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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
95/114

ノヴァ

王城の大広間では、グランヘルム王と

ジェネラルが、それぞれズボンとトランクスを

与えられていた


クローディス大公が言った



「あの眼鏡をかけたハイエルフの女性と

 ヴァンパイア.ロードの女性は、

 かつて勇者マルスと共にこの世界を救った

 古の英雄で間違いないでしょうな、

 伝えられている通りの外見でありましたから。


 はるか数百年の時を経て、再びこの世界を

 救いに来てくれたのですな。

 そして、我が娘のマリアンヌが申すには

 あの残りの2人のハイエルフは、

 隔離界から来て、しばらく勇者マックスと

 行動を共にしていたそうです。

 しかし、美しいローブを纏った小柄な

 女性らしきお方は何者なのか分かりません。

 おそらくは隔離界に住む種族なのでしょうが

 異形の右腕を持っておりました」



グランヘルム王が言った



「隔離界からの訪問者たちか....

 彼らは、おそらくは我々が立ち上がる時を

 待っていたのであろう。

 あくまで、決断は我々、人間の意思に委ねて

 いたのであろうな。


 クローディス大公、ジェネラル、そして

 勇敢なるウォーヘッドたちよ、

 そなたらのおかげだ!


 余や官僚たちのように、目の前の富と権力に

 目がくらんで人間としての尊厳を

 売り払おうとしていた愚か者どもと違い、

 誠にそなたらは最初から常に

 人間の誇りを体現しておった。

 余の目が覚めたのはそなたらのおかげだ、

 改めて感謝いたそう」



ジェネラルが言った



「我が王よ、あなた様のご決断がこの世界と

 我々を救ってくださったのです。

 最終的な道をお示しになるのが

 あなた様のお役目でございます、

 我々はあくまでもその道を突き進むだけ

 

 そして、何よりも勇者マックス一行の

 活躍がなければ、我々もこうして

 立ち上がることが出来なかったでしょう」



今や、グランヘルム王の両隣には、

クローディス大公とジェネラルが控えている


それは、まるで昔に戻ったかのようだった。

 

大広間で、王の前にズラリと整列する

貴族や大使たちの中から、

クラウディア姫が進み出て、王の前に跪いた



「恐れながらお父様、

 ルーン内海諸国の王様方や

 ザウドマン帝国の魔王ハーグ様を

 お招きしての会議が、すぐ間近に

 迫ってきております。

 そのお方々に対して、今日の出来事を

 いかように説明なさるおつもりなの

 でしょう?」



グランヘルム王は皆を見渡して言った



「うむ、余はプラウダール体制の首脳たちに

 宣言するだろう。

 これからは、この体制は我々、地上界の

 者だけで運営していくつもりであるとな。

 

 強大な力による服従ではなく、

 各々の意思による協力によって

 プラウダール体制は一新されるのだ!

 

 もはや我々は、自分たちの属する国や民族を

 超えた視点を持つ必要があるのかもしれない。

 その一歩として、プラウダール体制は

 存続させていこうと思うておる」



クローディス大公が言った



「グランヘルム王よ、あなた様はご自身を

 凡人であるとおっしゃっていたが、

 私にはそうは思えません!

 それは、この場の全員が

 同意することでありましょう。

 かつて、これほど壮大にして理にかなった

 道をお示しになった君主は

 おられませなんだぞ」



まさに、王の前の全員が熱いまなざしを注いでいた


特に、さっきまで下半身フルチンなのを

激怒していたクラウディア姫は、

グランヘルム王とジェネラルに優しい微笑みを

向けていた


 

 

///////////////////////////////////////////



 

