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【天上院姫のターン】あなたは神を信じますか?

◆打ち手の世界◆


 楽園エデン。天上院姫は天上院咲に対して最初の一手を打つ。

「じゃあ初手は私のターンからもらうぞ、この世界の概要を構築しないといけないからな」


◆駒の世界:天上院姫のターン◆


 あなたは神を信じますか?

「うちは信じる、なんか居たら面白そうだから」

 闇の中、浮遊超気はこの宗教めいた言葉から目を覚ます。深い眠りについていて、それが目覚めと共に自身の自我は覚醒した。

 浮遊超気ふゆうたつき、12歳男。彼は中学1年生、学校の授業中に目が覚めた。

「ちょっと超気、何寝てるの。授業中でしょ?」

 学校の教室、超気の右隣の席に座るのは。歌峠夜鈴うたげよすず、12歳女。同じく中学1年生。

 彼ら彼女らは、刺激のない。毎日がただ過ぎ去ってゆく。くだらない日常を謳歌していた。そう、この日を境に日本のとある学校の平穏は崩れ去る。


 学校を覆う何者かも解らない【結界】が中学校とグラウンドを大きく囲む。まるで、外部隠蔽工作をするために作られた。クローズドサークルの出来上がりだった。この世界の時間はあっという間に停止した。

 しかし、その中で動ける人物が2人居た。浮遊超気と歌峠夜鈴である。彼ら2人は慌てて、外へ出て。周りがどうなったのか、知らない光景に右往左往する。そこへ唐突に【敵】が現れた。

「初めまして! 私の名前はクラウン! 神・ミュウ様の命により! あなた達を排除します!」

 唐突に命の危険に出会うがその実感は無い。何せ2人は普通の中学生、スポーツ的な運動には優れているが。生死を賭けた決闘には無頓着だった。このクラウンの言っている【排除】という言葉にも現実味が無かった。

 夜鈴はクラウンに駆け寄り、注意する。

「ちょっとあなたがこれの原因!? さっさと元に戻しなさいよね!」

「夜鈴! 危ねえ!」

 超気が危険信号を発したが、もう遅い。次の瞬間、【漆黒の闇火やみび】の光線を心臓に放たれ。貫き、一気に死の恐怖。危機感が超気に募った。歌峠夜鈴はこの時、絶命する。クラウンは警告を無視した相手に容赦はしなかった。

「だから排除するって言ったでしょ?」

「夜鈴!? 夜鈴ぅううううう――――!!」

 その時、その叫びがキーとなったのか。トリガーとなったのかは解らない。だが、腕時計型の神器が光り。装着された。そして使い方が脳内に一瞬でインプットされる。

「何だこれ? でも、使い方が……解る!」

 そうして、おもむろに腕時計型の神器を天に掲げ。腕時計が白く輝きだす。

「心のエレメンタル! 名は……『誇り』!」

 全身を真っ白な光に包まれた後、【緋色の光風こうふう】が吹き荒れた。瞬間、歌峠夜鈴の時間が巻き戻る。否、【時間が逆転した】。その場所だけ、絶命・死の恐怖・貫き・光線。と順々に巻き戻り、夜鈴は無傷で立ち尽くした。

 敵であるクラウンという超常現象でさえも、知らない事象に驚愕する。

「な、何をした! お前今何をした!?」

 超気はただ真実だけを言う。

「選択しただけだ! 罪悪感は消えたか? 信じるものは救われたか!?」

「な……!」

「なら、これで最後だ!」

 緋色の光風が圧縮され、強力な反発エネルギーが球状に凝縮されてゆく。そしてその力がグーパンチと共に敵めがけて解放される!

「決着のバースト!」

 次の瞬間、クラウンは白目をむいて気絶した。


 その時、クラウンの【漆黒の闇火】は夜鈴の方へ能力が移った。

「何? この力は……?」

 そして、使い方が脳内に流れ込む。夜鈴は理解した。この能力の使い方と結界の解除の仕方を。そんな、感傷に浸る間もなく。吹き飛ばされたクラウンが空中で【誰か】に抱きかかえられる。

