12話
火亜流 本作主人公
赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い
身体中は古傷だらけ ムッキムキ
亮佐
金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい
蘭季
青髪 ボブ 青肌 1本角の鬼の少女 凛季の姉
豪鎧
白髪 オールバック 紫肌 2本角 髭いっぱい 霊楽町の長
沙羅紀
白髪 結んでる 紫肌 1本角 豪鎧の娘 男勝り
獅子丸
頭の右側刈り上げ 顔面の右側に牙を鬣で囲んだ印の刺青 革ジャン
獄党会との経緯を豪鎧に説明する蘭季と出された食事を奪い合いながら食べる火亜流と亮佐
「ウム……なるほど……獅子丸がそんな事を……」
「はいっ……説明した通り火亜流さんが実質1人で獄党会の皆さんをボコボコにしてしまったので今は皆さん病棟送りで詳しい話はまだ聞けてませんが……」
「んんんいやしかし讃えるべきは火亜流のその手腕! いやはや恐れ入った……! 想像以上の手練であったな……」
豪鎧と蘭季の話を一切介さず食事に夢中の火亜流と亮佐
「おい貴様ァ! それは俺の肉だァ! 返せぇ! 」
「あん? てめぇの名前でも書いてあんのか? てめぇはほとんど何もしてねぇんだから黙って草でも食ってやがれ」
「なんだと!? あっ……貴様ァ! それは俺のビーフシチューだああ!! やめろォォ!! 」
その様子を見て恥ずかしがる蘭季
「いや……もう本当に恥ずかしいからやめて下さい2人共! 食事も黙って大人しくとれないんですかあなた達は!? 」
その光景に豪快に笑う豪鎧
「ガハハハッッ!! 良い良い!! 男児というのはこうでなくては!! 」
「うう〜……ごめんなさい豪鎧さん……」
申し訳なさそうに顔を赤らめる蘭季
「今日はこの屋敷でゆっくり休んでくれよ皆の衆! 夜の見回りはワシらと警備隊がしっかり行うでな! 」
「え……いえいえ私達も夜は警備隊の皆さん達と同行します! いざと言う時にしかこの人達は頼りになりませんから! 」
「そうか? では頼らせてもらうとしよう! ガハハハッッ」
「お食事中失礼します!!! 町長さん! 」
勢いよく扉が開き使用人が焦った様子で息を切らしながら現れる
「ん? どうかしたか? 」
「そ、それが屋敷の外に……病棟から抜け出した獄党会の者が勢揃いで……!!! 」
「何じゃと!? 」
蘭季が未だに食事を奪い合っている火亜流と亮佐に言う
「2人共! ちょっと……! 今こそいざという時ですよ! 報復です! 獄党会が復讐しに来たみたいです! 出番ですよ火亜流さん! 」
火亜流が骨付き肉を歯で砕いて咀嚼しながら蘭季の方を向く
「んあ? アイツらあんだけボコボコにしたのにもう来やがったのか、へへっ……少し見直したぜ」
「懲りない奴らだ、よし俺も行こう」
火亜流と亮佐は立ち上がり部屋を出て玄関へ向かう
一同が玄関を開けるとそこには獄党会の全員がぐるぐるに巻かれた包帯姿のまま、獅子丸を先頭に綺麗に整列していた
「よォ獅子丸…第2ラウンド開始と行くかァ!!」
「……」 ザッ
すると突然獄党会の全員が腰を落とし膝に手を付き頭を下げる
獅子丸が大声で叫ぶ
「お食事のところすいません!!! "兄貴"!!! 」
「あ…あ? 」
豪鎧、蘭季、亮佐、そして火亜流が静止する
……?
……ん?
「あ? お前今なんて……」
獅子丸が頭を下げて声高に叫ぶ
「兄貴ッ! 突然の訪問お許しください! この獅子丸……生まれて初めての敗北……生まれて初めて出会った男の中の男……兄貴の漢気に惚れました! 俺をあなたの舎弟にしてくださいッ! 」
……ん?
