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地獄転生 〜業火の拳で取り戻す失われた記憶と贖いの冒険譚〜  作者: さくさくメロン
第一部 記憶の断片
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1話














     ーー悪いことばかりしているとーー



     ーー地獄に行っちゃうんだよーー



 ……ん……



 ーー良い行いも悪い行いも全部自分に返ってくるのーー



 ……誰だあんたは……



     ーー君はーー優しい人になってーー



 ……誰かからそんな事を言われた、俺が優しい人間に?


 ……何馬鹿な事言ってやがんだ……そんな事……


 赤髪の青年がゆっくりと真っ暗な空間を歩く


 その目は鋭く、ボロボロの布に身を包んだその姿からはただならぬ人生を歩んで来た男の風格が感じられる


 ……ここはどこだ……俺は水面を歩いてるのか……?


 真っ暗な中ただひたすら歩く、歩く度に広がる足元の波紋


 よく見ると周りには炎が揺らめいている


「火……うっ頭が痛ぇ……」


 頭を抑えてここに来るまでの事を思い出そうとする


「何も………思い出せねぇ………俺は誰だ………? 何でこんなとこにいる…? 」


 自分がどうやって過ごしてきたか、何処から来て何処へ向かおうとしてるのか、自分の名前すら何も分からなかった


 ズキンッ‥…

 

 思い出そうとすればするほど頭の中に鈍い痛みが押し寄せる


 ズキンッ……ズキンッ……

 

 ……クソがっ……何だってんだ……どうなってやがる……


 何一つ状況が理解出来ないまま歩き続けた先にそれは突然目に入った


 大きな、とても大きな門、この真っ暗な炎しかない空間でそれは目立ち過ぎるほどに目立っていた


 その門は赤く、周りには金色の派手な装飾品が飾られている


 見るものを圧倒するその門の存在感に青年は動けずにいた

 

「んだ!? こりゃ……」

 

 門がゆっくりと開く


 中にはまるで別空間のように華やかに彩られた派手さを体現した部屋が現れる、金色の装飾品、異形の怪物のような物の剥製、そしてその部屋の中心にある骨で出来た椅子に偉そうにふんぞり返る謎の人物………いや、人なのだろうか……

 

「わーお! こりゃまた凄い悪人面だ! そんなとこに居ないで入っておいでよっ! 」


 中から椅子にふんぞり返る謎の女が気さくに話しかけてくる


 ……俺を呼んでるのか? なんだこいつ……

 

 艶めいた色とりどりの派手さを詰め込んだような着物を着崩した格好、人間離れした肌の白さ、碧色の瞳、琥珀色の長い髪、そして頭から生えた5本の角……


「おーいそこのキミ!! えっ無視!? えっ…えっ!? 」


 ……罠……は無さそうか? ……


 部屋を見渡し警戒しながら中へ進む


「誰だてめぇ……ここはどこだ、何で俺はここにいる」


 荒々しさと落ち着きを同時に感じさせる、それでいて冷たさと怒気と不安を孕むような若い声で口を開く赤髪の青年に焦った様子で待ったをかける女


「ちょっと待って待って! 質問は1つずつっ! ねっ? 」

「何だこの部屋、気持ち悪ィ……お前の趣味かよ? 」


 女は部屋を見渡した後に呟く男の言葉にショックを受ける


「うっわぁ〜! ひっど〜〜〜い! 泣くよ!? アタシ泣いたらめんどくさいよ!? しばらく止まらないよ!? いいの!? 」

 

 ……うるせぇ女だ……


 イライラを声色に全面に出しながら男は口を開く


「さっきからガンガン頭が鳴っててこっちはイライラしてんだ……ふざけてねぇで知ってること教えやがれ」

「ちゃんと説明するから大丈夫っ! その前にお互い自己紹介しよっ! 」


 ……自己紹介っつっても……


 男が返事をする間も無く女は腰に手を当て堂々たる口振りで名乗りを上げる


「ふっふっふー! 聞いて驚きなさい! 私こそ! 鬼の中でも最強なのではと地上から噂される最強美少女の "鬼神(きじん)"!!っ その名も………"獅亞罹(しあら)"ちゃんよ!! 」


