10話
火亜流 本作主人公
赤髪 前髪はセンターから逆上げ 瞳は橙色 目付きが悪い
身体中は古傷だらけ ムッキムキ
恵理 本作ヒロイン
黒髪 ゆるふわな感じ タレ目 めちゃ美人 落ち着いた声
スタイル良し 白いシスター的な感じの服 身体にフィットしてる
亮佐
金髪 センターパート 火亜流と同い歳くらい
蘭季
青髪 ボブ 青肌 1本角の鬼の少女 凛季の姉
豪鎧
白髪 オールバック 紫肌 2本角 髭いっぱい 霊楽町の長
沙羅紀
白髪 結んでる 紫肌 1本角 豪鎧の娘 男勝り
配給施設に辿り着いた火亜流と亮佐
そこには既に馬車に荷物を乗せ終え出発を待っている蘭季の姿があった
「お〜やっと来ましたね〜! じゃあさっそく乗ってくださ〜い! 」
「これに乗るのか? 」
「当たり前だ、この荷物で歩きで向かうなど足を破壊する様なものだ」
2頭の馬が引くそれはこの町における隣町との交流や貿易には欠かせない移動手段の1つであった
荷台に乗り込み座る火亜流と亮佐
蘭季は馬車の前部に乗り馬をあやつる馭者となる
馬が走り出すと慣れない感覚に火亜流は動転する
「おいおい待て待てっ……! ぐっ……や、やばいぜこれ……なんかやばいぜ! 降ろせッ! 」
蘭季は後ろを振り返り火亜流に注意する
「ちょっと〜! 暴れないでくださいって〜! 危ないですからじっとしてて下さい! 」
その様子を笑いながら見ている亮佐
「プハハハハハッ! 貴様この程度の揺れで騒ぐとはなんと無様な男だプフフフッ」
「だ、黙りやがれ! 上等だ! やってやるよ! じっとしてりゃァいいんだろ!? 」
火亜流は顔を強ばらせ荷台の荷物にしがみつく
「恵理先生に貴様のこの無様な様をぜひ見せてやりたいものだ」
2人を呆れた表情で見ながら蘭季は不思議そうに言う
「本当にこれが亡者を1人で倒したんですか〜?……にわかには信じ難いんですけど……」
「ふんっまあおそらくはマグレだろうな」
「罪能がめっちゃ強い〜! とかですかね〜? 」
亮佐は火亜流の慌てふためく様子を見てニヤリと笑いながら言う
「いや……こいつは記憶だけでなく自分の罪能すら分からない救いようのないマヌケだからやはりあれはマグレなのだろう」
「亮佐さん……その理論だと聖女様も救いようのないマヌケ扱いしている事になりますが……まあ突っ込まないでおこう……」
2人の会話を荷物にしがみつきながら聞いていた火亜流がようやく揺れに慣れてきた様子で蘭季に話しかける
「おい青いのそう言うお前の罪能は強いのかよ? 」
「あ、青いの!? 私の事!? 私蘭季ですけど!? 」
「そうか、で……強いのかよお前」
「……いろいろ言いたい事はありますが……えっと私には罪能はありませんよ? 」
「は? お前罪能ないのか」
蘭季が手綱を握りながら悠々と話す
「私は鬼生まれ鬼育ちですからね〜"罪人上がりの鬼"しか罪能持ってる鬼なんて居ませんよ〜」
「鬼生まれ? 罪人上がり? 」
知らないワードに困惑する火亜流に呆れた様子で亮佐が言う
「やれやれ貴様は本当に何も知らないんだな、鬼は俺達人間より遥かに高い身体能力を持っているが罪能までは持っていない、罪能を持った人間が鬼になった場合は罪能を持った鬼が出来上がる、というわけだ」
火亜流はさらに混乱した様子で聞き返す
「いやそこが分かんねぇんだよ、人間が鬼んなるってなんだ」
蘭季、亮佐の両名は首を傾げて火亜流を見る
「貴様……一体どんな適当な鬼に案内されたんだ……」
「たしかにあいつ、罪能の事も俺に説明せず突き落としやがったしな……チッあのクソ女……思い出したら腹立ってきたぜ」
「ありゃりゃ〜〜火亜流さんそりゃとんでもないのに案内されちゃいましたね〜……」
その頃遥か遠い彼方で地獄と現世を繋ぐ次元の門を構えた自室でくつろぎながらクシャミをしていた獅亞罹
