小さな者たち (挿絵付き)
チームチャーリーの4人は、洞窟の奥へと
走っていった
少し離れて、残りのウォーヘッドたちと
村長サークとキオミが続く
暗くて狭い洞窟の通路の奥に明かりが見えてきた
料理のいい匂いが漂う
そして、ふいに大きく開けた空間にたどり着いた。
そこは、柔らかな日差しが入り込んだ
明るい、居心地のよさそうな居住空間だった。
大きなテーブルに並べられた旨そうな料理の数々、
ベリー類を乗せたパイに、
キノコのクリームシチュー
新鮮な野菜サラダに、そして何よりも
玉ねぎとハーブをたっぷりと乗せた塩漬けニシン、
つまりへリング!
小柄で赤毛の、生意気そうで頭が悪そうな少年と
二人の力士が、一行に向けて
クラッカーを鳴らした
赤毛の少年が言った
「久しぶりだな、チームチャーリー、
そしてマックス、セリス、ティルク、
ディックソン、リック、
再びそなたらに会えて我もうれしいぞ」
チームチャーリーの4人の声がハモった
「誰やねん!!」
しかし、奥から、ネルーン王国の町娘の衣装の
ストゥーカが登場した。
皮のベストが胴体の形のいいくびれを強調しており、
結構、大胆に開いた胸元が、二つのボールを
押しつぶしたような景観を見せている
男たちの目が釘付けになってしまう
手に持ったお盆に、ビールとワインの瓶を
載せている。
さらに、フーセンライダー2人も、
グラスを載せた盆を持って登場する
紙吹雪を浴びたまま、ウォーヘッドたちは固まった
テーブルに盆を置いて、ストゥーカは
両手を腰に当て全員を見渡して言った
「遅かったじゃない、何日待たせるのよ!
とはいっても、私も普通に歩けるようになって
また2日くらいなんだけどね
昨夜、スターチェイサーがここに来て
強力な挑戦者たちが自分に挑むと言った。
絶対にあなたたちだと思って、
私たちとキオミは
こうして、準備をしてたのよ」
しかし、我慢ができなくなったように、
ストゥーカはズカズカと
マックスの元に歩み寄った
「マックス、元に戻ったのね!
エリーがあなたを拷問して連れ去ったって
使徒の投影魔法で知って
居ても立ってもいられなくてここまで
飛んできたのよ!立ちふさがる障害を
なぎ倒しながらね」
マックスにギュッと抱き着くストゥーカ
マックスはキョドキョドしながら言った
「うん、ストゥーカ、いろいろあって
俺は元に戻った。
それにしても君のその姿、新鮮だな、
とってもチャーミングだと思うよ。
竜騎士姿の君もとてもカッコいいけど
こういう女性らしい恰好も
似合うんだな、うん、さすがだ」
ストゥーカはすました顔でマックスから
離れると、赤い長髪を何気に触りながら、
奥へと引っ込んでいった
キオミはあきれたように言った
「ストゥーカたちは、北のヴィーランド付近を
横切ってここまでたどり着いたんだってさ!
その道すがら、数多くのドラゴンと、
さらに、あの伝説の暗黒竜セルフトークも
倒してきたみたい。
ほんと、あなたたちの強さって一体何なのさ」
サークが言った
「うむ、ワシは昨夜、こちらのドラゴンと
ライダーたちに会ったのじゃ
しかし、彼らとキオミは多くを語らず
ワシも追及することはなかった。
ただ、あの暗黒竜セルフトークを倒して、
瀕死になりながらも
この地を目指してきたと知って、
ワシは何か大きな運命の歯車が
動き出したような気がしたのじゃ。
そして、先ほど、やはりお前さんたちが
勇者一行だったと知った。
さあ、強き大きな者たちよ!
再会を喜びあうがいい!」
しかし、マックスが言った
「俺たちは大きな者たちではない、
小さな者たちさ!