 突然女から飛び出した聞き慣れないワードに困惑しながら返す


「鬼だァ…? 頭大丈夫かお前… 」


 獅亞罹(しあら)と名乗る美女は憤慨した様相で叫ぶ


「大丈夫ですぅー! 本当に鬼だしなんなら鬼神なんですぅー! 偉いんですぅー! しかも最強ですぅー!!!! 」


 ……ふざけてんのかこの女は……大体"きじん"て何だ……


「ちょっと〜! 次そっちの番なんですけど〜! 」


 獅亞罹がこちらに自己紹介を求めるが男はそれを口にする事が出来ないでいた……


「俺は………分からねぇ……」


 自身が何者であるかを何一つとして思い出せない男……


 思い出そうとすれば鳴り響く頭痛……


 男の発言に獅亞罹は不思議そうに声をかける


「はい? いや自己紹介だよっ 自分の名前と素性をねっ 互いに紹介して、仲良しになりましょ〜って話ねっ 」

「んなこと分かってんだよ……そうじゃなく……俺が誰なのか分からねぇんだよ……」


 獅亞罹は騒がしい態度を停止させキョトンとした表情に変わる


「ヘッ?」

「自分がどうやって過ごしてきたか…何でこんなとこに居んのか……何も思い出せねぇ……」


 男の言葉を受け入れられない様子の獅亞罹


「アハハ〜! またまた〜……えっ……マジ? 」

「あぁ、思い出そうとすると頭が痛え」

「おっほ〜〜……えっ……じゃあ……これ説明どうすんの」

「あぁ? なんだよ説明って」

「ちょ、ちょっとタンマね!? 」


 獅亞罹がドタバタと焦った様子で椅子を降りて何やら後ろから探し物を始める


「マジ? 記憶喪失って……そういう場合のマニュアルとかどっかにないの〜!? ちょっこれどうすんのおおお!? 」


 自称最強の鬼とやらが慌てふためいた様子で何やらブツブツ言っている


「おい……何1人で騒いでんだ」

「うるさーい! アタシは案内役なんて任されることなんかほとんどないし今日だって何十年ぶりですかってくらいの案内役なんだからこういうイレギュラーなのは慣れてないの! 」


 門が開き青年を出迎えた時の余裕綽々とした佇まいが既に獅亞罹からは消え去っていた


「情けねぇ……何が最強だよ」


 騒いでいた鬼の女の動きが止まりピクリと反応する


 ……気のせいか? アイツの頭の角でかくなったような……


「な、なんですってぇぇ? 最強の鬼神であるこの獅亞罹様が……な、情け……ぐうううアンタのせいでしょうがああ! 」


 怒る様子の獅亞罹に男は淡々と続ける


「最強のくせに何も出来ねぇで騒ぐだけかよ…くだらねぇ」

「カッチーン!! やってやるわよ!? やりゃいんでしょ!? 」

「おう、なら手短に頼むぜ」


 獅亞罹はコホンッと一息つく


 先程までの取り乱した様子の顔から一転し落ち着きを取り戻し口を開く獅亞罹


「単刀直入に分かりやすく言うとここは地獄だよっ」

「は? 」

「だーかーらー地獄っ! 知らない? 」

「悪いやつが死んだら行くって……やつか? 」


 地獄…男はその響きに何故か馴染み深さと懐かしさを感じる


「ん〜まぁ大体そんな感じかなっ 正確にはちょっと違うけどね、それに地獄と言っても1度目の人生では感知出来ない概念のもう1個の地球? みたいな感じだしっ! 」


 獅亞罹の言葉に驚き目を見開く男


「なぁちょっと待てよ、なら俺は……死んだのか? 」

「そうなるねっ 」


 ……俺が死んだ? どこで? どうやって?……


 ……ダメだ……何も思い出せねぇ……


「1度目の人生をキミは終了したんだよっ! だからここにいるのっ 」


 ……1度目の人生……そして地獄……


「けっ、まぁ俺に天国なんざ似合わねぇだろうけどよォ」

「ん〜何か色々勘違いしてるみたいだからきちんと説明するねっ」

「あん? 」

 