王城の麓の裏通り沿いにある

こじんまりとした宿屋に皆は戻ってきた。

当然、王城から城下町まで歩いてきたわけではない


宿の女将にとって、5人の客は、今日も一日中

部屋に籠っていると思っているだろう


昼食が出来たことを知らせるベルを鳴らす


何食わぬ顔で、この宿を貸し切っている5人の客が

ワサワサと降りてきた



「ビッグボスさん、今日は朝市でいいホウレン草が

 手に入りましたよ。

 そういえばメイヤーさん、乾燥シジミがそろそろ

 切れそうです、なかなかここでは手に入らなくて。

 でも、あなた方ともそろそろお別れですね、

 本当に名残惜しいですわ」



ビッグボスと呼ばれた、トゲトゲしいマントを

羽織った顔色のすぐれない黒っぽい銀髪の女性、

つまりマリーは女将に微笑んだ

流暢な、ルーンの共通語で返す



「ありがとう、宿をずっと貸し切っちゃって迷惑

 をかけたわね。

 本当に居心地の良い宿屋だったわ、

 私もここを去るのが名残惜しいわよ」



メイヤーと呼ばれた、流れるような衣装を纏い

長身で眼鏡をかけたプラチナブロンドの女性、

つまりスオムは言った。

やはり、流暢なルーンの共通語だ



「私たちは、遅くとも今日の夕方までには、

 ここをお暇するでしょう。

 でも...そうね、夕食は頂いておこうかしら?

本当に、女将さんの美味しい料理と

 お別れするのは残念です」



5人はテーブルを囲った


ビッグボス用に作ったホウレン草定食を

運びながら女将はちらりと客たちを見る


フードを深々と被って、美しい模様のローブを着た

小柄な女性が何やら考え込んでいるみたいだ


大きな目をしており、小柄な体格と相まって

一見では可愛らしい少女のように見えるが、

纏う雰囲気は熟年の落ち着きがあり

指導者のような貫録さえ感じられる


エーリスはしばらく考え込んで言った



「そのマナ結晶なんだけど、

 さっき覗き見た感じだと、何やら意思を持って

 こちらに向かっているみたいなのよね。


 私たちが回収して

 大都市に持ち帰るってことになってるけど、

 もしも、この地上界で自意識を目覚めさせて

 知的な存在になったとしたら

 一体、どう扱えばいいのかしら?


 タジマコヘイ憲法に定める、法による保護の

 適応種族とするのなら、その意思を

 確かめる必要があるんじゃないかしら」



スオムも考え込んで言った



「ええ、確かに、この地上界において

 知的存在として新たに生じるのなら、

 私たちが何も考えずに 

 隔離界に持っていくわけにはいかないのかも

 しれません。

 その元となったものはどうあれ、

 地上界の住民として扱わないと

 いけないでしょうからね」



ジャーナリストのキャサリンが言った



「ねえ、そんなに難しいこと考えずに、

 あなたの右腕の力で、

 ささっとコトを終わらせて

 その後でいろいろと考えましょうよ」



しかし、エーリスが言った



「私の右腕は、暗黒神の力を備えているけど

 その力を振るう私自身は、神の知性を

 備えているわけではないわ

 

 神でもない者が、神の力を振るうと

 取返しの付かない過ちを犯してしまうかも

 しれない

 だから、せめて、私は自分の力に制限を

 与えているの

 

 隔離界の頭のいい人たちが長い年月をかけて

 作り上げたタジマコヘイ憲法と

 それを元に作られた大都市の法


 私のように神でもない、一神獣族の

 独断ではなく、それらに則って私は

 その右腕の力を振るうって決めたのよ」



マリーが言った



「あなたは、かつてこの力を手に入れたとき、

 結局、その右腕を切り落とすという

 決断をしたのよね。

 本当に、誰でも出来ることではないわ。

 あの強姦魔のロクデナシの

 ディックソンさえもが

 あなたを敬愛する気持ちがよく分かるわよ

  

 私は、そんなあなただからこそ、あなたの

 決断に従う。

 皆もそうでしょう?」



エーリスが言った



「ありがとう、マリーさん

 まあ、言っても、その右腕をこうして

 個人的な都合で再生させて、その力を現に

 振るっているんだけどね。

 

 なんだかんだと私も、感情で動く存在である

 ことには変わりないわ、

 あんまり私を持ち上げないでね。

 

 それと、これも個人的な感情で申し訳ない

 んだけど、しばらくこの地上界に滞在を

 続けて、やり残したことをやっておきたいの

 

 例えば、この王都だけでなく、

 世界各地の名物料理の食べ歩きとか」



宿の女将は、自分には理解できない言葉で

議論を続ける客人たちをあっけにとられて

眺めていた


しかし、ビッグボスがこちらに振り向いて言った



「女将さん、やっぱりしばらくこの宿に

 滞在を続けることにしたわ!

 また迷惑をかけてしまうけど

 料金は割増で払うから許してね」



もちろん女将に異存なぞあるはずもなかった





 

 




 

 

 

 

 

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