表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウォーヘッド  作者: グレゴリー
9/114

ボケコラ

チームブラボーの男たちと、チームアルファの

ティルクがワイワイとスワンプドラゴンを

解体しはじめた


スワンプドラゴンは、沼地に生息する

ヌメヌメとしたサンショウウオのような姿の

モンスターであり、飛行竜や走行竜などと同じく、

成長しきってもレッサードラゴンの域を出ない

いわゆる下位ドラゴンである


しかし、人間をひと飲みにできる大きな口を

持ち、沼地に引きずり込まれたら

助かる見込みはない恐るべき存在だ


ストゥーカは空を見上げていた。


ふと、頭上を大きな影が覆って、

夜空の星を覆い隠した。



「出会った頃よりも、さらに一回りくらい

 大きくなったわね

 最終的にはグレイトドラゴン以上の

 存在にもなる、レッドドラゴンをこうして

 相棒にすることが出来たなんて

 未だに驚きだわ」



ストゥーカは上空のボケコラを見ながら

独り言をつぶやいていた


彼女の視線を感じたのか、ボケコラが

すぐ側に舞い降りてきた


10メートルを超える巨体が大きな風を

巻き起こし、ストゥーカの赤い髪がなびく


赤色のドラゴンは、長い首を曲げて

巨大な顔をストゥーカに近づけてきた


鼻先から眼窩の上の部分が

緩やかに隆起しており、そのフォルムは

強く精悍なドラゴンの顔を印象づけている

長い口からはみ出るズラリと並んだ牙、

後頭部から突き出した何本もの角、

その瞳は縦長で、赤く鋭かった



「我が友よ、その鎧を脱ぎて水浴びでもせぬか

 お互いに洗い合おうではないか

 それと、スワンプドラゴンの肉は我の為に

 大量に残しておくように、あの面々に

 言っておくがよい

 特に尻尾の付け根の部分の肉は美味であるから

 そなたの好みに合わせて我が焼いてあげよう」



ボケコラの頭を優しく撫でながら

ストゥーカが言った



「心配しなくても、たらふく食べられるわよ、

 言っておくけど

 うちのチームの食料の9割は

 あなたが消費してるんだから!

 それと、水浴びの前に腹ごしらえのほうが先、

 あなたの焼くステーキは絶品だから

 楽しみだわ」



ボケコラは、まるで猫のようにゴロゴロと

喉を鳴らしたのだった


この若いレッドドラゴンを乗りこなすのに

どれほど苦労したか...

でも、辛いと思ったことは一度も無かった

あの日も、クタクタになるまで訓練を続け、

訓練所の浴場で一息ついていた


マックスは夜の庭で一人、剣を素振りしていた


さすがに王都だけあって、故郷の村とは違い、

夜中であっても家の灯りが消えることなく

まるで地上の星のごとく輝いている


ふと、眼前に見える立派な王城を巨大な影が

覆い隠した

影はみるみるマックスのところに迫ってきた


マックスは素振りを止めると言った



「ボケコラか、また厩を抜け出してきたのか

 ストゥーカはクタクタに疲れてたみたい

 だったけどお前はタフだなあまったく」



レッドドラゴンはマックスの側に降り立つと

言った



「あんさん、俺があんな狭いところで

 ジッとしていられると思ったら

 大間違いですぜ、

 あんさんたちは確かにツエエけども

 人間であることには変わりねえ、でも

 俺は体内に破滅の炎を宿しているから

 全然疲れねーんだ

 それはそうと、あんさんにいいことを

 教えてあげまっさい

 女子生徒たちが使っている浴場を

 覗き見ることができるいい場所が

 あるんでえ」



マックスはちょっと滑り落ちた



「おいおい、なんでドラゴンであるお前が

 風呂覗きなんてことを俺にそそのかすんだ?」



「ストゥーカと出会わせてくれたお礼でさあ」



マックスの返答を待つことなく、ボケコラは

マックスの襟首を口先で咥えると、

ポイっとその身体を自分の背中の上に

放り投げた

そして、うむを言わさず、飛び立った



「うおお、ドラゴンに乗るってのは

 気持ちいいな、それにしても

 想像以上に加速のGが強いなあ」



やはり腐ってもドラゴン、加速力も上昇力も

一味違った

瞬く間に、眼下の王都が小さくなる

そして、ボケコラは一直線に急降下した


ウォーヘッド訓練所の女子風呂は、切り立った

崖の淵にあった。

この王都自体が、元々は巨大な岩山だった

のを、古代の人間たちが

長い年月をかけてくり抜き、切り開いて

作り上げた要塞が元になっているのだ


王城付近にはその名残があって、訓練所も

崖の上にあった



そして、巨大なレッドドラゴンとマックスは

崖にへばりついていた



「た、確かにこの位置だと

 女子風呂が丸見えだな、

 俺たちウォーヘッドは魔法とか使うと

 仲間にバレてしまうが、

 こうして自然の能力で空を飛んで来るのなら

 バレることはないだろう

 でも、ドラゴンがこんな場所に

 へばりついていて

 外から目立つんじゃないか?」



マックスの言葉に、ボケコラは

その隆起した眼窩の上の張り出しの奥の

鋭い赤い目をウインクした



「大丈夫、大丈夫、俺が自由に空を飛んでても

 王都の連中は黙認してくれてまっさい

 崖の上で休息してるようにしか

 見えませんって」



マックスは、岩のくぼんだ部分を見つけ

そこに身体をすっぽりと収めた



「ふむ、これで俺が外から見つかることはほぼ

 ないだろう、それにしてもだいぶ女らしい身体

 になったなあセリスも」



数メートルほど眼下に、湯に浸かる女子たちが

丸見えだった


セリスとマリアンヌとストゥーカが

真夜中の浴場にいた


ウォーヘッド訓練生の中でも、

特に熱心なこの3人は

風呂に入る時間も遅いのだ



「誤解するなよ、ボケコラ

 俺は普段は見れない仲間たちの

 衣服の下の姿を見ることで

 別の意味で色々と感動しているんだ

 例えば、引き締まって垂みのない

 肉体は普段からしっかりと

 鍛えていることを物語っており、

 なめらかな肌や張りのいい尻と胸は

 健康状態が良好なことを俺に知らせて

 くれて、安心感を覚える」



「あんさんも好きねえ」



ドラゴンは長い口のズラリと並んだ歯を

見せてニヤリと笑っていた




 


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