でも、それぞれがガッチリと組み合う
歯車なんだ。
組み合わさった歯車は、一緒に動き、
大きな事を成すのだ!
そして、動きだしたら止まらない。
誰も俺たちを止めることはできないんだ」
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キッチンに戻ってきたストゥーカは、
ガンガンと壁に頭を打ち付けていた
そして、両手のこぶしを握り締め、天を仰ぐと
一気にガッツポーズを作ったのだった
ふと振り向くと、いつの間にか、
すぐ後ろに少年ボケコラが居た
「嬉しそうだな、ストゥーカよ
目元が二やついておるぞ」
こほんっと咳ばらいをしてから
ストゥーカが言った
「何?妬いてるのかしら?
まあ、こうしてマックスが元に戻って
嬉しいのはあなたもでしょ
...とりあえず、お酒を飲まないのは
エリーとあなただけだから、
ベリージュースを用意するからね」
しかし、ベリージュースを取って戻ってきた
ストゥーカとボケコラが見たのは、
サーク秘蔵の赤ワインのボトルを
ラッパ飲みしている僧侶エリーの姿だった
少年ボケコラに、早速、ルーティーとセリスが
絡んでいる
チームブラボーのメンバーである
ストゥーカとリックが再会を喜び合っている
アフロにちょび髭のフーセンライダーAと
ロン毛のポニテのフーセンライダーBが
暗黒竜セルフトークとの戦いを皆に語っている
キオミが、マックスに小さな麻袋を手渡している
皆がワイワイと豪華な昼食を楽しんだのだった
こうして、再結成されたウォーヘッドたちを
改めて紹介しよう
勇者マックス、戦士ティルク、聖女セリス、
聖騎士リック、ドワーフ.イルガ、
僧侶エリー、エルフ.リリーベル、
魔法使いルーティー、ハイエルフ.ディックソン、
ハイエルフ.キオミ、竜騎士ストゥーカ、
フーセンライダーA、フーセンライダーB
レッドドラゴン.ボケコラ、
フーセンドラゴンA、フーセンドラゴンB
ゴールデンドラゴン.スターチェイサー
ドラゴンたちはすべて人化し、17人もの集団が
西岸沿岸諸国の中の、ロール都市国家連合の
最大の都市、レイデンに帰ってきた
そして、都市の城壁の前の門で、
レイデンの市長が一行を待ち構えていた
市長の後ろには、ズラリと市民たちが集まっている
斧と槍が組み合わさったようなハルバードという
槍を片手に持ち、市長が言った
「勇者御一行よ、私が持つハルバードは、
かつて、ニュルーン王国からの侵攻を
受けたときに、当時の市長が自ら
その手に持って抵抗したといわれるものです。
そして、今から我々はあなたたちと共に
プラウダール体制に抵抗すると決意いたします」
市長の側に、ドワーフ王国からの使者が並んだ
「我がドワーフ王国とロール都市国家連合は
運命共同体じゃ。
いずれ、プラウダール体制が西岸を飲み込むのは
必定、我々が努力して築き上げてきた
繁栄が連中に吸い上げられてしまうくらいなら
皆で抵抗しようではないか」
さらに、黒衣のイケメンが市長の側に並ぶ
「わ、わ、我をた、倒しておきながら、
見返りを求めぬなぞ、
で、で、でで伝説の暗黒竜と呼ばれた
セルフトークの名誉に関わる...
我もそなたたちの助力をいたす」
さらに、ボブが市長の側に並んだ
「俺たちの村の修理の件、そして早朝の納屋で
起こった事件の件、まだ、
決着はついてないぜ!」
チームチャーリーの4人の女性は
「えへっ」と笑うと、こぶしで自分の頭を
軽く叩き、舌をペロリと出して見せたのだった
レイデンの市長は頭上に高々とハルバードを
掲げた
こうして、小さき者たちの同盟、
「レイデン同盟」が立ち上がったのだった