「ハックションッッ!! ……ぶぇ…誰か私の噂してる? ヤダなあ〜モテる女はこれだから困っちゃうな〜」
蘭季が馬の手綱を握りながら火亜流に語る
「人間もなろうと思えば鬼になれるんですよ〜まぁ人によっては罪を贖うよりも簡単かもですね〜あっ今から探しに行く霊楽町の町長さんもちなみに"罪人上がりの鬼"ですよ〜」
……人間が鬼に……か……
「そうなのか? どうやって人間が鬼になるんだ? 」
火亜流の疑問に蘭季が進路を見据えたまま答える
「私が聞いた話だと "鬼神様に鬼にしてもらう" ってのが1番手っ取り早いらしいですよ〜詳しくは分からないですけど人を鬼に出来るのは鬼神様だけなんだとか〜」
鬼神様……その単語に火亜流は反応する
「きじん……? どっかで聞いたような……なんだっけな」
「鬼神様っていうのはこの地獄で最も位の高い鬼の神様ですよ〜! ……"鬼神七柱" って言ってこの世界に7人しか居ない最強の鬼の事です〜! 」
「最強ねぇ……いつか手合わせしてみたいもんだぜ」
「馬鹿か貴様……瞬殺されるに決まっているだろう」
「あっ見えましたよ〜霊楽町〜! 」
話をしているうちに目的地が見える
霊楽町 閑慈乃町を上回る人口の多さと賑わう街並みに石造りの大きな門
町の中心には大きな屋敷が建っており町長である"豪鎧"が住んでいる
「あれが霊楽町! やっぱりでかい町ですね〜! 豪鎧さん生きてるといいな〜」
石造りの門の前立つ2名の衛兵が槍を交差し馬車の進行を妨げる
「止まれ! 」
「どうも〜義宗から頼まれて豪鎧さんに会いに来ました〜」
「おや、これは蘭季様! 失礼しました、すぐに開けます! 」
門が開き町の中へ通される
その様子を見ていた亮佐が神妙な顔をする
「妙だな……」
「どうかしたかお前」
返事はなく亮佐が無言で何か考えている
「2人共〜ここで降りて豪鎧の屋敷に向かいますよ〜」
蘭季が馬車から降りて支度する
華やかで賑やかな街並みを3人は歩く
「なァ……つい最近ここは亡者が出たんだよな? 」
亮佐が街を見渡し疑問を浮かべる
「ああ、そう聞いているがそれが妙なんだ門や壁が壊された形跡は無かった……そうでなくとも亡者があの門を超えて入ったなら被害は甚大なはず……だがこの町の様子は……」
まるで亡者の被害は無かったかのように賑わう様子の町
「たしかに変ですね〜衛兵さん達も前来た時と同じ感じでしたし」
そう言っているうちに町の中心にそびえ立つ屋敷に到着する
蘭季が扉を叩き声を上げる
「すいませ〜ん義宗の使いで来ました〜! 蘭季です〜! 」
しばしの沈黙の後扉が開き使用人らしき人物が現れ3人は案内されるままに中へと進む
「でけぇ家だな、ごうがいって言ったかどんな奴なんだ? 」
「会えば分かりますよ〜」
客間に通された3人は席に着き豪鎧を待つ
広い部屋に火亜流は落ち着かない様子で口を開く
「おい、俺達は豪鎧って奴が生きてるのを確認したら帰っていいんだよな? 」
「ま〜町の様子を見る限りはそれで良さそうですね」
扉が勢い良く開き身の丈2メートルは超えるであろう大男が現れる
男の名は豪鎧 かつては人間だった彼の肌は紫色で髪は白髪で逆立っておりもみあげから続く立派な顎髭、そして
頭から生えた2本の角
「ガハハハッ! 久しぶりじゃのお! 蘭季殿! 」
「お久しぶりですっ豪鎧さん! 良かったですご無事なようで! 」
「当然だろう? このワシがそう簡単にくたばると? ガハハハ」
……元気そうなじいさんだ……それにこいつ強ぇな……
豪鎧は火亜流と亮佐を見つけると不思議そうに蘭季に尋ねる
「そちらの若いのは? 」
「こちらは火亜流さんに亮佐さんですっ霊楽町の危機と聞いて駆けつけてくれたんですっ! 」
「ほうほう、こりゃまた骨のありそうな若者だなあ! 」