「天国なんて存在しないよ」


 ……は?……


 ここは地獄……死んだ者が落ちると言われる奈落の底……ならば誰もが思い描くはずのもう一つの死後の世界……


 それを存在しないと言い切る獅亞罹の言葉に男は言葉を失う


「人間は死んだらみ〜んなここに来るんだよ〜! 」

「何言ってやがる、ここは地獄なんだろ? 」


 先程まで座っていた椅子に座り直し目を細めて獅亞罹が言う


「あのねっ…… 生まれてから死ぬまでの間にどんな物事にも加害者にならずに一生を終えられる人なんて存在しないのっ 犬や猫、果ては植物にだって必ず罪は存在するんだよっ 」


 ……罪……?


「1度目の人生を生きる中でキミ達はそれぞれの罪をたくさん育んできた……それを贖って償って向き合って魂を綺麗にしてそしてようやく得られるのっ "転生" の権利をっ!! 」


 ……転生、つまり2度目の人生ってやつか?


 獅亞罹がニコリと笑みを向ける


「この地獄でキミ達を裁くのはキミ達自身っ! 2度目の命に転生するために頑張ってねっ! 」


 獅亞罹の言葉を聞き男は疑問を口にする


「贖うってよォ、 具体的に何をすりゃいいんだ? 」


 男の質問に椅子の肘掛けに肘をついて返す獅亞罹


「そんなのは本人の魂しか知らないよ〜 ん〜過去の事例から分かりやすく言うと〜 ものすごく清らかで人を傷つけることなく人生を終えた魂があって、その魂に刻まれてた罪は "後悔" だったのね? 」


 ……なんだそりゃ……


「後悔だァ? それも罪なのかよ 」


 獅亞罹はそれに対しさも当然、と言ったふうに返す


「そりゃ罪だよ〜! その魂は1度目の人生のある日に道端で倒れてる子供を見つけたの、死んじゃってたんだけど 」


 ……それが罪とどう関係するってんだ……


「それのどこがそいつの罪なんだよ、そいつは何もしてねぇだろ」

「アハハ〜ホントだよね〜、でもその魂は後悔したんだよ…もし生きてる時に見つけられてたら…ってね」

「それでどうしたんだよ…」


 獅亞罹は顎に指を添え、んーと呟き続ける


「この地獄で10人くらいかな? 子供達を世話して助けていくうちに魂が納得して浄化されて転生したよっ」

「魂が納得ねぇ……よく分からねぇな」


 獅亞罹が思い出したように口を開く


「普段から周りに対して悪意を持った言動ばかりしてた魂なんか転生するのに200年もかかったりしてたよ〜」

「200年だァ!? 」

「罪っていうのは必ず魂に深く刻まれてるものだからねっ あくまでこれは1例で魂が決める納得の裁量は本人の魂にしか分からないのっ」


 ……魂……そんなもんが実在すんのか?……


「おい…罪だとか償いだとか言われてもよ、俺は自分がどんな奴だったかすら分からねぇんだぜ? どうしろってんだよ」


 男の疑問に獅亞罹もまた分からない、といった様子で答える


「そこなんだよね〜ん〜キミはまず自分の記憶を戻さなきゃねっ誰か知り合いを探してみるとかっ? 」

「知り合いか……簡単に見つかるもんなのか? 」


 獅亞罹が男へにこやかに笑いかける


「1度目の人生で刻まれた縁ってのは不思議な力があるからね〜〜こっちでも探せばすぐ出会えると思うよ〜っ まぁ結局はキミ自身がちゃんと自分の罪がなんなのか理解しなきゃ始まらないわけだけど! 」


 ……縁……そんなもんが俺に……?


 男は遠くを見つめて呟く


「本当に俺に罪なんてあんのかねぇ」

「あぁそれなら大丈夫だよっ 」

「あ?」

「キミは間違いなく極悪人の重罪人だから 」


 獅亞罹は不敵な笑みを浮かべて言う


 極悪人? 重罪人? 俺が……?


