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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
98/114

イケメン


....「はっ?」



王城の屋上に集まった者たちの中から

間抜けな声があがった


ノヴァを見上げるすべての人々が感じたのは

唐突に湧き上がる敵意


まるでこの王都を覆い、

さらに世界中を覆いつくすような

邪悪な敵意だった



「ある意味、これもタジマコヘイさんの

 一部であると言えるだろう...

 あの人がこの世界に残したものと、

 ノヴァは表裏一体なんだ。

 あの人が、生前、ずっと気にしていたことだ

 

 皮肉にも、ノヴァがあの人の外見を纏って

 こうして、俺たちに現実を突きつけているのさ」



ディックソンの念話を聞きながら、マックスは

頷いた



「ああ、あなたの言いたいことはよく分かる

 タジマコヘイがもたらしたものは

 この世界に無限の可能性を保障する偉大な力だ

 

 でも際限なく強力な力を手に入れた者は

 自らの判断を疑問なく弱者に

 押し付けようとして、

 そこには、断絶があるだけだ。

 もはや、弱者の都合も、その気持ちも

 ノヴァにとっては気に掛ける価値すらないものだ

 

 おそらく、タジマコヘイは、ノヴァのように

 たった一つの存在が他を突き放す力を持ち

 弱者と断絶することを最も恐れていたのでは

 ないかな?

 なんとなく、俺には彼の気持ちが

 わかる気がする」



そう、自分だって、現にウォーヘッドとして

人間の範疇をはるかに超えた力を手にしている


常に強敵と戦ってきて、もっと力が欲しいと

思ってきた

しかし、同時に自らの力に思い悩んできた


マックスにとって、タジマコヘイは

身近に感じられる存在なのだ


しかし、マックスはポツリとつぶやいたのだった


 

「それにしても、こんな外見だったんだな、

 タジマコヘイって...

...もっとマシなものかと、

 せめて普通レベルかと..」



マックスは巨大な黄金色の

ドラゴンの背に乗っていた


その少し後ろに、同じくらい巨大な黒色の

ドラゴンが続く


黄金竜スターチェイサーと

暗黒竜セルフトークの、

2匹のグレートドラゴンを先頭に、

ウォーヘッドたちを乗せたフーセンドラゴンと、

竜騎士を乗せたレッドドラゴン、

そして、様々な種類のドラゴンたちが

王都の上空を、王城に向けて突き進んでいた


唐突に出現したドラゴン軍団に、人々は

恐怖ではなく、むしろ安心感を覚えた


王城の上空に浮かぶ、緑色のローブを

纏った、緑っぽい色の髪の巨大なキモメン。

人間を滅ぼすと宣言し、世界を理不尽な敵意で

飲み込もうとするそれに、

悠然と立ち向かっていっているからだ


まあ、地上からは、ドラゴンに乗っている

ウォーヘッドたちの姿は見えないのは

仕方のないことなのだが、

もしも美男美女ぞろいの彼らの姿が

見えていたならば

そのルックスだけで善と悪が一目瞭然だったろう



王城の屋上で、クラウディア姫が言った



「そんな!一体、何の権利があって、あなたは

 人間を滅ぼすというのですか?

 一体、私たちがあなたに何をしたというの?」



しかし、上空のノヴァが答えた



「力を持つ者の責任として、私は

 この世界の脅威である人間を滅ぼすのだ!

 君らは全く理解できない存在だ、

 数だけは多いが、短い命に弱い肉体、

 なのになんでこれほど制御ができないのだ?

 なぜ、力ある私に依存しないのだ?

 しかも、君らは古い神々からすべての恩恵を

 授かっている。


 やがて君たちの中からメシアが

 出現するのだろう


 なぜ、君たちが選ばれたのだ?」



ノヴァはそのキモい顔面を憎悪にゆがめ

眼下の粒のような人間たちを睨んだ



「なぜだ、なぜ人間が選ばれたのだ!

 いや、私のような圧倒的な力を有する存在

 こそがこの世界を管理すべきなのだ。

 そのためには、人間という不安定要素を 

 消し去る必要があるのだ」



ノヴァが怒りに任せて放ったエネルギー波が

王城の屋上の者たちに迫る


しかし、魔王ハーグが一同の前に立ちはだかり、

シールドを作った


クラウディア姫が言った



「魔王ハーグ様!!」



魔王ハーグの表情は真剣で、それは在りし日の

マクシミリアン.シェルのようだった。

欠点である垂れ眉が今や、強く吊り上がり、

青々とした髭の剃り跡のある顎を

力強く噛みしめている。

頭の両側から生えた巨大な角は、紛れもなく

魔族の上位種族である証


タジマコヘイの外見を持つノヴァとの対比が

魔王ハーグを必要以上にハンサムに見せていた

 

ノヴァが、ほとんど無意識的に放った

エネルギー波、

人間で言えば、荒い鼻息のようなものだ


魔王ハーグのシールドは、そのエネルギー波を

かろうじて食い止めた


すかさず、エルフの族長と、メシア教の教皇が

防御魔法を発動させた



「ぐはは、無駄なことだ!

 私を止めることなぞ、この地上界の者たちには

 不可能なんだ、

 それを、今、思い知らせてやる」



そう言うと、ノヴァは王城の屋上へと

降下していった

全長30メートル級の巨人がどんどん迫ってくる


そして、巨大な手が突き出された


魔法の防壁を紙のように突き破って、その手は

クラウディア姫を掴んだ。

そして、巨大な手の中にすっぽりと包まれた

クラウディア姫を、

ノヴァは自らの眼前に持っていった


グランヘルム3世が、悲痛な叫びを上げている。

リーンロット8世は、ヘナヘナと腰を抜かし、

ラインゲル2世は、後ずさりしていた。

メシア教の教皇が、震えながら祈りの言葉を

つぶやいている。


人間世界の最高権力者たちは、

まったく成すすべもなく、目の前の光景を

ただ、見ているだけだ


姫の前には、あまりにもキモい顔がドアップで

迫ってきていた


サディスティックとも言える笑みを浮かべながら

ノヴァが、クラウディア姫に言った



「どうだ、私をイケメンだと言ってみろ」










 

 




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