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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
96/114

ノヴァ2

「おーい、聞こえるかへリントン、

 俺だ、ディックソンだ!

 今、俺と勇者マックスたちは

 西海沿岸の都市レイデンに居て、

 プラウダール体制の侵攻を食い止めた。

 こちらは使徒を7体倒して1体が行方不明だ、

 残っているのはヌルーン王国の

 王都に居る1体だけだろう。

 それで、行方不明になった1体の

 使徒についてなんだが、

 その件で話があるんだが」



ふいに、へリントンの座席のほうから

声が聞こえてきた


エーリスは、ワインを飲みながら言った



「この声を聞くのは、76年ぶりくらいかしら」



スオムも食事を続けながら言った



「一年も地上界をほっつき歩いて

 ようやく、私たちにコンタクトしてきたわね」



へリントンは苦笑いして言った



「使徒たちに傍受される恐れがあるから

 今まで通信を控えていたんだ、仕方ないさ」



へリントンは、足元に置いた荷物の中から

メインカメラを取り出した。

そして、応答ボタンを押して言った



「ああディックソン、久しぶりだ、

 王都でも使徒は倒されたぜ!

 これでようやく奴らの脅威も去った。

 マナ結晶のことだろうが、積る話だ

 まずは、お互いに状況を報告しあおう」



つい、エーリスが言った



「久しぶりね、ディックソン...

 ええっと、その、本当に..久しぶり、

 元気そうで安心した。

 ええ、要は...私が居ることでいろいろと

 察しがつくでしょう?」



しばらく、ディックソンは

言葉が詰まってしまっていた

 

 

そして、スオムは見逃さなかった


エーリスのフードを被った頭部は両側が

上に向けて少し膨らんでおり、

それは神獣族特有の獣耳の存在を示していた。


その膨らんだフードの部分が少ししぼんだのだ


おそらくは彼女の獣耳が途中でだらんと

折れ下がってしまっているのだろう



(ほんと、神獣族のキュートな欠点ね。

 でも、あんな薄汚い豚のような性犯罪者には

 あなたのその反応はもったいないわよ)



密かに微笑むスオムであった



///////////////////////////////////////



....そして、時は過ぎて....



スオムは、ハイエルフ評議会の議場に立っていた



「結局、ノヴァが下した結論は

 人類の滅亡でした」



並びいるハイエルフの評議員たちがシーンとなる

 


「ノヴァは、王都の上空に出現しました。

 そして、我々の手の届かぬ、はるかなる上空に

 昇っていったのです。

 そう、星界と呼ばれる、大気さえ無い超高空に。

 

 星界には、神々が世界を創造したときに

 生じた欠片が数多く漂っています


 ノヴァは、それらをその身に纏ったのです」



スオムは皆をしばらく見渡して言った



「こうして大質量を身に纏った理由は

 お分かりでしょう?」



こちらを睨みつけるように見返してくるのは

評議会の古老たち



スオムは、眼鏡の淵を少し触って続けた



「つまりは、地上に向けて大質量を纏って

 落下することで、その膨大な運動エネルギーは

 地上界の生物をすべて滅ぼします。

 まさに、成すすべもなく一瞬で」



ハイエルフの評議員たちは、その絶望的な

光景を想像して身震いした


ふいに、古老の一人が立ち上がって

大袈裟な身振りで肩をすくめて言った



「なるほど、その恐るべき事態を

 君たちは招いたわけだな!

 少なくとも原因の一端を担ったのは確かだろう

 

 タジマコヘイ.チルドレンの者たちが

 独善で行った行為は、すんでのところで

 地上界を滅ぼすところであった。


 まあ、例の、神の腕を持つ娘の力に

 頼ったのであろうが...」

 


エーリスの存在など、ハイエルフの評議会は

把握して当然だろう


さらに、彼はがなり立てた



「しかも、君らはヴァンパイア.ロードの

 第一人者を、お仕置きボックスに

 押し込んだと言うではないか!

 これは由々しき外交問題に発展するぞ

 

 もう、すでにヴァンパイア.ロードの政体から

 問い合わせが殺到しておる!

 このような事態を招きおって

 まことにハイエルフらしからぬ

 性急で迂闊であることよ、

 まさにチルドレンではないか」



スオムの空色の瞳は、眼鏡越しにまっすぐに

笑う古老たちを見つめた



「あなた方もまとめてお仕置きボックスに

 押し込むべきだと私は仲間たちに

 提案したのですが

 賢明な彼らはそれを却下しました。

 

 しかし、未だに私は、高慢の塊のような

 あなた方にはお仕置きボックスに入ることを

 お勧めいたします」



古老が憤慨して言った



「タジマコヘイ.チルドレンの長よ、

 君は、タジマコヘイの

 遺産を引き継いだに過ぎぬ!

 

 偶然に転がり込んできた幸運の上に

 得意げに腰かけて

 我々を見下ろし愚弄するなぞ

 許されぬことぞ!


 る、許..許さ...る許さん!」



しかし、スオムに味方する派閥のハイエルフたちが

次々と立ち上がって抗議の声を上げた



「偶然の幸運とおっしゃるのか!

 否、すべてはタジマコヘイ氏と共に

 我々が力を尽くして築き上げてきたのですぞ。

 あなたこそ、我々を愚弄するなぞ

 許され、許...る許されぬ!!」



スオムは大きく咳払いをした


眼鏡をかけなおし、

流れるようなプラチナブロンドの

長い髪を片手でかきあげた



「あなた方は少々、誤解してらっしゃいますね。

 ノヴァは人間を絶滅させようとしましたが、

 それを食い止めたのは私たちではないのです

 

 ええ、それを成し遂げたのは、当の人間なのです!

 

 それでは御覧ください、彼らの偉業を!」




...スオムは皆の前で投影魔法を使ったのだった




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