美しくない戦い
クローディス大公とウォーヘッドたちは
煌びやかな大広間を出て、広い廊下を
走っていった
ジェネラルを残していったが、
結局、彼の役割はもう終わっていたのだ。
作戦を立案し、それを実行するための
お膳当てをするのがジェネラルの仕事だ
ついに一行は
作戦司令部のドアの前にたどり着いた。
小姓が言った
「このドアを抜けたら作戦司令部です、
使徒ダニエルと軍人と官僚がいます。
それでは、大公閣下、皆さま、
幸運を祈ります」
クローディス大公が言った
「うむ、ご苦労だった、そなたは避難したまえ。
それでは諸君、準備はよろしいな?」
テレポーターのパイソンと俳優のハーディスが
頷いた
そして、ウォーヘッドたちは
一斉にドアを開けた
部屋の真ん中で、使徒ダニエルが投影魔法で
映像を出している
手前には、長いテーブルを囲む軍人と官僚たち。
そして、奥には誰も座っていない
一段と高い場所にある椅子
テレポーターのパイソンがテレポートを
発動させる
部屋の床を、巨大な円陣状の
魔方陣のようなものができて、
青白い光が充満していった
使徒ダニエルは瞬時に、対魔法防御シールドを
自らに張ったが、人間たちは成すすべもなく、
テレポートして消えてしまった
パイソンが言った
「彼らは、地下牢に移転させた!
ではハーディス、やってくれ」
瞬時にテレポーターの能力をコピーした
俳優ハーディスは、ウォーヘッドたちに向けて
テレポートを発動させた
重騎士ドンと踊り子マリアがダニエルの背後に
出現する
吟遊詩人ジョルジュがバトルソングを
奏でている。
能力を数パーセントアップさせた
ウォーヘッドたちは一斉に
攻撃を開始したのだった
魔法使いマリアンヌが、最強の攻撃呪文を放つ
弓騎士カールソンが放った矢が
凄まじいエネルギーを纏う
ダニエルの背後から、巨大なエストックを
構えた重騎士ドンが突撃する
踊り子マリアが、優雅な曲刀を構えて、
バトルダンスを舞う
クローディス大公がそっとつぶやいた
「一体の敵を大勢で囲んで攻撃したり、
下半身フルチンで
パーティー会場に乱入したり、
それは決して美しいやり方ではないだろう。
しかし、それでも我々は勝たねばならぬのだ!
見苦しくも足掻くのが
我々、小さな者たちのやり方だ」
・・・・・・・・・・
はるか彼方のレイデンでは、
竜騎士ストゥーカが
使徒ルーシーに向けて急降下していた
下方から、レッドドラゴンのボケコラが、
ルーシーに向かってくる
ふいに、エネルギー弾がボケコラに向けて放たれ
紙一重で、ボケコラがそれを避けた
光弾が、海に向かって落ちていくが、
その先には一隻のバナナボートが居た
「綺麗ごとは言わないわ、
ボケコラ、よく攻撃を避けたわ!
おかげで私たちはこのチャンスを手に入れた」
ストゥーカは、手に持った槍を手放し、
腰に下げたダガーを抜いた
竜騎士の槍は、一直線に
使徒ルーシーに向けて落ちていくが、
ストゥーカはわずかに離れていく。
ボケコラは炎を吐いてけん制しながらも
ストゥーカーの落下軌道に合わせた
ルーシーは下方から迫る炎を
シールドを発生させて防ぎながら、
上空から落ちてくる槍を、
ライトサーベルで切り裂いた
ストゥーカがボケコラの背中に着地し、
再びジャンプした
ルーシーにはまだ処理リソースが残っており、
目の前に出現した長い赤毛の竜騎士の姿を捉えた
横一直線に開いたような目が赤く光る
しかし、ストゥーカの燃え上がるような赤い瞳も
しっかりとルーシーを見返していた
雷撃を纏ったダガーがルーシーの胸を貫くのと、
使徒の甲冑の膝から突き出した刃が
ストゥーカの脇腹を突き刺したのは同時だった
「ディックソンが言ってたけど、あなたの
甲冑内に張り巡らせされた
マナの回路だっけ?そこに雷撃を流すと
回路が壊れるのだとか
よくわからないけど、これで私の勝ちね」
使徒ルーシーは、ストゥーカから離れて
ゆっくりと地上に落ちて行きながら、
残された最後の力を持って、ストゥーカに向けて
腕を伸ばして人差し指を伸ばした
ストゥーカーもルーシーに向けて
弱々しく腕を伸ばして人差し指を伸ばす
ボケコラがすぐにストゥーカーをその背に乗せた
「ストゥーカ、大丈夫か?戦線を離脱しよう、
すぐに治療をしてやるからな」
使徒ルーシーは落ちていきながら、その甲冑は
空中で分解した
そして、巨大なマナ結晶を包んだ
コアファイターが出現した
巨大なゴールデンドラゴン2体が駆けつけてきた。
スターチェイサーとボブは、
上空に向けて飛び立っていくコアファイターに
向けてゴールドブレスを吐いたが
やはり、マナ結晶のコアははるか上空に
逃げて行った
グレートドラゴンのスターチェイサーが言った
「やはり、あのマナ結晶はどうにもならぬか。
あれを破壊するだけのエネルギーが
この地上界に存在するのかさえ疑問だ
それにしても、そなたたちには驚かされる。
我々は5体のうち、3体やられながらも
もう1体の使徒を撃破した。
我を含めたゴールデンドラゴンたちでさえ
苦戦したというのに、
そなたら竜騎士たちも、見事、
使徒を撃破するとはな」
ストゥーカーは眼下を見て言った
「私たちも、フーセン衆を失ったわ、
あそこにプカプカ浮かんでいる
2つのフーセンが彼らよ。
ゴールデンドラゴンが3体、
海に浮かんでいるのが見えるわ
彼らもなんとか無事みたいね。
それにしても、ひどい光景...
まるで海の上が燃えているみたい」
彼らの眼下では、ニュルーン王国の
ノル船の集団が燃え上がっている。
耳を塞ぎたくなるような人々の悲鳴が
上空にも届いていた。
先ほどルーシーのエネルギー弾が直撃した
バナナボートも、燃え上がりながら
沈みかけていた
ゴールデンドラゴンのボブが救助に向かう
ドクドクと血を流す脇腹を片手で押さえながら
ストゥーカーが港のほうを向いて言った
「驚くのはまだ早いですよ、スターチェイサー。
ほら、勇者マックスと仲間たちの強さを
御覧になってくださいな」