「何でんなことがお前に分かるんだよ……」

「だって〜っ アタシのとこに来てるんだもんっ そりゃそうでしょ〜っ」


 ……何が可笑しいんだこの女……


「わざわざアタシの門が開くって事はキミ〜 "相当な腕っぷしの強さ" を持った "問題児" くんって事だも〜ん」

「俺が問題児……? 」


 獅亞罹は状況を理解出来ていない様子の男に続け様に言う


「あのねっ基本的に死んだキミ達を案内するのは獄卒見習いの子達で、もっと事務的に大人数をまとめてサッサッってやっちゃうの 」


 ……俺が死ぬ前は問題児?……


 ……くそっ……何で何も思い出せねぇんだ…


「記憶喪失って時点でかなり訳ありっぽいし〜それにもしかしたらキミは……」


 5本の角が生えた女が男を覗き込む


閻魔様(えんまさま)の意思が働いてここに居るのかもねっ 」

「エンマ……」


 ーー悪いことばかりしていると地獄に行っちゃうんだよーー


 ズキンッ


 頭の中でまた鈍い痛みが鳴る


 ーー閻魔様に舌を抜かれちゃったりするんだってーー


 ズキンッズキンッ


 ……っ……まただ……誰だ……誰なんだあんたは……


 ーー火亜流(かある)くんーー君はーー優しい人になってーー


 ……!? ……火亜流? それが……俺の名前……?


 突如脳裏に過った自身を呼ぶ謎の女の声


 ……名前……そうだ……たしか俺はそう呼ばれていた気がする


 ……火亜流……


「もしも〜し お〜い 」


 獅亞罹の呼びかけにはっとする


「ん……あぁ、それでそのエンマさまって奴はお前らのボスかなんかか? 」

「ん〜悪いけど閻魔様についてはアタシからは何も言えないかなっ ごめんね〜 」

「けっまぁどうでもいいけどよォ」

「反応薄いな〜〜クール系? えっ クール系目指してる? 」


 獅亞罹が顔を突き出しながらからかうように首を左右に振る


「るせぇな……おい、女 」

「ん〜? も〜〜 違う違うっ! アタシの事は獅亞罹ちゃんってちゃん付けで呼んでくれないとっ! 」


 獅亞罹の発言に冷たく返す男


「呼ばねーよ……それより、火亜流っつーらしい俺の名前」

「おっ? 何か思い出せたのっ? 」


 身を乗り出し瞳を輝かせる獅亞罹に下を向き胸に手を当てる男


「いや何も思い出せちゃいねぇが、たぶん名前は火亜流だ」

「へ〜っ! カールっ! いい名前じゃないのっ よろしくねっ カールくん! 」

「カールじゃねぇよ! か あ る だ 」

「うんうんっ! カールくんねっ! 」


 訂正を聞き入れずに話を進めようとする獅亞罹に呆れた様子の火亜流


「はぁ……まぁ俺が本当に極悪人だってんなら償いなんざ何百年かかるか分からねぇしひとまず無視で知り合い探すしかねぇか」


 男の発言にぶっきらぼうに返す獅亞罹


「"亡者" になってもいいならそれでいいと思うよ〜」

「ん?もうじゃ? 」


 またしても火亜流の知らない単語が登場し疑問を表情に出す


 そんな火亜流に獅亞罹が淡々と語る


「うん亡者、魂の穢れや後悔をずーっと放置したままにしておくと理性を無くした化け物になっちゃうから記憶喪失は早くなんとかした方がいいよ〜っ あっこれこれアタシが退治した中で1番強かった亡者」


 そう言って獅亞罹は部屋に飾られた異形の怪物の剥製を指さす


 二足歩行であるという事以外は人間だった頃の面影は一切なく下半身は痩せこけ両手の爪は伸びた刀のような形状をしておりその顔は人間…ではなく猫型動物のそれだった


「こいつが亡者……罪を償わないと俺もこうなるってのか? 」


 剥製を見つめる火亜流に獅亞罹が返す


「なっちゃうだろうね〜この子はどこにでも居る普通の殺人鬼だったんだけど地獄に来ても通り魔のように手当り次第に人を殺しちゃう困った悪い子でね〜っ 気付いたらこの有様っ 」