「お前何言ってんだ……復讐しに来たんじゃねぇのか? 」
獅子丸が腰を落としたまま目を輝かせて言う
「いいえ! あの時俺は身体だけでなく精神的にも兄貴に完敗しました! 俺は兄貴に一生ついていくと心に決めました! 」
「いや勝手に決めてんじゃねぇよ」
後ろに並ぶ屈強な男達を指して獅子丸が続ける
「こいつら獄党会の全員も同じ気持ちです! 兄貴! 舎弟として俺達をこき使ってもらって構いません! 兄貴の元で"真の男"って奴を俺達に学ばせてください! 」
「いや要らねぇよ、帰れ」
「兄貴が良いと言ってくれるまで俺達はここを動きません! 」
「そうか、じゃあ頑張れよ」
ギィィと音を立て玄関の扉が閉まる
「え〜っと……今のはなんです……? 」
「分からん……貴様の事を何やら兄貴……と呼んでいたが」
「おい……どうなってやがる……」
豪鎧が火亜流の肩を叩き大胆に笑う
「ガハハハッッッ! 奴の言っていた通りではないか? 火亜流よ! お前さんの漢気に惚れた、と! 」
「おい……冗談じゃねぇぞ……」
玄関の扉を薄く開け覗く蘭季と亮佐
そこには整列したままの獅子丸と獄党会の面々……
「えっと〜……まだ居るんですけど……あの人達微動だにせずあそこにまだ並んでるんですけど〜……」
「どうするつもりだ貴様…あいつら諦めるつもりは無さそうだぞ」
頭を掻きながら困った様子の火亜流
「知らねぇよ……夜になりゃ勝手に帰るだろ……」
※そして夜が更けて見回りの時間が訪れる※
玄関の扉を開ける火亜流
「「「「「「お勤めご苦労様です兄貴!!! 」」」」」」
玄関の扉を閉める火亜流
「おい貴様これどうするんだ……」
「まさかとは思いましたがまだ居ましたね〜……」
「………俺にどうしろってんだ」
「いっそ舎弟にして上げたらどうなんです〜? こき使っていいと言っていましたし……」
「ふざけんじゃねぇ……要らねぇよそんなもん」
「でも町を見回りするなら人海戦術でかなり役に立つと思いますよ〜? 」
「…………」
「諦めるしかないだろう…貴様が招いた事だ、責任は貴様にある」
「チッ……」
再び玄関の扉を開ける火亜流
「「「「「「お勤めご苦労様です兄貴!!!」」」」」」
「うるせぇよやめろそれ」
獅子丸が前に出る
「兄貴……やっと決心してくれたんですね! 」
「おい待て勘違いすんじゃねぇぞ、舎弟なんざ要らねぇ」
「兄貴……」
「だがまァ………役に立ちてぇってんなら……勝手にしやがれ」
「兄貴……! それじゃあ兄貴に着いて行ってもいいんですね! 」
「その兄貴ってのやめろ」
「嫌です! やめません! 兄貴は俺の兄貴です! 」
頭を掻きながら困惑した様子で言う火亜流
「と、とにかくだ……町を見回りするらしい……てめぇら頭数だけはいやがるんだ……町を見回って怪しい奴を見つけろ」
「「「「「「了解しました! 兄貴! 」」」」」」
獄党会の者達は散らばって行く
獅子丸が火亜流の側により興奮気味にはしゃぐ
「これから始まるんですね……俺と兄貴の真の男の道が! 」
「始まらねぇよそんなもん」
そこに沙羅紀が現れる
「お、おい今しがたこの屋敷から走って出ていく身体中怪我まみれの獄党会の奴らを見たんだが……私の見間違いか? 」
「あはは〜え〜と話すと長くなるんですけど〜私達もよく分かってなくて〜」
「や! お、お前は獅子丸!? 何故ここに!? 」
「おっ警備隊隊長のお嬢様、今日から俺様は兄貴の舎弟だ! よろしくな! 」
「ん……は? 何を言っている? 」
「あはは〜えっとですね〜……」