豪快に笑う豪鎧に蘭季が恐る恐る尋ねる
「えっと豪鎧さん? 今この町は亡者に襲われてかなり切迫した状態だと聞いたのですが……」
「ん?亡者ァ? そんなもん出とらんが? 出たとしてもこの豪鎧の鋼の肉体が簡単に粉砕してくれるわ! ガハハハ」
火亜流、亮佐、蘭季の3人は顔を見合わせる
「おい……こりゃどういう事だァ? 」
「聞いていた話と随分違うようだな」
蘭季が豪鎧に質問する
「豪鎧さん? ちょっと確認したいのですが義宗からの鳩は届いているんですか? 」
豪鎧が思い出したように答える
「ん! そうだ義宗めい! このワシからの連絡を返さないままもう既に4日も経っておる! 奴は何をしとるか、生きてはいるのか? 」
蘭季は頭に? を浮かべて言う
「そんなはずはないですよ? 義宗は豪鎧さんからの連絡が途絶えたと心配してもう毎日鳩を飛ばしてます」
「はて? 来とらんが」
客間一同全員の頭の上に?が浮かぶ
「おい……こいつはひょっとしてよォ……無駄足ってやつか? 」
「そのようだな……」
蘭季は豪鎧にここへ来た経緯を説明する
「豪鎧さん……私達は霊楽町が亡者に襲われて消滅者を出し豪鎧さんとも連絡が取れなくなったと聞いてこちらまで来たんですが~」
「…………」
豪鎧の様子が先程までと変わり神妙な顔付きになる
「消滅者……か……出るには出とる……じゃがそれは亡者ではないぞ? 」
「亡者ではない?」
豪鎧の発言に3名は不思議そうに首を傾げる
「あぁ……その事を義宗の奴に相談したくてなあ……む! ちょうどいい! 危機に駆けつけてくれたというそこの若いの2人は腕に自信あり、という事で間違いないな? 」
蘭季が火亜流と亮佐を交互に見る
「腕ですか……火亜流さんはお1人で亡者を討伐するくらいには強いと聞いてますけど〜」
豪鎧の顔が明るくなる
「おおなんと! その若さで亡者を1人で討ち取ったか! それは頼もしい! 」
火亜流の顔をまじまじと凝視する豪鎧に火亜流が冷たく言う
「おいジジイちょっと待て、俺達はあんたの無事と町の様子さえ確認出来りゃ帰っていいって言われてるんだ亡者が居ねぇなら用はねぇぜ」
豪鎧は腕を組み話を続ける
「む〜しかしなあ〜………町の外の腕がたつ客人、これほどこの件の助っ人に相応しい者もなかなか居らんでな〜」
豪鎧は困ったように火亜流に視線を送るが亮佐がそれに割り込む
「豪鎧さんっ! すまないが俺には帰って恵理先生を守護するという大事な使命がある! あなたが無事であると確認出来たならこれ以上はここに居てもしょうがない! 」
豪鎧が考え込みながら呟く
「そうか? ん〜たしかにこの町の問題を今日来たばかりのお前さんらに押し付けるのも気が引けるしなあ〜……困ったのォ……どこかに都合の良い"優しい"者がおればのォ」
その発言に火亜流がピクリと反応する
亮佐は瞬時に理解する
……まずい! このバカまさか……
「おうジジイ、優しい奴ってのを探してんのか? 」
「そうじゃなあ、優しい者が居てくれたなら助かるんじゃがなあ」
「それならここに居るぜ……この俺がな 」
亮佐が焦った様子で火亜流に詰め寄る
「おい貴様っ! 何を考えているやめろっ」
火亜流はニヤリと笑みを浮かべる
「俺の見立てじゃこのジジイはかなり困ってやがる……そして優しい奴ってのが必要みてぇだ、つまりこの俺の出番ってわけだ! 」
亮佐は火亜流に必死の形相で語りかける
「いいかよく聞けこの単細胞バカ! 何かすれ違いが発生していただけでこの町の問題と俺達は関係ない! 義宗さんから頼まれたのは町長の無事の確認だということを忘れたか!? 」
火亜流はそんな亮佐に淡々と返す
「亮佐……てめぇこそ大事な事を忘れてるみてぇだな、俺は困ってる奴は見捨てねぇ優しいってのを極めるためにはここで俺が動かねぇと始まらねぇそう俺の直感が告げてやがる」