 ……殺人鬼……か


「冗談じゃねぇ……これマジで人間なのかよ……」


 獅亞罹が指で説明事項を一つずつ数えるように弾いて言う


「この地獄に存在する"死"って概念はいくつかあってねっ 1つは消滅、2つ目は転生、3つ目が亡者化、だねっ」


 ……死の概念……


「消滅ってのはあれか、寿命とかか? 」


 火亜流の発言に眉を下げて続ける獅亞罹


「違う違うっ 言って無かったね〜この地獄に寿命なんて概念は存在しないよっ ある一定の所からは歳を取らないから基本的には1度目の人生で死んだ姿のままっ!例外はあるけどねっ 」


 ……頭がこんがらがってきたぜ……歳を取らねぇだと……


「その例外ってのは…… 」

「ん〜例えば幼い子供や赤ちゃんが地獄に来た場合は人間で言うところの20歳くらいまでは成長するよ! そこからは老いないけど! 」


 考え込むように地面を見る火亜流……


 獅亞罹は楽しげに続ける


「でも不老であって不死ではないからねっ 亡者に殺されたり誰かに殺されたりしたら消滅っ 早い話がそういうこと! 」


 ……何もしねぇままなら亡者……襲われて殺られたら消滅……


 ……知り合いと運良く出会えたとしても罪が分からなきゃどうしようもねぇ……


「記憶喪失の俺は結構やべぇ訳か……」

「だねっ! かなりの詰み具合! 」


 獅亞罹が伸びをする


「ヨシッ!これで大体の説明は終わったかな! じゃ行こっか! 」


 手をパチンッと叩いて一通りの説明を終えたことを元気よく告げる


「ほとんどの話がよく分からなかったがな」

「も〜ちゃんと聞いてたの〜? 」

「これ以上は悪ぃが勘弁してくれよ、頭が爆発しそうだぜ」

「何か忘れてるような気もするんだけど………ん〜まぁいいや! じゃあ送るねっ! 」

「おう、じゃあ頼むわ」


 考え込んだ様子から一転カラリと思考を切り替えた表情に獅亞罹が驚き言う


「ノリ軽っ! これからカールくんの贖罪の大冒険ストーリーが始まるんだよ! もうちょっとなんかないの? 」

「結局行ってみねぇと分かんねぇしな…」


 火亜流の言葉に獅亞罹も同調する


「まぁそれもそうだね! 久々の案内役楽しかった〜っ! じゃあカールくんが亡者になっちゃったらアタシが責任持って殺しに行ってあげるねっ! 」


 ……俺が亡者に……か


「おう、そん時は頼むぜ」


 火亜流の返事は無視して何やら地図の様なものと睨めっこしながらブツブツ言っている獅亞罹


「ん〜どこに送ろうかな〜ここには初見殺しの亡者がいるし〜ここは未だに人と鬼で戦争してるし〜う〜ん……」


 そんな獅亞罹にふと浮かんだ疑問を口にする火亜流


「そういやお前、俺を送るってどうやってだ? 扉なんてこの入ってきた門くらいしか見当たらねぇが」

「見てのお楽しみだよっ!もう適当にランダムでいいや! いでよ! 地獄門! 」


 獅亞罹と俺の間に大きな穴が開く


「おい、待て地獄門てお前……これただ穴が開いただけじゃねぇか、てかなんだここ……空の上か? あと今お前適当にって言ったか? 」


 いつの間に移動したのか穴に気を取られているうちに背後に回っていた獅亞罹


「じゃあカールくん! 勢いよく行ってみよ〜!! えいっ」

「おいちょ待っ」


 ドンッと押され身体は穴の中心部に吸い込まれる


「て、てめぇ……っ」


 ニヒッと笑みを浮かべこちらに手を振る獅亞罹


「このクソ女あああてめええぇぇぇ……」


 落下と共に火亜流の声は遠くなっていく


「じゃあね〜〜! 元気でね〜〜! 」

「覚えてやがれええあのクソ女あああ」


 人の身で手ぶらの状態から空中の落下に抗う術はない


 落下しながらついに到達するであろう地面が視界に映る、見渡す限り木と岩そしてわずかに見える川のような水面


「おいおいおいおいいいマジかこれええざけんなあああ」


 地面と衝突するわずか数十メートル上空で突如それは現れる