蘭季が苦笑いしながら沙羅紀に状況の説明をする
沙羅紀は信じられないといった様子で話を聞く
「そんな事が……はぁ……獅子丸……お前……もう悪事は働かないのだろうな? 」
獅子丸が決意の表情で語る
「あ? 兄貴がやれと言うなら何でもやるぜ、やるなと言うなら例えそれが何であれ俺はやらねぇ……俺は男の中の男になるんだ……それを学び尽くすまで俺は止まらねぇ!!! 」
沙羅紀が火亜流に質問する
「火亜流……お前は獅子丸をどうするつもりだ? 」
「知らねぇよ、とりあえずこいつら使って見回りさせたが」
「そうか……そうだな……ともかく今は町の安全が最優先だな……私達も回るとしよう、別れて散開するぞ」
東門周り 亮佐、蘭季
西門周り 火亜流、獅子丸、沙羅紀
「とりあえずこれで問題ないか? 」
「へへっ分かってるじゃねぇか隊長さんよ〜俺と兄貴を一緒にするなんてな〜」
「お前を野放しになんぞ出来るはずないだろう……いいか! 私はまだお前を信用した訳では無いからな」
「へいへいどうぞご勝手に〜」
「亮佐、蘭季、東門周りは頼んだぞっ私達は西門周りを見回る」
「は〜い! 」
「ふんっようやくこの野蛮人と離れられるわけだ」
「こっちのセリフだぜ女神バカが」
「なんだと!? この単細胞バカが! 」
「兄貴〜この金髪バカは兄貴の子分なんすか〜? 」
「な!? 誰が子分だ貴様ァ!! 」
「獅子丸……こいつはただの女神バカだ、刺激すると厄介な奴だ気をつけろ」
「な……なるほど! 肝に銘じます! 」
「おいっふざけてないで行くぞ! こっちだ火亜流、獅子丸」
火亜流、獅子丸、沙羅紀の3名が西門へ向かう
「じゃあ私達も行きますか〜女神バ……亮佐さん」
「おい今俺の事を女神バカと呼びかけなかったか? 」
「ははは〜……ま、まさか〜じゃあ行きましょ〜! 」
亮佐、蘭季が東門に向かう
夜の町……月明かりと僅かな街灯の灯りで薄暗い夜道を歩く亮佐と蘭季
「ん〜今のところ怪しい人影はおろか出歩いてる人も居ませんね〜」
「そのようだな……」
無言が続きながらふと蘭季が雑談を始めようと亮佐に質問する
「そういえば亮佐さんにずっと聞きたかったんですけど〜」
「なんだ? 」
「亮佐さんは聖女様のどこを好きになったんです? やっぱり美人だからです? 」
驚いたように口を開け動揺する亮佐
「な!?……何を聞くかと思えば……」
「ありゃ? 違うんです? 」
亮佐が首を左右に振り呆れたように言う
「やれやれ貴様は何も分かっていない……俺のこの心は恵理先生を好いているなどという安っぽい感情ではない! 」
「じゃあなんなんです〜? 」
亮佐は不敵に笑う
「ふっふっふ……子供の貴様には分かるまい……これはそう……言うなれば"愛"だ!!! 」
「えっと〜……だからそれ好きって事ですよね? 」
「やれやれ、これだから子供は……ふっ……」
「ん〜なんか腹立ちますその反応〜」
亮佐は両手を広げ恵理への想いを語る
「どこを……と聞いたな、全てだ!! 外見の美しさは然ることながらあの心の美しさ……あれはもはや慈愛の神だ! 」
「たしかに綺麗ですよね〜見た目も中身も、あんな人にも罪があるなんて世の中不思議ですね〜」
亮佐が突然立ち止まり下を向く
それを心配そうに振り返る蘭季
「亮佐さん? 」
「あの人は……あの人の罪は……」
「亮佐さん? どうかしました……? 」
「いや、何でもない……」
歩き出す亮佐……恵理と出会った最初の頃を思い出す
『私の罪はきっと後悔……何かを果たせなかった後悔……何も思い出せないけど……ずっと胸にあるの……何かをしなきゃって、いつか私を知る人に出会えたら分かるのかな……私の後悔……』