「ふざけるな! 貴様のくだらん直感なんぞに俺を巻き込むな! 」
「ちょっと2人共〜勘弁してよ〜……」
豪鎧が火亜流の肩を掴む
「むむ! 火亜流と言ったな……! やってくれるか! 」
「へっ……任せな……俺は"優しい奴"だからな! 」
火亜流の言葉に天を仰ぎ喜びをその表情と声色に表す豪鎧
「これぞまさに天の助け! 町長であるワシがこの件を表立って調査すると問題の糸口が遠ざかる可能性があるのでな! 」
「待ってください! 俺は帰ります! 」
蘭季が亮佐をなだめながら言う
「まぁまぁ落ち着いてください亮佐さんっ聖女様には凛季もついてますから! 」
蘭季の言葉に悔しそうに呟く亮佐
「ぐっ……しかし……俺が恵理先生から離れるという事はそれすなわちあの女神のような美しさに魅かれた有象無象の愚か者共から恵理先生を守れないという事! そんな事は……」
亮佐の様子を見て火亜流が声をかける
「亮佐、帰りてぇなら帰れよてめぇみたいな腰抜けは必要ねぇ」
亮佐の表情が一時停止した後ゆっくりと首が回り火亜流を睨む
「こっ……ここここ……なんだ? よく聞こえなかったな……もう一度言え貴様ァ……」
「てめぇみたいな腰抜け要らねぇから帰れ」
火亜流の言葉に亮佐の髪は怒髪天を衝く勢いで逆立ちその表情は般若を連想させる程の歪みと共に怒りの火山が噴火したように怒鳴る
「きききき貴様ァァァァッ! この俺が腰抜けだとッ!? 」
憤慨する亮佐に冷静に返す火亜流
「腰抜けじゃねーか、困ってるジジイを見捨てて"この町の問題"ってやつにビビってしっぽ撒いて逃げ帰りてぇんだろ? 」
火亜流の発言に笑いながらも怒気を込めて亮佐が言う
「ふふふははははは貴様……この俺がビビっている……? フフッ……どうやら貴様の頭は俺が想像していた以上に壊滅的な思考回路らしい……俺がそんなものにビビるわけ無いだろうがァ!? 」
「んじゃどうすんだお前」
亮佐が豪鎧に向き直り堂々と宣言する
「当然この俺も力になろう!! 亡者だろうがなんだろうが掛かってくるがいい!! この俺の力を貴様にとくと知らしめてやる! 」
蘭季が呆れた様子でため息を着く
「なんですかこのバカ犬2人は……はぁ……」
豪鎧が火亜流と亮佐を交互に向き頷きながら言う
「ウム! それでこそ閑慈乃町随一の戦士! 義宗のやつめこのような勇猛果敢な若者を寄越すとは見直したぞ! ではさっそく本題に入ろうか! 」
豪鎧は3名を座らせると霊楽町の現状について説明を始める
「実はここ最近この霊楽町では通り魔が横行していてな……」
「通り魔? 」
「ウム……昼間はご覧の通りの賑やかな街並みではあるが…この街の夜の実態はまた別の顔を持つ……まだ公にはなっていないがこの間もこの町の悪事を働く者を閉じ込めている地下牢で大量の消滅者を出した……」
「地下牢? そんなもんがあんのか? 」
「あぁ、罪人は罪を償うことがこの地獄での務めだがその罪能を持って悪事を働く不逞の輩はいつの世も絶えるものでは無い……そういった輩を反省するまで閉じ込めるための牢屋があるのだが……おい入ってくれ」
豪鎧の言葉により若い男と小さな角の生えた女性が部屋に入室する
「ワシの娘でこの町の警備隊長の沙羅紀、そして事件当日に牢番をしていたゆうきだ」
紹介された2名が名乗る
「初めまして牢獄の番を務めておりますっ "ゆうき" です! 」
「私は"沙羅紀"だ……この町の警備隊長を任されている」
質素な皮の衣服に町の門番が被っていた帽子をしている男
フードのついた皮の衣服に動きやすさ重視の軽装、薄い紫色の肌に小さく尖る角を額に生やした女
「ゆうき説明してやってくれるか」
