きで堪らないんです僕っ」
「幽忌……そんないつも仕事熱心で優しいお前が……何故! 」
「これでも僕ず〜っと我慢してたんですよ〜」
そう言いながら幽忌は帽子を脱ぎ捨てる
黒と白の斑になった柔らかい髪をなびかせ無邪気な子供のような笑顔で沙羅紀に続ける
「悪人達の血……悲鳴……アァッ……あの表情……ハァハァ……思い出すだけで……」
幽忌の下腹部の更に下のそれが膨張する
下穿きを突き破る勢いでそれは立ち上がる
「ンフッ……ンフフ……」
沙羅紀は幽忌から手を離し1歩後退し腰に差した剣の柄に手をかける
「幽忌……牢番のお前が……犯人なのだなっ! 」
「犯人って〜っ そんな言い方しないで下さいよ隊長〜どうせあんな奴ら亡者になるのが関の山、処刑の手間が省けたでしょ? 」
沙羅紀が憤慨する
「ふざけた事を言うなっ! 例えそれが悪人であったとしてもこの町に住む住民……罪と向き合えないその弱さも含めて私達が守り導く……それが町を守る我らの役目だ! 」
幽忌が笑顔で拍手をしながら笑う
「アハハハハハッッすごいや隊長! 立派な人だ〜」
……私の剣の腕は幽忌も知っているはず……
……何度か稽古をつけた際の幽忌の動きは素人同然だった……
……私の間合いにいながら何故笑える……?
……何故……警備隊のお前が……
「幽忌……! 覚悟しろ……! 」
シュィンッッ
沙羅紀が西洋剣を抜く
六角形の断面を持つ両刃の直剣 全長90cm
沙羅紀の扱う西洋剣術は従来の物と異なり相手の攻撃を受けること前提であり、切れ味より丈夫さに重きを置いた直剣で受けた攻撃の軌道を流したのちに斬り返して反撃をするといった防御を中心とする型を得意とする
この町随一の西洋剣術の使い手である沙羅紀が剣を抜いて尚
幽忌の笑みに陰りは無かった……
「……くっ」
沙羅紀は動けずにいた
目の前で笑みを浮かべる丸腰の相手に何故か自身の剣が命中するイメージが湧いてこない…
邪悪な禍々しい魔気……
今までに味わった事のない威圧感
……これが……あの"ゆうき"なのか……?
……いや……相手が何者であろうと私は……!
「ハアッッ!!!」
ヒュインッッ!
振り払う直剣の一閃 当たれば無傷では済まない
棒立ちの幽忌、その身体をまるで空気を切るようにすり抜ける
「な……!? 」
「ンフッ……ンフフフフ……」
顔に手を当てながら幽忌の笑い声が漏れる
「無理無理無理です隊長ォ〜僕にそんな剣で傷をつけるなんて〜ンヒヒッ……」
幽忌の上半身から黒い煙のようなものが立ち上る……
「僕の罪能……"身体を煙に変える"……僕を斬るなんて無理なんですよ……」
「身体を煙に……! 馬鹿な…」
もし本当なら地下牢での件は辻褄が合う……だが
私の剣で奴にダメージを与える事は……それでも!
「ヤアアアッッ! ハッ! 」
ヒュインッッ! ヒュォォンッッ! ブォンッ!!
繰り出す西洋剣の一撃二撃三撃
いずれも幽忌の身体をすり抜ける
次の瞬間、棒立ちの幽忌の手が伸び沙羅紀の首を掴む
「ぐっ……がはっ」
「隊長〜〜僕はあなたに感謝していますあなたは悪人ではないですし、苦しませないよう一瞬で殺してあげますね? 」
締められる首
なんだ……この力は!? がはっ……息が……
『お前は1人ではない、いつかお前が本当に困った時……誰かが必ずやお前の助けとなってくれる人を助けそして周りの仲間を頼れ……いいか忘れるな……お前は1人ではないのだ』
……父上……私は……町を……
……私は結局……何一つ……
……あの男……火亜流の言った通りだ……私は
沙羅紀の目から涙が零れる
苦しみ恐怖からではない自身の不甲斐なさ力の無さへの悔しさ
……だ……誰か……
……た……す……け……
沙羅紀の意識が飛ぶ寸前……それは突然目の前を通る
ビュウンッッ!
「……!? 」
幽忌の腕目掛けて一直線に投げられた"石"
反射的に手を離し身を躱す幽忌
「がはっ……! ……はぁっ……はぁっ……一体何が……」
ザッ ザッ ザッ
幽忌は突然の事に一瞬表情に戸惑いが現れる……が近づく男を目視で確認し笑みがさらに邪悪なものへ変貌する
ザッ……!
何者かが沙羅紀の前に立つ
……誰かが……救援に……私を助けたのか……誰が……?
首を抑え、呼吸を整えながらぼやけた視界で男をその瞳に映す
……お前は……!
「よォ沙羅紀……生きてるか? 」
「はぁっ……はぁっ……火亜流……なぜ……ここに……」
黒と赤を基調としたジャージの袖を捲り沙羅紀の顔を見ずに火亜流が告げる
「顔とりあえず拭けよ、こいつの相手は俺がする」
涙で濡れたままの顔で火亜流を見上げる
「私はっ……私のせいだ……! 私がもっと早く気付いていなければならなかったんだ……! ヴっ……私は……」
沙羅紀の顔は見ない
目の前の相手から視線を外さない
火亜流は幽忌から目を離さず告げる
「お前のせいじゃねぇよ生真面目バカ、こいつのせいだ」
「……火亜流」
「へっ……黙って顔拭いて後は俺に任せな」
火亜流の背中を見つめて沙羅紀は父の言葉を思い出す
『いいか忘れるな……お前は1人ではないのだ』
……父上……
火亜流が幽忌に向けて歩を進める
「よォ幽忌、理由だとか事情だとかそういうのは後にしようやァ」
「ンヒィッ……あぁ堪んないよ……やっぱり君は格別だァ〜」
幽忌もまた火亜流に向けて歩き出す
「今はとりあえずよォ……」
「あぁ〜……存分にィ~」
「「全力で殺し合おうっ!!! 」」
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ほとんど勢いとノリだけで書いてます…笑