……あなたを知っている人物……
……あなたの後悔かもしれない人物……
……何の確証もない……何の根拠もない……
……でも……あなたの"奴を見る目"……それは……
※時は遡り霊楽町への出立前※
「良しっ準備は整ったな、全くあの野蛮人め……誰が足でまといだ……そうだっ恵理先生にしっかり挨拶しておかねば……」
階段を上り恵理の部屋へと向かう亮佐
……お、恵理先生の声がしたぞ……
「恵理先せっ……ん? あそこに居るのは……」
壁に隠れて話を聞く亮佐
「別にお前だって間違ってねぇんじゃねぇか」
「亮佐が言ってたぜ……あんたは他の奴にはない"おもいやり"って優しさがあるってよ」
「お前はお前のやり方でそいつを貫けばいい」
……野蛮人……恵理先生と2人で何を……
「んじゃもう俺は行くぜ」
「待って……! 火亜流"くん"!」
「あ……えっと……ううんっ……気をつけてねっ火亜流さんっ」
……恵理先生……
……あなたは……
※時は戻り現在※
「ふんっ……俺は何を考えているんだ……あんな奴……」
「ん〜亮佐さん? なんか変ですよ〜」
「何でもないと言っているだろう、俺はただ……」
キャー! 誰かあああ!
「!? 」
遠くで女性の叫び声が上がる
「亮佐さん! あっちです! 」
「ああ! 走るぞ! 」
悲鳴が聞こえた方に向かう
走る女性、追いかけるローブの怪しい人影
怪しい人影の手に持ったそれが一瞬キラリと光る
……刃物か……!
「貴様! 止まれ! 」
ズサァ……
ローブの怪しい人影が停止する
蘭季が女性を介抱する
「大丈夫ですか! どこかお怪我はありませんか! 」
「は……はい……突然あの人に襲われて……私……必死で……」
「もう大丈夫です! あちらまで1人で行けますか! 」
「は、はい! ありがとうございます……」
ローブの人影が笑う
「クックック……今日はお前らの血で我慢するかあ……」
……男の声……
「貴様が通り魔だな……逃げられると思うなよ、すぐに応援も来る……見つけた以上は絶対逃がさん」
「クックック……それまでお前らが生きてればなあああ! 」
ローブの男が逆手に持ったナイフを器用に操り襲い来る
亮佐が腰からマチェットナイフを取り出し応戦する
キィィンッ
刃と刃が交差して鍔迫り合う
「くっ……貴様! 」
「ウヒヒヒィィ……血ぃ……血を見せろォ! 」
鍔迫り合いの最中、男はくるりと身体を回転させ亮佐のマチェットナイフを躱すと同時に回し蹴りを繰り出す
ドスッ!
「くっ! 」
男の蹴りを喰らい遥か後ろまで飛ばされる亮佐
……こいつ戦い慣れている……! それにこの蹴りの威力……
「ウヒヒヒッッ! アヒャヒャヒャアアア!!! 」
男は刃物を逆手から器用に持ち替え素早く間合いを詰め亮佐の首に突きを放つ
ヒュンッ シュインッ!
突き、払い、紙一重で躱す亮佐
「亮佐さん! 避けて! 」
蘭季が棍棒で亮佐もろともローブの男目掛けて振る
ブォンッッ
亮佐、そしてローブの男もそれを躱す
「なっ……俺ごとか! 」
続けて棍棒を振り続ける蘭季 一振り二振り三振り
ブォンッ! ブォンッ! ブォォォンッッ!!
それら全てをローブの男は軽快な動きで躱していく
亮佐が蘭季の後方で"スローイングナイフ"を懐から取り出しローブの男に狙いを定め投げる
スローイングナイフ 通常のナイフとは違い投げナイフ専用に作られたそのナイフは切れ味を落とした代わりに折れにくく曲がりやすいような特殊な焼入れがされている
ヒュンッ!