「はい! 僕はこの町で地下牢の警備を務めているのですがあの日交代で自分が看守の役目をしておりまして、すぐ外で騒がしい音がしたので様子を見に行くと"獄党会"のやつらが何やら喧嘩騒ぎを起こしていたのでそれを止めに行ったんです」
火亜流がゆうきに質問する
「ごくとうかい? なんだそいつは」
「獄党会というのはこの町の荒くれ者が集う犯罪組織でリーダーの"獅子丸"率いる烏合の衆です」
ゆうきの発言に蘭季が思い出したように言う
「獄党会、私も噂で聞いた事があります……かなり悪質な奴らだとか」
「はい……それで奴らの喧嘩騒ぎを収めている間にたしかに鍵をかけたはずの地下牢から囚人達の悲鳴と叫び声が聞こえて……それで急いで中へ戻ると……それはもう酷い有様で……」
「殺られてたってわけか」
「はい……鉄格子に開いた様子は無く外から侵入することなど不可能な筈なのに……囚人達は首を強く絞められた痕がありまもなく消滅しました……」
「わ~~ひどい……」
「僕があの日牢から目を離さなければ……こんな事には」
亮佐がゆうきに向けて言う
「ふんっ……それをやった奴は鍵がかかった牢に侵入し鉄格子を壊すことなく中の者を殺した後誰にも見つからず逃げ仰せたとんでもない奴な訳だろう? ならむしろその場に居なかった貴様は幸運ではないか、」
豪鎧もそれに続く
「ウムその通りだお主がそんな事を気にする必要などない」
「すいません……皆さんっ……」
火亜流は話を黙ったまま聞いている
豪鎧の娘と名乗る沙羅紀が豪鎧に不満気な様子で聞く
「父上……なぜ彼らのような余所者にそんな話を? 私たち警備隊だけでは心もとないと仰るのですか? 」
豪鎧が沙羅紀に返す
「そうではないぞ沙羅紀、お前達警備隊は犯人に顔が割れていて警戒されているはずだ、そうなれば余所者である彼らこそが今はこの件の調査に相応しい」
沙羅紀は納得出来ない、と言った様子で豪鎧に反論する
「しかし父上っ! 私は……私達の町で消滅者が出たこの事態をこの町を守る我々が解決せねば気が済みません! 」
「沙羅紀よ昨夜も町の娘が深夜に通り魔に襲われたと聞いている……犯人が何者であれこれ以上被害を広げる訳にはいかん! 通り魔は必ず捕えなければならない、小さな事に拘っている場合では無いのだ! 」
父の言葉に悔しさを顕にする沙羅紀
「でも父上……私は……この町の未来をこんな奴らに」
「けっ……何が町を守るだよくだらねぇ……」
沙羅紀が火亜流を睨む
「なんだと、お前今なんと言った! 」
火亜流は強めの口調で沙羅紀に言う
「くだらねぇって言ったんだよ、町を守るだァ? そう言ってその娘とやらが町で襲われた時てめぇはどこで何をしてた? 何も守れてねぇくせに口だけは一丁前かよ」
沙羅紀の顔が強ばり角が少し大きくなる
「お、お前なんぞに……他所から来たばかりのお前なんぞにそんな事言われる筋合いはない! 」
「チッっ……気に入らねぇ……"てめぇら"さっきからよォ」
そう言って火亜流が沙羅紀に向かう所を亮佐が制する
「おいバカやめろ! 何考えてるっ何故貴様はいつもそうやって誰彼構わず噛み付くんだ! 」
「あん? 先に喧嘩売ってきたのは"コイツら"だぜ」
「……? 何を言ってるんだ貴様は……いいから落ち着けっ」
蘭季が慌てて2人に駆け寄る
「ちょっとちょっと〜2人共〜! まだ話の途中ですよ! 喧嘩なら後でやってくださいって! 」
蘭季の制止で火亜流、亮佐の両名は鎮まる
「けっ……じゃあその話の続き、とやらをさっさと続けな」
亮佐は火亜流を離す
……なんだこいつは全く……誰にでも噛み付く狂犬っぷりは今に始まった事では無いが……
……何をそんなにイラついているんだ?
豪鎧の話は続く
貴重なお時間を割いて読んで下さりありがとうございます
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