王の決断
グランヘルム3世は、王城の宝物庫で
あらゆる準備を整え、自室に向かっていた
何やら、王城の中はパニックになっているようだ
近衛騎士団たちがグランヘルム王をズラリと
囲んで一緒に歩いていく
「王よ、その御姿は一体?」
声をかけてくる近衛騎士団長の男は、
確か、竜騎士ストゥーカの父だったか?
しかし、グランヘルム王は無言でズカズカと歩いた
騎士たちは王の恰好に驚いていた
無理もない、王は銀の鎧に全身を包み、
ニンニクの束を首からブラさげ、
手にはメシア教のシンボルである
星を付けた杖を持っている
ストゥーカの父である、近衛騎士団長が言った
「恐れながらご報告申し上げます、
ジェネラルが脱獄し、
大広間にてクラウディア姫が主催されている
お茶会に、下半身フルチンで乱入いたしました」
しかし、近くで爆音が聞こえてきた。
作戦司令部にウォーヘッドたちが
突入したのだろう。
騎士たちに動揺が走る
グランヘルム王はニヤリと笑った
「矢は放たれたのだ!そなたたちは、
大広間に行って、姫と大使たちを守ってくれ、
ジェネラルの指示に従うのだ」
「し、しかし、王よ!
どうなさるおつもりなのです?
ジェネラルの指揮下に入れとの仰せながら
あのお方は下半身フルチンなのですぞ」
「ならば、ジェネラルのために
ズボンとトランクスを用意いたすのじゃ」
結局、グランヘルム王の命令で、近衛騎士たちは
大広間に向かっていった
やがて、王は自室の入り口にたどり着いた。
一息入れると、ドアを開けて中に入っていった
薄暗い寝室には、豪華な天蓋付きのベッドがあって
すでに、道化師が待ち受けていた
「なぜ、作戦司令部に居ないんだい?それに
その恰好は何を考えているのかね?」
身長60センチほどの操り人形
白い顔に赤く丸い鼻、ガラスの目が空虚に
こちらを見つめている
「道化師よ、あなたの正体は分かっております。
かつて勇者マルスの一行に、下の世界から
召喚された闇の者がおりました。
物質造形魔法を使い、人心操作魔法を使う。
それはすべてのヴァンパイアの始祖たる者
つまり、ヴァンパイア.ロード」
グランヘルム王は、道化師の背後に向かって
メシア教のシンボルの杖を掲げて見せた
道化師の口調が変わった。
無理して出している高音から、
落ち着いた低音の声に変わる
「ふむ、正体がバレたようだな。
まあ、別に構わぬが、それで人間の王よ、
吾輩をどうするつもりでおるのかね」
グランヘルム王は言った
「私は、そして勇者マックスと
ウォーヘッドたち、そして、人間種族は...
あなたの支配の軛から脱するつもりです」
道化師が言った
正確には、その背後の何もない空間から
声がしていた
「吾輩は、そなたのような凡人には
分不相応の富と権力を約束した。
一体、何が不満だったのだ?」
メシア教のシンボルには動じないようだ
しかし、グランヘルム王は言った
「私は凡人ではあるが、分別をわきまえています。
あなたのようなヴァンパイア.ロードにとって
人間とは単なる家畜のような存在でしょうが、
しかし、私は勇者マックスのおかげで
目が覚めました。
人間は、自らの足で歩いてこそ、
その生きる価値を見いだせるのです」
ふいに、道化師がパタリと倒れた
そして背後に、トゲトゲしい趣味の悪いマントを
羽織った者が出現した。
長身で、がっしりとした体つき
しかし、その顔は闇に隠れてよく見えない
「吾輩は人間を捕食する気なぞさらさらないわ!
愚か者め、ヴァンパイア.ロードの
第一人者である吾輩が、
単純に、家畜としての繁栄を目的として
地上界の人間たちに干渉していると
思っておるのか!」
かつて、人間を守護するために
光の神々から遣わされた種族、
その名を神人と言った
やがて神人は邪神の呪いによって
人間を捕食する呪われた存在、
つまり吸血鬼となった
人間種族ならば、いかなる言語にも関わらず
意思の疎通が取れる。
そして、人心操作魔法が使えるので
どんな人間であれ、その言葉に
逆らうことはできない
まさに人間にとって究極の捕食者だった
しかし、ヴァンパイア.ロードの第一人者
は言った
「はるかな昔に、ハイエルフどもの開発した
代用食によって、
我々は人間を捕食する必要はなくなった。
吾輩とハイエルフ評議会の老人たちが
目指しているのは、地上界の平和だ!
もう二度と、ウォーヘッドのような
存在を出してはならぬのだ。
お前たち人間種族は、すべての神々から
恩恵を授けられている。
いずれ、その恩恵をすべて発現させた存在が
出現して、この世界を滅ぼしてしまうのだろう」
そう、彼らが恐れているのはまさに人間だったのだ
グランヘルム王が言った
「あなた方は、救世主を恐れていたのか!」
そして、ドアを開けて、ウォーヘッドたちが
室内に突入してきたのだった。
王の寝室には、誰にも気が付かれない
空間の穴があった
その穴から、ヴァンパイア.ロードの第一人者、
グランヘルム王、ウォーヘッドたちを
見つめている者たちがいた