「……っ! 」
投げられたナイフをギリギリの所でローブの男が躱す……が被っていたフードにナイフが刺さりフードが取れ男の顔が晒される
「クックック……2対1は少し分が悪いなァ……」
男の顔は痩せこけていて青白い、蛇のように長い舌を口から出して目は瞳孔が開いている
※場面変わって火亜流、獅子丸、沙羅紀※
「隊長ー! 大変です!! 東門の方で通り魔が出たそうです!」
1人の警備隊が走って報告をしに来る
見回りをしていた火亜流達の表情が一様に焦りに覆われる
「何だと……東門には亮佐と蘭季が! 急ぐぞ! 」
「おう 」
「兄貴! 待ってください! 」
「……? 」
獅子丸の声に火亜流が足を止める
「グガアアアアアアッッッ! 」
獅子丸の身体が漆黒の獅子の怪物へと化す
「ガアアアッッ! 兄貴! 乗ってください! 東門までなら俺の足でひとっ飛びです! 」
「へっ……やるじゃねぇか獅子丸よォ」
体勢を落とした獅子丸の背に火亜流が跨る
「しっかり捕まっててください! 兄貴! 」
「あぁ」
目にも止まらぬ速さで獅子丸が駆ける
置いていかれた沙羅紀
「なんという速さ……頼んだぞ……無事で居てくれ2人共……! 」
※場面戻って亮佐と蘭季※
「クックック……思ったよりやるなぁお前ら……こうなったら仕方ねぇ……」
「逃げられると思うなよ……貴様……」
チャキッ……
亮佐がマチェットナイフを構えてにじり寄る
「それが逃げられるんだよな〜 ヒヒッ 」
「貴様に確認しておく……近頃の通り魔騒ぎは貴様の仕業で間違いないな……? 」
男はナイフに手を添えてニヤリと笑う
「クックック……まぁ見つかっちまった訳だしなぁ〜そうだぜ〜女共の柔らかい肉を切り裂くあの感覚が堪んなくてよ〜」
「クズめ……貴様は生かしておく必要は無さそうだ……」
男は口元を歪めて亮佐に取引を持ちかける
「イヒヒヒッッお前ら……外の町から来たんだよなあ〜? 見てたぜ〜あの門から入ってくるのをよ〜……俺の狙いはあの"赤髪のガキ"だ……大人しく引き下がるならお前らは見逃してやるぜ〜? 」
「何? 赤髪……? 」
……火亜流のことか? 何故こいつがあの野蛮人を……?
「あの赤髪の野郎を見つけた時は震えたぜ"前の人生で殺された恨み"ようやく晴らせるってなあああ! 」
「!? 」
……何だと? 前の人生で殺された……?
……あの野蛮人に……?
「おいそれはどういう意味だ? 」
笑みを崩さず男が続ける
「クックックお前はあのガキの仲間なんだろ? 知らねぇのかあのガキが "あの場所で育った獣" ってよ~」
「誰が仲間だ! あんな野蛮人は俺の仲間などではない! 」
「なら提案だ、俺と組んであの野郎をぶち殺しちまわねぇか? 」
「貴様何を……」
男が不気味な笑顔で亮佐に語りかける
「あの赤髪のガキさえ殺れりゃ俺はこの町から姿を消してやるよ……イヒッ……お前は仲間でもなんでもないんだろ?……お前の言う通り奴は野蛮な獣……いい取引きじゃねぇか……? ヒヒヒ」
……あの野蛮人を殺す……そうなれば……恵理先生も……
「亮佐さん耳を貸さないで! こんな通り魔の言うことなんか! 」
蘭季が棍棒を男に振る
ブォンッ!
「っと危ね~な〜……今俺はそこの金髪の兄ちゃんと話してんだからよ〜邪魔すんなよなあッ 」
男は蹴りを繰り出し蘭季の棍棒の防御ごと蹴飛ばす
ドガッ!
