トマホーク
城壁の上に立つ、遠距離魔法チームが魔力を
集中させた。
彼らの上空に、巨大で矢尻の無い
短い矢のようなものが形作られる
マリアンヌが魔力を放ちながら言った
「トマホーク、これがドラゴンのところに着弾
するまで約90秒、発射するわよ」
セリスが言った
「現在のドラゴンの座標は、
4501、1209、3230
逐一、トマホークに情報を送って軌道修正を
させる、発射して!!」
「発射」
光り輝くトマホークが、ケツから
赤い火を吹き出して発射された。
その頃、約8マイルほど離れた場所で、
レッドドラゴンと訓練生たちが
死闘を繰り広げていた
ストゥーカは槍を装備しており、カールソンは
弓を装備している
マックスは剣を振り下ろした
剣から渦巻くような衝撃波が発生し、目前に迫る
炎をかき消した。
カールソンが弓を引き絞り、矢を放った
「痛え!そんな馬鹿な、人間という種族が
こんなに強いなんて、聞いてないよ」
翼の根元に矢が突き刺さり、
レッドドラゴンの体が傾いた
間をおかず、跳躍によって飛び立ったストゥーカが
はるか上空からドラゴンに向けて急降下してくる
まるで、ストゥーカと一緒にドラゴンが
墜落したかのような光景だった
「このヤロー、調子に乗んじゃねーぞてめえら
ボケ、コラ、
ふざけやがって、このヤロー
なんで、こんなに強いんだよ、ボケ、コラ
俺の上に乗っかかんじゃーよこいつ
、ボケ、コラ」
地面に墜落したドラゴンの上に乗っかかって、
ストゥーカがその背中に槍を突き立てていた
マックスが言った
「これでよくわかっただろう?お前は
城壁にすら達することなく俺たちに敗北した
これが人間の力だ!
お前は魔王からも期待されることなく
適当にそそのかされただけなんだ」
ドラゴンは涙目だったが逆ギレした
「許さねー、俺を舐めやがって
魔王め、俺をコケにしやがって
てめえら何が可笑しんだよボケ、コラ、
笑ってんじゃねえよ、ボケ、コラ
魔王め、マジでぶっ殺してやる!
今から、俺は魔王とその部下たちを
ぶっ殺しにいくぜ、邪魔すんなボケ、コラ」
若きレッドドラゴンは羽ばたくと、飛び立った
背中に乗ったストゥーカは、慌ててその背中から
飛び降りた
ウォーヘッド訓練生の目前から急転換して、
元来た空を目指そうとしているドラゴンに
マックスは告げた
「おーい、どこ行くんだ?
今から魔王軍を滅ぼしにでも行くってのか?
さすがにそれは無理だぞー」
しかし、怒り狂ったレッサードラゴンにその
忠告は届かなかった
「ボケ、コラ、俺を止めるんじゃねー
俺は今から魔王軍を張り倒しに行くんだからよ
馬鹿にしやがって、クソ、ボケ、コラ」
しかし、上空で背を向けたドラゴンに向かって
まっすぐに飛来したトマホークが直撃した。
セリスの誘導は完璧だった。
凝縮された魔力のエネルギーが閃光とともに
解き放たれ、
ドラゴンは再び地面に墜落していった。
息も絶え絶えのレッドドラゴンを訓練生たちが
取り囲む
槍にもたれかかった格好で、ストゥーカが
つぶやいた
「ホント、馬鹿なドラゴンね、ちょっと
かわいそうになってきたわ、
どうするの?トドメを刺すつもり?」
カールソンが言った
「まあ、ドラゴンからは色々な
素材が採れるからな、
これからの戦いに有効な
武器やアイテムなんかが
作成できるわけだし、仕方ないよね」
ドラゴンが言った
「ちょ、マジでサーセン、
ほんと、反省してます
マジ、あんたらパネえっす、
もう二度としません
まじ、サーセンっした、
ホント、許してください」
マックスは、ストゥーカを見つめた
その瞳には憐憫の情が伺える。
周囲もそれを察して困っている感じだった
赤毛の少女と、赤色のドラゴン、そして言った
「なあ、ストゥーカ、君は騎士だったよね、
どうだろう、こいつと組んで
竜騎士を目指してみないか?
かなり難易度の高いジョブらしいけど
君ならこのドラゴンを
乗りこなせるんじゃないか」
ふいにストゥーカの瞳が輝いた
「え、竜騎士?そ、それもいいわね
飛行竜を通り越して、ドラゴンライダー
になっちゃうけど、でも、私が
頑張ればいいわけだし...う、うん、いい案だわ」
ドラゴンが弱々しくストゥーカのほうを向いた
「姐さん、これからよろしくお願いします!
俺と共に、魔王を倒しましょう」
ジェネラルの念話が皆の頭に鳴り響いた
「ふむ、ドラゴンライダーか、強力な戦力に
なりそうだな...
いいだろう、ストゥーカ、君の努力次第だ
このレッドドラゴンを乗りこなせるガッツは
あるか?」
返事の代わりに、
ストゥーカはマックスに抱きついた
カールソンの舌打ちが聞こえる
ちなみに、鎧は着けておらず、
訓練生用の戦闘服だけなので、
色々と柔らかな感触がマックスの全身を襲う
「はい、ジェネラル!私は努力してみせます、
本当にありがとう、マックス、
私のボケコラを助けてくれて」
結局、ドラゴンは、ボケコラと
名付けられたのだった。