「お前、誰だ!?」

「親玉かしら?」

 決着がついたと思った超気がとっさに臨戦態勢に入る。ただものならぬ気配にプレシャーを感じる超気と夜鈴。

「部下がすまない事をした、だが。これも一種の様式美だと思って勘弁してほしいのじゃ」

 一拍置いてから、声高らかに彼女は宣言した。

「私の名前は神・ミュウ! この世界『エレメンタルワールド』の創造主である! 喜べ! いきなりラスボスのお出ましだぞ!」

 この世の神&創造主&ラスボスのお出ましである。背には天体のような惑星が2つクルクルと回りながら神様を中心に動き続けている。

「さあ、じゃあ始めようか。『神のゲーム』選ばれし者よ! 第3回エレメンタルマスター大会の開催じゃ」

「はぁ!? なに言ってやがる!?」

「私死にかけたんですけど!? いきなり大会って何!?」

 神・ミュウは不敵な笑みをニヤリと表現してから。言う。

「エレメンタルマスター承認試験じゃよ超気。のう、第2回エレメンタルマスター大会優勝者。マスター夜鈴よ」

「え、は!?」

 驚愕と共に、何を言っているのか判らないという表情を浮かべる夜鈴。その反応を見て神・ミュウはきょとんと頭の上に疑問文を浮かばせる。

「ふむ、どうやら記憶が無いようじゃな。まあいい、新人のつもりでかかってこい。軽く戦ってやるよ」 

 結界は持続されたまま時が止まっている。気絶したクラウンは置いておいて。動けるのは超気、夜鈴、神・ミュウのみである。否、どうやら今この時をもって動けるようになった存在が居るようだ。


 その名も、天上院咲である。


◆打ち手の世界◆


 楽園エデン。そこには対等な立ち位置で、盤面を眺めている女神が2人いた。天上院咲は「なるほど、こうなるのね」とうなだれる。

 まず、『原典の棋譜』から変わった変更点がいくつかある。物語の展開スピードも、文字の練度も速い。はっきり言って『原典の棋譜』とかなり変わっている。

 最初から変わっている点を順番にあげてゆくと。


・浮遊超気と歌峠夜鈴の年齢が10歳から12歳になっている。

・2人は家の曲がり角からの出会いではなく、最初から学校の教室からスタート。

・2人の能力が最初からただの【風】と【神経】じゃなく、【緋色の光風】と【漆黒の闇火】となっている。

・クラウンはほぼ変わっていないが、最初の2000文字以内で瞬殺されて。いきなり神・ミュウ、ラスボスが出てきている。

・第2回の大会のお話ではなく、第3回の大会に変更され。更に夜鈴は既にマスターになり。マスター承認試験が超気に課せられて終わる。しかも記憶がない。

・腕時計型神器が、いきなり心のエレメンタルを使えるようになり。光って能力が開花するだけで服装が私服のまま変わらない。簡単に言うと、最初からスーパ〇サイヤ人に成れる所からスタートしてる。

・ついでに言うと、神・ミュウは天上院姫と同一人物なので。いきなり姫と咲が出会う形となっている。


 咲と姫はそれぞれ盤面ごしに意見を交換する。

「確かに『原典の棋譜』を観る限り。クラウンが倒されて終わってるけど。ここは4人組だったはずなのにまだ超気チームは2人しか出てきてないね」

「私の場面構成。今回の一手目は以上だ。次は咲のターンだ、ターン制だからそこは厳守するぞ。今のところは」

 最初の段階でここまで違ってくるということは。今後もかなり変わってくるということだけは解る。ところが姫が咲に助言する。

「アドバイスするなら、物語は変わったとしても人間の、人物像の根幹はよほどのことが無い限り変わらないということだ」

「というと?」

「例えば、咲が正義の勇者から悪の魔王に、物語上ジョブチェンジしたとしても。根本となるエンジョイプレイは変わらないと言うことじゃ」

「あぁ、なるほど」

 姫は不敵な笑みで「じゃが」とこれまでの物語を否定する。

「私は物語を整え、悪化させてゆくのが主な指し手じゃ。私のターンは物語が悪化すると思って覚悟しておいた方がええぞ」

「何で、そんな有益な情報を一手目から教えてくれるの?」

「それはお前が、我が最愛の妹だからじゃよ。他の好感度なしの相手にはここまでのヒントはたぶん出さない」

 たぶん、らしい。

「んじゃ、咲のターンどうぞなのじゃ」

 咲は自陣の駒を手に取って動かす。それは恐る恐るだがしっかりとした指し手を指せる自信が見え隠れしていた。

「なら、……私は。……こうだ!」

 パチン。

 盤上に女神、天上院咲の駒が綺麗な音色を立てて響いた。

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