「ううっ……! 」
「蘭季……! 貴様ァ……! 」
「ヒヒヒッ……さあ話の続きだぜ兄ちゃんよ〜……あの赤髪を殺すのを協力しろ……! お前らは見逃すしこの町での狩りは終いにしてやるからよォ……! 」
……ぐっ……蘭季は奴の動きについて行くのに精一杯……
……俺がこいつに協力すれば……こいつはここから消えて
……そしてあのバカが居なくなる……
亮佐の表情に影がかかる
「おい貴様……本当にこの町から消えるのか? 」
「イヒヒッ……おう約束するぜ」
「なっ……! ダメです! 亮佐さん! ……こんな奴の言う事」
倒れた蘭季の言葉に被せるように男が言う
「お前のその口振りからしてよォ~お前もあの赤髪が気に入らねぇんだよな〜? 分かるぜ〜俺もだからなぁ~! なら俺達は仲間だなあ! 」
「あぁ……そうだな……俺はあの野蛮人が嫌いだ」
「ヒヒヒッッ! 良いねえ〜! 話が分かるじゃねぇか! 」
……奴さえ居なくなれば恵理先生は……
……俺は……
……ふんっ……
「だがな……俺は貴様のような弱者を傷付ける生きる価値もないクズがもっと嫌いだ」
「ああ? 」
亮佐の顔が月明かりに照らされ影が消える
「貴様は何か勘違いしている……あの野蛮人がどこで何をしてきたか……俺にとってそんな事はどうでもいい……重要なのは貴様のようなクズは例えこの町から消えたとしても次の町でまた同じ事を繰り返すという事」
蘭季が亮佐の表情を見て安心したように呟く
「亮佐さん……! 」
亮佐は曇りなき眼で男を見据えて言う
「貴様のようなクズには理解出来ないだろうがこの世界にはな……他人を思いやり、どんな人にも平等に手を差し伸べられる女神のような人間が存在する……貴様のような存在はそんな清く尊い脅かしてはならない人を悲しませる」
男の顔から笑みが消え去り亮佐を睨みつける
「何をごちゃごちゃと! この俺に協力する気がねぇのか? 」
「当然だろう? 奴は気に入らない……がそれはいずれ俺個人として奴とケリをつける、貴様如きクズの力になんぞ頼りはしない」
「クックック……交渉決裂だなあ……! もうじき警備隊のカス共が集まってきやがる頃合だ……俺はとんずらさせてもらうぜ! 」
「させるか! 」
亮佐はスローイングナイフを取り出し男めがけて投げつける
男はそれを裁き後ろへ後退する
「バカがぁ! お前のナイフなんざ怖くねぇんだよ! 俺の罪能を捕まえられるやつなんざ存在しねぇ! 」
そう言って男は凄まじい跳躍力で上へ飛ぶ
男の罪能 それは瞬間的な脚力の増強により跳躍力を飛躍的に上げる
遥か上空……30メートルは高く飛び上がる
「あばよカス共が! ヒャヒャヒャッ! 」
「まずいです亮佐さん! このままじゃ逃げられます……! 」
「ふんっ……好都合だ……」
「亮佐さん……? 」
亮佐が懐から取り出した"それ"に火をつける
「俺の罪能……視認さえ出来ていればどれ程の距離があろうと俺の持ち物を強制的に1つ渡すことが出来る」
亮佐の手から"それ"が消える
空中を舞う男の手に突然渡ったそれは
"ダイナマイト"
ニトログリセリンを材料とした薬包紙に包まれた爆薬
「この手は街中では使えなかったんだがな……被害の出ない空中に自ら退避してくれるとはな」
「な……こいつは……お、おおおお前えええ! 」
「最初に言ったはずだ……貴様は逃がさん……とな」
ドッッガアアアアアアアアアアンッッッッ!!!
月明かりが照らす霊楽町の闇夜の空に1つの花火が上がった
貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます
お気軽に感想やいいね下さい!
ご指摘や御要望もぜひぜひ!
書くことが楽しくなって来ましたっ!
せっかく私を見つけてくれた皆様の貴重なお時間を有意義なものに出来るよう頑張ります