 それは赤 というより赫色 燃える鉄のような 赤より赤い赫色の浮かび上がる紋章


 ……んだこれは……


      ーー身体がそれに触れるーー


    ーー熱いーー焼けるーー痛みーー苦しいーー


   ーー呼吸がっーー熱いーー苦しいーー苦しいーー


     ーーあの時ーーどうしてーー俺はーー



 ……ぐあっ!


 ……なんだ今のイメージは? 今の模様みたいなやつは? あれを潜ったのか?


 ……今の一瞬に感じたあれはなんだ……俺の後悔……?


 目にも止まらぬ速度で落下していた身体がゆっくり地面へと降り立つ。


 見渡す限りの木、草、聞こえる鳥の鳴き声


「はあっはあっ……んだよ……さっきのは……」


 身体が焼けるようなひび割れていくような痛みと少しの痺れがまだ残ってる


「んで、ここはどこだ……ちきしょうっどうしろってんだ……! 」


『もう適当にランダムでいいや!』


「くっそがああのアホ女マジで適当に俺を落としやがったのか覚えてやがれ、次会ったらマジで泣かす」



 ガシャン……ガシャン……


 何かがこちらに近付いてくる音……


「あ? 誰かいんのか? ちょうど良かったぜ……なあ……あ? 」


 目の前に現れたそれは漆黒の甲冑(かっちゅう)を身にまとった武士のような男……いや怪物


 身の丈は2メートルを超え、右腕は何にも守られておらず包帯が巻かれておりその手に持つ刀、日本刀と呼ばれるそれは妖あやしい光を放っていた


 その顔は武士(もののふ)が着ける面具を模したような黒い煙で覆われており怒っているのか笑っているのかも定かではない


 何より目につくのはその怪物が放つドス黒い禍々しい闘気、オーラのようなもの 殺意 狂気 憤怒 未練 妄執 全てが入り交じったようなそれは男が修羅を生きた者であると一目見ただけで分からせる


「は、はは……笑っちまうぜ……なんの冗談だよこりゃ」

 

 ……思考が追いつかねぇ……なんだよこりゃ


 武者が唸る


「殿゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛な゛に゛ゆ゛え゛え゛え゛殿゛お゛お゛

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛く゛あ゛あ゛あ゛き゛あ゛あ゛」


 刹那 それはこちらが瞬きする間もなく一瞬の出来事だった


 目の前に神速の如き速さで間合いを詰めその手に持った刀を振り下ろす


 斬られる、脳がそう理解したと同時に足が動く


「うっ!!! 」


 ギリギリのとこで回避したが目先と刀との距離はわずか数ミリで振り下ろされ冷や汗が止まらない


 心臓の鼓動が速まる


「はっ……随分なご挨拶だなァおい……」


 ……訳の分からねぇ場所に来たかと思えばいきなり突き落とされてよォ……俺が死んだだの 転生だの 罪だの



 ……んで終いにゃ刀振り回すバケモンにいきなり襲われて……


「てめぇらマジでいい加減にしやがれってんだッ」


 この数分で起きた思考の追いつかない現実に

 溜め込んだ怒りが爆発した


「上等だてめぇッ! やれるもんならやってみやがれ相手してやるよッ! 」





 貴重なお時間を割いて読んでくださりありがとうございます


 書き物を投稿するのは初めてなので色々と酷い部分があるかと思われます……申し訳ありません


 そしてこの作品と私を見つけて下さりありがとうございます


 これから地道に完成まで続けていこうと思ってます


 気に入って下さればぜひお気軽に感想やいいね下さい!


 1日1話は必ず投稿しようと思っております


 見て頂ける皆様のお時間を有意義なものに出来るよう頑張っていきます!


 何卒応援よろしくお願いいたします!

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